Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

久しぶりの「一枚の写真」シリーズです。

eBayに出品された写真のサンプル画像を頂いてきました。これはみるのは初めてではないけれども、画質がよくて大きいことがうれしかったのです。

好きな写真の一枚です。と書きながらいつも思うのですが、好きじゃない写真なんてあるのかしら?!

そしてタイトルの由来は、ジェレミーの鼻の頭だけに日が当たっている、ということです。かわいいでしょ?これは写真の傷でありません。

Source: eBay
Holmes Watson

ところで、タイトルの「おはながたかいのね」は童謡「ぞうさん」の「おはながながいのね」から頂きました。作詞した、まどみちおさんがお亡くなりになりましたね。まどさんのことについては、阪田寛夫さんの本「まどさん」(http://www.amazon.co.jp/dp/4480027335)で知りました。そしてこの本を読んだのは、河合隼雄さんと阪田寛夫さんの対談でお二人がまどさんのことを話していらしたからでした。もうお三人とも、この世を去ってしまわれました。

閑話休題。

この写真は当時の記事などでも何度かみています。
たとえばこの記事もそうですね。

"Return of the Immortal Detective"
By Julian Symons
Gainesville Sun - March 17, 1985
http://news.google.com/newspapers?id=2KMRAAAAIBAJ&sjid=lekDAAAAIBAJ&pg=6853%2C522580

グラナダ版がアメリカで放映されるのにあわせた、ドイルについて、ホームズについての記事で、グラナダ版についてはたいしたことは書かれていませんが、写真が載っているということでご紹介します。この時期にこの記事が書かれたということは、グラナダ版の評判がアメリカにも知られていて、期待するひとが多かったからでしょうね。

この記事の写真では鼻先は上の写真ほどはっきりしませんが、でもここだけ光が当たっているのがおわかりになるでしょう?

RM
前回の引用箇所への感想です。

このインタビューでは、直接ホームズにつながること以外にも、演技に関して、俳優であることに関して、いろいろと話しているという点がまず興味深かったです。たとえば、「短所と長所」という言い方でジェレミーが自分の演技のことを語るのを読むのもはじめてですし、ここには引用しませんでしたが、ジェレミーがエドワードの若い頃の舞台を見た時のことを話して、熱烈にほめているところもあります。

そして、文字で読んで二人の掛け合いを想像できました。今回最初に引用したところでは、エドワードがまずインタビューアの質問に答えたのに呼応するようにして、ジェレミーが自分のことを話す、次の引用箇所では、ジェレミーが話す中にエドワードが入っていって、そしてジェレミーの言葉を補足する形で、インタビューアにジェレミーの演技のことを話す。そういう、お互いの呼吸をよんで会話を回し合うようなところも楽しむことができました。

引用部分で話題になっているのは、主にジェレミーの声のことです。

訳語について少し書きます。舌癒着(tongue-tie)でRとSの音が出せなかったことは、よくジェレミーが話していました。"speech impediment"と言っているところ、「言語障害」と訳しましたが、Wikipediaによれば、医学的には「言語障害」のなかに「発声障害」、「構音障害」などがあって、ジェレミーの場合は、「構音障害」ということになるようです。しかし「構音」とすると固いので、原文で舌癒着に関連して "voice"と言っているところも「声」としましたし、練習のところは「発音練習」としました。"voice"は辞書では声音(こわね)、発声などを含む広い意味で使われるようで、エドワードがジェレミーの声をほめるところは、すべてを含んでこの語を使っているのでしょう。

さて、引用部分への感想にもどります。最初の部分では、エドワードの「抵抗や反対があった方がいい」という言葉に対して、思いがけない方向からジェレミーの述懐が出てきたこと、構音障害であったことを肯定的に前向きにみているのがこころに残りました。この障害のことをよくインタビューで話していたのは、自分はこう見えても苦労したんだ、と言いたいためではないというのは感じていましたが、構音障害は捨て去るべき過去ではなく、ある意味では祝福であるように話しているのが、今回印象的でした。

そして二番目の引用部分では、それでも弱点と感じていることを述べています。エドワードも言っているように、本当はジェレミーの声はとても表現の幅が広くて、音楽的で、感情が直接こころに訴えかける強さを持っていますよね。ここで「声」と書きましたが、先に述べたように、音色、抑揚、間など、いろいろなものを含んだすべてのことです。

私がジェレミーの声のすばらしさを認識した最初は、映像無しのオーディオブックを聴いた時、そしてラジオインタビューを聴いた時です。ラジオインタビューでは、声のあたたかさと、気持ちがそのまま声に出るまっすぐさを感じましたし、オーディオブックでは、ある人物の性格や感情の動きを、すべて声で表現する力に圧倒されました。映像があると、みとれてしまって(うふふ)声の力のすべては感じ取れないこともあって、声だけの作品もとても好きです。

それでもジェレミーにとっては声は弱点で、だからこそ、声や言葉を大切にしているのですね。

そして、自分の演技に確信が持てない、というのもまた驚きです。これと少し共通することは、以前ご紹介したインタビューでも言っていて、その時も驚きました。
俳優であることの重圧;インタビュー記事 When the lights went out (1990) より
「心の重圧は何よりもまず、自分は俳優なのだ、と自信を持って思うことができなかった、ということと関わっていました。私は有名な軍人の父と、アイルランドのクエーカー教徒の母との間に生まれたのですが、どうしたらこの二人から俳優が生まれる計算になるのかわかりませんでした。私が自分の俳優としての能力を信じられるようになるには、とても長い時間がかかりました。」

でも、演技に確信が持てないからこそ、一つのやり方に固執しないと言っています。そしてそこが自分で好きだ、と。

ジェレミーが作品によって、すっかり変わってみえることは、誰もが驚くことです。そして普段のジェレミーとはまったく違う人格になりきってしまうようであることも。それは"becomer" であるからだと思っていました。Peter Hainingは「役に入り込むとまったく人が変わってしまいます。あれほどの変わり様をみせる人には、それまでまったく会ったことがありませんでした」と言っています。
becomerであること(3)

ジェレミーが役柄によってまったく違う顔を見せるのは、becomerであることも大きいのでしょうが、一つのスタイルにこだわらずに、新しいやり方を求めていることも理由の一つらしいということが、今回の言葉でわかりました。そして同じ演目であっても、いつも何かを発見して、昨日と違う演技をするのですね。そのことは以前読んだインタビューでも言っていました。
ホームズの複雑さ(2);1989年のインタビューから
「僕は今ホームズを演じるのに夢中なので、新しい表現方法が毎日自然に思い浮かんで、突然新しい理解が生まれます。昨日の夜も、ホームズの独白を演じる新しい方法をみつけました。」

最後に汗かきについて。"The Secret of Sherlock Holmes"の舞台をみた人が何人か、ジェレミーの汗のことにふれていたのを覚えています。テレビインタビューをみても、BBCの "The Wogan Interview (1988)" では汗が光ってみえますし、ジェレミーへの最後のインタビュー映像が含まれるドキュメンタリー、BBCの "Playing the Dane (1994)" では、始終汗をぬぐっています。でもそれ以外のインタビュー番組ではそうはみえません。"Bending the Willow"によれば、少なくとも晩年は、薬の副作用による多汗ということでした。だからもともと汗かきというわけではなかったかもしれないのですが、こうして自分のことを冗談の種にするんですよね、「俳優でなく、サウナの経営者にでもなるべきだったよ」と。こういうところも、やっぱりジェレミーらしいと感じます。もしかしたらこのインタビューの時も汗をぬぐうような状態で、それをインタビューアに心配させないように、という気持ちもあったかもしれないと想像しています。

RM
前回の記事にたくさんの拍手を頂きました。「私も手紙を受け取っていますよ」と優しい目配せのような合図をしてくださったのですね。少しずつ増えていくのをみて、場の力のようなものも感じて、それもうれしいことでした。どうもありがとうございました。


前回、子供の頃からの二つの障害、言語障害とディスレクシア(難読症)について触れた文章を引用しました。別のインタビューから、言語障害について話しているところを引用しましょう。

これは"The Secret of Sherlock Holmes"の公演が行われていた時に、Edward Hardwicke(エドワード・ハードウィック)と共に受けたインタビューで、発行年は1990年ですが、インタビュー自体が行われたのは1989年です。

"Partners in Crime"
Stage struck, issue 1, 1990

エドワードがインタビューアから、俳優である両親からエドワードも俳優になると期待されていたか、それともほかの道を勧められたかと問われて、その頃は戦争の時代で、人々は次に何がおこるか注意しておくのが精一杯だった、自分は反対されたこともなかったし、勧められたこともなかった、いつも思うのだが、反対にあうのはいいことで、自分はこの職業でいいのかと、いつか疑念を抱くときがくる、だから前に親の反対などにあっていると、 それだけ確固たる信念を持つことができる、あまりに小さい頃から子供に、何かになるように勧めたり励ましたりするのはよくないと思う、何か抵抗や反対があった方がいいと思う、と話しています。このあたり、エドワードはいろいろと話していて興味深いのですが、ざっと要約しました。

エドワードが "I think you need some resistance."(何か抵抗や反対があった方がいいと思います)と言ったのを受けて、ジェレミーが話しはじめます。


ジェレミー:ちょっとおかしな話だけど、言語障害が私を少し後押ししてくれたように思います。言語障害があるおかげで、正しく言葉をださないといけないことに気づけたから。その頃もまだ発音練習していましたし、今でもそうです。毎朝すごくきちんと練習しています。だから少し抵抗や障害があるのは多分いいことなんでしょう。そして父のこともそうでした。父の反対にもおびやかされました。

JB: I think my speech impediment, funnily enough, in actual fact helped me a bit to push more, because I knew that I had to get my voice right. I was still working on it, and still do. I work very hard in the mornings on it. So maybe the little bit of resistance is good. And Dad, you know, he did scare me.



そしてここから、お父様からうけた反対について話していますが、そこは今回は省いて、その後インタビューアが、俳優としての長所と短所を尋ねた時のジェレミーの答えです。途中でエドワードが会話の中に入ります。


インタビューア:俳優としての自分の長所と短所は何ですか?お互いに相手のを答えてもいいですよ!

ジェレミー:そうですね、私の弱いところは声です。最初にあらわれた弱点ですからね。子供の頃からずっと戦ってきたものです。子供の頃に舌癒着症だったので、だから今まで続く弱さです。自分の中で、ね。

エドワード:弱点だって?

ジェレミー:ずっと弱かったものだ。

エドワード:そんな素晴らしい声をしていて、声が弱いだなんて言うのを聞きたくないよ!

ジェレミー:それで、弱点を埋め合わせようとして、やりすぎるくらいになっているんだよ。最初から声が大きな弱点だったからね。多分...自分の演技の中で一番誇りに思うのは、ちゃんとした演技ができているという確信を完全には持つことがないから、何に対しても固執することがない点だと思う。その部分は好きだね。好きじゃないのは汗をかきすぎることだ。俳優でなく、サウナの経営者にでもなるべきだったよ。

エドワード:君の声が弱点だなんて、口にするのも馬鹿らしいよ。今まできいた内で、一番力強い声の一つだね。でも変化についての君の話にはまったく賛成だ。(訳注:ここからはインタビューアに向かって)ジェレミーは見事に演技を変えていくんです。

PC: What do you think your strengths are, as an actor, and what are your weaknesses? And you may answer for each other if you wish!

JB: Well, mine is my voice, because that was my first weakness. I've had to fight that all my life. I was tongue-tied as a child, therefore that has always been weak, inside me.

EH: Weakness?

JB: It always has been weak.

EH: Well I don't want to hear it when it's strong!!

JB: That's why I've over compensated, because it was a great weakness when I started. I think that probably (pauses) the thing I'm proudest about in my acting is that I'm actually never totally convinced that I've got it right, which means I don't get stuck. I like that part of me. The part I don't like about me is that I sweat too much. I shouldn't have been an actor, I should have run a sauna bath.

EH: It's ridiculous to suggest your voice is a weakness. It's one of the most powerful voices I've ever heard. I absolutely agree about the change. Jeremy's marvellously adept at change.



ここから後、エドワードはインタビューアに向かってさらに話を続けます。ちょっと長くなりましたので、今回の引用はここまでにします。上の引用箇所についての私の感想は、次回書こうと思います。

RM
少し間があきました。その間に遠出(とおで)をしてきました。

遠出をしている間、そしてその前数日間も含めて、平均すると普通の100倍くらい、拍手をいただいていました。多分同じかたでしょう。数年前からの記事を読んで一つ一つ拍手をして下さっているようです。ありがとうございます。以前、ここに書くのは手紙のようだ、と思ったことがありました。その中には、何年か後でここを読んでくださる方への手紙、という気持ちもありました。受け取って下さる方が今もいらっしゃるのですね。


書こうと思って途中になっていた、ジェレミーのディスレクシア(難読症、識字障害)について、"Dancing in the Moonlight"から引用します。以前もそう書きましたが、この本にしか書かれていないかなり具体的な記述を含むので、ジェレミーが著者のDavid Stuart Daviesに語ったのではないかと思います。このブログでの、ディスレクシアに関連するこれまでの記事はこちらです。
ディスレクシア(難読症、識字障害)
ディスレクシア(2);アメリカツアーの時のジェレミー

なお、途中に"not being able work properly"というところがあって、"not being able to work properly" の誤植かとも思うのですが、100%の自信はないので、以下に書き写すときは元のままで書いています。(追記:書き直したつもりで、私がさらに間違えて書いていました。訂正しました。)


JBは子供時代に二つの障害をかかえていた。一つは言語障害で、RとSを正しく発音できなかった。このために学校でひどく恥ずかしい思いをしたし、子供たちに笑われた。しかし彼がいつもそうであったように、強い意志でこの問題に立ち向かい克服した。その人生の終わり近くになっても練習を続けていて、はっきり正しく発音できるようにこころがけていた。子供の頃に問題となり、一生ついてまわったもう一つの障害は、ディスレクシア(難読症)だった。これは学校教育が始まった時にあきらかとなった。ほかの子供たちについていくことができず、授業で英語のつづりを声に出して言うことが難しかった。彼はもともと、とても活発な子供で、ちゃんと勉強についていけないということで気持ちが落ち着かずに、問題のある行動をとるようになった。耳がきこえないのかもしれないと思われたが、検査を受けて、聴覚にはまったく問題がないことがわかった。その頃ディスレクシアについてはほとんど一般には知られていなくて、この症状を持つ子供たちは、物覚えが悪いとか愚かだとか思われていた。時がたって、やっとディスレクシアだと診断されてからは、母はジェレミーのためだけに本を読んで、言葉や文字を読むことができるように彼を助けた。次第に読めるようにはなったが、EとSの字をどの位置に置くか迷うことは、生涯にわたって続いた。

JB suffered from two disabilities in childhood. He had a speech impediment that made it difficult for him to pronounce his Rs and Ss correctly. This embarrassed him greatly and he was taunted by other children at school. However, with his usual determination he fought against the problem until he conquered it. Even into his later life, he carried out his vocal exercises to ensure that his diction was clear and accurate. The other problem which developed in his early years and was to dog him all his life was dyslexia, which began to display itself when he started formal education. He couldn't keep up with other children in the class and he found it difficult to spell letters out loud in lessons. He was a hyperactive child and his frustration at not being able work properly manifested itself in difficult behaviour. It was thought that perhaps he was deaf, but tests proved that he had perfect hearing. At this time dyslexia was almost unheard of and victims of the condition were regarded as slow and unintelligent. When dyslexia was eventually diagnosed, his mother would read to Jeremy alone helping him to become familiar with words and letters. Gradually he improved but the uncertainty of where to place the Es and Ss stayed with him all his life.



言語障害については、ジェレミーがインタビューでよく、手術を受けたこと、そして毎朝練習をしていることを話していましたね。"with his usual determination" というところ、ああ、本当にそうだなあと思いました。ジェレミーは決断のひと、意志のひとですね。 父親に反対されても俳優になろうと決めたことも、ホームズを演じるにあたって、原作に忠実な映像作品にするために全力をかたむけたことも、病気になって、それでもホームズを演じ続けようと決めたことも。

そしてその後はディスレクシアについての記述です。ジェレミーは子供時代の家での生活について、幸せだったこと、活発ないたずらっ子だったことをよく話していました。
「私が子供だった頃」
「私が子供だった頃」後半

"a hyperactive child" とも、この引用部分に書かれていますから、とにかく元気な子だったのでしょう。そんなジェレミーが、ディスレクシアのために学校で授業についてゆけず、フラストレーションがたまって、問題児扱いされたということだと思います。具体的に何をしたのかわかりませんが、耳が聞こえていないのではないかと検査をされたそうですから、一つには、授業で何を尋ねられても答えずに黙っていたのではないでしょうか。

あるいは、"difficult behaviour" (問題のある行動)とされている中身は、自分のことをないがしろにする先生や馬鹿にする子供に立ち向かったということかもしれません。ジェレミーが自分を "I'm a rebel" (反抗者、反主流)と言っていたことが私の印象に残っているので(The Armchair Detective, Vol.18, No.4, 1985)、そんな想像もしています。

この前トム・バークもディスレクシアだったというインタビューをご紹介しましたが、トムも学校のサポートや理解を得られず、反抗的になったと自分のことを話していました。デイビッドは、明るい子だったトムの表情が暗くなったことから、アナと一緒に探して、シュタイナー学校に転校させたと言っています。私はシュタイナーの思想に興味を持って何冊か本を読んだこともあるので、二人がシュタイナー学校を選んだことを興味深く感じました。

さて、ジェレミーのはなしに戻ります。お母様が本を読んでくださったところ、いつも私は、お母様の腕に軽く頭をのせて、寄りかかって本をのぞきこむ、子供のジェレミーを想像します。そうやって、文字や言葉を読むことを覚えたのですね。

"the uncertainty of where to place the Es and Ss" というところ、EとSを混同するのでもなく、飛ばしてしまうのでもなく、単語の中での位置があやふやだということなのでしょう。

ジェレミーのファンの集まりの中にもディスレクシアだという人がいて、彼女は普通に文字を読み、文章を書いているように見えたのですが、学校では苦労したし、今もスペルチェッカーがないと文章が書けない、と言っていました。ジェレミーもまた、大人になっても苦労をかかえていたのですね。

ジェレミーが順風満帆の人生を送ったというわけではなかったこと、そして意志の人、決意の人であったことをあらためて思いました。

RM
アメリカ PBSの番組 "Mystery!" の枠で、 "The Adventures of Sherlock Holmes" が放送された最初の日が、29年前の昨日、1985年3月14日だったそうです。
http://www.ihearofsherlock.com/2014/03/sherlockian-history-30-years-ago-today.html

"The Television Sherlock Holmes" によると、イギリス本国での放送は1984年4月24日夜9時から、この本の日本語版である求龍堂の「NHKテレビ版 シャーロック・ホームズの冒険」によると、日本での放送の最初は、1985年4月13日夜10時半です。

ジェレミーの二度目の奥様のJoan Wilson(ジョーン・ウィルソン)がプロデューサーだった"Mystery!" 枠での放送の記念日を祝って、当時の新聞記事へのリンクをはっておきましょう。
http://news.google.com/newspapers?&id=QVovAAAAIBAJ&pg=1484,3067439

これは1985年1月17日のロサンジェルス発の記事で、テレビ批評家を集めてPBSが行った試写会のことを書いたものです。4つの番組をとりあげていますが、ホームズに関しては3月14日に最初の放送があることを記しています。29年前の記事を読んで、当時に思いをはせています。

"New Sherlock Holmes series among four PBS offerings"
By Lee Winfrey
Beaver County Times - Jan 17, 1985


今まで観たシャーロック・ホームズの中で最高のものだ。バジル・ラスボーンはこのヴィクトリア朝の名探偵を映画の中で何度も演じたが、ジェレミー・ブレットの鹿撃ち帽を持つのにもほとんど十分でないほどだ。ブレットのホームズは3月14日にデビューする。(略)

ブレットがホームズを演じるのを試写会で観ていて、まばたきもしたくなかった。彼の最高のホームズをほんの一瞬でも見逃したのを悔しく思うから。ブレットは頭脳の並外れたエネルギーを発散していて、ホームズの思考が頭の中でものすごいはやさで動いているのが感じとれるようだ。

The best Sherlock Holmes I ever saw anywhere. Basil Rathbone, who played the Victorian sleuth in so many old movies, is hardly good enough to carry the deerstalker cap of Jeremy Brett. You'll see when Brett debuts as Holmes on March 14.

[....]

Watching Brett play Holmes in a preview here, I didn't even want to blink my eyes, regretting shutting out the sight of his definitive portrayal for even a fraction of a second. Brett emits cerebral energy, as though the crackling of his thinking is radiating off his skull.



まばたきしたくないという感じ、わかります。吸い込まれてしまいますから。ラスボーンについてはちょっと言い過ぎ、ちょっと筆がすべったかもしれませんが、でもとにかく、試写会をみたテレビ批評家が、ジェレミーのホームズにすっかり夢中になったのを感じられます。

29年目を記念して、ちょっとだけ書きました。こうして書いておけば、数字に弱い私もちゃんと日にちを覚えられる...かしら。

RM
約一ヶ月前の、今年の2月5日に撮られた写真をご紹介しましょう。この前書いたインタビューでは、David Burke(デイビッド・バーク)とTom Burke(トム・バーク)が一緒に写っていましたが、今回はAnna Calder-Marshall(アナ・カルダー・マーシャル)も一緒です。アナはご存知のとおりデイビッドの奥様で、グラナダ版ホームズでは「未婚の貴族」に出演しました。以前ジェレミーの追悼号でのアナの文章をご紹介したことがありました。私はアナの、ジェレミーに対する見方がとても好きで、共感もしましたし、影響を受けたと言ってもいいかもしれません。
Anna Calder-Marshallのジェレミーを偲ぶ言葉(1996)より

デイビッド、アナ、トムが一緒にうつっている写真はこちらです。ウォーターマークが入っています。
http://theatre.wooller.com/?people=3603&id=58918

アナの後ろはDanny Webbという俳優で、彼が出演した劇のプレス・ナイト後のパーティでの写真だということです。デイビッドの帽子、どこかでみたなあと思ったら、以前「David Burkeの近況;公演中です」でご紹介したリハーサルの写真でかぶっていましたね!

そしてこちらの写真は、アナとトム。お母様のアナがトムに肩を抱かれながら見上げているのが微笑ましいです。うれしそうですね。
http://theatre.wooller.com/?people=3603&id=58894

同じ時の、トムひとりの写真。目がきれいです。
http://theatre.wooller.com/?people=3603&id=58895

トムの写真でほかに好きなのは、Paul Black Imagesという、プロの写真家のサイトにあるものです。そのうちで3枚、アドレスを記します。こちらはウォーターマークなしで、しかもずいぶん大きな写真です。
http://paulblackimages.com/?p=763
http://paulblackimages.com/?p=753
http://paulblackimages.com/?p=760

トムも、年齢を重ねるにつれてどんどんいい顔になっている感じがします。今32歳です。10年前の2004年に「ロミオとジュリエット」のロミオを演じたときのかわいい写真もどうぞ。
http://www.shakespearesglobe.com/education/discovery-space/adopt-an-actor/archive/romeo-played-by-tom-burke

トムに関する情報、たとえばインタビューや写真は、ネット上で今どんどん増えているという印象を持ちます。「三銃士」で注目されているからでしょう。でもその前から劇場や映像作品への出演で、着実に評価を高めていたようです。私が最初に俳優としてのトムのことを知ったのは、2010年に劇"Design for Living"に出演した時です。「いろいろな写真、その1(David Burkeの息子、Tomのことも少し)」にも書きましたが、ジェレミーがかつて演じたオットー役でした。それで検索でひっかかってきて、デイビッドの息子さんということで驚いたのだったと思います。

ご両親ともども、これからもその活躍ぶりをネットでみることができますね。楽しみです。

RM
ジェレミーがディスレクシアだったと"Dancing in the Moonlight"に書かれている箇所を次に引用するつもりだと、前回書いたのですが、書き写して訳す余裕がちょっとないので、その記事でちょっとだけ触れようと思っていたことを先に書きます。

"Sherlock Holmes Society of St. Charles" というタイトルのブログの2012年5月2日の記事は、ジェレミーにBAFTA賞を、という請願が残念ながらしりぞけられたことを伝えるものでした。
http://sherlockholmesofstcharles.blogspot.jp/2012/05/bafta-denies-brett.html
(私のブログでは「ジェレミーにBAFTA賞を!」というカテゴリーで、この活動のことを書きました。)

そのコメント欄に、これは直接BAFTA賞とは関係ないのですが、このブログの著者が書いている文章があって、下はその訳です。


ジェレミーと一緒にSt. Louisに行ったときの懐かしい思い出がいろいろあります。
「221b」の詩を読んでくれるように頼んだら、ジェレミーは、自分はディスレクシアなので読めないと言いました。彼のような素晴らしい俳優が、読むことに困難をかかえているのを想像してみてください。すごいことです!



このブログの著者が言っている「St. Louisに行ったとき」というのは、以前「becomerであること(2)」で引用した文章の中にあるように、1991年10月だと思います。ジェレミーがPBSのためにアメリカをまわったツアーの中でのことです。

「221b」という詩のことは知りませんでしたが、調べたところ、多分ここにある詩だと思います。
http://always1895.net/post/11857862603/starrett1-birthday-week-2011

このコメントの最後に"Wow!"と書かれているように、私もこれを読んで驚きました。ジェレミーがディスレクシアだったということは、すでに前述の本で読んでいましたし、Radio TImesのインタビュー(19-25 March 1994)でもジェレミーが話していました(このインタビューと、記事が読める場所については「マンチェスターのMidland Hotelについて(3)」で触れました)。でも、ホームズを演じていた頃でさえ、詩を読むのを断るくらいだったとは思ってもいませんでした。

それではジェレミーのディスレクシアは、この時どのようだったのでしょう。想像してみました。「詩を読むように頼んだ」というところ、これは当然、声に出して朗読してほしいということでしょう。この詩はシャーロッキアンの間ではある程度有名な詩のようですし、2行目と最後の行は私もきいたことがあるくらいですから、ジェレミーもこの詩を知っていた可能性はとても高いと思いますが、それでもその場で文字を追いながら朗読するのが、プロの俳優としてはためらわれる、という状態だったのでしょう。普通に本などを読むことはできても、文字で書かれた言葉と、その言葉が持つ発音や意味との間のつながりが、一般の人よりも弱い、あるいはつながりをつけるのに時間がかかったのではないか、と想像します。だから、今わたされた詩をすぐに声に出して読むことはできない、ということだったのではないでしょうか。

ジェレミーのディスレクシアがどんなだったかについては、すべて想像なのですが、でも読むことに何らかの困難をかかえた状態で台本を読み台詞を覚えて、時にひたすら自分の推理を話している、あのホームズを演じていたということは、確かだと思います。あらためて敬愛の気持ちを持ちました。

RM
前回の記事でDavid Burke(デイビッド・バーク)とTom Burke(トム・バーク)のインタビューに触れました。有料登録者でなくても読めるのはトムのインタビューの途中までで、「その後、dyslexia(ディスレクシア)だと診断されました」というトムの言葉で終わっています。
http://www.thesundaytimes.co.uk/sto/Magazine/article1379636.ece

ディスレクシアは、難読症、識字障害などと訳されるようで、こちらが日本語のWikipediaのページです。身近にディスレクシアの人がいなので、具体的にどのように識字障害があらわれるのか、私にはまだわかっていません。また上記Wikipediaによれば、「ディスレクシアは言語によっても現れ方が異なることが示唆されて」いるそうで、英語圏におけるそれについて、今は具体的に想像することが難しいです。今後気をつけておきたいと思います。

今回トムは、学校に行き始めて黒板を書き写す時に、何か書かれているようにはみえるけれども自分は単語ごとにわけることができず、文字と数字をただむちゃくちゃに並べてノートのページをうめたのを覚えている、と言っています。

その前の部分では自分は"numerically dyslexic"と書いているので、数字の認識が特に難しいようです。「数字認識障害」と訳したらよいのでしょうか。

今回これを書くためにネットを検索して少し驚いたのですが、私ももしかしたらごくごく弱いけれども「数字認識障害」かもしれません。"Numbers seem abstract to me, I cannot relate them to anything, I feel as though I cannot see them"(数字は抽象的なものにみえて、何かと関連させることなんてできないし、数字というもの自体がまるで目に入ってこないとも感じられます)と相談している人がいますが、私がまさに同じ気持ちを数字に対して持っています。自分の年齢もしばしばあやふやですし(だって、毎年変わるのに、なぜほかの人は覚えられるのでしょう?)、年号も(西暦と和暦があるなんて!)、今日の日にちも同様(認知症を調べるテストに落ちてしまいます)。だって数字は無機質で、なんのイメージもともなわないのに、どうやって覚えられるというのでしょう。それで、数字を覚えねばならないとき、私は0から9までの数字を頭の中で左から右に順に並べて、どの位置か、二つ以上ならどういうパターンで指差すかで覚えます。パターンなら覚えられるからです。

今回、自分がごくごく軽い数字認識障害かもしれないと思ったことで、数字や文字や言葉の認識障害の人がいることを、少しだけ想像できるようになった気がします。

脱線しました。さて、有料登録者が読める部分には、デイビッドのインタビューが書かれていて、自分もおそらくディスレクシアだったのだろう、その頃はその名前では呼ばれていなかったけれども、と言っています。

ジェレミーの2度目の奥様のJoan Wilson(ジョーン・ウィルソン)も、ディスレクシアだったとジェレミーはラジオインタビューで話しています。そしてジェレミー自身もディスレクシアだったと"Dancing in the Moonlight"に書かれています。具体的な記述なので、ジェレミーが著者のDavid Stuart Daviesにそう語ったのではないかと思います。いつか(できれば次回)引用しましょう。

RM
この前トビィさんとお話してから2週間とちょっと、お元気でしょうか?心配しすぎないようにして、お留守を守っていますね。どうぞまたふらっと立ち寄ってくださいね。ちょうど私が、ナツミさんちをいつものぞいていて、時々寄るように。

さて、今日はジェレミーのことではなく、David Burke(デイビッド・バーク)と息子さんのTom Burke(トム・バーク)のことです。トムについては最近では「Mr Binksのこと(1)、でも脱線してTom Burkeのこと」で触れました。そこで書いたように、トムは現在BBCの"The Musketeers"(三銃士)でアトスを演じています。かなり話題になっているドラマで、トムのファンも増えているようです。

こちらがBBCの、この番組の特集ページです。
http://www.bbc.co.uk/programmes/p00sxqkb

こちらが三銃士の一人であるアトスと、アトスを演じているトムのページです。トム、渋くてかっこいい表情をしていますね。普段はもっと愛嬌のある表情で、でも精悍さも持っていて、ファンが増えるのもうなずけます。
http://www.bbc.co.uk/programmes/p00sxqkb/profiles/athos

そして、この三銃士の最新のエピソードには、デイビッド・バークも出演したそうです。ただ残念ながら、二人が一緒のシーンはなかったそうです。こちらのTumblrの投稿に、デイビッドのスクリーンショットがあります。その下は、先ほどのBBCのページにもあった、トム演じるアトスの写真です。
http://achan8269.tumblr.com/post/78443904832/comtedelafere-obsidianbutterfly-one-scene

この父子が、最近一緒に受けたインタビュー記事があります。The Sunday Times紙のインタビューで、有料登録者以外は途中までしか読めませんが、こちらです。
http://www.thesundaytimes.co.uk/sto/Magazine/article1379636.ece

The Sunday Timesのページに、二人の写真がありますね!デイビッドが後ろからトムを抱きしめています。デイビッドがいつもとちょっと違う感じの顔にみえますが、顔をトムの肩に押し付けていること、口元が見えないことによるのかもしれません。まじめな顔をしているようにもみえます。こんなに大きくなった息子を抱きしめるというので、こころの中に何か特別な感情があったのかもしれませんね。

このインタビュー記事の全体は、現在ネットのどこかでみつかるかもしれません。そのほかに、The Sunday Timesの紙面をうつした写真もみつかるかもしれません。記事にはもう一枚、木を背景に小さい頃のトムを抱きあげているデイビッドの写真もついていたようです。

RM
ジェレミーはホームズに対して、その時々でいろいろな感情を持っていました。ホームズのような人間は、自分は好きではない、と言うこともありましたが、この記事の中ではホームズが何者にも束縛されない自由な存在であることを讃えています。そして最後のところでは、他のインタビューでも何回もみかける、ジェレミーがホームズに関してよく言うことを繰り返しているのですが、でもその理由がいつもと違うのです。そこが興味深いと思ったので、引用してみます。


「あの男を正しくあらわすのは不可能なのです。私がしてきたのは、その固いよろいに割れ目をみつけること、塩の柱にひびをみつけること、それだけです。
 彼は並ぶもののない、素晴らしい自由人です。パイプやタバコの煙を煙突のように出して、薬物を注射し、おもしろがって阿片窟に行く。道徳を無視する自由人なんです。」(中略)

ブレットは偉大な探偵シャーロック・ホームズに道を渡れば会えるとしても、そうすることは考えもしない。
「なぜそんなこと、考えなきゃいけないんですか?ホームズはあまりに素晴らしすぎる男なので、私に話すことなんて、何もないと思いますよ。」

"It's impossible to do justice to the man," he said. "All I've managed to do is to find the chinks in the armor, to find the little cracks in the pillar of salt.
"He's the most wonderful free soul. He smokes like a chimney, shoots up on drugs and visits opium dens for amusement. He's a true libertine." [....]

Brett, [...], would not even consider crossing the road to meet the great Sherlock Holmes.
"Why should I want to? The man was so brilliant, he wouldn't have anything to say to me."

"SHERLOCK'S GREATEST MYSTERY", SUNDAY MAIL, October 23, 1988



最後の、ホームズに会うために道を渡るなんてことはしない、というところ、これはよくジェレミーが言っていたことです。たとえばNational Public Radio (NPR) のインタビューでも “I wouldn't cross the street to meet him.”と言っていますし、テレビのインタビューでも同様の言葉を聞いたことがあります。このNPRのインタビューは、りえさんのブログで書き起こしたもの(トランスクリプト)と日本語訳を読むことができて、そこでは「あんまり自分としてはホームズにそんなにご執心でもないねえ」という、実に見事な日本語訳がついています。(http://blog.goo.ne.jp/rie_002/e/1a1b164fc1f01359f2f0df952d53e857

私が今まで読んだり聞いたりした時は、りえさんのブログでの訳にもあるとおり、ホームズはそんなに会いたい相手でもない、という意味で言っていました。ところが今日のところでは、道を渡ってホームズのところに行っても、ホームズのような素晴らしい男は、自分に話すことなんて何もないだろう、と言っています。

ジェレミーがよく言うこの言葉も、時によってジェレミーの中でニュアンスが変わったのですね。ジェレミーのホームズに対する気持ちが時によって変わったように。あれだけ長く演じていたのですから、それは当然のことなのでしょう。そして、ジェレミーが引用部分の最初で言っていたように、ホームズを理解しつくすことは不可能なのですから。ジェレミーがホームズに対して持っていたいろいろな感情を知って、感じてみたいと思っています。

この記事のタイトルにもつけましたが、ホームズが自由な存在であったところを評価しているのも、興味深く読みました。ジェレミーが自分のことを、"something of a gipsy" と1973年のインタビューで言っていたことなども思い出しました。(「Annaのこと;1973年のインタビューから」)

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Author: RM
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