Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

前回と同じ記事から、また少し引用してみます。

この記事ではまず、莫大な予算をかけた番組で失敗が許されないことを話しています。責任感が強いジェレミーらしいですし、あらためて、建設中のベーカー街を訪れた時のジェレミーの写真を思い出しています。
建築中のグラナダスタジオでの写真;The Television Sherlock Holmesより

その後からです。訳では、改行を原文よりも少なくしています。

Goodbye to Baker St.
Evening Times, Aug 8, 1986
http://news.google.com/newspapers?id=dhw-AAAAIBAJ&pg=6105%2C2209545


このシリーズの撮影で、ずっと神経の張りつめた状態が続いたので、ちゃんと眠れるようになるのに、撮影が終わって数週間もかかりました。(中略)

ホームズはとても複雑な性格の、ひとと交わらない人物です。孤独な男ですが、素晴らしい直感の持ち主でもあります。私は危険にみえるような感じでこの男を演じようと思いました。

ホームズはこころに何かを秘めて、夜通し起きているふくろうのようです。夜の街をうろつきます。モルヒネとコカイン中毒でもあります。あの青白いメイキャップだと、私も薬漬けのようにみえるでしょう。でも薬なんてやったことはないんですよ。もしあの恐ろしい薬物でハイになっていたら、誰だって演技なんてできないでしょうね。私はヨガと瞑想で緊張を解いています。

ブロードウェイでの公演の時には、劇場から外に出ると、麻薬中毒のひとたちがごろごろしているのにつまずいて、転びそうになったりしました。でも何人かと仲良しになったので、 危ういところでまたぐと、手をふってくれるようになったんですよ!


"Working on the series made me so wound up that, when it was finished, it was weeks before I slept soundly at nights."

[…]

He explains: "Holmes was a most complex and isolated creature. A lonely man with brilliant instincts, and I tried to play him as dangerously as possible.

"He was a sort of determined nightbird, who roamed the streets, and was addicted to morphine and cocaine.

"With all the ghastly make-up I wear, I probably look permanently stoned!

"In fact, I have never taken drugs, because I don't believe anybody can perform well if they are high on some awful substance. I relieve my tensions through yoga and meditation."

"I used to stumble over addicts in the streets outside the theatres, when I have been performing on Broadway, and I would get to know some so well that they would give me a wave whenever I stepped over them!"



撮影中、ジェレミーは神経をぴんと張りつめていたのだと、あらためて思いました。1990年のあるインタビューでもこう言っています。

「私はすっかり疲れきって、でもいわばオーバードライブ、過熱状態になっていったのです。躁鬱ではなく、躁による興奮状態でした。そして撮影が終わって、解放されて休めることを喜んでいたのに、眠ることができなかったのです。それからどんどん事態は悪くなっていきました。」

たしかに、あのホームズをbecomerのジェレミーが演じるのですから、へとへとになっても何の不思議もありません。

今回のインタビューでは、休めると思ったのに眠れなくなって、でもなんとか数週間で落ち着いた、というように読めるのですが、1990年のインタビューでは良くならずに入院したようにも解釈できます。入院が正確にはいつだったのか、本をぱらぱらとめくったのですが、今の時点ではまだ私にはわかりません。"The Return of Sherlock Holmes" の撮影がはじまったのが1985年9月で、このシリーズの前半7本の撮影が終わってしばらくしての入院だったはずです。以前フォーラムで、撮影後アメリカへ行って、そこで状態が悪化したらしいと言っていた人がいました。出典が何かもふくめて、注意しておきましょう。

ヨガと瞑想の話は、何度かインタビューでしています。神経を休めるのに役に立っていたのでしょう。そうだったことを願っています。病気の状態が悪い時には、それでは追いつかなかったでしょうが。ジェレミーは明るくて活動的なひとであるとともに、精神的な静けさも大切にしていたということは、ジェレミーの人となりを考えるときに、示唆に富んでいます。

ブロードウェイで薬中毒のひとがジェレミーに手をふる話、なんだかジェレミーらしいですね。つまづきかけた時、多分あの笑顔であやまったんでしょう、そして、おなじみさんになったのでしょうね!

RM
ほんのちょっとだけ、何か書きたくなりました。

Goodbye to Baker St.
Evening Times, Aug 8, 1986
http://news.google.com/newspapers?id=dhw-AAAAIBAJ&pg=6105%2C2209545

このEvening Timesという新聞はスコットランドの新聞のようです。(http://familynotices.eveningtimes.co.uk/)

ホームズをもう演じないと決心した時期は何回かあったようで、そういう時のインタビューは今まであまり書いてこなかった気がしますが、この「さよなら、ベーカー街」という題の記事はその一つです。1986年に最初の入院をしているので、この8月の記事はその前なのではないかと思います。入院が何月だったか、ちゃんと調べていないのですが。

最後の方を引用します。二度目の奥様の Joan Wilson(ジョーン・ウィルソン)のことを話している部分です。


妻のことをとても愛していました。とても美しくて生気にあふれていました。妻がいたからこそ自分を信じることができたのです。
最後に妻が言った言葉は、「あなたは大丈夫?」でした。

"I loved her enormously. She was so beautiful and gutsy, and gave me enormous confidence.
"The last thing she said to me was: 'Are you going to be alright?'"


'Are you going to be alright?' (「あなたはこれから大丈夫?」)という、自分がこの世を去った後のジェレミーのことを思う言葉に、こころを打たれます。

ジョーンが亡くなったのはこの前の年の7月ですから、まだ1年しかたっていません。本当はまだ、こころの内から血が吹き出ているような状態だったでしょうに、仕事に復帰してあのホームズを演じて、こうしてインタビューでジョーンのことを話していたのですね。

これより5年後の1991年のラジオ番組で、「人生で大切な人を失ったとき、たやすくすぐに回復できるとは決して思わないでください。あなたが思っているよりもずっと多くの時間を、自分に与えてください」と語りかけていたのを思い出します。

RM
Colin Jeavons(コリン・ジェボンズ)の2007年の映像があることをご紹介しようとして、のびのびになっていました。前回の記事をよいきっかけにして、書きましょう。

コリンの息子さんがマネージャーをつとめていたバンド Reubenの音楽ビデオと、そのメイキングビデオです。2007年ですから7年前ですね。Reubenというバンドはロックとヘビー・メタルを融合した音楽を演奏する3人組で、2008年に活動をいったん停止したそうです。(http://en.wikipedia.org/wiki/Reuben_(band)

こちらが音楽ビデオです。46sからコリンが出演します。
http://youtu.be/afTgCbGxLCc?t=46s

なかなか過激な音楽と映像ですのでご注意を。2m18sまでの間、ところどころでコリンが映りますが、まあ最初だけでいいと思います。少なくとも私は、こういう音楽はうるさいと感じるくらいの年寄り(うふふ)です。でもこういう音楽が好きな方はどうぞお楽しみください!これは1m10s付近のスクリーンショットです。
Colin.jpg


こちらが上の音楽ビデオののメイキングビデオ、3分21秒から4分7秒に出ています。
http://youtu.be/vR7finiUQkk?t=3m21s

このビデオを昔参加していたフォーラムで紹介したとき、3分39秒で隣に座って談笑しているのが、多分息子さんだろう、と言った人がいました。確かに似ている気がします。4分5秒をみると、確かに目のあたりが似ています!
Colin 4Colin 5

自己紹介のところ、3分40秒付近で「シャーロック・ホームズ」と言っているのが聞こえますね!その少し後から、さらに3枚のスクリーンショットです。
Colin 1Colin 2Colin 3

レストレードがお年を召した、という感じの、なかなかいい表情でしょう!

RM
この写真、誰かわかりますか?

http://www.blackcountrybugle.co.uk/Screen-star-Colin-West-Bromwich/story-20150043-detail/story.html

「私たちの大好きな...」とわざと途中でとめましたが、これは「私たちの大好きなレストレード」、そう、Colin Jeavons(コリン・ジェボンズ)です!

記事のタイトルその他をあらためて書きます。
Screen star Colin back in the West Bromwich
By gavin jones
The Bugle, November 15, 2013
http://www.blackcountrybugle.co.uk/Screen-star-Colin-West-Bromwich/story-20150043-detail/story.html

昨年11月の記事ですから、数ヶ月前の写真ですね。ぱっとみておわかりになりましたか?私はわかりませんでした。でも目をよくよくみれば、ああ、と思います。コリンが故郷のWest Bromwichを25年ぶりに訪ねた時の写真で、横にうつっているのはコリンがまだ若い頃、故郷にいた頃を知っている女性です。

あの大きな目はそのままで、でもレストレードの時よりも飄々とした印象です。隠居生活を楽しんでいらっしゃるのでしょうね。1929年生まれだそうですから、ジェレミーより4つ年上、84歳です。とてもお洒落!

コリンの奥様もお元気のようで、昨年夏にご夫婦はThe Bugleというこの新聞宛に手紙と写真を送っています。下の記事がそれに関するもので、ご夫婦が送った写真の向かって右のおひげのかたがコリンのお父様だそうです。
TV star Colin turns to Bugle for help
By gavin jones
The Bugle, August 01, 2013
http://www.blackcountrybugle.co.uk/TV-star-Colin-turns-Bugle-help/story-20149432-detail/story.html

そしてこちらでは、コリンが子供時代、そして俳優時代のことを話しています。8歳か9歳で俳優になりたいと思ったそうです。引退の理由としては、台詞を覚えるのが大変になったことと目が悪くなったことをあげています。
Screen star Colin recalls his West Bromwich childhood
By rob taylor
The Bugle, March 21, 2013
http://www.blackcountrybugle.co.uk/Screen-star-Colin-recalls-West-Bromwich-childhood/story-20149005-detail/story.html

それ以外の小さな記事のアドレスを覚え書きとして。
I remember Colin Jeavons at West Brom school
By john.butterworth
The Bugle, August 15, 2013
http://www.blackcountrybugle.co.uk/remember-Colin-Jeavons-West-Brom-school/story-20156079-detail/story.html

Bilston Mom was Colin Jeavons' cousin
By john.butterworth
The Bugle, August 22, 2013
http://www.blackcountrybugle.co.uk/Bilston-Mom-Colin-Jeavons-cousin/story-20156099-detail/story.html


以前何回か、コリンのグラナダシリーズ以外の出演作品についてご紹介しました。
Colin Jeavonsのこと(1)
Colin Jeavonsのこと(2)
Colin Jeavonsのこと(3)

次には2007年の音楽ビデオに出ているコリンをご紹介しようと思ってのびのびになっているうちに、うれしいことに最近の消息が飛び込んできました。

「どうぞこれからもお元気でお過ごしください。消息を時々ネットで拝見できることを願っています。」

RM

前々回「第四の壁を破る」という言葉をご紹介しましたが、ホームズ以外のジェレミー主演作品で、ジェレミーを含めた登場人物がおおっぴらに大々的に第四の壁を破っている作品がありますので、ご紹介しましょう。The Rivals (1970) という喜劇作品です。残念ながらDVDになっていなくて、家庭用のビデオテープに撮られたものがYoutubeにあります。市販されている作品についてはYoutubeのアドレスを書かないようにしていますが、これは市販されていないので、後ほど記します。

筋はなかなか込み入っています。もっとも喜劇はみな一筋縄ではいかない、という言い方もできますが。ジェレミー扮する颯爽として美しくハンサムなCaptain Jack Absolute(Captainはどう訳したらいいのでしょう?辞書をひくと陸軍[空軍]大尉;海軍大佐とあります)は、Ensign Beverlyという名前の貧しい士官として恋する女性に近づき、今では互いに愛し合っています。その彼に突然父親が縁談を持ち込み、その相手がなんと偶然にも、彼の愛するその女性でした。でも彼女は最愛のEnsign Beverly以外との結婚は拒否します。彼女の伯母、友人、侍女、ジャックの父、友人、召使いが入り乱れて、話は展開します。

この中で、ジャックが折々に私たちに話しかけ、他の登場人物も時々こちらを向いて話します。全員ではなかったと思うのですが、ジャックの恋する女性、彼女の侍女とジャックの召使いは、何回も第四の壁を破っていました。

それではジェレミーのシーンをいくつか。画質は荒いですが音声はきれいです。まずは召使いにひげを剃らせているシーンで、これが最初の登場になります。こうやって頬をふくらませて、ひげを剃らせるのですね。16m41sから。
http://youtu.be/RjYNZj9QOjg?t=16m41s

ここから私たちを指で招いて話しかけます。そして友人を迎え入れます。18m10sから。
http://youtu.be/RjYNZj9QOjg?t=18m10s
このぴったりとした服だと、細いけれども上半身の筋肉が発達しているのがよくわかりますね!特に横を向いた時。

この後、制服の上着を着るのが27m17s。この赤い制服がよく似合って、美しいですね!そしてまた私たちに話しかけます。この後部屋に入ってくるのが、彼の父です。この父の役をエドワードが2006年に演じています(「補遺、備忘録 その2(David BurkeとEdward Hardwicke)」参照)。
http://youtu.be/RjYNZj9QOjg?t=27m17s

56m18sのここから、ジャックは恋する女性がおりてくるのを待ちます。彼女はEnsign Beverlyに夢中なので、Captain Jack Absoluteという求婚者には興味がありません。ジャックも女性もそれぞれに観客に話しかけます。そしてついに二人は対面します。
http://youtu.be/RjYNZj9QOjg?t=56m18s

ここからもまたいろいろあるのですが、今回はここまで。

このジェレミーも魅力的でしょう!声もいいしセリフまわしもいいし、表情も仕草も。喜劇も本当にいいんですよね。

これはDVDになってほしい作品の一つです。今あるものは、音は良いのですが映像が荒くて残念です。私は音声を抽出してプレイヤーに入れて時々楽しんでいます。

1枚だけ、スクリーンショットを。以前この記事で紹介したのと同じものです。


RM
BBC FOURのドキュメンタリー番組、Timeshift のSeries 13, Episode 7として、"How to be Sherlock Holmes: The Many Faces of a Master Detective" が12日夜に放送されました。この番組のウェブサイトはこちらです。
http://www.bbc.co.uk/programmes/b03pzsd9

イギリス国内からは(あるいは何らかの特別な手段を持っている人は)、BBCのウェブ上のiPlayerでも観ることができます。あと4日間です。

この回はホームズの映像作品についてのドキュメンタリーですから、もちろんグラナダ・シリーズも取り上げられていますが、1時間番組のうちの5分間ほどだったようです。それだけ映像化されたホームズはたくさんあって、興味深い話題に事欠かないということでしょう。グラナダのファンとしては、5分間では少し残念ですが。


今日ご紹介したいのは、番組では流されずに、このウェブサイトだけで聴ける音声があるということです。

Web exclusive: Peter Wyngarde on double detection (audio)
Peter Wyngarde recalls playing opposite two iconic television Sherlocks – Douglas Wilmer and Jeremy Brett.
http://www.bbc.co.uk/programmes/p01nwbs6

これはこの番組のナレーターをつとめた、Peter Wyngarde(ピーター・ウィンガード)が語っている録音です。彼は「三破風館」でラングデール・パイクを演じました。

(私の聞き取りが正しければですが)最後のところが胸を打つのです。

He [Jeremy] loved him [Holmes] like a father, he loved him like a son, and above all he loved Sherlock Holmes as a man."

ジェレミーは、ホームズのことを父のように愛し、息子のように愛しました。そして何よりも、シャーロック・ホームズを一人のひととして愛したのです。



もちろん私たちは、一言では言い切れないほど、ジェレミーのホームズに対する気持ちは複雑だったことを知っています。"Bending the Willow" には "a love/hate relationship" と書かれていますし、Edward Hardwickeもジェレミーが亡くなった後のインタビューで [He had a] love-hate thing [with Holmes] という表現をしています。(http://news.google.com/newspapers?&id=XHlGAAAAIBAJ&pg=3660,774774

魅力的だと思うところも、嫌いなところもありました。知れば知るほど好きでなくなると言い、もう演じないと言ったこともありました。もちろん、ホームズを演じることは他のどの役よりも難しく、だから面白い、ともよく言っていました。時によっても、気持ちがとても変わりました。

でも、それほどまでにホームズはジェレミーにとって「生きていた」ということでしょう。紙にかいて切り取ったような、ぺらぺらの姿ではなかったのでしょう。近くにいるからこそ、その良いところも嫌なところも見えてしまう。理解しようとするからこそ、自分に受け入れ難いところも見えてしまう。時に魅かれ、時に疎ましく思う、振り払いたくも思う。


ピーター・ウィンガードももちろん俳優として、一つの役を演じ続けることの大変さ、しかもその役がホームズであるということの持つ意味も十分わかっているでしょう。ホームズを演じた10年間の内に、ジェレミーの健康状態が悪化していったのも知っているはずで、彼と共演した時のジェレミーのからだは、かなり弱っていたでしょう。

それでも彼が、ジェレミーはホームズを愛していた、と繰り返して、最後に「ジェレミーはホームズを一人のひととして愛していました」と言ったことに、胸を打たれます。

RM

追記:"as a man"を"he loved" を修飾していると考える、すなわち"as a man"はホームズのことではなく、ジェレミーのこと、という解釈も成り立つのではないかと思ってネットで例文を調べましたが、前者に相当する例が最初の方に出てきました。それと、その前のfatherもsonも(日本語に訳すとどっちともとれるようになりますが)ジェレミーのことではなくホームズのことを指しているはずなので、そこからの流れにより、上記のように解釈しました。もしもそれは違うという方がいらっしゃいましたら、指摘して頂けるとありがたいです。
私自信は参加していないけれども時々読みに行く、SNS上のファン・グループがあります。そこで、「第四の壁を破る」という言葉をはじめて知りました。第四の壁とは、三つの壁で囲われた舞台の四番目の壁、つまり観客との間の見えない壁のことを言うようです。そして今では映像作品においても使われています。

日本語のWikipediaの「第四の壁」を解説したページはこちらです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC%E5%9B%9B%E3%81%AE%E5%A3%81

「第四の壁を破る」行為とは、劇中の人物が観客に見られていることを自覚しておこなう動きのことで、典型的なものは登場人物が観客に呼びかけることだそうです。

この説明をきいて、皆様は何を思い浮かべますか?グラナダ版でいえば、「最後の事件」でホームズを失ったワトスンが、私たちの方を向いて話す、あの最後のシーンではないでしょうか。いつもあそこでワトスンと目があってどきっとして、そして胸が一杯になります。221Bのあの部屋で自分の机につき、ホームズの銀の紙巻いれをなでて、ペンをとりインク壷のインクにつけ、そして話し始めながらこちらに顔をむける。

このシーンは、David Burkeの私たちへの別れの挨拶でもあるように感じます。

もう一つ、今度はホームズが第四の壁を破った時として話題になっていたのは「ぶなの木屋敷の怪」の最後のシーンです。ホームズはこちら側を向いて座っていて、背中からのワトスンの問いに答えて振り返り、ワトスンがホームズの答えに喜ぶ。ホームズは元の姿勢にもどって、伏し目でパイプを一服二服するうちに顔がほころび、視線をあげ目を次第に大きく開きながら、ちょっといたずらっぽく笑う。

私はこれを、ホームズがこちら(私たち)を見た、とはとっていませんでした。ワトスンに背中を向けてこっそり笑った視線が、こちらの方をたまたま向いていた、と感じていました。皆様はどうですか?

でも、ホームズがこの瞬間だけ第四の壁を破って、私たちとにっこり笑い合った、と考えるのもまた楽しいですね!

RM
アーチェリーに関する1989年の記事より(4)」での抄訳の最後は、「でも実はクラパム・コモンで、アーチェリーの腕が落ちないようにしているんですよ!」でした。今日はその続きです。

原文が読めるのはこちらです。
http://jeremybrett.livejournal.com/38599.html?thread=538311


朝一番にすることは、弓矢を手にフラットをそっと出て、樹の根元に置いたものすごく大きなクッションめがけて矢を射ることなんです。他の人が外に出てくるまでには、明るくなってから10分しかなくて、その頃には危なくなるので片付けなければなりません。

時々、お年寄りが犬を散歩させながら9 番アイアンの練習をしていて、犬は用心して、ずっと僕の方をみています。そうなると、朝食に帰ることになります。弓矢はトイレに置いています。

弓矢に湿気はとても大切なんです。バスタブにお湯を入れるときに、時々上の棚に弓矢をかけておくと、湿気を吸い込んでくれます。

ひとにとっては、寒い日のセントラルヒーティングはありがたいものでしょうが、弓矢にとっては大敵なんです。



ジェレミーは本当にアーチェリーが好きだったんですね!朝のたった10分間を逃さなかったのですから。朝の光が射し始める前、空の色がどんどん変わっていく短い間のジェレミーを想像してみるのも楽しいですね。

弓矢に湿気が大切というところ、検索してみると少なくとも日本の弓道では、むしろ湿気を気にしているみたいです。特に夏の湿気は日本ではすごいですものね。イギリスでは夏でもからりとしているのでしょう。そして冬にセントラルヒーティングや電気ファンヒーター、電気ストーブをつけると、日本の私たちも乾燥が気になりますが、イギリスの弓矢も乾燥を嫌うのでしょう。

トイレに弓矢を置いておくというのも面白くて、これを読んだ人の反応でも、ここを喜ぶ人が多かったです。何も知らずにトイレに入ったお客様は、びっくりしたでしょうね。特に弓は結構大きいですもの。

これでこの記事は終わりです。両親や兄たちのこと、アーチェリークラブの最初の日、クラパム・コモンでの朝と、フラットに置いている弓矢の話と、楽しくアーチェリーにまつわるあれやこれやを話していて、これも好きな記事の一つです。

RM

追記:訳さなかったところで、「映画やテレビでも、舞台でもまだ機会がないのですが、いつか役のなかで弓をひきたいと思っています」と言っています。この後ご存知のように「ソア橋のなぞ」で念願がかないました。この作品の宣伝用写真の1枚です。この時のホームズは左利きですね!

Source: http://jeremybrett.info/Holmes_C/images/Colour_Holmes%20%28220%29.jpg
Colour_Holmes (220)
新年のお慶びを申し上げます。

私は三が日はひたすら家にいるのが常で、初詣にも初売りにも行ったことがないのですが、2日はあまりの良いお天気と、腰痛の心配から、五十分くらい歩き回ってきました。その途中でコーヒーショップに寄って、キンドルに無料のサンプルを入れていたホームズ関係の本を流し読みして、あらためて目の前に宝の山があることを感じて嬉しくなりました。

読んだのは
1. Sherlock Holmes Illustrated and Complete(挿絵付きホームズ全集)の Introduction
http://www.amazon.com/dp/B004XNLKI6
2. Sherlock Holmes of Baker Street by William S. Baring-Gould
http://www.amazon.com/dp/B00AKZ8U84
3. Holmes and Watson by June Thomson
http://www.amazon.com/dp/B008N8VRBM
4. My Dearest Holmes by Rohase Piercy
http://www.amazon.com/dp/B004C44ARO

1は、挿絵付き全集を買おうという時にこれともう一つとで迷って、結局これは選ばなかったのですが、Introductionでは当時のロンドンのこと、ドイルの簡単な伝記などが書かれていました。
2は「シャーロック・ホームズ―ガス燈に浮かぶその生涯 」です。読み始めてあまりに詳しくて、なるほど「架空の伝記」なんですね、と納得。
3は「ホームズとワトスン―友情の研究」。おお、これは良いですね。2に比べて冷静で一歩下がった感じで、でも愛情が感じられます。2はもう脇目もふらず突っ走ってますけど。
4は「わが愛しのホームズ」。驚いたのは読みやすいということ。はじめだけかもしれませんし、パスティーシュが文体模写も含むとすれば、「正典より読みやすい」と言ったらがっかりされるでしょうが。話の方向はまだ全然わかりませんが、この英語なら私にも気楽に読めそう。あ、これが二人の間に愛情があるという設定の物語だということだけは知っています。(追記:この本のことはナツミさんのブログの「ビリーは二人いる」で知りました。翻訳版の表紙が坂田靖子さんの絵ということで、コメント欄では坂田さんのお話でも、もりあがりました。)

3の序文には、自分は「わが愛しのホームズ」の解釈にはくみしないと書いてありました。3と4の両方を読んでみようかしら。でもまずは「正典」をちゃんと全部読むのが先ですね。

無料でこれだけ楽しんで、宝の山の端っこをちょっとかじったお正月でした。


このお正月、"Sherlock" に関して断片的な情報が、探そうとしなくても飛び込んできます。ベネディクトのご両親も出演されたのですって?ジェレミーのお友達というお母様はどんな方なのでしょう。

今日みつけた2010年の記事で、ベネディクトがジェレミーのことに触れていました。今までこのブログでいくつかの記事のアドレスを覚え書きとして記してきましたが、それらとはまた違った表現だったので、アドレスを書いておきます。
http://articles.philly.com/2010-10-21/news/24981590_1_sherlock-holmes-strand-magazine-holmes-adaptation

A 21st-century Sherlock Holmes, from the BBC
By Tirdad Derakhshani - Inquirer Staff Writer
Phliadelphia Inquirer
October 21, 2010


グラナダ版を母と一緒にみて育った、とカンバーバッチは言う。彼の母親の、女優Wanda Ventham(ワンダ・ベンサム)はブレットの友人だった。

「よく母と一緒にホームズをみて、釘付けになりました.... まだ小さすぎて、あの作品がどれほど洗練されたできばえだったかは理解できなかったと思いますが。」

Cumberbatch says he grew up watching the Granada adaptation with his mother, actress Wanda Ventham, who was friends with Brett.

"We would watch it together and I would be glued.... I was probably too young to understand the sophistication of what was going on."



" I would be glued." (よく釘付けになったものです)という表現に、うんうんとうなずきました。うふふ、こんな一言も嬉しいのです。

Wikipediaをみたら、お母様のワンダ・ベンサムはジェレミーと同じCentral School of Speech and Dramaを出ているのですね。卒業が1956年となっています。ジェレミーはおそらく1954年卒業なので(「Central School of Speech and Dramaの頃」)、多分ジェレミーが最上級生の時に1年生だったのですね。

最上級生のジェレミーのことを "Too gorgeous to look at directly" (美しすぎて、しっかりと見ることができないくらい)と言った1年生の言葉が示すように、学校では学年が違っても接点があったのでしょうね。

ベネディクトのお母様がいつか、ジェレミーのことを話して下さったらうれしいのですが。

RM

追記:"Too gorgeous to look at directly" と言ったのはワンダ・ベンサムではなく、別の1年生です。この言葉の出典については「Central School of Speech and Dramaの頃」を参照なさってください。誤解を招く書き方をしてしまったかもしれないと思いまして念のために。

 RM

Author: RM
コメントは承認後に公開されます。古い記事へのコメントも大歓迎です。2010年8月7日に始めました。
私の記事へのリンクはどうぞご自由になさって下さい。
和訳には間違いがあるかもしれません。最近は必ず英語原文を併記・またはアドレスを書いて読めるようにしていますので、どうぞそちらも参考になさってください。

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