Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

前回に引き続き、もう一回だけこの音源について書きたくなりました。

二ヶ所引用して、その部分の英語と日本語を書いてみましょう。一つ目はジェレミー演じるOrlandoが、Rosalindへの恋の詩を森の木に貼り付けながら語る独白、二つ目はちょうど前々回ご紹介した写真のシーンにちがいないと私が思う箇所です。引用元の音源は、前回ご紹介した、こちらです。
https://www.youtube.com/watch?v=RI-SydR5YA0
https://www.youtube.com/watch?v=IEpxtPdiUmk

まず一つ目。43秒の音声で、途中でジェレミーの声が大きくなりますので、イヤホンの方は注意なさってくださいね。








環境によっては上に設置したプレイヤーが見えないかもしれません。その場合はこちらをどうぞ。別ウィンドウで開くはずです。(でも携帯電話でどうなるかは私にはわかりません。ごめんなさい。)
As You Like It clip 1 (ACT 3 SCENE 2)

情熱的ですね!"Run, run, Orlando" 「走れ、走れ、オーランド」なんて自分に言っています。でも、ところどころわかるけれども、あまりわかりません。

そこで英語で読んでみます。第三幕 第二場からで、テキストは下のアドレスのページからいただきました。元のサイトでは、下線部がひいてある単語をポインタで触れると、単語の意味も教えてくれます。
http://internetshakespeare.uvic.ca/doc/AYL_M/complete/

下では音源でのセリフがシェークスピアの元のテキストと少し変わっているところがあっても、そのままにしています。

ACT 3
SCENE 2. The forest.

ORLANDO
Hang there, my verse, in witness of my love;
And thou, thrice-crowned Queen of Night, survey
With thy chaste eye, from thy pale sphere above,
Thy huntress' name that my full life doth sway.
O Rosalind! These trees shall be my books,
And in their barks my thoughts I'll character,
That every eye which in this forest looks
Shall see thy virtue witnessed everywhere.
Run, run, Orlando, carve on every tree
The fair, the chaste and unexpressive she.


でも日本語訳が欲しくなります。そこでここは著作権が消滅している坪内逍遥訳「お氣に召すまゝ」でいきましょう。これがまた時代がかっていて面白いのです。旧仮名遣いです。こちらのサイトからいただきました。
http://books.salterrae.net/osawa/html/asyoulikeit.html

オーラ
おれの作った歌よ、そこに掛かってゐて、おれの切なる戀の證據人になってくれ。(と天を仰いで) それから、夜の女王と崇めるお月さん、あなたは、其清淨な目で以て、其天上の蒼い圓座から、 わたしの一生を支配しさうなあの女獵師の名を讀みおろしてゐて下さい。……おゝ、ロザリンド! ……此邊の木どもをば、おれの手帖代りにして、其幹へおれの思ふことを刻み附けておかう。 此森の中にゐる限りの者の目が、至る處で、お前の淑徳が讚美してあり證明してあるのを見るやうにするために。 さ、走れ~、オーランドー。一本々々の木毎に、あの美しい、淨らかな、迚(とて)も言葉に言ひあらはせないあの人の名を刻みつけろ。


うわあ、面白いけど読みにくい旧漢字もあります。戀(恋)、證據人(証拠人)、圓座(円座)、獵師(猟師)、此邊の(此の辺の)、ですね。

なんだか、日本のシェークスピア受容史に触れているような気がします。


さて、二つ目は前々回ご紹介した写真のシーン、つまりRonald Pickup演じるRosalindと、ジェレミー演じるOrlandoが手をとりあっていて、Charles Kay演じるCeliaがその間にいる、というシーンの音声だと私が思う箇所です。

Orlandoは男装しているRosalindに促されて、本人を前にしているとは知らぬまま、恋するRosalindへの告白の練習をおこないます。二人は結婚式の真似事をすることになり、Rosalindは従姉妹のCeliaを呼びます。

三人ともとても真面目な顔をしているのは、これが結婚式の誓いの場面だからでしょう。

この場面の音声はこちらです。こちらも途中で声が大きくなりますからご注意ください。1分37秒です。








あるいはこちらでどうぞ。
As You Like It clip 2 (ACT 4 SCENE 1)

ACT 4
SCENE 1. The forest.

ORLANDO
I would not have my right Rosalind of this mind, for, I protest, her frown might kill me.
ROSALIND
By this hand, it will not kill a fly. But come, now I will be your Rosalind in a more coming-on disposition; and ask me what you will, I will grant it.
ORLANDO
Then love me, Rosalind.
ROSALIND
Yes, faith, will I, Fridays and Saturdays and all.
ORLANDO
And wilt thou have me?
ROSALIND
Ay, and twenty such.
ORLANDO
What sayest thou?
ROSALIND
Are you not good?
ORLANDO
I hope so.
ROSALIND
Why then, can one desire too much of a good thing? -- Come, sister, you shall be the priest and marry us. -- Give me your hand, Orlando. -- What do you say, sister?
ORLANDO
Pray thee, marry us.
CELIA
I cannot say the words.
ROSALIND
You must begin, 'Will you, Orlando --'
CELIA
Go to. -- Will you, Orlando, have to wife this Rosalind?
ORLANDO
I will.
ROSALIND
Ay, but when?
ORLANDO
Why, now; as fast as she can marry us.
ROSALIND
Then you must say, 'I take thee, Rosalind, for wife.'
ORLANDO
I take thee, Rosalind, for wife.


そして「お氣に召すまゝ」坪内逍遥訳、第四幕 第一場の途中からです。
http://books.salterrae.net/osawa/html/asyoulikeit.html

オーラ
眞(ほんと)のロザリンドさんには、そんな料簡でゐて貰ひたくない、なぜなら、 あの人が憎さうに睨んだりなんかすりゃ、わたしは殺されッちまふから。
ロザ
何の、睨んだぐらゐで蠅一疋だって死ぬものか!だが、これから氣を變へて、 どうやら靡(なび)きさうなロザリンドさんになるからね、 何なりと要求して御覽、諾(うん)といふから。
オーラ
ぢゃ、ロザリンドさん、わたしを愛して下さい。
ロザ
はい~、年が年中でも。
オーラ
で、良人(をつと)にして下さるか?
ロザ
はい、二十人分でも。
オーラ
え、何ですって?
ロザ
あなたは善良でせう?
オーラ
その積りです。
ロザ
ぢゃ、善良な代物は餘計に仕入れて損はしないでせう?さ、妹、お前さん牧師の役をして、 わたしたちを結婚さしとくれ。オーランドーさん、手を。……え、妹、どう?
オーラ
(シーリヤに)式を行って下さい。
シーリ
わたし文句を知らないわ。
ロザ
まづ、初めに、「オーランドーよ、卿(おんみ)は……」
シーリ
分ってよ。……オーランドーよ、卿(おんみ)はこれなるロザリンドを妻とせん心なりや?
オーラ
はい、さやうです。
ロザ
だが、いつ?
オーラ
今です。式が濟み次第に。
ロザ
ぢゃ、あんあてゃ斯ういふのよ、「ロザリンドよ、われは卿(おんみ)を妻としてめとったり」と。
オーラ
ロザリンドよ、われは卿(おんみ)を妻としてめとったりッ。


シーリアの「わたし文句を知らないわ」で観客は大笑いしています。ここのシーリアの調子に、親しいロザリンドがオーランドに夢中なのを、ちょっとからかう気持ちを感じます。

そしてオーランドの「われは卿(おんみ)を妻としてめとったりッ。」なんて、面白いですね。ジェレミーはここを長い沈黙の後で、静かな、こころのこもった声で言っています。あんまり長いので、上の音声クリップでは沈黙を少し削りましたが、観客は長い沈黙の間、ジェレミーをみつめていたでしょうね。前々回の写真は、私はこの沈黙の時ではないかと想像しています。目を伏せているジェレミーを、ロザリンドとシーリアの二人がみつめています。その後観客席から少し笑いがおこります。ジェレミーのオーランドがあまりに逡巡しているためでしょうか。

シーリア役は、この公演でもたしかにCharles Kayが演じているように思います。彼の声は聞き分けられます(少なくともそのつもりです。)Ronald Pickupの声は確信までは持てないのですが、おそらく彼だと思います。

今回これを書くために、同じところを何回も聴き直して、ジェレミーだけではなくRonald PickupもCharles Kayも見事な演技、見事な台詞回しだと思いました。観客もとても喜んでいますね。これからもっと調べてもっと聴いて、もっと楽しみたいと思います。

RM
前回、"As You Like It" の写真を1枚ご紹介したので、そこからの続きでもう少し書きましょう。

舞台"As You Like It" の音声がThe British Libraryにあることを、以前カタログを検索した時に知りました。1967年、The National Theatreの本拠地だったThe Old Vic Theatreでの録音です。
http://explore.bl.uk/primo_library/libweb/action/search.do?dscnt=0&frbg=&scp.scps=scope%3A%28BLCONTENT%29&tab=local_tab&dstmp=1493445524884&srt=rank&ct=search&mode=Basic&vl(488279563UI0)=any&dum=true&tb=t&indx=1&vl(freeText0)=%22As%20You%20Like%20It%22%20%22national%20theatre%22%20jeremy%20brett&vid=BLVU1&fn=search

これはおそらく資料として録音されたもので、市販されることは望めないだろう、The British Libraryに行かない限り、聴く機会はないだろうと思っていました。

ところがYouTubeでこんな音源をみつけてびっくりしました。
https://www.youtube.com/watch?v=RI-SydR5YA0
https://www.youtube.com/watch?v=IEpxtPdiUmk

アップロードした人は説明欄に、1968年10月1日、ロンドンのThe National Theatreが行った"As you like it" の公演の音声、と書いています。デンマーク、コペンハーゲンのFalkoner Centret(コンサートホールの名前)でのライブ録音を、オリジナルのテープから移したものだと記した後で、この人も詳細はよくわかっていないようで、"Please add any additional information in the comments field."(情報を持っている人はコメント欄に書いてください)と記しています。

The National Theatreの"As you like it"は以下の俳優が演じているとして、説明欄に1967年のイギリスでの公演時のキャストをWikipediaを参考に書き並べています。ここにジェレミーの名前があったために、検索でひっかかりました。

この音源の説明を読んで、とても驚いた理由が二つあります。あの演目が好評だったのは知っていたけれども海外公演までおこなったとは知らなかったこと、そしてその音声が残っていて、どうもそれが客席から個人がこっそり録音したのはなく、劇場側が録音したようにとれること。(このYouTubeチャンネルに、この劇場でのいろいろな公演の音声があがっています。)

ただ、このチャンネルの持ち主もこの公演の詳細を知らないようなので、実際には1967年のイギリスでの公演のキャストが皆そのまま、1968年10月にデンマークへ行ったのではなかったかもしれないし、そもそもこれがThe National Theatreの"As you like it" の公演だということ自体が勘違いかもしれないと思いました。Jeremy Brett Informationのページにも、これが海外に行ったという記述はありません。(公演は1967年10月3日から1969年2月17日と書かれています。)
http://web.archive.org/web/20160609143555/http://www.jeremybrett.info:80/st_asyoulikeit.html

どきどきしながら、でも疑いながら音声を再生したとたん、ジェレミーの声が聞こえました。間違いありません!幕があいての第一声がジェレミー演じるOrlando、録音では38秒からです。
https://youtu.be/RI-SydR5YA0?t=38s

いつもながら、音楽的な声と調子だと思います。今までも、たとえばジェレミーで聴き慣れているセリフを別の人が演じていると、ジェレミーの声が持つ表情の豊かさにあらためて気がつきます。

この公演の音声を聴くことができるとは思ってもいませんでした。ただ悲しいことには、シェークスピアの英語は私にはまだ歯がたちません。オーディオブックが大好きな私は、ジェレミーのオーディオブックをこのブログでいくつかご紹介しましたが、耳から聴いてある程度筋が追えるのは、いずれもシェークスピア以外の作品でした。ただしシェークスピアでも"Troilus and Cressida"は、あらかじめ筋を知って、ジェレミーのセリフを文字で読んだ後だったので、耳だけでも楽しめました。この"As You Like It"もいずれそうやって聴きたいと思っています。

なお、この録音の著作権等がどうなっているのかわかりません。このブログでは現在市販されている作品、中古品を比較的容易に手にいれられる作品がアップロードされていても、アドレスを書かないという方針にしています。それ以外はその時々で判断していますが、この録音は市販されていないこと、歴史的音源であることから、アドレスを記載しました。

ジェレミーの声が好きな方、舞台芸術が好きな方、耳から聴いて情景を想像するオーディオブックが好きな方、シェークスピアが好きな方、そして私のように、まだ無理だけどいつかこの作品をきちんと聴いて楽しみたいと思っている方を想像しながら、そのような方に向けてご紹介しました。そういう同士がいらっしゃると嬉しいのですけれども、どうでしょうか。

RM
前々回の記事に書いた本が届きましたので、この本について少しご紹介してみます。あらためて本のタイトル等と、出版社のページおよびアマゾンのページのアドレスを書きます。

Granada's Greatest Detective: A Guide to the Classic Sherlock Holmes Television Series
By Keith Frankel
Fantom Films Limited, 2016
http://www.fantomfilms.co.uk/books/keithfrankel_granadasgreatestdetective.htm
https://www.amazon.co.jp/dp/1781962677

私が見落としていなければ、著者の略歴などが書かれた欄はこの本にはありません。その中でヒントになると思われるのは、献辞のページに書かれた言葉です。

To all those at Holmesian Net
(especially those of Just Jeremy)
and to Mum and Dad


Holmesian Netの皆に
(特にJust Jeremyのスレッドのメンバーに)
そしてママとパパにこの本を捧げます。


Holmesian Netはシャーロッキアンが集まるウェブ上のフォーラムでした。Wayback Machineで調べると、最初にアーカイブされたのは2006年4月ですから、これより少し前に始まったのでしょう。
http://web.archive.org/web/20060408183631/http://www.holmesian.net:80/forums/

特定のホームズ関連団体の人ではなく、一般の人が書き込める、ホームズ関連のフォーラムの草分けでした。こういう場所がみつからなかったのでここを作った、と創始者が書いていたように記憶しています。上から3つ目にThe Granada Districtという、もっぱらグラナダシリーズについて語るセクションへの入り口がみえます。

こちらは、このサイトがハッキングされてなくなってしまう前、最後にアーカイブされたトップページで、2012年7月です。私が知っているのはこの外観の時です。
http://web.archive.org/web/20120717080222/http://www.holmesian.net:80/forums/

このThe Granada Districtのセクションの中に、誰でも自由にスレッドを始めることができました。そのようにしてできたスレッドのトピック名が並ぶ最初のページです。2012年9月にはこれが13ページもあったのです。
http://web.archive.org/web/20120905024146/http://www.holmesian.net:80/forums/index.php?showforum=10

これは登録しなくても閲覧できるページですが、登録者になるとここに"Just Jeremy"というスレッドへの入り口があらわれました。私はこのサイトがなくなる少し前までの短い期間、調べればわかるのですが1年半くらいだったでしょうか、この"Just Jeremy"のメンバーでした。お粗末な英語で書き込んだ私を皆があたたかく迎えてくれました。

"Just Jeremy"は、ジェレミーに関することを、ひたすら書き込むというスレッドでした。The Granada Districtには、ジェレミーに関するスレッドは他にもたくさん作られています。その中で"Just Jeremy"の特徴は、ジェレミーに関することならなんでもありという場所であったこと、その時々に常連の一人がはじめたある話題について、皆がしばらく継続的に意見を書いたり議論する場所でもあったというところだと思います。今の期間はグラナダシリーズのこのエピソードについて皆で話しましょうという時もありました。長い投稿も多くあり、文章を書くのが上手で好きなのだろうと思わせる人がたくさんいました。

今回この献辞を読んで、著者はこのスレッドの常連だったことがあるのだろうと推測しました。私がいた頃と重なっているでしょうか。



さて、本の中身にはいりましょう。私はこの本を買ってよかったです。そしてページをめくってみて、こういう方はこの本を楽しめるだろうと思いました。

1. David Stuart Davies著 Bending the Willow (or Dancing in the Moonlight),
Michael Cox著 A Study in Celluloid,
Peter Haining著 The Television Sherlock Holmes
のいずれか、あるいはいずれも持っていなくて、この3冊に書かれている、このシリーズの舞台裏、演者・監督・プロデューサーなどの言葉に興味がある。

2. 上記の本を持っているけれども、これら3冊の本の記述をまとめた形で、41の作品それぞれの撮影の舞台裏をあらためて読みたい。
また、出演者・監督・プロデューサーなどの言葉を、41の作品にわけて再構成したものを読みたい。(ただし特定のひとつの作品に関する発言ではなくても、どれかの作品のセクションに振り分けられています。)

3. 雑誌や新聞の記事、ラジオインタビュー、テレビインタビュー、ウェブにアップロードされた発言の引用を読みたい。(ただしそれほど多くはないです。)

4. 著者がグラナダ・シリーズの41のエピソードの場面や演技をどう描写するか、どう評価するかを読みたい。


私が読んで面白く感じた理由は2番と4番です。3番はざっとみた限りでは私が読んだ(聴いた、観た)ことのないインタビューはほとんどありませんでした。ですから私にとってはこれは新しい知識や情報を得る本ではなく、読んで楽しむ本でした。

前々回、「つぎはぎしてまとめたような本はあまり読みたくない」と書きましたが、この本の2番の部分は、ある意味ではつぎはぎです。でもこのつぎはぎが上手で丁寧なのです。(もちろん、引用箇所を除いてはコピー・ペーストではなく、自分の言葉で書き直してまとめています。)

撮影の舞台裏に関しては、それぞれの作品について、ああ、そうだった、とあらためて思い出したり、時系列にそって再確認ができました。出演者などの言葉については、必ずしもその作品に関してではなくても、著者がそれぞれの人の言葉にゆるやかなつながりを感じて並べたのだろうと想像出来るものもあって、これも面白いです。私が芋づる式連想で記事を連ねるのと似ていますね。

ひとつ批判を加えるとすれば、インタビューの言葉の引用はすべて出典を記しているのに対して、撮影の舞台裏に関しては、それぞれの記述がどの資料にもとづくかが書かれていません。その記述の出典を書かないことの弊害は、情報の元をたどることができなくなって、絶対的な真実のように一人歩きすること、そして最初の資料の書き手が尊重されなくなることだと思います。たとえばプロデューサーが資料(この場合は本)を残してくれたことはとてもありがたいことです。そしてそれはプロデューサーの目からみたものであり、もしかしたら他の人は違うようにみたかもしれないことも含まれていて、絶対的真実とは限らないのです。(この場合の絶対的真実は、「プロデューサーはA Study in Celluloidという本にこう書いた」ということです。)

最初にあげた3冊の本以外を参考にした部分も、少ないですがありそうなのですが、どの記事、あるいは誰からの情報なのか知りたいと思いました。インタビューの言葉の引用についてはすべて出典がわかるのですが。

このような点はありますが、この本は複数の資料を元に丁寧にまとめて、それぞれのエピソードへの著者の批評も加えた、読んで楽しめる本です。

1番に書いた3冊の本や、3番に書いた他のインタビューをご存知ない方は、はじめて知ることがたくさんあって、その面からもとても興味深くお読みになれるでしょう。



さて、以下の全部にあてはまる方はこの本を楽しめないかもしれません。

1. 写真がみたい。(1枚もありません。本の表紙にホームズと二人のワトスンが載っていますが、これも写真ではなく絵です。本の中には絵もありません。)
2. すでにどこかで読んだものは、あらためて読まなくてもいい。
3. ある特定の人(=著者)が、このシリーズの作品をどう描写しどう評価するかは読まなくていい。
4. これは著者が今回新たに関係者にインタビューして作った本だろうと思って、それを期待している。

でももしも私がこの本を手にする前にこのリストを見たら、私はこの4つに全部あてはまると思うかもしれないです。この本を手にした後では、私はこれを買ってよかったと思っています。

ただ(私にとって)残念なのは、この筆者は割合と難しい単語を使いたがるという気がします。英語の語彙が乏しいもののひがみでしょうか。この本が参考にしている、最初にあげた3冊を読んだ時よりも、見たことがない単語がはるかに多いように思います。まあ、新しい語に触れる良い機会と考えて読んでいきましょう。

まだ一部しか読んでいませんので、今回の紹介には修正や追加もあるかもしれません。その場合は後日書きます。

RM
4月になりました。3月、4月は終わりと始まりの月ということもあるのでしょうか、こころがうごくことも多く、少しつかれているという気がします。それで今日はごく簡単に、グラナダシリーズに関する新しい本のご紹介をしましょう。内容はまた後ほど。ただいま注文中で、もう少ししたらイギリスから届くという段階なのです。本が出ましたよ、という短いご案内です。

"Granada's Greatest Detective: A Guide to the Classic Sherlock Holmes Television Series"という本で、著者はKeith Frankel、出版社はFantom Filmsというイギリスの小さな会社です。("a small media company"と彼らのFacebookに書いてありました。)

出版社のウェブサイトでのこの本の紹介ページはこちらです。昨年11月の出版でした。
http://www.fantomfilms.co.uk/books/keithfrankel_granadasgreatestdetective.htm

この本の出版のことを知った時、評判を少しきいてから購入するかどうか決めようと思いましたが、なかなかきこえてきませんでした。私がもう結構と思う本、あるいは読みたくない本は、つぎはぎしてまとめたような本、"The Man Who Became Sherlock Holmes"のように何一つ出典が記されていなくて、フィクションとノンフィクションの境界が消されている本、意図的に興味をあおるようなセンセーショナルな記述の多い本です。そうでないことが推測できるようなら注文しようと思っていました。

この本はアマゾンでも取り扱いがありますが、イギリス、日本、アメリカ、いずれのアマゾンにもまだ購入者の感想が載っていません。

でも最近Facebookのあるグループでこの本に好意的なコメントがあったので、読んでみようと思い注文しました。私はグループに入っていませんが、公開グループなので誰でも発言を読めます。4人のひとがいずれもほめています。ただ最後の方のエピソードに対して著者が批判的すぎるという感想はありましたが。
https://www.facebook.com/groups/1379897192271018/permalink/1720422831551784/

日本のアマゾンでのページはこちらです。
https://www.amazon.co.jp/dp/1781962677

私はより安い、イギリスのお店に頼みましたので少し時間がかかっています。

上にあげた出版社のウェブサイトのページには、この本には"interviews with both cast and crew [...] including Michael Cox (producer), Jeremy Brett, David Burke, Edward Hardwicke, Eric Porter, Rosalie Williams, Jenny Seagrove, Robert Hardy and many others" も含まれるとあります。Eric Porterはモリアーティ教授、Jenny Seagroveは「四つの署名」のメアリー・モースタン、Robert Hardyは「犯人は二人」のミルバートンですね。それ以外にもいろいろなひとの話がきけそうです。

RM

追記:ナツミさんち(21世紀探偵)が今年もエイプリルフール仕様(今年は「連続ネット小説 わとすんさん」)になっていました(うふふ)。
ジェレミーの出演作品で、DVDになるのを心待ちにしている作品はたくさんありますが、三つあげるならば... ああ、三つに限るのは難しい、難しいので他の二つは保留しますが、私は "On Approval” をその一つに入れるだろうと思います。これは1982年にBBCで放映されたコメディで、イギリスの劇作家 Frederick Lonsdale の戯曲を元にしたものです。ちなみに1985年にニューヨークの劇場で上演されてジェレミーが出演した "Aren't We All?" も彼の作品です。

"On Approval” について、このブログでは以前こちらで書きました。
On Approval (1982)
それからこちらでも少しだけ触れました。
PBSが放送したジェレミーの追悼番組

ジェレミーが演じているのは一言でいえば、「魅力的で身勝手な(しかも自分の身勝手さに気づいていない)イギリス紳士」で、ジェレミーはコメディのセンスも抜群だということをあらためて感じます。本当におかしくて素敵なんです。

昨夜、この番組の音声を久しぶりに聴きながら眠りました。それで少しだけ、ここにも載せたくなりました。

この昨品は全編おすすめシーンばかりなのですが、選んだのはグランドピアノの上に腰かけてのシーンから1分、ご機嫌で歌っているのも短いですが聴けます。








DVDになっていないこの作品は、家庭用ビデオデッキで録画されたものが三種類ほどYouTubeにあったのですが今は一種類になっています。私が音声を抜き出した映像は今はないのですが、同じシーンを観ることができるアドレスを以下に挙げます。
https://youtu.be/31NrPhKmshw?t=11m56s

ジェレミー演じるGeorgeの、古くからの友人であるRichardは、ずっとこころを寄せていたMariaにようやく気持ちを打ち明ける、というよりMariaがいつまでも何も言わないRichardにしびれを切らして、彼に打ち明けさせます。結婚に適した相手かどうかをMariaが試すということで、RichardはMariaのスコットランドの家に一ヶ月間行くことになります。でも夜はホテルに泊まるようにと言いわたされています。タイトルの "On Approval" とは、気に入らなければ返品可能という条件で試用してみて、という意味だそうです。Richardは愛するMariaに試されに行くのですが、この劇が終わってみるとこのスコットランドの家で、MariaはRichardに(結果として)試され、Georgeはピアノを弾いていた女性Helenに(これも結果として)試されたことがわかるのですが。

ここはGeorgeが、自分もスコットランドのホテルに行く、と言い出すところです。君を助けたいし(実際はどう転がるか面白がっているところもあるようですが)、自分はロンドンにはいたくない(破産寸前で、翌日には重大な決心をしなければならないのです)、だからスコットランドに行って、名前をかくして君と同じホテルに泊まるというのです。その部分の音を抜き出しました。


音を抜き出すといえば、以前参加していたファン・フォーラムで、母親から電話がかかってきたときの着信音に "On Approval" でのジェレミーの声を使っていると言ったひとがいて、みなが驚いて喜びました。彼女が言っていたのはこの部分です。








ジェレミーの"Mother!"の後の、ペチッという音は女性に頰をはたかれている音なんですよ!このシーンはこのあたりです。
https://youtu.be/Hnh02I4iizE?t=9m30s

このあたりはハチャメチャですが、もっと細やかな(?)コメディシーンもたくさんあって、くすくす笑ってしまいます。本当にジェレミーはコメディも絶品です。

この作品は背景音楽がほとんど入らず(はじめと終わり、そしてスコットランドに舞台がかわるところの一箇所だけだったと思います。はじめのクリップでピアノの音が入るのは登場人物が弾いているからで、背景音楽ではありません)、音はセリフだけで勝負のお芝居ですから、音声だけ抜き出して聴くと特に、その声と調子にどっぷりと浸りつつ笑えます。

とはいいつつ、ああ、これがDVDになって、きれいな映像とともに楽しめるようになってほしいものです。


そしてお気がつきになったでしょうか、ホームズでもよくみる人差し指を口元にたてる仕草、それがホームズのときとはまた違って、実に可愛らしい表情でした。自分もスコットランドへ行こうと思いついたときの表情です。指はやはり利き手のほうの左手の指でしたね。
OnApproval

ホームズの人差し指に関してはこちらに書きました。
ジェレミーの(ホームズの)仕草(1)
ジェレミーの(ホームズの)仕草(2)

RM
前々回にご紹介したYouTubeにあるThe Infernal Machine の音声ファイルの、part 2はこちらです。
Jean Cocteau - The Infernal Machine - Part Two
https://www.youtube.com/watch?v=p6jFl916oo0

今日は1967年のカナダの新聞のレコード評をご紹介します。この欄に、The Infernal Machine のオーディオブックについて書かれています。

Record Column Christmas Suggestion
by Jacob Siskind
The Montreal Gazette, Dec 16, 1967
https://news.google.com/newspapers?&id=v8QtAAAAIBAJ&pg=4653,3791157

このすべての作品のなかで最も興奮させられて、しかもおそらく最も衝撃的なものは、Caedmonレコードが制作した二つのアルバムだろう。Jean Cocteau(ジャン・コクトー)のThe Infernal Machine(地獄の機械)とEugene Ionesco(ウジェーヌ・イヨネスコ)のThe Chairs(椅子)である。前者はMargaret Leighton(マーガレット・レイトン)がJocasta(ジョカスタ)を、ジェレミー・ブレットがOedipus(オイディプス)を演じている。(中略)

コクトーがギリシャ神話のオイディプス物語を元に書いたこの作品は、最も成功し、そして最もひとびとの感情をかきたてる戯曲の一つであり、今回のキャストは理想的なものだ。(中略)

ジェレミー・ブレットの声は最初のシーンではほんの少し、役の年齢より大人すぎるようにきこえる。特にDerek Seatonが演じた若い兵士がオイディプスと同じ年齢であるのを考えると。しかしオイディプスという人物に、聴く人はどんどん魅了される。(中略)

プロデューサーのキャスティングの巧みさはよいが、でもほんの少し巧みさが行き過ぎているという感想を最初は持つかもしれない。しかし俳優たちが見事なアンサンブルで、完璧に調和した演技をみせてくれるのをきけば、彼らを選んだ慧眼をたたえるようになるだろう。

これは今まで私がきいた、戯曲を舞台形式でオーディブックにした作品のなかで、最高のものの一つだ。


The most exciting, and perhaps the most terrifying, of all of the recordings are two albums from Caedmon records, — Jean Cocteau's The Infernal Machine (TRS 321) and Eugene Ionesco's The Chairs (TRS 323). The first is a production starring Margaret Leighton as Jocasta, Jeremy Brett as Oedipus, [...]

Cocteau's retelling of the Oedipus legend is one of his most effective, and affecting pieces of theatre and the present cast are ideally chosen for the roles. [...] Jeremy Brett's voice is just a shade too mature at first, as Oedipus, particularly when compared with Derek Seaton who plays a young soldier who is supposed to be the same age, but the characterization grows on you. [...]

In fact at first you get the feeling that the producers have been just a shade too clever in their casting, but when you find the ensemble working and blending perfectly you realize and appreciate the wisdom of their choices.

This is one of the finest recordings of a theatrical production I have ever come across.


最初のシーンでのジェレミーの声が19歳にしては大人びているということですが、比較されているDerek Seatonは調べたらジェレミーの10歳下の俳優ですから、録音時は22歳くらいでしょう。また、オイディプスのそれまでの19年の人生はすでに、その後の運命の前触れとなるできごとで満ちていました。Derek Seaton演じる、夜警にたつ若い兵士よりもはやく大人になったとしても無理はありません。私は前回も書いたとおり、ジェレミーは19歳の役を生き生きと演じていると思います。そしてもちろんこの記事にあるように、ジェレミーのオイディプスは私達のこころの中に入り込み、魅了します。

この評者が書いているようにこれは素晴らしい作品で、ジェレミーはもちろん、それ以外の俳優の演技にも引き込まれます。オイディプスの妻(実は母)ジョカスタを演じたマーガレット・レイトンは、ジェレミーがLord Goringを演じたBBCドラマ Ideal Husband (1969) でMrs Cheveleyを演じた女優、と言えばおわかりになるでしょうか。他にも舞台Variation on a Theme (1958) でジェレミーと共演しています。たとえばここにもその時の写真があります。watermarkがありますが、写真をクリックすると少しおおきくなります。ジェレミー、若いですね!
http://www.alamy.com/stock-photo-jeremy-brett-with-fellow-actor-margaret-leighton-56505127.html
http://www.alamy.com/stock-photo-margaret-leighton-on-stage-with-fellow-actor-56444575.html

ジェレミーとAnna Massey(アナ・マッシー)の結婚式の様子をうつしたフィルムにもマーガレット・レイトンの姿があり、ナレーションで名前がでていました。
ジェレミーとアナの結婚式の時のニュース映像、再度

ジョカスタが死を選び、オイディプスが自らの手で目をつぶす終盤、オイディプスの見えないはずの「目の前」にあらわれたジョカスタの声の、母としてのやさしさが耳に残っています。

これが絶版なのは本当に惜しいことです。


ところで、コメント欄にまるさんがコクトーの作品の「オルフェ」のことなどを書いてくださったので、コクトーについて少し調べていて、彼が「アンティゴネ」も書いていることをはじめて知ってちょっと驚きました。「アンティゴネ」、「オルフェ」、「地獄の機械」の三つがギリシア伝説を元にしたコクトーの戯曲作品ということでした。

なぜ少し驚いたかというと、ジェレミーは「アンティゴネ」のオーディオブックにも出ているのです。ただしコクトーの「アンティゴネ」ではなく、その元になった、ギリシャのソフォクレスが書いた「アンティゴネ」ですが。

タイトルにある「アンティゴネ」はオイディプスの娘の名前です。今日ご紹介したpart 2の一番最後(つまりこの劇の一番最後)で、アンティゴネは盲目となった父オイディプスと共に放浪の旅に出ます。ソフォクレスの「アンティゴネ」のオーディオブックでは、ジェレミーはそのアンティゴネの婚約者です。この戯曲ではジェレミーが登場する場面は限られているのですが、これも見事なのです。いつかご紹介してみたいと思っています。そしてコクトーがソフォクレスの「アンティゴネ」をどういうふうに翻案したかも、いつか読んでみたいです。


それにしても自分ではよくわかりませんが、オーディオブックがこれだけ好きというのは、誰でもというわけではなく私の一種の個性なのでしょうか。(もちろん私だけではないでしょうが。)昔から私が落語が好きだったこととも、どこかでつながっているのかもしれません。ひとの声が好き、言葉が好き、本が好きなこととも。ひとによって好きなものが少しずつ違うのも、おもしろいものです。

RM
前回はYoutubeのアドレスを書きましたが、久しぶりに音声ファイルを埋め込んでみようと思い立ちました。

(追記:いったんこの記事を公開したあと、別のブラウザで見たら埋め込んだはずのプレイヤーが見えなかったので、埋め込みじゃない形も加えました。今度はどうでしょう。)

好きなところ二カ所です。この二つの音声ファイルはYoutubeのファイル(https://youtu.be/L73Ny5uPf2Q)とは違って、LP特有のノイズがはいったままです。でも私には、これも懐かしい音なんです。

まずはオイディプスがこの劇に登場する最初のところ。







上のプレイヤーがみえない、あるいは再生されない場合はこちらをクリックしてみてください。42秒の音声ファイルです。

オイディプス: あっ!あ、すまない。
スフィンクス: 驚かせちゃった。
オイディプス: いや、うとうとして夢をみていたんだ。そしたら突然目の前に君がいて...。
スフィンクス: 動物だと思ったんでしょう。
オイディプス: まあ、ほとんどね。
スフィンクス: ほとんど?ほとんど動物って、それスフィンクスじゃない。
オイディプス: そうだね。
スフィンクス: 私のことスフィンクスだと思ったわけ。ありがとう!
オイディプス: いや、すぐわかったよ、間違ったって。
スフィンクス: スフィンクスと顔をあわせるなんて、冗談じゃないってところね、若い男の人は。
オイディプス: それじゃ、若い女の子だったら?
スフィンクス: スフィンクスは女は襲わないもの。
オイディプス: それにふつう女の子は、日が暮れて出歩いたりしないからね。
スフィンクス: 私のことはいいでしょう。もう行くから。
オイディプス: 行くって、どっちへ?

Oedipus: Oh! I'm sorry....
The Sphinx: I startled you.
Oedipus: Well, no, I was dreaming. I was miles away, and suddenly, before me....
The Sphinx: You took me for an animal.
Oedipus: Almost.
The Sphinx: Almost? Almost an animal, that's the Sphinx.
Oedipus: Yes, I know.
The Sphinx: You took me for the Sphinx. Thank you.
Oedipus: Oh! I soon realized my mistake.
The Sphinx: It can't be so amusing to find yourself suddenly face to face with the Sphinx, if you're a young man.
Oedipus: And if you're a girl?
The Sphinx: He doesn't attack girls.
Oedipus: And girls, I should think, aren't usually out after nightfall.
The Sphinx: You do well to mind your own business, young man, and let me go my way.
Oedipus: Which way?


なお、これはフランス語の戯曲からの、Carl Wildmanによる英訳にもとづいたオーディオブックですが、元の英訳と言葉が少し違うところをかきなおしました。間違っていないとよいのですが。

「それにふつう女の子は、日が暮れて出歩いたりしないからね。」(And girls, I should think, aren't usually out after nightfall.) と言った後、「そうだろう?」という感じの声が入りますよね。Carl Wildmanによる戯曲英訳版にはないのです。日本語なら「ん?」とでも書きましょうか。女の人に対して保護者のようにふるまいたがる年頃の若者の感じが出ていますね。やさしい声です。ジェレミーのアドリブでしょうか。ここ、好きなんです。

このLPが発売された1967年にはジェレミーは33歳か34歳。録音時は32歳くらいでしょうか。でも19歳の役を生き生きと演じていますよね。このあと、「名前きいていい?僕はオイディプス、19歳。」 (May I ask your name? Mine is Oedipus; I'm nineteen.") と勢いこんで言うところも、若いですね!







上と同じく、上の埋め込みプレーヤーがうまくはたからない場合は、こちらをクリックしてください。10秒の音声ファイルです。

RM
私はオーディオブックが好きです。ここでも何度かジェレミーのオーディオブックをご紹介してきました。以下にあげたオーディオブックはすべて、ジェレミー単独の録音ではなく多くの人が参加している作品です。

Troilus and Cressida のオーディオブック (1961) , その4
Love's Labours Lost (1974) のオーディオブック再発売
Richard II (1961) のオーディオブック再発売;その2
Puss in Boots のオーディオブック (1972)

今日ご紹介するオーディオブックはJean Cocteau(ジャン・コクトー)がギリシャ悲劇の「オイディプス王」を元に書いた戯曲、"The Infernal Machine"(地獄の機械)で、これも多くの俳優が参加しています。ジェレミーはオイディプスを演じています。

この録音のことをジェレミーが話しているのをきいたり読んだりしたことは、残念ながらないのですが、「オイディプス」という名前を出しているインタビューは覚えています。

「ホームズを演じるのはオイディプスやハムレットやマクベスと同じくらいむずかしい。ホームズにいまだに夢中なのは、ホームズの演じ方が私にはまだわからないからなのです。ホームズはいまだに私の視界の少し先にいます。」少し考えて続けた。「いや、さらにまたその先です。宝探しみたいなものです。」

"[Holmes] is as tough to play as Oedipus or Hamlet or Macbeth. Why he fascinates me still is the fact that I still can't play him, he's still one field ahead of me." He pauses. "Two fields. It's like a treasure hunt."

Tracking the Master Sleuth
by Louise Sweeney
Nov 14, 1991, The Christian Science Monitor
http://www.csmonitor.com/1991/1114/14121.html

ジェレミーはハムレットもマクベスも演じていますね。そしてオイディプス役もこのオーディオブックで演じて、印象が強かったのでしょう。

私にとってもこれはとても思い出深い作品です。2012年5月にこんなふうに書きました。
俳優であることの重圧;インタビュー記事 When the lights went out (1990) より

最近、ジェレミーがギリシャ悲劇のオイディプスを30代で演じたオーディオブックのLPを手に入れて、聴いています。ジャン・コクトーがオイディプス悲劇を元に書いた「地獄の機械」のオーディオブックです。「おまえは父を殺し、母と交わって子をもうけるだろう」という神託のままに、地獄の機械の歯車がまわって圧倒的な悲劇の結末へと進んでいくオイディプス、しかも最後の時が来るまで、歯車が止めようもなく回っていることを知らないこのオイディプスを演じる、ジェレミーの声と表現のすばらしさ。英語を母語とする人ならはるかにそれを感じられるでしょうが、私でもジェレミーの演技に息を飲み、魅了されます。19歳の若者の時から、自らの目をつぶして、娘にともなわれて絶望のうちに放浪する最終場面まで。(シェークスピアよりはわかりやすい英語です。でもこういう時は特に、英語母語話者をとてもうらやましく思います。)

この時の感想に何も足すことはありません。(あ、でも、英語母語話者をうらやましく思う気持ちはその頃より薄れました。その言葉の母語話者ではないからこその受けとめ方、近づき方があると思えるようになったからです。)

さて、これは私の知る限りでは現在絶版です。CDとしてもデジタルオーディオファイルとしても販売されていません。ですからYoutubeでの場所をここでお知らせしてもよいでしょう。2013年にアップロードされて、二つのパートに分かれています。

まずは登場シーンです。下のアドレスをクリックすると、19歳のオイディプスが育った国を出て、それと気づかずにスフィンクスと出会う場面から再生されます。スフィンクスは若い女性の姿に身を変えています。

Jean Cocteau - The Infernal Machine - Part One
https://youtu.be/L73Ny5uPf2Q?t=47m57s

47分57秒から58分45秒までが若い女性との会話、ここが見事なんです。若者の冒険心・野心・自尊心。一方で神託への恐れと、でも自分の力でそれを跳ね返せるという自信。美しく勇敢な若者の魅力と若さの持つ傲慢さの両方があらわれています。

そして女性はスフィンクスの姿にもどります。ここからスフィンクスののろいの言葉が続き、スフィンクスの独壇場、1時間03分あたりから、あのスフィンクスの謎かけの場面です。でもこのあたりはともかく、オーディオブックがお好きな方、ジェレミーの声の表現がお好きな方、ホームズ以外を演じるジェレミーもお好きな方は、若い女性としてのスフィンクスとの58分45秒までの会話をどうぞおききください。

スフィンクスを演じているのはDiane Cilentoで、Troilus and Cressida のオーディオブックではCressida役で、Troilus役のジェレミーと共演しています。

この続きは(多分)次回です。

RM
まず最初に覚え書きです。

「法案可決しても運動はさらに続く」~憲法学者らが国会前でリレートーク
江川紹子、Yahooニュース、2015年9月17日

首相「支持受けた」というが… 安保法案は公約271番目
東京新聞、2015年8月24日

この場所がこういうことを書くところになるとは、とても不思議ですが、思えばこのブログをはじめたのも、5年間続いて今も書いていることも不思議ですから、何もこのくらいで不思議がることはないのでしょう。なにより、私にとってここがまだ生きている、変化しているということなのでしょうね。


さて、三日も続けて何か書くのは、ここを始めた頃以来だし、それがすべてこのブログのテーマに直接関係ないことなんて、まったくはじめてで、ここでちょっと休んでしばらくしたらまた書き始めようと思っていたら、Marcus Tylor氏からのお知らせがあって、あまりゆっくりもしていられなくなったので、手短かに書きます。

先週土曜日、9月12日のロンドンでの集まりについては、すでにSNSなどに写真などが出ていましたから、ご存知のかたも多いでしょう。日本人のかたもいらしたようですね。

ジェレミーの共演者としては、ジェレミーの最初のワトスンのDavid Burke、「まだらの紐」のヘレン・ストーナーのRosalyn Landor、「美しき自転車乗り」のバイオレット・スミスのBarbara Wilshereが参加していました。Davidはかわらずお元気そうでした!

私のブログではこちらに書きましたが、開催前でしたからこの二つには写真などはありません。
今年の9月12日の集まり
今日で二十年です そして「こころは一緒」:1995年のインタビューより

以前の計画にはジェレミーの声の録音を流したいと書かれていたのですが、それについては今のところ話題になっているのを読んでいないので、実現しなかったのでしょう。

さて、「ジェレミーをWyndham's Theatreの楽屋で撮影した写真家Marcus Tylorも、この集まりに参加するようです」と9月12日の記事に書きましたが、集まりが終わって間もなく彼は、撮った写真を集めたアルバムへのリンクを書いていました。そこで私は旧交をあたためる(というほどおおげさではないですが)よい機会だと思って、数年ぶりでメッセージを送りました。「すばらしい集まりだったようですね!あのアルバムの写真へのリンクを私のブログに載せたいんですけど、いいですか?」そしたら"Are you genki ?"がはいったメッセージがもどってきて、"Matane"でしめくくられていました。簡単にまたお返事を書いて、りえさんもgenkiですよ、と送ったら、「来月で僕たちが会って5年だね」って。ちゃんと覚えていてくださいました。

そして数日前に、この集まりのために特別にプリントした写真がまだあるので、eBayへのリンクも書いてくれる?とメッセージ。そして今日、例の写真集を今だけ40%引きにしているよ、とその割引用コードも教えてくださいました。それでちょっと急いでこのご紹介を書いています。


さてまずは彼のアルバムです。彼のあと何人かが同じ日の写真をネットに投稿していますが、プロの写真家の写真は多分こちらにあるものだけでしょう。写真は17枚あります。Davidのお顔、そして記念のベンチとそこに書かれた言葉もどうぞご覧になってくださいね。
http://www.demotix.com/news/8530967/sherlock-holmes-actors-and-fans-around-world-gather-london/all-media

そしてマーカスからのお知らせの一つ目は、マーカスがジェレミーを撮った中の一枚を元に、煙草を赤いばらにかえて、この日のために特別にプリントした限定版をeBayで購入できるということです。
http://www.ebay.co.uk/itm/111770840726

二つ目は、以前もここでお知らせしたことのある写真集を、40%引きで購入するための割引用コードで、
Save 40% until September 21, 2015. Code: RECORD40
とのことです。9月21日までに購入なさる場合、このコードを使ってください。購入場所はこちらです。
http://www.blurb.co.uk/b/1613794-a-roll-with-jeremy-brett


いろいろな思いが流れていった一週間でした。四日も続けて書いてしまいました!もちろん今日も明日もいろんなことがあって、いろんな思いが生まれて、そしてこれからも日々は続きます。

でも今夜は特に、真剣に・止むに止まれず・燃えて・軽やかに・思索しながら・怒りながら・絶望せずに・自分の意見と意思と言葉を大切にして この数日間をすごした若い人と中年の人と年とった人に、敬意と連帯の気持ちを送ります。

RM
三年ほど前に、こんな記事を書きました。
ジェレミーとアナの結婚式の時のニュース映像

「アナ」と書いたのは、Anna Massey(アナ・マッシー)のことです。ここでご紹介したのは1958年5月29日のニュース映像で、実際の結婚式は5月26日でした。

結婚式のニュース映像のクリップは、上の記事で書いたアドレスに今もあります。AP (Associated Press) 通信社のアーカイブサイトの中、British Movietone Newsを集めた部門のページです。でも、ブラウザによって、あるいはプラグインの有無によっては、観ることができない場合もあったようです。

ところが最近になって気がついたのですが、 AP アーカイブ、British Movietone部門の公式Youtube チャンネルが今年の6月にできていました。そして7月にジェレミーとアナのクリップがアップロードされました。Youtubeのビデオの方が視聴が手軽だと思いますし、画質も同等かそれ以上だと感じましたので、あらためてご紹介します。
https://www.youtube.com/watch?v=FDZr4vVKOy4

(ただしビデオの説明はAP アーカイブのウェブサイトの方が詳しいです。)
http://www.aparchive.com/metadata/view/959f27bbeb1249fca58f5e8df66bf1d9


これをはじめてみた時のことを思い出します。時を一瞬でこえて、1958年のイギリスにいるような気がして、ぼーっとしました。あ、もちろん二人の結婚式に参加しているような気持ち、とまでは言いません。でも、映画館でニュース映画をみている気持ちになりました!

その、時をこえたような気持ちを味わった2012年10月を、今は少し夢の中のことのようにも感じます。いろいろな思い出があります。そのころはまだ、ジェレミーのファン・フォーラムに参加していたこと、これをみつけたすぐ後に京都に行った時のこと。

そして、いろいろな思いを抱いている今のことを、いつか夢のように思い出すことが多分あるのでしょうね。「時」って、当たり前のようでもあり、でもおもしろいものです。

RM

 RM

Author: RM
コメントは承認後に公開されます。古い記事へのコメントも大歓迎です。2010年8月7日に始めました。
私の記事へのリンクはどうぞご自由になさって下さい。
和訳には間違いがあるかもしれません。最近は必ず英語原文を併記・またはアドレスを書いて読めるようにしていますので、どうぞそちらも参考になさってください。

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