Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

先週の記事にたくさんの拍手を頂きました。2ヶ月以上更新していなかったのに、見にきてくださるかたがこんなにいらして、そして拍手のボタンを押す手間を厭わずに何かを伝えてくださるということに心底驚き、ありがたく感じてこころがあたたかくなりました。

それだけジェレミーが愛されているのですね。1980年代から90年代にNHKでご覧になったかた、それ以降の再放送で、またDVDやブルーレイで、最近はネット配信でご覧になったかた、時期や手段は違ってもジェレミーのホームズに魅了されるひとが途絶えることなく続いています。そしてそのために、ジェレミーの話題をぼちぼちと書いているこのブログにも、拍手を下さるのだと思います。書いていることはすでにご存知のことであったとしても、ここに来ればジェレミーのことがいつも話されているのを、好ましいことと思ってくださるのでしょう。


カエルさんから、ジェレミーが左利きであることについて、「ジェレミーの(ホームズの)仕草(2)」の記事にコメントを頂きました。

ジェレミーが左利きであることを私がきちんと知ったのは、グラナダシリーズのプロデューサーであるMichael Coxの本からでした。Michael Coxが"A Study in Celluloid"の中で、"The Dancing Men"の制作について書いているところです。

ワトソンはホームズが顧客に思いやりの気持ちを示さなかったことに失望するが、ホームズが言うように「彼は同情してもらいに来たのではない」のだ。今ホームズがやらねばならないのは暗号を解くことだ。そしてこの課題に焦点をしぼるために、我々はホームズに紙ではなく黒板を用意した。しかしジェレミーにとって、何か書くシーンがあるのは簡単なことではなかった。ジェレミーはもともと左利きだが、ホームズがそうではないのは確かだと思っていたからだ。何か書かねばならないときは、 ジェレミーはどんなに苦労しても右手を使った。

Watson obviously despairs of Holmes' lack of sympathy for his client, but as Holmes says, 'he doesn't come to me for sympathy'. The business in hand is the cracking of the code, and to focus clearly on this we gave Holmes blackboards rather than slips of paper. Whatever we gave Jeremy Brett to write on set him a problem, however. He was naturally left-handed but convinced that Holmes was not. So, if ever he had to write anything, Jeremy did it the hard way and forced himself to use his right hand.


こうやってあらためて読むと、以前は読み飛ばしていた事柄に気がつきます。原作では黒板に暗号を書き写したり、そこで解いたりしないのですね。グラナダ版でホームズが黒板を前にして暗号を解いているのは、名シーンの一つですけれども。

そしてジェレミーはやはりホームズに合わせて、苦労しても右手を使って書いたのですね。確かにジェレミー自身が書いているというのは、映像をみればわかります。

ところが以前からネット上では、ジェレミーが文字を書くときはhand double(手のみが映る代役)を使ったという記述が時々みられます。たとえばIMDbにもあります。訳すと「ホームズが文字を書くところがクローズアップで映るときはいつも、手のみが映る代役が使われた」(https://m.imdb.com/name/nm0107950/trivia)。出典は書かれていません。私はこの記述の信憑性は低いと思っています。

それでは「ソア橋の謎」で左手で弓をひいたのは、どんな決断からだったでしょうか。はっきりとはわかりませんが、これについては次回書くかもしれません。

RM

追記)自分のための覚書として。
シャーロッキアンは先刻ご承知なのでしょうが、ホームズが右利きと考える根拠を知らなくてネットで調べました。私が読んだのはこちらで、
http://www.sherlockholmes-fan.com/an-interesting-question-about-sherlock-holmes-hair-hats-magnifying-glass-and-more.html
その根拠となるのは"The Sign of the Four"の"He took out his revolver as he spoke, and, having loaded two of the chambers, he put it back into the right-hand pocket of his jacket."という一文だそうです。ここでの"He"はホームズです。

2ヶ月以上、あいだがあきました。これで終わりにしようという気持ちと、いやもう少しという気持ちと両方あります。でも今日は、今まで2枚ここでご紹介した写真と同じときに撮影された最後の1枚が、eBayで4月に出品・落札されましたので、なくならない内にとりあえず書いてみます。

いつもと同様、落札されましたので数ヶ月後には見ることができなくなるはずです。
https://www.ebay.com/itm//401515785588

今までの2枚はまだeBayで見ることができて、もう一度アドレスを書きます。
https://www.ebay.com/itm//401487243416
https://www.ebay.com/itm/352261106389

3枚とも好きですけど、一番最初にご紹介した写真(https://www.ebay.com/itm//401487243416)が一番好きかもしれません。ハンサムさんが写真にうつるときの表情ではないんですもの。こういう顔でうつっちゃうのがいかにもジェレミーらしいです。

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以前メンバーだったファン・フォーラムで、しばらく顔を出さなかった人が久しぶりに投稿するとき、そのあいだもフォーラムに集っておしゃべりしたり資料を紹介しあったりしていた私たちに、「あなたたちはずっと灯火をかかげ続けてくれたのですね」と書いてくることがありました。"carry the torch"というその表現がこころに残っています。あの頃の仲間たちは、今も元気でしょうか。

私はここで、もう少し灯火をかかげていられるのではないか... 
でも一方で、ものごとは終わるときには終わるのだ、しがみつくまいという気持ちもあります。

これからのことは自分でもよくわからないのですが、今日は写真を1枚ご紹介しました。(ああ、でも、一ヶ月書かないと宣伝が出るのはうれしくないですね!やっとそれが消えました。)

RM
1月のこちらの記事でご紹介したものと同じ時に撮影された写真がeBayに出品されました。
https://www.ebay.com/itm//401487243416

前回と同様透かし模様(watermark)が入っていますけど、笑いじわがいっぱいの、ジェレミーらしい茶目っ気のある表情です。落札されましたので、数ヶ月後には見ることができなくなるはずです。

「ジェレミー・ブレットはカメラに三つの表情をしてみせた」" Actor Jeremy Brett made three different faces for the camera."と写真の裏に書いてありますから、もう一枚あったのですね。出てくるとよいのですが。

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二週間おやすみしていました。そろそろと歩いている感じです。

RM
もう一つ、ジェレミーの無防備で屈託のない笑い声を。

BBCラジオの1989年のインタビュー番組からです。こちらもJeremy Brett Informationにあったのですが、今はInternet Archiveに音声ファイルが残っています。下のリンク先の一番上がそうです。
http://web.archive.org/web/20110821081115/http://jeremybrett.info:80/media.html

ここから、笑いを含む部分を42秒ほどのクリップとして引用します。
JB 1989 interview clip.mp3

これは残念ながらトランスクリプトが手に入らないのですが、笑っているのはジェレミーが他のインタビューでも言っていた、「映画スターになろうとしてアメリカに行ったんですけど、だめだったんです」というところです。そのあとは「カウボーイになりたかった」という話ですね。

この笑いも格好つけてなくて小さな子供みたいで、一緒に笑い出してしまうくらい好きです。

RM
ジェレミーの屈託ない笑い声を久しぶりにききたくて、Desert Island Discsのインタビューの音声を再生しました。このインタビューは何回かご紹介したことがあります。たとえばこちらです。
ホームズにとってのIrene Adler:1991年のインタビューより

1991年にアメリカで収録されたものです。トランスクリプトと録音は、フランスのSociété Jeremy Brett de France (JBSF)というグループが"A thrilling time"というタイトルで以前出版しました。

この音声は、Jeremy Brett Informationにありました。今はこのサイトはなくなってしまいましたが、Internet Archiveにページと音声ファイルが残っています。
http://web.archive.org/web/20110821081115/http://jeremybrett.info:80/media.html

このページの上から二つ目に"Desert Island Discs (half hour edit).mp3"とあるのがそうです。

まず最初にインタビューアのRobert Aubry Davisがジェレミーに、

John Hawkesworth(ジョン・ホークスワース)がこの番組に出演したときに、あなたの名前が出たんですよ。ホームズの映像化の権利を得たときに、ぜひあなたにホームズを演じてほしいと思った、と。でもジェレミーにはぎょっとした、て言っていました。

と切り出します。John Hawkesworth(ジョン・ホークスワース)はグラナダ・シリーズの構成を担当、脚本も「最後の事件」「四人の署名」など、いくつも書いています。

この後のジェレミーとインタビューアのやりとりをJBSFによるトランスクリプトから、二人の声が重なっているところなどを一部改変して引用します。

RD: 思い当たることがありますか?

JB: つまりホームズが私をぎょっとさせた、っていう意味ですね。(笑い)

RD: それもあり得ますね!でもジョン・ホークスワースが言ったのは、あなたがあまりに役になりきっているので... ホームズそのままになったので...

JB: ああ、わかりました。ジョンは... ジョンはずっと... ジョンがこう言ってるって聞きましたよ、私がほとんどホームズそのものだったので、私がわからなかったって。

RD: そう、そのことです。

JB: 「私がわからなかった」っていうのはつまり...。

RD: ジェレミーだってことがわからなかったんですね。

JB: そのこと、たぶんききました。


RD: Does that ring a bell at all, or not?

JB: I think what you mean is that Holmes frightened me!

RD: That could be true also! He actually said that you become so much that character, so much the Holmes character...

JB: Oh, I see. I didn't know that John... I know John's been... I heard that he'd said... that I had become close to playing Holmes and that he didn't recognise me.

RD: Yes, oh, yes.


JB: Me, I mean...

RD: You, as Jeremy.

JB: I think I did hear that.


ジェレミーの最初の返事のあと、実に屈託のない笑い声が入るのです。最初これをきいたとき、ハンサムさんがそんな笑い方していいの?と、私も笑いだしてしまいました。

引用した部分の音声を切り出して、いわば、声の引用をします。約30秒です。
DID1.mp3

RM
週末に更新できませんでした。今日はとても短い記事を書きます。記事、といっても、写真のご紹介なのですが。

落札されましたので、数ヶ月後には見ることができなくなると思いますが、eBayのこのページにあります。
https://www.ebay.com/itm/352261106389

残念なことに透かし模様(watermark)が入っていますけど、そして口元はジェレミー自身の手でかくれていますけど、ジェレミーらしい表情で、私はこれははじめてみました。後ろに1986年2月2日というスタンプが押してあります。

RM
前回の続きです。カナダの微生物学者の女性はグラナダ・ホームズが好きで、4年間にごく普通のファンレターを何回か出して、ジェレミーから短い感謝の返事をもらっていました。

その彼女が人生の危機を経験したのが、前年のクリスマスの頃と書かれていますから、1994年の12月です。おばが末期ガンと診断されて入院し、母が脳卒中で倒れたのです。そして1995年1月はじめ、思わずイギリスにいるジェレミーにカナダから電話をかけました。(番号をなぜ知っていたかは書かれていません。俳優年鑑のようなもの、あるいはファンレターへの返事にあったのでしょうか。)

出典はこちらです。
Lost, a great heart
by Michael Walsh
The Province, Oct 15, 1995

「仕事を休んで、この空っぽの家でうろうろとして、自分を持て余していました。」1月4日は「どん底の気持ちでした。」

「取り乱して、多分自分を哀れむ気持ちだったのでしょう」としっかりした声で語った。「それで私ったら誰に電話をかけるっていうんでしょう。」

そのことを語るのはいまだに少し落ち着かないようだった。「もともとは、こんなことをするタイプじゃないんです。すごく控え目なんです。」(中略)

その日彼女は誰かに話さずにはいられなかった。そしてその日、ブレットの家の電話番号が手元にあった。ダイヤルを回すとブレットが電話に出た。

「私にとても役にたつアドバイスをたくさん話してくれました。そしてなによりも、私を気遣ってくれました。私のことをこころから心配してくれたのです。」

「いつでも君の助けになるよ (I'm here for you, luv,)」ブレットはこう言った。

「私のために祈ると言ってくれました」とKoppは言う。ブレットは病院にいる彼女の母親とおばに写真と手紙を送ってくれた。何日かたって、ブレットはKoppに電話をしてこう尋ねた。「どうしている? 大丈夫?」

「私が懐かしく思い出すのは、一人の人間としてのブレットなんです。俳優としてではなく。」


"I had taken time off from work and was rattling around in this empty house," she says. On Jan. 4, "I hit rock bottom.

"I was distraught and, I guess, suffering a little self-pity," she says in a firm, even voice. "And who the hell am I going to phone?"

Kopp is still uncomfortable with the memory. "It's not the sort of thing I tend to do," she says. "I'm very conservative." [...]

On a day that she had to reach out to someone, she had Brett's home number. When she dialled it, the actor answered.

"He was wonderful and offered me a lot of good advice." More than that, "he cared. He really did."

"I'm here for you, luv," Brett told her.

"He said he would pray for me," Kopp says. He sent photos and notes to her mother and aunt in hospital. A few days later, he called her to ask "how are you doing, how are you getting along?"

"The memories I hold dear are of Brett as a man, not as an actor," she says.


ジェレミーが心筋肥大症と診断されたのが同じ年の2月頃です。David Stuart Daviesがジェレミーと最後に会ったのが2月で、それが診断が出てから間もない時だとBending the Willowに書かれていますから、診断は1月か2月でしょう。ですから1995年1月4日というと、もう健康状態もかなり悪かったことでしょう。でも大西洋を隔てて突然かかってきた電話に親身になって、悲しんで混乱している女性をなぐさめ助けたのですね。

ジェレミーはお母様を交通事故で、奥様を病気で亡くしています。愛する人を見送る気持ちも、病気の家族を見守る気持ちも、そして病気のひとの気持ちもわかっていて、あのやさしさで彼女に手を差し伸べたのでしょう。そしてジェレミーが亡くなったのが、同じ年の9月でした。

RM
今までジェレミーからの電話のお話をしてきましたが、今日はジェレミーに思わず電話をかけて、親身になってもらって助けられたひとの思い出です。彼女はそれまでファンレターを出してきたけれども、ジェレミーに会ったことはありませんでした。そして彼女が住んでいたのは、海を隔てたカナダでした。出典はこちらで、The Provinceはカナダ、ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーの新聞です。

Lost, a great heart
By Michael Walsh
The Province, Oct 15, 1995

今日ははじめの方から引用します。これはジェレミーが亡くなってから約一ヶ月後の記事です。

私たちはみな、あの名優を覚えている。俳優と演じた役が最高の調和に至ったテレビシリーズにおいて、ジェレミー・ブレットはシャーロック・ホームズそのものだった。

今までに100人以上がホームズの役を演じたが、ビクトリア朝英国の有名な諮問探偵の本質を最もとらえたのは、ブレットだった。9月12日に亡くなったという知らせで、世界中のたくさんの視聴者は悲しみ、喪失感を感じた。

Nancy Koppは大切な友となったひとのことを思い出す。1月に個人的なことで精神的危機に陥った時、バンクーバーの微生物学者であるKoppはその有名な俳優に助けを求め、親身になって思いやってくれる一人の人間としての彼と出会った。(中略)

Koppは彼女の家の西側の居間で私のインタビューに答えて、英国にいたブレットが、世界の向こう側からかかってきた助けを求める電話にどう答えてくれたかを話してくれる。


We all remember the great actor. In what became the perfect marriage of a performer to a role, Jeremy Brett was Sherlock Holmes.

Though more than 100 others have played the part over the years, it was Brett who best captured the spirit of Victorian England's most famous consulting detective. His death on Sept. 12 left millions of viewers around the world with a real and immediate sense of loss.

Nancy Kopp remembers a great friend. In January, during a moment of personal crisis, the Vancouver microbiologist turned to the actor and found a caring and compassionate man. [...]

Now, sitting in her west-side living room, Kopp tells me how Brett responded to a call for help from the other side of the world.


途中で略したところには、彼女がこの著者にジェレミーの思い出を記した手紙を送り、コラムの題材にどうかと提案したことが書かれています。

最初のところにも書きましたが、彼女はジェレミーのファンとして、それまでの4年間に短い、いわばごく普通のファンレターを何回か出したことがあるだけでした。そんな彼女がジェレミーに思わずかけた電話、そしてジェレミーの返事はどんなだったかは、(多分)次回の記事でご紹介します。

RM
前回はホームズに関するインタビューの後で、インタビューで話した内容の追加のためにジェレミーから突然直接電話がかかってきて、驚いたお話でしたが、それで思い出した記事があります。Peter Hainingは、グラナダ・シリーズについての本"The Television Sherlock Holmes"を書いているあいだ、そしてその改訂版をつくっている時に、しばしばジェレミーが電話をくれたと語っています。

The Case of The Sunday Morning Phonecalls
By Peter Heining
Sherlock Holmes Gazette, issue 11, Spring 1995

その電話が鳴るのは、たいてい日曜日の朝の早い時間だった。相手が誰かは、その声で間違いようがなかった。

"Peter, dear heart," その声の抑揚はいつものように、今にもこれから劇のせりふを口にしそうな調子だった。続いてこう言う時に彼の両眉が上がるのが見えるようだった。「君のためにちょっとしたことを、またみつけたんだよ!」

私が"The Television Sherlock Holmes"の本を書いていた1986年、そして第二版と第三版のための改訂作業をしていた1991年と1993年のあいだ、ジェレミー・ブレットは頻繁に電話をくれた。

ジェレミーは、グラナダ・シリーズの制作に関して新しく知るためにはこれも読者にとって役立つだろう、と思うような舞台裏の話をしてくれた。このシリーズでジェレミーはホームズの決定版と賞賛されるようになった。

長いことテレビのシリーズものについての本を書いてきたが(中略)、ジェレミー・ブレットほど自分の演技の内に何があるかを話してくれる俳優にはめったに会わなかった。あの偉大な探偵を演じるにあたってどれほど意欲を感じているかを、彼はいつも率直に語ってくれた。


It was early on Sunday mornings when the phone usually rang. The voice was instantly recognisable.

"Peter, dear heart," the inflection in the caller's voice sounded, as always, as if he was about to deliver a line of dialogue. I could almost see the eyebrows arching as he went on: "Another little piece of information for you!"

Telephone calls from Jeremy Brett were a regular occurrence during the time I was writing my book The Television Sherlock Holmes in 1986, and then while I was revising later editions in 1991 and 1993.

He rang with pieces of behind-the-scenes information concerning the unfolding story which he felt would help inform readers about the making of the Granada series which has deservedly won Jeremy the accolade of being our definitive Holmes.

In a lifetime of writing book about TV series [...] I have rarely come across an actor more willing to talk about the secrets of his art than Jeremy Brett. He was always completely honest explaining the enormous challenge he felt in playing the Great Detective [...].


最初のところ、あの声と調子は日常を劇の空間に変えてしまうのですね。ごく普通の話をしていても、シェークスピアなどが多用した韻律の弱強5歩格のようにきこえる、と書かれた新聞記事があったのを思い出しました( https://news.google.com/newspapers?&id=ZOUcAAAAIBAJ&pg=5779,6115475)。

後半からは前回の引用部分にもあったようにジェレミーが作品を大切に思っているところや、グラナダ・シリーズを本で紹介してくれる著者の役に立ちたい、読者に楽しんでもらいたいというジェレミーの気持ちがうかがえます。そしていつも率直でまっすぐです。このこともよくインタビューアが口にします。

ジェレミーからの電話について、三つ続けて書きました。これ以外にもまだいくつも思い出します。


ところで、Peter Hainingが書いて、その執筆中にジェレミーが電話でちょっとした裏話や逸話を伝えたというこの本のことは、ほとんどの方がご存知でしょう。念のために日本のアマゾンのページを記します。リンク先は原書の第三版です。
https://www.amazon.co.jp/dp/0863697933

こちらは日本語に翻訳された「NHKテレビ版 シャーロック・ホームズの冒険」です。
https://www.amazon.co.jp/dp/4763098241

RM
前回は、ジェレミーからの突然の電話に、"Who?"と言っちゃったマーカスのお話でした。今回はDavid Stuart Daviesがかろうじて、そう言う前に気がついたお話です。でもマーカスの名誉のために申し上げますが、明け方にくたくたになってベッドに転がり込んで、電話で叩き起こされた、しかもまだジェレミーと話したことがなかったマーカスだったのですが、今回は状況が少し違います。

David Stuart Daviesがはじめてジェレミーに会ったのは、ジェレミーが"The Hound of the Baskervilles" (バスカヴィル家の犬)の撮影をしていた現場でした。10分のインタビューのはずが、二人は1時間近く話し続けました。ジェレミーはDavidがシャーロッキアンで、ホームズ物語にもその映像化にも精通していることがすぐにわかったのです。

そしてその後におきたことです。

Bending the Willow, New Edition
By David Stuart Davies
Calabash Press, 2010.

私が驚いたのは、いや驚いたどころでなく呆然としてしまったのは、その数週間後に、家にいる私にジェレミーから電話がかかってきたことだ。受話器を取ると声がきこえてきた。「やあ、こんにちは、ジェレミーだけど。」ありがたいことに、天からの導きか何かで「どちらのジェレミー?」とは言わなかった。あの名優自らが私に電話をしてくれるなど、思ってもいなかった。ジェレミーはただ、先日の「バスカヴィル家の犬」についての議論に、いくつか付け加えたいことができたのだ。こんなふうに、その時の気持ちのままに、親しくひととつきあうこと、そして出演作品を大切にしてよく考えていること、これが彼の本質だった。5分後には電話は切れて、呆然とした私がその部屋に残された。

It surprised me—no, shocked me—when a few weeks later I received a telephone call at home from him. I picked up the receiver and a voice said, 'Hello, it's Jeremy here . . .' Thank goodness, some guardian angel prevented me from responding with 'Jeremy who?' I certainly wasn't expecting the great man himself to ring me. He just wanted to add some comments to our conversation about The Hound. That kind, impulsive gesture and care about the production was the essence of the man. In five minutes he was gone, leaving me a little shell-shocked.


いつもながら、「ジェレミーって、こうなんですよね」と言うしかないです。にっこり笑いながら。

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今日、りえさんと私宛にマーカスからまたメールが来ました。先日のブログで、Wyndham's theatreの楽屋での36枚の写真が入ったボックスセットを、りえさんと私が2010年に購入したお話をしましたが、そのボックスセットが今でも購入できることを知らせてくださいました。あれは本当に美しくて素敵です!

写真プリントのサイズは11インチ x 8インチ(約28 cm x 20 cm)です。(先日のブログに私が載せた写真は、新しく届いた「ハンドバッグ・サイズ」のボックスの方で、いまご紹介しているのは一回り大きい「ノーマル・ボックスセット」の方です。)そして購入希望があれば今回新しくプリントし直すので、その時には「ローズ・プリント」も入れてくださるそうです!プリントは美しい箱に入っていて、箱にはそのほかに証明書とコンタクトシート(プリント一覧)が入っています。お値段は250ポンドと送料です。

もしも購入者が多ければ、今回新しくプリントして作るセットは200ポンドと送料という値段にするとのことです。「これは、この季節の挨拶として、日本のジェレミーのファンに親愛の気持ちを示すためで、こちらだけのこと(This is a little seasonal goodwill to the people of Japan and not offered elsewhere.)」とのことです。

あの写真は特別、そしてあのボックスセットは、それにまつわる思い出も含めて私には宝物です。あの値段だけの価値は十分ありました。かなり高額ではありますが、欲しいとお思いになるかたがいらっしゃったら、マーカスに直接メールするか、あるいは私たちが間に入った方がよいようでしたら、私かりえさんに連絡なさってください。

マーカスと私のメールアドレスは先日のブログの「追記」をご覧ください。

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これが今年最後の更新になると思います。

どんなかたが、どのくらいここに来てくださっているのでしょう。以前来てくださったかたも、もう今は多くがここにはいらっしゃらないのでしょう。でも、何かのときにふと、あんなブログがあった、と思って立ち寄って、あらまだ続いている、と懐かしいような安心したような気持ちになってくださったら嬉しいと思っています。

今読んでくださっているかたも、以前ここに来てくださったかたも、よいお年をお迎えになりますように。

RM

 RM

Author: RM
コメントは承認後に公開されます。古い記事へのコメントも大歓迎です。2010年8月7日に始めました。
私の記事へのリンクはどうぞご自由になさって下さい。
和訳には間違いがあるかもしれません。最近は必ず英語原文を併記・またはアドレスを書いて読めるようにしていますので、どうぞそちらも参考になさってください。

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