Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

前回のインタビューの、今度は最後の部分を引用しましょう。Edward Hardwicke(エドワード・ハードウィック)がグラナダ・シリーズ全体を振り返ったのち、ジェレミーを偲んでいます。インタビューのタイトルは"Elementary My Dear Watson: An Interview with Edward Hardwicke"で、北米版のDVDの特典としてついていたものです。映像の最後には2003年と書かれていますから、撮影は2002年か2003年くらいでしょう。

二つに分けてYouTubeにアップロードされたうちの、今回は二つ目の部分、その7分27秒からです。
https://youtu.be/d1FBZznsoXU?t=7m27s

トランスクリプトは前回同様、For Fans of Jeremy Brettというファン・フォーラムからです。
http://jeremybrett.livejournal.com/42035.html

今回引用する部分のはじめと終わりは以前にご紹介したことがあります。
Edward Hardwickeのジェレミーを語る言葉;Elementary My Dear Watson (2003) より

この時はFor Fans of Jeremy Brettにあるトランスクリプトではなく、IMDbにある引用集を使ったため、途中の一部が含まれていませんでした。今日はあらためて、映像にある部分を続けたかたちで引用します。

グラナダ・シリーズの撮影は、本当に幸せな時間でした。二人のすぐれたプロデューサー、Michael CoxとJune Wyndham-Daviesがいて、ホームズの物語について知り尽くしていました。魅力的な出演者ばかりで、皆このシリーズに出られることをこころから喜んでいました。私には生涯の友達がたくさんできて、今もよく会っています。そしてジェレミーがすべての中心でした。こころが広くて、すばらしくユニークなジェレミーがいてこそのシリーズでした。

とても幸せな日々で、ジェレミーが亡くなったのは本当に残念でさびしいことです。すごくさびしいです。撮影が終わってからはジェレミーと会う機会は少なかったけれども、フランスにいる私によく電話をかけてくれました。ジェレミーは冗談を思い出して、その冗談の締めの一言が思い出せないまま電話を切って、でも後ですぐかけ直してくれたりしました。彼は素晴らしい人で、もうこの世にいないのはとても残念です。そして悲しいことに、その仕事に見合っただけの栄誉をうけませんでした。あの演技に対して何の賞もうけなかったのです。でもジェレミーのホームズはこの先も忘れ去られず残ると確信しています。彼は素晴らしいホームズだったのですから。

The whole series was a hugely happy occasion. Two wonderful producers, Michael Cox and June Wyndham-Davies, who were wonderfully knowledgeable about the stories. Lovely casts of people, these people were thrilled to be in it, they were thrilled to be in it. I made lifelong friends of a number of people I see frequently. And, as I say, dominated by Jeremy; hugely generous, umm, wonderfully eccentric.

But it was a very, very happy time and he's deeply and sadly missed. I mean, I miss him, I miss – although we didn't see a lot of each other after we'd finished he used to phone me in France and, uh, come up with jokes and he would never remember the tag and he'd have to put the phone down and ring back. But, umm, he was a-an extraordinary man and a great loss and sadly, I feel, not honored enough for what he did; he didn't get any gongs for that performance. And it will be remembered, I'm sure, because I think he was an extraordinary Holmes.

Transcript: http://jeremybrett.livejournal.com/42035.html

エドワードは静かな表情と話し方です。ひとによっては、そっけないと感じるかもしれません。ジェレミーの冗談のところでも笑わないし、さびしいと言う時もジェレミーは何の栄誉も受けなかったというところでも、悲しみも残念な気持ちも、おもてにはっきりとはみせません。でも聴いている私たちには、エドワードがこころの底でずっと同じ思いを抱いていたことがわかります。長くかわらない、こころからの気持ちだということがわかります。

そして、ジェレミーのホームズは忘れ去られることはなく、人々はずっと覚えているだろうとエドワードが語ったこのインタビューから15年ほどたった今、このことを疑う余地はまったくありません。

RM
今日はEdward Hardwicke(エドワード・ハードウィック)へのインタビューから引用します。

前回、「どうしてもエドワード単独へのインタビューの内容が、記憶からすりぬけてしまいます」などと書いてしまいましたが、エドワードへのインタビュー映像 "Elementary My Dear Watson: An Interview with Edward Hardwicke"での内容はよく覚えています。北米版のDVDの特典だったとてもよいインタビューで、以前こちらで触れたことがあります。
2011年5月22日

このDVDセットの前の版にもついていたかもしれませんが、私が持っているのはこちらです。
https://www.amazon.com/dp/B000RPCJB6

このDVDセットについていたインタビューは、YouTubeに二つに分けてアップロードされています。インタビュー全体ですから引用の範囲を越えていますが、そう長くはない映像だということもあって、こちらにアドレスを書きます。今日私が引用するところは4分38秒からです。
https://youtu.be/UCYzvzp9Z_Q?t=4m38s

もとのDVDで字幕はついていませんでした。でもFor Fans of Jeremy Brettというファン・フォーラムにトランスクリプトがありますので、これを使わせていただきます。
http://jeremybrett.livejournal.com/42035.html

この部分を選んだのは、映像作品での監督と俳優の関係や、役作りの一端がわかる気がしたからです。日本語訳は読みやすいように、段落を二つに分けました。

「修道院屋敷」は私がワトスンを演じるようになって最初に撮影した作品でした。Peter Hammond(ピーター・ハモンド)が監督で、この後もグラナダ・シリーズで多くの作品を監督しています。彼はこの時、私にとってものすごく意味がある解釈や指示をくれて、私のワトスンのとらえ方に大きな影響を与えてくれました。多分誰かが、ピーター・ハモンドは助けになってくれるはずだと思って選んだのだと思います。

「修道院屋敷」に、ホームズが部屋の中で歩きながら状況を分析し推理しているシーンがあって、ハモンドが私に「ここで吸ってほしいな。」私が「何がいいだろう。」「紙巻きタバコを吸ってください。」それでタバコを手にして吸ったら、彼が「いや、そうではなくて、タバコを顔に近いところで持ったままにして、その手をあまり遠くには動かさないで。」 たいして意味がなさそうにきこえるだろうけど、その時に演じている状況にあてはめたらすぐにわかりました。「ああそうか、この間(かん)の時間と、没頭しているところをあらわしているんだ。」これが自分のこころの中で、ワトスンがどういう人間かを判断して理解するきっかけになりました。なぜかはわからないし、今ここで説明はできないのですけど。

"The Abbey Grange" was the first one I was involved in. And a director called Peter Hammond, who subsequently did a lot of them, umm, did it and he gave a couple of notes which were hugely important to me and they made a lot of difference to the way I looked at the part. And I think it had been a deliberate choice, I think somebody thought, "He can help.” There was a sequence in "The Abbey Grange" where Holmes is pacing around trying to work this thing out and Hammond said to me, uh, "I want you to smoke." And I-I said, "Yes, what, smoke what?" He said, "Cigarettes, I want you to smoke cigarettes." So I (took a) cigarette and he said, "No, no, no," he said, "Keep the cigarette very close to your face, don't move it away too far." And, it doesn't really mean anything in its explanation but in the context of what we were doing it immediately made me think, "Yes, that suggests time and concentration." And it somehow triggered something in the back of my head that made me think “Watson", I don't know why and I couldn't explain it to you today.

Transcript: http://jeremybrett.livejournal.com/42035.html

これをはじめて聴いた時、わからないなりに、なんて面白いんだろうと思いました。タバコを吸う仕草一つに、その時の状況と、その状況の中であらわれるワトスンの性質が見てとれるのですね。自分が持っているイメージを具体的な形で監督が口にして指示を出して、それを俳優が受け止めて、役ができていく。監督もすごいけど俳優もすごい。あうんの呼吸という感じがします。

"Yes, that suggests time and concentration." とエドワードが思ったところ、どう解釈するかむずかしいのですが、私なりに考えてみました。ここは一度立ち去った屋敷にもどってからの場面ですね。原作では食堂に2時間こもって、となっています。グラナダ版が2時間を想定しているかはわかりませんが、この場所に長くこもってホームズの調査を見守り、彼の推理をたどっているワトスンは、こういう時にタバコをおおきな仕草でスパスパと吸う性質(たち)ではなく、そしてまたワトスンが静かにタバコをくゆらすのを私たちがみて、この部屋で長く推理に没頭している二人を感じるということではないでしょうか。

ジェレミーとエドワードが映像作品と舞台をくらべて、いろいろと話していましたが、このような目立たない、かすかな仕草・演技が映像作品では意味を持つのですね。観ているひとが仕草の意味を明確にみてとってはいなくても、意識下で全体として感じたり、演じている俳優本人が役を理解して役を生きる助けになったりするのでしょう。「なぜかはわからないし、今ここで説明はできない」("I don't know why and I couldn't explain it to you today.")というほど微妙なことなのですね。

そしてこのインタビュー全体をとおして、エドワードの自然な謙虚さとおだやかさがあらわれていて、何度聴いても静かな懐かしさを感じます。

RM
二人のワトスンそれぞれと共に演じた中でどの話が一番好きか、とジェレミーがインタビューで尋ねられて答えているところを引用します。インタビューアはDavid Stuart Daviesです。ジェレミーは一番好きな話は選べないと言って、好きなシーンをあげています。

この内容は二つに分けてDavid Stuart Daviesの著作にも書かれていますから、これを読むのははじめではありません。でも本では一部でしたし、亡くなる年の2月かそれ以降にジェレミーが語った言葉だということを、このインタビュー記事を読んではじめて知りました。1995年のはじめにジェレミーのフラットで最後に会った時のインタビューに、ジェレミーが掲載雑誌Scarlet Streetの出版人であるJessie Lilleyにそのあと電話で話した内容も加えたインタビュー記事だと書かれています。ジェレミーとDavid Stuart Daviesが最後に会ったのは1995年2月のはずですから、この時かそれ以降です。

SSはインタビューアです。中でジェレミーがTedと言っているのは、Edward Hardwickeのことです。

Dancing in the Moonlight: Jeremy Brett, A Last Talk with David Stuart Davies and Jessie Lilley
Scarlet Street, No. 20, Fall, 1995

SS: 二人の違うワトスン、David Burke (デイビッド・バーク)とEdward Hardwicke(エドワード・ハードウィック)とで、どの話が一番好きですか。
JB: 選ぶことはどうしてもできません。二人はそれぞれ独自の素晴らしさを持ったワトスンでした。とても好きなシーンはいくつもあります。「踊る人形」で土地の警察が私が何者かを知らなかった時に、デイビッドが私のために口を開いた、あの時の様子がとても好きでした。前に出て「こちらはシャーロック・ホームズ氏です」と告げた、あの時です。「最後の事件」での演技にも感動しました。Ted(テッド)が「空き家の怪事件」で帰ってきた友を前に気を失って、その後の安堵がはっきりとみてとれたことにもこころうたれました。気持ちが繊細でもろいワトスンをみせてくれました。「マスグレーブ家の儀式書」でも見事な演技でした。あれは私たちの作品の中で最高のものの一つだと思います。

SS: Tell us, which were your favorite episodes with your different Dr. Watsons, David Burke and Edward Hardwicke?
JB: I cannot possibly choose. They were both splendid Watsons in their own individual way. There are moments I'm fond of. I loved the way David stood up for me in THE DANCING MEN, when the local police didn't know who I was. He stepped forward: "This is Sherlock Holmes." I was very touched by his performance in THE FINAL PROBLEM. Ted's faint and obvious relief at his friend's return in THE EMPTY HOUSE was also very touching. He showed such vulnerability. He was so very good in THE MUSGRAVE RITUAL, which is one of the best we ever did.


「踊る人形」でのシーンを見直しました。二人は屋敷に歩いて入ってきて、先にホームズが口を開き歩みをとめる。ワトスンはさらに歩いてホームズより前に出てとまる。ワトスンはホームズのために先に出たのですね。この後のジェレミーの演技も見事でした。"Mr Hilton Cubitt ... " と言いかけて "... was my client."と過去形で言う時の表情に、ホームズの感情があらわれていました。

「空き家の怪事件」でのワトスンが失神するシーンは、目に焼き付いています。この時のことをエドワードが話しているインタビューがあるとよいのですが。気をつけておきましょう。(どうしてもエドワード単独へのインタビューの内容が、記憶からすりぬけてしまいます。)「マスグレーブ家の儀式書」については具体的なシーンは言及していませんが、どこのことでしょうね。名シーンがたくさん思い浮かびます。

そして、このように二人のワトスンの演技を思い出して讃えている言葉が、亡くなる年、すでにホームズを演じ終わり、心臓の状態がとても悪いことがわかって間もない頃のジェレミーの口から出ていたことを知って、ジェレミーはどんな気持ちでどんな口調で語っただろうかと思っています。

RM
今日二つ目の記事です。しばらく前からここでご紹介したいと思っていたことがもう一つあるのです。Colin Jeavons(コリン・ジェボンズ)のとても素敵な写真をみつけました。

一月ほど前にこの記事を書きました。
Colin Jeavonsについてきかれて:1992年の雑誌インタビューより

それをきっかけに、コリンの近況がネット上にあるといいのだがと思って検索してみました。

コリンについては以前にも何回か書いています。たとえばこちらでは、2013年に"The Black Country Bugle"という週刊の新聞のウェブサイトに載ったコリンの写真をご紹介しました。
私たちの大好きな...

こちらでは2007年の(過激な)音楽ビデオに出た時のことを書いています。
Colin Jeavonsのこと(5)

今回は、まずはコリンの息子さんの一人がFacebook上のコリンのファングループに送った写真です。1枚目は2016年、お隣はお友達だそうです。2枚目も2016年、3枚目は撮影の年はわかりませんが、同じ頃でしょう。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10153952311103767
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10154239875273767
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10153948490018767

こちらはTumblrからです。このTumblrのページの持ち主が上のFacebookのグループを立ち上げたひとのようです。1枚目はコリンと奥様の笑顔。いい写真ですね!
https://inspectorhamster.tumblr.com/post/139631829187
2015年9月、50回目の結婚記念日の時だそうです。
https://inspectorhamster.tumblr.com/post/140309207732
こちらがその時からさかのぼること50年、1965年9月11日、結婚式の日の写真です。
https://inspectorhamster.tumblr.com/post/139631941492

(Tumblrのそれぞれのページで下にスクロールすると、"MORE YOU MIGHT LIKE"という写真があらわれて、他にもご夫婦でうつっている写真があります。"MORE YOU MIGHT LIKE"の内容は、誰がこのページをみても同じなのかがよくわからないのですが。)

お二人のお幸せそうな様子を拝見してうれしいです。どうぞこれからもお元気で。

RM
補遺・備忘録として、二つのことを書きます。

1. まわりの状況に敏感なジェレミー

前回の記事のコメント欄でことりさんが、ジェレミーは「自分達俳優の周りでスタッフの誰が何をしていて、カメラの向きがどうで、その中で自分達がどういう動きをして、それが映像になるとどう映っているか、そういうことをすごく意識している」と書いていらっしゃいました。それで思い出したインタビューが二つあるのですが、それはまた後日。

今日は連想で、こんなのを。プロデューサーのMichael Coxが著したA Study in Celluloid (1999)には写真が何枚か載っていますが、その一枚にはこんなキャプションがついています。

「最後の事件」のロケ地でのジェレミー。
この写真はアシスタントディレクターのLes Davisを写したものだが、50ヤード離れていてもカメラのシャッターの音がジェレミーにはちゃんときこえる。

Jeremy on location for The Final Problem.
The subject of the photo was Les Davis, first assistant director, but Jeremy could hear a camera shutter fifty yards away.


その写真は以前、ジェレミーのファンサイト(多分For Fans of Jeremy Brett)で見ましたが、今回さがしたらドイツスイスの新聞のウェブサイトにありました。2015年の記事で、上から三つ目の写真です。
http://www.jungfrauzeitung.ch/artikel/139092/

右手に登山用の杖を持ったジェレミーが、左手を大きく横に広げています。実際の本の写真でも画質は悪くて表情はみえないのですが、これ、ジェレミーは絶対にこにこ笑っていますね!

英語に自動翻訳して読んだら、グラナダシリーズの「最後の事件」のロケ地に関する詳しい情報を、ドイツのシャーロック・ホームズ協会がさがしている、という記事でした。情報はみつかったでしょうか。
(それにしてもこうして自動翻訳すると、ドイツ語と英語の近さがよくわかります。フランスのジェレミーのファンサイトも、フランス語から英語への自動翻訳で十分に理解できます。)


2. ジェレミーが出演している作品のYouTubeへのアップロード

このところネットのファングループ、SNSなどで話題になっていますが、ジェレミーが出演しているBBCの作品が、ファンによってYouTubeにアップロードされました。

これは1975年放映のLove's Labour's Lostで、Martin Shawが主演、Jeremy BrettがBerowneを演じた作品です。ここに書いた語をキーワードとしてYouTubeを検索すれば容易にみつかるはずです。

これはビデオにもDVDにもなっていません。直接アドレスを書かないのは、これは放映当時に家庭用ビデオデッキで録画されたものとは思えず、有料ダウンロードサイトに由来する映像だと考えるからです。BBCがはじめたウェブサイトから、イギリス国内の人に限ってBBCの作品をダウンロードできました。このサイトはしかし、今年11月に閉じることになってしまいました。
http://www.radiotimes.com/news/2017-05-26/bbc-store-to-close-as-corporation-admits-defeat-in-the-face-of-streaming-service-rivals

ここからダウンロードできるなかで、市販されたことのないジェレミー出演作品は、この一作でした。ビデオにもDVDにもなっていない、ジェレミーが出演しているBBCの作品はたくさんあります。それがリストに加わること、そしてイギリス限定のサービスではなくどこからでも購入できるようになるのを待っていましたが、終わることが決まってとても残念です。

直接アドレスは書きませんが、興味のあるかたはYouTubeで検索してみてください。この映像の由来が私の考えるとおりなら少々問題がありますが、すでにファンの間では知られつつありますから、この映像がネットに存在することをここでもお知らせします。この作品の内容についてはまたいつか書くかもしれません。ジェレミーは舞台でもオーディオブックでも、同じ役を演じています。

1968年のThe National Theatreでの舞台の写真("Joan Plowright and Jeremy Brett in Love's Labours Lost in 1968")はこちらでご紹介しました。
ジェレミーの80回目のお誕生日、そしてNational Theatreの50年

オーディオブックについては以前こちらに書きました。
Love's Labours Lost (1974) のオーディオブック再発売

RM
前回と同じこの1990年発行の小冊子からですが、記事のタイトルで「1989年のインタビューより」としたのは、インタビュー自体は1989年のはじめの頃に行われたものだからです。
"Partners in Crime: Jeremy Brett and Edward Hardwicke"
Pam Clarke and Yvonne Parkin
Stage Struck, Issue 1, 1990

前回、ジェレミーが映像作品で演じる方が好きな理由としてあげたのは、元来舞台役者である自分にとって新しい挑戦であること、そして具体的には映像作品の撮影は、モザイク画を作り上げるようであることと、カメラが近くにいるので目の表情など、細かい表現ができることをあげています。

これをうけてEdward Hardwicke(エドワード・ハードウィック)が

でもすべては監督の手のなか、ということも受け入れないといけないよね。映像作品は監督の作品ともいえるものだから。

[B]ut you have to accept that you are in the hands of the director. It's a director's medium.


と言います。ことりさんが前回の記事のコメント欄でも触れてくださっていますが、このインタビューでは場面場面で、互いが互いの発言を引き出すように言葉をはさむのを読むことができます。エドワードもジェレミーと同じように今は映像作品のほうが好きだと言っているのですから、ジェレミーに反論するというのではないのですが、ここで「でも」と言います。これを受けて、ジェレミーはその前の発言の中でくわしく話さなかった、「モザイク画を作り上げる」の中身につながることを、具体例をあげて話してくれるのです。ジェレミーの答えです。原文は段落を分けていないのですが、訳文では読みやすいように三つに分けています。

でも監督と信頼関係を築くことができれば、一緒に作品を作るのって、わくわくするよね。たとえばこんなのを思い出したんだけど --- これはデイビッドがワトスンだった時のだけど --- 時間にすると一瞬の、「青い紅玉」のシーンなんだ。ほんの一瞬のために8人くらいが協調して動くと、どんな素晴らしいことがおこるかという例だよ。

こんなふうに石を指で持っている(ジェレミーは親指と人差し指で持つ真似をする)。カメラはこのあたりに近づいていて、二人がカメラを持って動かしている --- カメラを動かしているのはPaulとMikeだ --- 石にフォーカスが合いはじめる。フォーカスを合わせているのはSteve Oxleyだ。石を持つ手がぐるっと動く。ワトスンが話す。それからホームズが映る。ワトスンからホームズへ。ホームズが手にする石はまたぐるっと動きホームズのセリフが続いて、そこで終わる。そのあいだずっと録音担当が後ろで録音している。部屋の角では照明担当が長い棒で何か操作していて、照明効果は完璧だ。それからピンポイントの照明を担当するのはRay Goodeかもしれない、彼が石を照らしている。シーンの最後でまた石にフォーカスが合う。終わるとみんなこんなだ(興奮した様子をしてみせる)。

翌日ラッシュ(訳注:編集用フィルム)をみにいく。うまくいったかな?成功かな?まるで魔法のように、この青い石、この「青い紅玉」がどんな石かがこの時にわかる。みな歓声をあげる。映像の魔法を作り上げたんだ!ガラスのかけらを青く塗ったもので、青い最高の宝物を作ったんだ。まったくわくわくするよね。これが、映像ならではの魔術だ。

You make your rapport with your director, and working together can be thrilling. There's one example I've got—actually it's one I did with David—but it's just a moment in time, and it was in The Blue Carbuncle. And it was just a moment, just an example of how it's wonderful when you get about eight people working in harmony. The stone is being held like that. (held out between thumb and forefinger) The camera is here on a track and you've got two people pushing there—that's Paul and Mike pushing there—and it starts on the stone, in focus. Here's Steve Oxley on focus, keeping the stone in focus, and it turns round and Watson speaks, Holmes drops in, on to Watson, on to Holmes. The track goes round, the speech continues, you get to the end. You've got the sound man behind. You've got the man in the corner doing a thing with a boom and the lighting's perfect, and there's a pinpoint of light going round, being held by, possibly, Ray Goode, on the stone. End of scene. Back on focus on the stone. We all go (looks agog) ... Next day we go to the rushes. Did it work, did it work? It's like magic, and suddenly you understand what this blue stone, this Blue Carbuncle, [sic] and then you all just whoop with joy, because you've created magic on film! You've managed to make a piece of glass, painted blue, into a blue, zonking great crystal! And that's absolutely breathtaking. That's what the magic of film can do.


ジェレミーが何のことを話しているか、おわかりになりますよね!青い紅玉を手にピータースンが221Bに駆け込んでくる、あのシーンです。ホームズがあの石を手にしてから、石にフォーカスがあたってこのシーンが終わるまで、見直したら20秒、ジェレミーが話すとおりのカメラの動き、ホームズとワトスンの動きでした。(ホームズが石を「親指と人差し指で持つ」というところだけが厳密には違うのですが、これはインタビューをまとめた人が「親指と人差し指で持つ真似をする」と表現したためで、ジェレミーがそう言ったわけではありません。)

こうやってたくさんの人が一緒に働いて、カメラが動き、ホームズの手が動き、カメラのフォーカスが合う対象が替わり、ホームズとワトスンがセリフを発し、カメラのフレームが切り替わり、照明がピンポイントであたり、そうやって撮影されたフィルムの、いわば切れ端が、さらにつなぎ合わされて一つの作品ができる。これをジェレミーはモザイク画にたとえたのだと思います。

カメラ担当と照明担当の人、ジェレミーは名前もあげています。こういうのもジェレミーらしいですね。ちょうど前々回の記事で、ジェレミーがインタビューでプロデューサー、それぞれの作品の監督や脚本家の名前をよくあげる、撮影班の人たちの名前も、と書いたところでした。彼らは単なる「スタッフの一人」ではなく仲間だったのですね。ジェレミーと撮影クルーとの関係については、何度かご紹介しました。たとえばこちらです。
話をきくこと

この記事で引用した部分、再度引用します。プロデューサーのMichael Cox著、A Study in Celluloidからです。

しかし撮影班はジェレミーのためなら、何でもしただろう。理由は二つある。ジェレミーは仕事を何よりも大切にして全力をつくしていたから。そして彼は全員と、仕事をこえた関係を築いていたから。撮影の初日に全員の名前を覚えただけではなく、誰の車が車上荒らしにあったか、誰の赤ちゃんが具合が悪いかも知っていた。ひとの気をひくためにお座なりにたずねたのでなく、本当に心から知りたいと思っていたのだ。

But a film crew would do anything for Jeremy and there were two reasons for this. First, because he was absolutely professional in his work and second, because he knew them all personally. Not only had he memorised everyone's name by the end of the first day's shooting but he also knew whose car had been broken into or whose baby was ill. And this was not a trick to curry favour; he genuinely wanted to know.


撮影現場でのジェレミーをよく知る人が書いた、私がとても好きなジェレミーの描写です。


さて、舞台と映像作品とどちらが好きかという問いに答えた部分を、2回にわけてご紹介しました。ジェレミーたちがどんなふうに撮影していたかが想像できて、今回の箇所も興味深いものでした。ここでジェレミーが名前をあげた撮影クルーは、エドワードもよく知っている、その頃も撮影に参加していた人たちかもしれませんね。エドワードもその名前に微笑みながら、うなずきながら聞いていたかもしれません。

なお、エドワードの発言に答える形でジェレミーが話しているこの部分、ジェレミーはエドワードにだけではなく、インタビューアの方も向いて話しているのだと思いますが、訳すときはエドワードに話している感じの口調で訳しました。

RM
ことりさんと「Colin Jeavonsについてきかれて:1992年の雑誌インタビューより」のコメント欄でお話したインタビューがみつかったので、忘れないうちに引用してみます。

ことりさんが「台詞以外のちょっとした目線の移動や仕草、一瞬の表情などが重要なことを表しているように感じることが多々あります」とおっしゃったのに対して、「 そういえばジェレミーが映画やテレビと、舞台の違いをきかれて、そういうことを言っていたインタビューがありました。目の動きのことを言っていたのだったかしら。あとは、カメラワークやカット割りのことも言っていました」とお返事しました。

私が思い出していたインタビューはこちらに載っていたものでした。
"Partners in Crime: Jeremy Brett and Edward Hardwicke"
Pam Clarke and Yvonne Parkin
Stage Struck, Issue 1, 1990

これは全部で22ページの小冊子です。
https://www.amazon.co.uk/dp/B0000EEUON

第1号となっていますが、第2号以下も出版されたのかはよくわかりません。第2号はDerek Jacobiのインタビューだという予告が書いてあるのですが。

以前こちらでもこのインタビューから引用しました。
短所・長所;1989年のインタビューより

小冊子の発行年は1990年、"The Secret of Sherlock Holmes"の公演が行われていた時の、ジェレミーとEdward Hardwicke(エドワード・ハードウィック)へのインタビューを記したものです。インタビュー自体が行われたのは1989年のはじめの頃とのことですので、このブログの記事の題では前回も今回も「1989年のインタビューより」としています。

PCはインタビューア、JBはジェレミー、EHはエドワードです。

PC: お二人とも舞台で活躍してきた俳優ですね。舞台のほうが好きですか?
JB: いや、映像作品で演じる方が好きです。
EH: 私もです。今は映像の方が好きです。でもこんなふうに言う時がくるなんて、思ってもいませんでした。
JB: 映画やテレビの方が好きです。大好きなんです。つまり、舞台で長いあいだ演じてきたのに対して、映像作品は新しい挑戦ですから。そしてすごく魅力的です。新しいメディアで、幻灯機みたいです。舞台ももちろんとても面白いのですけど、私はこれまで相当長くそこで演じてきました。映像作品で演じるのにはまだ慣れていなくて、今は何よりも楽しんでいます。心底大好きです。大きなモザイク画をつくりあげるように感じられますし、映像作品ではカメラは人にぐっと近づけますから、俳優は細かい表現をいろいろとできます。そして一言も発せず目の表情だけで、相手にどういう感情をいだいているかを示せて、これは本当にわくわくすることです。

PC: You both seem very much theatre actors. Are you happier in the theatre?
JB: No, I prefer film.
EH: No. I can honestly say now that I prefer film. I didn't think I would ever say that.
JB: I prefer film. I love it. Film is my passion. I mean I've been an actor on the stage for yonks, and film is new. And I find it fascinating, and because of its newness, and the magic lantern. Theatre, of course, is exciting too, but I've done that a bit longer. Film is new to me and I, now, enjoy it more than anything. Absolutely love it. I think that it's just the fact that it's like building an enormous mosaic, and when you're in film, because the medium is so close, you can do so many subtleties and we can build up a relationship with looks, without any words at all, and it can be terribly exciting.


このインタビューが、"The Secret of Sherlock Holmes"の公演時のものだということを考えると、二人ともが映像の方が好きだと言っているのは面白いですね。久しぶりに舞台にもどって、表現の面で戸惑いもあったからということでしょうか。でも舞台の楽しさ、特にこの"The Secret of Sherlock Holmes"でホームズを演じる充実感を語るインタビューももちろんたくさんありますし、基本は舞台も映像作品も同じだと言っているものもありました。

ジェレミーは映像作品で演じる方が好きな理由として、自分にとって新しいということ以外にまず、モザイク画を作り上げるようだと言っています。これは小さい断片を貼り合わせて特定のイメージを描くように、小さなカットを積み重ねてシーンを作っていくことを言っているのでしょう。今日の引用部分のすぐ後でカメラワークやカット割りのことをとても具体的に話しています。シーンを実際に見直さないと間違って訳してしまうかもしれないので、次回、あるいはそれ以降にまわします。

もう一つ映像作品の特徴として、細かい表現ができることをあげています。その具体的な説明として"we can build up a relationship with looks, without any words at all"(一言も発せず目の表情だけで、相手にどういう感情をいだいているかを示せる)と言っていて、私がことりさんとの会話の中でぼんやりと思い出していたのはここでした。あらためてこの文脈に該当しそうな"look"という名詞の意味を調べると、たとえばランダムハウス英和大辞典では、「外観,様子,表情」と「(ある表情を持った)目つき」とあります。私は後者に近く訳しましたが、前者でもいいですね。ジェレミーは本当に細かい動き全てでホームズを表現しますから。でも私はやはり、ここは目による表現のことを主に言っていると解釈したいです。"build up a relationship"も意訳してみましたが、意味をかえていないことを願っています。





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嘘をつく、誠実に対応しない、ひとを脅す、言葉が歪められる。政治の中枢でそれが行われるとき、人権の著しい制限と戦争が明日すぐにやってくるわけではないとしても、この社会が崩れていく音が、小さくても確実にきこえるようです。

そんな時にどう生きていこうか。まず、いま目の前にいるひとにまっすぐ向き合うこと。二度と会わないかもしれない、今日街で会ったひととでも。

私が好きなひとたちは皆、そうしてきました。

そしてやはり選挙は大切です。選挙まで忘れないこと。

RM
最初は前回の記事と同じ、1992年の雑誌インタビューからです。

Baker Street Regular: Jeremy Brett and Edward Hardwicke
Interviews by Jim Knüsch
Scarlet Street, No.5, 1992

この雑誌記事にはジェレミーへのインタビューとエドワードへのインタビューと、両方が含まれているのですが、これはジェレミーが二人のワトスンについて話している部分です。SSはインタビューアです。

SS: 二人のワトスン、David Burke(デイビッド・バーク)とEdward Hardwicke(エドワード・ハードウィック)を比べてどう思いますか。
JB: 二人のワトスンは、互いに見事に調和したかたちになりました。驚いたことに日本からのファンレターのなかで、そして最近ではロシアからも、「最後の事件」と「空き家の怪事件」の間にワトスンが年齢を重ねたさまがあらわれているのがとても素晴らしいです、と書かれていました。ですから、二人がこころを配って演じてくれたおかげで、そしてデイビッドの後のワトスン役にエドワードはどうかと言ってくれたデイビッド・バークの夫人のおかげで、私は大きな幸運に恵まれてホームズを演じてきました。それから忘れてはならないのは、このプロジェクトのすべてはMichael Cox(マイケル・コックス)がつくりあげたということです。ワトスンがどういう人間かをきちんと後世にまで示したのです。デイビッド・バークとエドワード・ハードウィックという優れた二人の俳優によって、それが可能になりました。
SS: ワトスンが変わったことで、あなたのホームズの演技は変わりましたか?
JB: はい、とても。

SS: How would you compare David Burke and Edward Hardwicke as your two Watsons?
JB: Well, they've very beautifully dovetailed each other. Quite remarkably, some people in Japan and now Russia have written saying how brilliant it was, the aging of Watson between THE FINAL PROBLEM and THE EMPTY HOUSE. So, fortunately, thanks to the enormous tact of both of them—and David Burke's wife, who suggested Edward to take over—I've been very, very fortunate. You must remember the whole project was created by Michael Cox at Granada, to put posterity straight in regard to Watson. Thanks to those two marvelous actors, David Burke and Edward Hardwicke, It's been done.
SS: Did your playing of Sherlock Holmes alter with the change in Watsons?
JB: Oh yes, very much.


二人のワトスンが「見事に調和した」と訳してみましたが、ジェレミーは"beautifully dovetailed"と言っています。"dovetail joint"をWikipediaでみると、なるほど、こういう木の継ぎ方のことなのですね。
https://en.wikipedia.org/wiki/Dovetail_joint

そのあと、「日本」とあるのがうれしいですね!この方、自分の手紙のことをジェレミーがわざわざインタビューで触れてたことをご存知だといいですね。そして当時日本からお手紙を書いていろいろな感想を伝えた方が、この方以外にもたくさんいらしたのでしょう。

デイビッドとエドワード、それぞれのワトスン、私はまったく違和感ありませんでした。不思議です、俳優がかわると、少しすれば慣れるとしても、はじめは以前の印象が残っていて少し居心地悪い気持ちになるのが私は普通なのですが。そして多分多くの方が私と同じように、「最後の事件」と「空き家の怪事件」の間のワトスンの違いを、3年間という時間とその間の生活、そして感情の跡をあらわすものとして、自然にみたのでしょう。

ジェレミーはそれから、マイケル・コックスの功績に触れています。こうしてきちんとプロデューサーの名前を挙げるところ、ジェレミーはいつもそうです。どうしても俳優の名前の方が一般にはよく知られているので、映像作品が話題になっても、俳優以外の名前には触れられないことも多いでしょうが、ジェレミーの口からはメイキャップ係、デザイン担当者、照明や音響担当者などの名前が出てくるのを何度かききました。そしてプロデューサー、それぞれの作品の監督や脚本家の名前はしょっちゅうです。

最後のところ、「演技が変わった」というその内容をききたい気がしますが、このインタビューでは次の話題にうつっています。もしかしたらインタビューアは尋ねたけれども、それは言葉で説明するのは難しいことだったのかもしれません。ジェレミーが別のインタビューで、ホームズが変わったとアメリカPBSのプロデューサーに言われたけれども、自分ではどう変わったかはっきりとは言えない、と話していたことも思い出します。結果として変わったということかもしれません。(あ、でも別のインタビューではどう変わったか話していたのを思い出しました。みつけたらまた書きましょう。)


さて最後に、関連する部分をマイケル・コックスの言葉からご紹介しましょう。彼の著書の A Study in Celluloid (1999) からです。

デイビッドの演技を引き継ぐのは難しいことがエドワードにはわかっていたので、賢明にもエドワードはデイビッドのワトスンを真似ようとはしなかった。そのかわりに自分自身のワトスンをつくりあげた。少し年をとり、さらに思慮深くなり、ライヘンバッハでの悲劇と、それに続く灰色の3年間を悲しみの中にすごしたワトスン。デイビッド・バークのワトスンが3年後にこうなったことを、十分に信じることができるようなワトスンだった。

He knew that David was a difficult act to follow, and very sensibly Edward made no attempt to imitate him. Instead he gave us his own Watson: an older, more serious man, saddened by the tragedy at the Reichenbach Falls and the three drab years which followed. It was entirely believable that this was the character which David Burke's Watson might have become.


そうですそうです、と深くうなずきます。

RM
前回に続いて、Edward Hardwicke(エドワード・ハードウィック)のインタビューから引用します。その後でジェレミーの言葉にも少し触れます。出典はどちらも、この1992年の雑誌記事です。

Baker Street Regular: Jeremy Brett and Edward Hardwicke
Interviews by Jim Knüsch
Scarlet Street, No.5, 1992

前回「いつもながらエドワードの冷静さを感じます」と書きました。このインタビューの言葉にはエドワードの理知的なところを感じさせる部分が多くありますので、もう一つ選びました。前回と同じくSSがインタビューア、EHがエドワードです。

SS: このシリーズでこころあたたまることの一つは、ワトスンがレストレードとつよい信頼関係にあるところです。特に「空き家の怪事件」と「六つのナポレオン」でそれがみてとれますね。二人のこの関係はColin Jeavons(コリン・ジェボンズ)と一緒に考え出したのですか、それとも台本にそうあったのですか。
EH: そうとらえてくださって、とてもありがたいです。そんなこと思いもしませんでした。もしも視聴者にそう見えるなら、もともと台本にあった人間関係を私たちがみつけて、それが演技にあらわれたということです。多分そういうことだと思います。「空き家の怪事件」では二人が一緒の場面がかなりありました。結局のところ、一緒に出るシーンがあるかどうかで決まります。そうするとシーンの中で二人の人間関係が出来上がっていくのです。

SS: One of the nice things about the series is the rapport that Watson has with Inspector Lestrade, particularly in THE EMPTY HOUSE and THE SIX NAPOLEONS. Did you work this out with Colin Jeavons or was it part of the script?
EH: Well it's very nice that you should have picked that up. It never occurred to me. I think that, if it's there, it was in the script, and we must have just found that and that's what happened. I think that probably is the case; certainly, in THE EMPTY HOUSE, I remember we had quite a few scenes. In the end it's a question of whether you have scenes together; a relationship will develop of some sort.


レストレードとワトスンの間にお互いへの信頼と好意をみてとれるのであれば、まずそれは、そういうシーン、そういうセリフがあるからで、それを元に俳優は画面上でその人間関係をみせるように努め、さらに深めていくのだ、という答えです。脚本をまず大切にする、脚本にあるセリフを尊重した上で、俳優としてそれを形にするという姿勢が感じられます。

とても冷静で理知的な答えで、俳優の仕事をインタビューアに説明しようという気持ちと、脚本家への尊敬がありますね。


こちらは同じ時のインタビュー、「犯人は二人」の話をする中でコリンのことなどをきかれた時のジェレミーの答えです。もちろん質問が違いますから答えが違うのは当然ですが、ジェレミーはあの情熱的な口調もまじえて答えたのではないかと思えて、エドワードとの対比が面白いです。どうにも訳すのが難しいところ、無理して直訳してカッコ内にもとの英語を入れています。

SS: 他の共演者については、何かありますか?ロザリー・ウィリアムズや、作品によってはコリン・ジェボンズが一緒ですね。
JB: 私のレストレード (my Lestrade)、つまり大切なコリン(my darling Colin)は「犯人は二人」に出てくれますし、最愛のロザリー(my darling Rosalie)も一緒です。つまり、言いたいのは私たちはこの長年の間に家族になったということです。ロザリーやコリンが撮影に参加してくれると、いつも大喜びです。

SS: Any remarks about your other co-stars? Rosalie Williams and, on occasion, Colin Jeavons?
JB: Well, my Lestrade, my darling Colin who's with me in this, and my darling Rosalie who's with me in THE MASTER BLACKMAILER—I mean we've become a family over the years. Every time Rosalie or Colin are in it I rejoice.


このジェレミーの情熱的な答えとエドワードの理知的な答えと、ずいぶん違っていて、でもどちらもあたたかいですね!

RM
前々回の記事「過去の映像作品の中で、ジェレミーが一番好きなワトスン」でご紹介したジェレミーのインタビューと同じ時におこなわれた、Edward Hardwicke(エドワード・ハードウィック)へのインタビューから引用しましょう。

Baker Street Regular: Jeremy Brett and Edward Hardwicke
Interviews by Jim Knüsch
Scarlet Street, No.5, 1992

SSはインタビューア、EHはエドワードです。

SS: あなたのワトスンは、それ以前にいろいろな俳優が演じたワトスンとは違うと感じていますか。
EH: そうですね、当然、私のは今までのワトスンと違っています。違う俳優が演じているのですから。映像作品ではそれぞれの俳優が自分に近い形で役を演じるものだと思います。私がワトスンと似ていると言っているんじゃないんですよ。医者になって自分のいのちを救うなんて、私にはできませんから。(笑い)
SS: ワトスンを医学の専門家としてみるひとは、そうはいないと思いますが。
EH: 私がそうみていますよ。医者であることは私にとって、ワトスンが持つとても重要な部分なのです。探偵であることは医者であることと、とても似ています。患者が痛みを訴えて「どこが悪いのでしょう」と尋ねたとき、医者は説明しなければなりません。とても探偵と似ていると思います。そしてホームズの捜査のなかに医者と共通の分析的な手法があることが、ワトスンの興味をひいたのだと思います。

SS: Do you see your Watson as being different from those of your predecessors?
EH: Well, inevitably it's different, because you're dealing with different actors. I think when you're dealing in film, you have to play very close to yourself. I don't mean to say that I'm remotely like Watson; I couldn't be a doctor to save my life. (laughs) That's a funny way of putting it.
SS: Not many people think of Dr. Watson as a professional man.
EH: Well, I do; that's a very important part of him. Being a detective is very much like being a doctor. Somebody comes to you in pain and says, "What's wrong with me?" and you have to tell them. I think there's a huge similarity, and this analytical side of Holmes' detection appeals to Watson.


最初のところ、「当然違っている」という答えの部分は、いつもながらエドワードの冷静さを感じます。エドワードは冷静だけど決して冷たくない、皆が言うように、あたたかくてユーモアがあって思いやりのある紳士です。

そしてエドワードは自分の役のことをこんなふうに考えているのですね。これを読んだとき、エドワードのワトスンの持つある一面がわかったような気がしました。冷静に一歩ひいて、観察し分析し、わかりやすく伝え、助けの手を差し伸べる。

David Burke(デイビッド・バーク)のワトスンとエドワードのワトスンを比べるとき、デイビッドの中に元軍人の面をより感じ、エドワードの中に医者の面をより感じるひともいるかもしれません。私もその一人です。もちろん二人とも、両方の面を持っているのですが。

エドワードが、ワトスンの特徴として特に医者であることを大切に思っている、ということをこのインタビューで知って、面白く感じました。

RM

 RM

Author: RM
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和訳には間違いがあるかもしれません。最近は必ず英語原文を併記・またはアドレスを書いて読めるようにしていますので、どうぞそちらも参考になさってください。

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