Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

今年最後の記事になります。Google News Archiveで読めるある新聞記事の中に、ジェレミーが多分あのいたずらっぽい目をして話しているのだろう、と思う箇所がありますので、そこを。

なお、以前の関連記事はこちら(うふふ)です。

いたずらっ子ジェレミー(とデイビッド)(1)
いたずらっ子ジェレミー(とデイビッド)(2)

さて、今日ご紹介するのはこれです。

"Elementary, Mr Brett—a new Holmes"
The Sydney Morning Herald, Apr 19, 1987
http://news.google.com/newspapers?id=OXZWAAAAIBAJ&pg=6408,2679802

これはオーストラリアの新聞ですね。1987年の記事で「a new Holmes」となっているということは、オーストラリアでは、あるいは少なくともシドニーでは1987年にグラナダシリーズの放映がはじまったのでしょう。(Channel 7で火曜日の夜からはじまる、と記事中にもあります。)

いろいろなことを話していますが、もしもホームズと偶然出会ったとしても、二人は仲良くやっていけないとジェレミー・ブレットは思っている、という前置きから記事は始まります。


「ワトスンと出会う方がずっといいです。一緒にビールを飲んで陽気に騒げるような、そういうタイプの人間ですからね。」

(中略)不安なスタートではあったが、その後はベーカー街221bの住人を演じることを楽しんだと、このイギリスの俳優は言う。「はじまってみたら、とても楽しかったのです。何でもできることに気がつきました。ソファも飛び越えられるし、部屋をぷいと出て行って、人のことなんて無視できる。たいていの場合、好きなだけ無礼なことができるのですからね。」ブレットは笑った。

I'd much rather meet Dr Watson—he was the type where you'd down a pint of bitter with him and you'd be well away," Brett said.

[...T]he British actor says that after a shaky start he actually enjoyed playing the resident of 221b Baker Street. "Once I got going I adored it because I realised that you could just do anything. You can jump over the sofa, you can leave the room, turn your back on people and generally be as rude as you like," Brett laughed.



1987年1月19日から3月10日までが「四つの署名」の撮影期間だったそうですから(「『四つの署名』撮影の頃 その2」)多分その撮影が終わった頃のインタビューなのでしょう。以前のインタビューから再構成したという可能性もないではありませんが、言っていることから、すごく以前のものではない気がします。

1986年がはじめての入院の年、そして「四つの署名」は退院後初の大切な作品で、多分その撮影前後の頃にこういう茶目っ気のあることを言っていたと思うと、うれしくなりました。


さて、今年はこれまでです。今年もどうもありがとうございました。コメントを下さる方、ここに来て下さる方との、ジェレミーをあいだにしてのご縁に感謝いたします。

私は社交的な方ではないので、静かな年の瀬と年の初めを迎えることになると思います。楽しく賑やかにすごすかた、静かにすごすかた、どちらさまもどうぞよいお年をお迎えくださいませ。

RM
(一番下に「追記」を書きました。ブルーレイ版について書いていらっしゃる別のかたのページのアドレスを記しています。)

りえさんのブログ、更新されていましたね。お二人のお子さんのお世話でものすごくお忙しいようですが、またいつかお会いできたらと思っています。

りえさんがブルーレイ版について書いていらっしゃったので、「勝手に連動企画」をしようと思いつきました。宝島社のムックについていたDVDとの画像比較をしてみます。なお、りえさんの記事はこちらです。
画質がすごい!ブルーレイ新グラナダDVD

また、私が購入前に書いた記事はこちらです。
シャーロック・ホームズの冒険 ブルーレイBOXの発売

ただし、お断りしたいことがあります。

1. まだブルーレイ版全てを観たわけではありません。マスターテープの保存状態などから、作品によって画質が違っている可能性があります。
2. 私は画像・映像処理についてはまったく知識がなく、まとはずれなことを書いている可能性もあります。
3. 評価は好みに左右されるところもあると思います。

さてそういうわけで、「印象記」くらいに思ってくださいませ。

で第一印象は「わー、きれい!買ってよかった!」です!

なんだか急に理性が吹っ飛びましたが、我に返って、項目をあげて印象を書きましょう。

1. 一般的に画面が明るくなっています。

ですから今まで暗くてみえなかった調度品や洋服、そして表情がよくみえる場合があります。

2. 一般的に暖色系の色の方にシフトしている印象です

これは場面にもよるのですが、たとえば肌の色が以前よりも少し赤みをおびてみえます。ですからとても健康的にみえたりします。

ビクトリア時代の雰囲気を古い映像に感じた方は、明るくてあざやかすぎると思われるかもしれません。またこれは使うディスプレイやテレビの特質・設定にもよるのかもしれません。私のコンピュータのディスプレイでは、少し彩度を落とす設定にすると、私の好みにあった、ちょうどいい雰囲気になります。暗くて画像がつぶれているものは明るくできませんが、明るくてあざやかな場合は調整ができますから、問題はないと思います。

3. そしてもちろん、解像度があがっています。

作品によって違うのかもしれませんが、最初に放映された「ボヘミアの醜聞」で比較してみます。ブルーレイディスク(以下BD)の画素数は1920×1080だそうですが、映像の縦横比の関係で、「ボヘミアの醜聞」の画像部分は1440X1080でした。DVDでは640X480でしたから、BDになって、縦横それぞれ2.25倍の画素数になりました。私のラップトップ・コンピュータのディスプレイは1280X800でBD版の画像部分の1440X1080より小さく、BDの能力を完全には発揮させていないことになりますが、DVDもBDも共に全画面表示にして観ると、両者の違いが私の環境でもきちんとわかります。でももっと小さな画面では、画素数の違いによる画質の違いははっきりしなくなるでしょう。

アップでうつしている場面など、今まで以上に本当に鮮明できれいで、今まで以上にみとれてしまいます。

4. 動きがとてもなめらかです。

カメラに近い場所での動きも美しいのですが、遠い場所での動きがなめらかなので、たとえば今までは気がつかなかった、カメラから少し遠く離れた場所でのジェレミー(ホームズ)の表情の変化が、BDになってわかるようになりました。今までは表情やその動きがつぶれてしまっていたのでしょう。これまで以上にジェレミーに釘付けになっています!

(追記:ここに小さな画像を例としてあげていました。カメラが動きながら撮影している時に、静物がどうみえるかを示した画像だったのですが、DVDを複数のプレイヤーで再生して一時停止させ見比べたところ、プレイヤーによってみえかたが違うことがわかりました。誤解を招くので画像は削除しました。)

以上が「印象記」です。

世界ではじめてのBDが日本で発売されて、本当に幸せです。ただ、やっぱり値段が高いですね。(その中では、今のところアマゾンが安いようで、29%オフです。)以前にフォーラムで紹介した時も、値段の高さに驚かれました。日本では日本語吹替えと字幕がつくと、とたんに値段がはねあがることを、BBC版シャーロックを例にとって説明したものでした。

DVDでも充分画像が良かったので、無理をなさる必要はないと思います。でも、購入を考えていて画質について知りたいと思う方がいらしたら、この「印象記」が参考になれば幸いです。

RM

追記:こちらの記事も参考になると思います。

「シャーロック・ホームズ in MB-Support」より「シャーロック・ホームズの冒険 全巻ブルーレイBOX を購入しました


今日の記事とは直接の関係ありませんが、いくつかご紹介しましょう。上記のホームページは以前、221Bの間取りを知りたいと思って検索していた時にみつけました。
ベイカーストリート 221B の間取り

半年くらい前に、グラナダ版ベイカーストリートの地図を書いていらっしゃって、これもすばらしいです。
ベイカーストリートの地図 グラダナ版 シャーロック・ホームズの冒険

またその後で、これをゲームにしていらっしゃいます。ゲームにはとんと疎くてまだよくみていないのですが、「サンドボックス(決まった目的が存在しない)型のゲーム『Minecraft(マインクラフト)』で再現しました」とのことです。
Minecraftでベイカーストリートを再現

こちらの記事で、日本に、グラナダ版で撮影に使用した馬車があることをはじめて知りました。
シャーロック・ホームズの馬車が日本に存在していた

この馬車については、以前ナツミさんも触れていらっしゃいました。ナツミさんの記事はこちらです。
馬車とタクシー

ただこのナツミさんの記事のコメント欄で私が書いている、Jeremy Brett Information(JBINFO)の画像のアドレスは、JBINFOが新しい画像をアップロードした時に既存の画像のアドレスをつけかえたので、今では頓珍漢なものになっています。
クリスマスを前にして何を書こうかなあと考えて、そうだ、私たちの大好きなハドスン夫人、Rosalie Williams(ロザリー・ウィリアムズ)のインタビューから少し引用しよう、と思いつきました。

ハドスン夫人とホームズの関係について語っている箇所の一部分をご紹介します。このインタビューはそれ以外の話題についても話していて、かなり長いのですが、それはまた後日。

ロザリーが、ハドスン夫人は単なる家政婦ではない、家主・女主人で、彼女なりの暮らしのルールを持っている、と語ったあとです。RWはロザリー、SSはインタビューアです。


Holmes' Sweet Home
An Interview with Rosalie Williams
by Richard Valley

Scarlet Street, pp.24-29, No.8, 1992

SS: 彼女のルールのもとであの家が動いているのですね。ホームズが自分の部屋で書類をあちこちに投げ散らかすこと以外は。

RW: そのとおりです!ハドスン夫人とホームズの関係について、それでわかることがあります。まず第一に、ハドスン夫人はホームズのことがとても好きなのだと思います。もしもそうでなければ、夫人はホームズと一緒に暮らすなんてできないでしょう。あの気性で、かんしゃく持ちなんですもの。でもホームズも家の中のことに関しては、夫人のやりかたにある程度は従わなければなりません。女主人にね。夫人はホームズのことをとても好いていて、そして彼のことをとてもよくわかっているので、ホームズが次にどううごくか予想がつきます。ホームズのお母さんみたいな人、ホームズの世話をして、身のまわりのことを全部やってあげて、でもホームズに、「だめです!」と言える人なんです。わかってくださると思いますが、二人は仲のよい喧嘩相手なんだと思います。



俳優は演技で全てを語るものだとも言えますが、でもこうやってロザリーがハドスン夫人のことを語ってくれるのをあらためてきくと、演じている時の気持ちが感じられる気がしてうれしくなりました。

このインタビューを読むと、ロザリーがとても知的で、そしてあたたかい人だということがわかります。そしてジェレミーとロザリーが友人として、仕事仲間として、お互いに大好きだったことも感じられます。

グラナダシリーズはこのハドスン夫人を得て幸せでした。そして、ホームズにこんな「お母さん」がいて、ジェレミーにこういう友人・シリーズ全部にわたる共演者がいて、本当によかったとあらためて思います。

(英語の原文は後で書き写すつもりです。)

RM

追記:ハドスン夫人のやさしい顔とおこった顔と、両方載せたくなりました。「青い紅玉」からです。おこった顔も大好きです。

MrsHudson1.jpgMrsHudson2.jpg

文章を書くのに充分な余裕がなくて、でも更新したい、そして日々の生活の中で、少し重い何かが気持ちのなかに滞っている...そういう時にいろいろとすることはあるでしょうが、やっぱりここではジェレミーの写真を載せたい、という訳です。

PlayingTheViolin.jpeg


2枚目は以前から知っていましたが、1枚目は1年くらい前でしたか、Tumblrではじめてみたと記憶しています。その2枚を、サイズをあわせて並べて1枚にしたものです。こういうふうに、同じ時に撮られた写真を複数枚並べて見るのも好きで、その最たるものがMarcus Tylorが撮った36枚の写真です。(「ジェレミーの写真集(再度のご紹介)」その他の記事で以前ご紹介しました。)

どうして好きなのかと理屈を考えると、写真はその時を切り取るもので、切り取ったものの持つ潔さがあるわけですが、それが組み写真になると、そこに映像とはまた別の、一瞬一瞬がつながった奥行きが感じられるようになるから、ということでしょう。

まあ、そんな理屈はどうでもいいのですが、この白黒の写真はどちらも好きです。いかにもジェレミーの初期のホームズ、という感じがします。どの作品のための宣伝写真かわからないのですが、「入院患者」でしょうか。

元の2枚をいただいてきた場所は以下のとおりです。(ただしJeremy Brett Informationは、新しい写真が加わると、それまであった写真の場所がかわることがあります。)

http://mrsolmaz.tumblr.com/post/18273862818/jeremy-brett-the-greatest-sherlock-holmes-ever
http://jeremybrett.info/Holmes_Bw/imgpages/image027.html

RM
前の記事のコメント欄で、「別冊映画秘宝 シャーロック・ホームズ映像読本」が、何かの本や記事の文章をそっくり参考にして書いたような記述ではなく、丁寧に作品をみたり資料を調べたりして書かれているのを感じるということをナツミさんとお話していました。その時に

「この一行を書くために、時間をかけて確認したんじゃないかなあ、なんて思ったりします。(私もまた並べて書くのもおこがましいようですが、1行を書くのに、記憶だけでなく元の文章を確認しようとして、えらく時間をかけたりしますから。まあ時々それを怠って、後で訂正したりするわけですが。) 」

と書いたのですが、そう言えばホームズの歩き方について、以前書いたことを訂正しなければならないのでした。

バレエ;1988年のインタビューから」の記事で以前このように書きました。

「『ノーウッドの建築士』で、まるでダンサーのような優雅なステップで二階の部屋をまわるシーンがありますが、ドラキュラを演じた時の歩き方が役に立った、つま先から地面につけるような、と別のインタビューで言っていたと思います。今すぐにはみつからないので、また後日ご紹介しましょう。」

ところが、ドラキュラの時の歩き方と関連づけてジェレミーが話しているのは「ノーウッドの建築士」の、焼けこげた材木の上を歩くシーンについてだということに最近気づきました。そう言っているインタビューと再会したからです。ただ「つま先から地面につけるような」ということは言っていないので、私は以前は別のインタビューで読んだのでしょうか、それともそこは私の記憶違いでしょうか。

ドラキュラとホームズを両方ともに演じた俳優が多い、ということを以前「舞台 Dracula(1978-1979)の写真(その2)」の記事の中でお話しましたが、ジェレミーがホームズの歩き方をドラキュラから持ってきたなんて、ドラキュラとホームズの思わぬつながりはおもしろいなあと感じます。

元の記事は
"Dancing in the Moonlight
Jeremy Brett
A Last Talk with David Stuart Davies and Jessie Liley"
Scarlet Street, pp.86-91, No. 20, 1995

これは雑誌"Scarlet Street"に、ジェレミーが亡くなった後に掲載されたインタビューです。ホームズを演じなくなってからも、こんなふうに熱心にホームズを語っていたのですね。SSはインタビューアです。


JB: ホームズを演じるためには、Robert Stephens(俳優で、ジェレミーの親友)が「あの空っぽの中身」と呼んだ部分を俳優が自分で埋めていかなければならないのです。RobertはBilly Wilder監督の映画「The Private Life of Sherlock Holmes」の撮影中に「空っぽの中身」、ホームズの内面を埋めようと必死になって、気持ちがつぶれてしまいました。がらんどうの建物で、中身がないんです。

SS: あなたはどのようにして埋めていったのですか?

JB: 以前の別の仕事を参考にしたり、自分の想像力を使ったりして、ホームズにいのちをふきこむ必要がありました。ドラキュラを演じた時の経験がずいぶん生きたのです。ドラキュラの時は、先のとがった靴をはいて猫のように歩いたのですが、ホームズでも私はよくそんなふうにしています。たとえば「ノーウッドの建築士」で材木の上を歩く時もそうです。ホームズのうわべのすがたに何か裂け目がないかと、いつもさがしてきました。彼の内面をもっとみせられるように。


JB: [... You] have to fill up what Robert Stephens called "that hollow space." Robert cracked up during the filming of the Billy Wilder film [1970's THE PRIVATE LIFE OF SHERLOCK HOLMES] because of his struggle to fill that "hollow space," that inner life. It's all edifice. There's nothing inside.

SS: How did you manage it?

JB: I've had to pick up things from other work and my imagination to bring him to life. I took a lot from when I played Dracula. I had the pointed shoes and I walked like a cat as Dracula. I often do as Holmes—like in THE NORWOOD BUILDER, when I walk along the railing. I've looked for cracks in the veneer to allow me to say more about the character.



ちょっと不安なのは、"I walk along the railing" と言っているところで、このrailingは多分、あの材木がつみかさなっているところだろうと思うのですが。もしもそれが間違っていたら、訂正記事の訂正をするという間抜けなことになってしまいます!

パジェットの挿絵をみてみると、確かにかなり先のとがった靴をはいているようにみえます。
(たとえばこちらで、挿絵入りで"The Norwood Builder"を読むことができます。)
http://168.144.50.205/221bcollection/canon/norw.htm

でも先のとがった靴はホームズだけではないようなので、当時はこういう靴が普通だったのでしょうか?いえ、洋服や靴のことはまるでだめな私ですので、これ以上靴には深入りしないでおきましょう。

RM
ご存知の方も多いかもしれませんが、11月に出版された本(ムック)のご紹介をしましょう。この本については、ナツミさんのブログのコメント欄でも、ナツミさんとトビィさんがお話なさっていました。

別冊映画秘宝 シャーロック・ホームズ映像読本 (洋泉社MOOK)
http://www.amazon.co.jp/dp/4800300584/

書店に行ったが売り切れだったという人のtweetへの返事で編集人の田野辺尚人さんが、「あまり数を刷っていないので、品切れ店が出始めたようです」と書かれています。ムック(雑誌と書籍をあわせた性格を持つ刊行物)なので、雑誌とは違って長期間販売されるとは思いますが、一応はやめにご紹介しておきます。といっても私はまだ全部は読んでいなくて、ゆっくり楽しむつもりですので、中身のご紹介はまだほとんどできないのですが。

内容については、出版社のウェブサイトをご覧ください。
http://www.yosensha.co.jp/book/b105880.html

BBC版シャーロックが出版の契機になっているとは思いますが、BBC版だけではなく、ホームズの映像作品を多くとりあげています。「序」にも、「グラナダ版とBBC版を中心に据え、映像化されたシャーロック・ホームズの全貌にせまる」という意味のことが書かれています。

ですからブームに乗ったというようなお手軽な本ではありません。力が入っていて愛情が感じられて、ゆっくりと読むのが楽しみです。

まず表紙をめくると、中表紙(内扉)がジェレミー・ホームズ、その後「シャーロック・ホームズ 映像アルバム」のトップを飾って、5ページ目までカラーで紹介されています。そして134ページから205ページまでがグラナダ版の総解説、エピソードガイド(1話につき1ページ)、総論です。総論はリチャード・バーニップという人が書いたもので、読み応えがあります。写真も含めて18ページあり、内容もとても充実していて、グラナダ版が大好きだということが感じられます。孫引きでお茶を濁した文章でないこと、自分でたくさん資料を持っているし、グラナダ版を何度も何度もみている人だということは読めばすぐわかります。引用元もきちんと記されていて、書籍以外は私が知らない資料(当時の雑誌や定期刊行物)です。また、翻訳もよみやすいです。

この著者はどういう人なのだろうとネットを検索すると、こんなYouTube ビデオと、同じビデオをダウンロードできるようにしたウェブサイトがみつかりました。Gresham Collegeというところでのレクチャーをおさめたもののようで、多分このかたなのだと思います。ドイルとホームズとロンドンについて話しているのでしょう。後でゆっくり観てみようと思います。
(YouTube)
Arthur Conan Doyle and London: "A Stout Heart in the Great Cesspool" - Richard Burnip
(Gresham Collegeのウェブサイト)
"A Stout Heart in the Great Cesspool": Arthur Conan Doyle and London

英語での原文がすでに発表されていて、本か雑誌かウェブに掲載されているのなら読んでみたいと思ったのですが、どうもこのムックのための文章のようです。編集人の田野辺尚人さんがtwitterで、「グラナダ版ホームズについて、イギリスの研究者リチャード・バーニップが気合い入れた総論を寄稿してくれています」と書かれていますので。
http://twitter.com/tacopettei/status/273960954000195584

本当に気合いがはいっています!原文と、引用されている資料を読みたいものです。

そしてリチャード・バーニップさんのものほど長くはありませんが、岸川靖さんという方が書かれた最初の総解説もよい内容です。このかたも、ホームズもグラナダ版もとてもお好きなかたなのですね!エピソードガイドも岸川靖さんの手によるものです。

あらら、内容の紹介はまだできないと書きながら、いろいろと書いてしまいました。まだちゃんとは読んでいなくて、グラナダ版以外のところは特に、ほとんど読んでいません。でもおもしろそうです。というわけでこの本は、「買って満足」の本になりそうです。

RM
一つ前の記事のコメント欄でたまごさんとお話していた時に、ジェレミーなら話を面白がってくれるのではないか、とたまごさんが書かれたので、ジェレミーはひととお話するのが好きで、その中でも自分のことだけを言うのでなく、ひとのお話をきくのも好きだったんだろうなあ、と思いました。それでいくつか思い出したことがあって、こんな記事を書きたくなりました。

以前の記事で書いたことですが、ミッドランドホテルのレストランの元ウェイターが、ある掲示板に書いていた中に、「ジェレミーは自分のことも話したし、私個人の生活についてもいろいろときいてくれた」とありました。

そして "A Study in Celluloid" でプロデューサーのMichael Cox(マイケル・コックス)がこのように書いています。もしかしたらやり直しが必要になって、撮影にひどく手間と時間がかかるかもしれないような場面のことを述べた後からの引用で、第一版では21ページです。


しかし撮影班はジェレミーのためなら、何でもしただろう。理由は二つある。ジェレミーは仕事を何よりも大切にして全力をつくしていたから。そして彼は全員と、仕事をこえた関係を築いていたから。撮影の初日に全員の名前を覚えただけではなく、誰の車が車上荒らしにあったか、誰の赤ちゃんが具合が悪いかも知っていた。ひとの気をひくためにお座なりにたずねたのでなく、本当に心から知りたいと思っていたのだ。

But a film crew would do anything for Jeremy and there were two reasons for this. First, because he was absolutely professional in his work and second, because he knew them all personally. Not only had he memorised everyone's name by the end of the first day's shooting but he also knew whose car had been broken into or whose baby was ill. And this was not a trick to curry favour; he genuinely wanted to know.


名前をすぐに覚えたというのは、一つ前の記事で引用したデイビッド・バークの言葉とも一致します。そしてクルーが皆ジェレミーを好きだった、ということも。ジェレミーは仕事も大切にするけれども、仕事以外の個人的な話もききたいと思っていたのですね。


そしてもう一つ、同じ本の中でマイケルが書いているエピソードがあります。これはマイケルがジェレミーと会って、ホームズのドラマ化について話した最初の日のことです。ジェレミーとジェレミーの息子のデイビッド、マイケルとグラナダのキャスティング担当者の4人が、レストランで夕食をとりながら話しています。1981年夏、雨の日だったようです。第一版の4ページです。


夜遅くなって、ひどく雨にぬれて泥でよごれた花売りむすめが入ってきて、容器つきのプラスチックの花を、レストランの最後の客にすすめてもいいかと支配人にたずねた。ジェレミーは残っていた花を全部買った。とても感じがよくて魅力的で、たしかにハンサムな俳優なら誰でもそんなふうにふるまったかもしれない。でもジェレミーはただ感じがいいだけではなかった。その少女が奨学金では足りない分のお金をどうやって得ているのか、何を勉強しているか、いつになったらかわいた服に着替えることができそうか、こころの底から知りたくてたずねたのだ。少女は(マイ・フェア・レディの原作の)「ピグマリオン」の最初の場面でのイライザ・ドゥーリトルのような気持ちで入ってきて、アスコット競馬場でのオードリー・ヘップバーンのように感じながらレストランを出た。

Towards the end of the evening a very damp and rather bedraggled flower girl asked the manager if she could try to sell pots of plastic flowers to the last customers. Jeremy bought the remains of her stock and was not just charming—which any handsome actor might have been—but genuinely interested in how the girl was supplementing a student grant, what she was studying and when she was going to get into some dry clothes. She had come in feeling like Eliza Doolittle at the start of Pygmalion and went out feeling like Audrey Hepburn at Ascot.



このエピソードもとても好きです。撮影クルーの話をききたいと思ったのと同じように、ジェレミーにとって、たまたま出会って、もう二度と会うこともないであろう少女のことを知りたいと思って話をきくのは、とても自然なことなのだろうと思います。こころの底からあふれでるあたたかさを感じます。この少女はジェレミーが自分を思いやってくれていることを感じて、幸せな時をすごしてお店を出たのでしょう。とるにたらない取り替え可能な人間ではなく、自分もまた大切な一人の人間であることを、ジェレミーの声と表情と存在から感じられたのではないでしょうか。

RM
コメント欄は時間がたつと埋もれてしまって、目につきにくくなってしまいます。もちろん個々の記事へのリンクをクリックしていただければ、コメント欄も含めて読んでいただけるのですが。

2つ前の記事「いたずらっ子ジェレミー(とデイビッド)(1)」のコメント欄でNRさんとYOKOさんが話してくださったことや、書いてくださったアドレスが、ここに来てくださる方の目に触れなくなってしまうととても残念なので、許可をいただいてURLを再度載せます。くわしくは2つ前の記事のコメント欄と、リンク先のお二人のブログをご覧下さい。

コメント欄への直接のリンクはこちらです。

そして、上記コメント欄でNRさんが紹介して下さったURLはこちらです。コメント欄にもあるように、名前は出ていませんが、ジェレミーのことを書いていらっしゃいます。
1回目
http://ameblo.jp/nrosey/entry-11404845673.html

2回目
http://ameblo.jp/nrosey/entry-11404859797.html

3回目
http://ameblo.jp/nrosey/entry-11405460974.html

私がこの記事を拝見してとてもうれしかったのは、ジェレミーがどんなふうだったかを想像して、感じることができるということです。たとえば、楽屋口ではじめて会ったNRさんの名前を言い当てるところは、わあ、ジェレミーらしいなあ、そういう人なんだなあと思って、うれしい気持ちになります。マンチェスターでのことも、はじめてうかがいました。その日の撮影が終わって、ホームズを脱ぎ捨ててロビーにあらわれたジェレミーの姿、そして別れ際の様子を想像しています。

YOKOさんもまた、ジェレミーとエドワードの"The Secret of Sherlock Holmes" をイギリスで観ていらっしゃいます。YOKOさんの記事はこちらです。

The Secret of Sherlock Holmes(舞台劇)

YOKOさんはその頃はグラナダシリーズはまだあまり観ていらっしゃらなかったとのことです。ときどき居眠り(うふふ)もなさったそうですが、ジェレミーとエドワードの舞台上の存在と声につつまれてうとうとした経験と思い出は、一生YOKOさんの中に残るのだろうなあと思います。

そしてなんと、YOKOさんと同じ時にNRさんも英国内に滞在していらしたそうです!不思議なご縁ですね。そのお二人のお話を私のブログのコメント欄と、それぞれの方のブログで読める私も、ご縁の中に入れていただいた気持ちです。

NRさんのブログの記事を拝見して、小冊子 The Ritualの1995年秋号のジェレミーを偲ぶ特集の中で、デイビッド・バークが書いている文章を思い出しました。ジェレミーがすぐに人の名前を覚えることが書かれています。これはグラナダの撮影クルーのメンバーの名前なので、NRさんのお名前をジェレミーが覚えていて、しかも言い当てたのとは少し違うかもしれませんが、でもジェレミーがまわりの人を大切にして、一人一人と気持ちをわかちあいたいと思っていたことを示しているという点で、共通するように思います。そして、だから楽屋に届けられたお花の贈り主の名前もちゃんと気に留めていて、NRさんと贈り主の名前がジェレミーの中でつながったのだと思います。そしてもう一つ思うのは、ジェレミーは自分でも言っていましたが、直感の人だということです。NRさんのお名前は必ずしも日本人の名前とは限らないし、もしも日本人だとわかるようにNRさんが書いていらしたとしても、その日に舞台を観に来ていた日本人や、日本人らしくみえる東洋人が他にもいた可能性は充分あると推測します。

それではジェレミーがすぐに名前を覚える話にもどって、The Ritualの1995年秋号から、デイビッド・バークの言葉を以下に引用します。これはこの前「Colin Jeavonsのこと(4)」でご紹介した、ジェレミーがポラロイドカメラでクルーやエキストラや共演者の楽しい写真をとって貼り出して、みんながチームの一員という雰囲気を作り出していた、とデイビッド・バークが書いている続きの部分です。


ジェレミーは撮影にかかわるクルー全員の名前をすぐに覚えていました。これもまた、彼が誰とでもすぐに親しくなる性質(たち)だからでもあり、そして仕事をとても大切にしているからでもありました。私の経験では、俳優はスタッフ全員の名前を撮影の最終日までかかってやっと覚えることが多いのですが、ジェレミーはすぐに名前を覚えていました。そしてそういう彼のおかげで、下っ端のスタッフでさえ、自分もチームの重要な一員だと感じることができました。ジェレミーがそういう性質の人間だったから、グラナダ・チームは彼のことが大好きでした。その気持ちを誰もが感じられたことでしょう。

Jeremy also - which was again part of his friendliness and part of his professionalism - knew the names of every single person in the crew immediately. In my experience actors often get to know the names of everybody, but not until the last day of filming. Jeremy knew them straight away and he was particularly good at making even the most minor member of the crew feel important and part of the team. I think he succeeded and I know that you would find enormous affection for him at Granada because of this ability.



今回もまた、いただいたコメントでこころ動かされて、新しい記事を書くことができました。こういうブログの書き方ができるのは、本当に幸せなことだと思います。

RM
まずはお知らせです。前回の記事のコメント欄をまだみていらっしゃらないかたは、どうぞご覧になって下さいね。近いうちに、コメント欄に書いてくださった情報を、リンクも含めてもう少しちゃんとご紹介する予定です。

さて、「いたずらっ子ジェレミー(とデイビッド)(1)」を前回書いて、別のいたずらを思い出しました。この時のいたずらっ子はジェレミーとデイビッドではなく、ジェレミーとエドワードです。これを以前書いた時は、エドワードが亡くなって間もない頃でした。

High-five

ジェレミーがインタビューアや友人にいたずらする時の声の調子、相手に見破られないように真剣な顔で、でも目には笑いが見え隠れしている様子、そしていたずらが成功してうれしそうに大声で笑いながらエドワードとHigh-five(ハイタッチ)をする姿が想像できる気がします。

そしてもう一つは今日ご紹介する、ジェレミーとデイビッドのいたずら。以下の引用はDavid Stuart Daviesの "Bending the Willow" からです。David Stuart Daviesが主催者の一人だった団体The Northern Musgravesが開催したJeremy Brett Memorial Lunchでデイビッド・バークが話した逸話を、この部分で紹介しています。


ジェレミー・ブレットが滑稽ないたずらが大好きなのは、バークが話したこの逸話からも明らかだった。

「撮影が終わって汽車でロンドンへもどっている途中でした。感じのよい老婦人と一緒のコンパートメントでした。そのご婦人はおしゃべりの中で、私たちの職業を尋ねてきました。私が口を開く間もなくジェレミーが堂々と言いました。『私たちは歯医者です!』ご婦人はとても興味を持ったようでした。実際のところ、『私たちはホームズとワトスンです』と言った場合よりももっと興味を持っていたのではないか、と思います。
『まあ!』彼女は尋ねました。『それでどちらが麻酔科医なのでしょう?』
『なんとおっしゃいました?』私が聞き返しました。
『つまり、あなたがたのどちらが眠らせるお役目なんですの?』
二人ともが言いました。『彼です!』」

Jeremy Brett's impish sense of the ridiculous is further exemplified in this Burke anecdote:

'We were travelling back to London on the train after a Sherlock shoot. We were sitting in a railway compartment with this sweet old lady. We got chatting with her and she asked us what we did. Before I could open my mouth, Jeremy announced, "We're dentists!" She was quite intrigued by this—in fact, I suspect she was probably more intrigued by that than if we'd said we were Holmes and Watson.
  '"Oh!" she said, "Which of you is the anaesthetist?"
  '"I beg your pardon?" I asked.
  '"Well, which of you puts people to sleep?"
  'We both said, "Him!"'



「歯医者です!」なんていう突拍子もない返事を、ジェレミーは多分真面目な顔で言ったのですね!そしてさらに今度は二人で声をそろえて、眠らせるのは「彼です!」

これは(私の理解が間違っていなければ)「人を眠らせる」というのは役者にとっては特別な意味を持つから、勢いこんで「彼です!」と言ったのでしょう。この後お互いをみながら、二人はいたずらっぽく目をきらきらさせたでしょうね!

RM

 RM

Author: RM
コメントは承認後に公開されます。古い記事へのコメントも大歓迎です。2010年8月7日に始めました。
私の記事へのリンクはどうぞご自由になさって下さい。
和訳には間違いがあるかもしれません。最近は必ず英語原文を併記・またはアドレスを書いて読めるようにしていますので、どうぞそちらも参考になさってください。

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