Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

そう、ジェレミーってこういう人なんですよね、と折々に思うのですが、「こういう人」のところには、その時々でいろいろな言葉が入ります。その一つが、励ますひと、元気づけるひとです。

先日「『レディー・フランシスの失踪』撮影時の失敗映像(再掲)」を書いたとき、その元の記事をさがすために、Edward Hardwicke(エドワード・ハードウィック)が亡くなった頃の記事を読み返していました。その中に、"The Ritual"のジェレミー追悼号にエドワードが書いた文章を引用したものがありました。
The Secret of Sherlock Holmesの全幕の音声と、Edwardの言葉

和訳を少し修正して再度引用します。


The Secret of Sherlock Holmesのリハーサルがはじまる前に、「僕にはできない」とジェレミーに何度も電話しかけたのを覚えている。もう何年も舞台にたっていないし、二人芝居ということに少しおじけづいていた。でも結局電話しなかった。彼が聞き入れないことはわかっていたから。

ジェレミーはいつも前向きで楽観的で、まわりの人を元気づけてくれた。グラナダ・シリーズでデイビッドが抜けた後に僕がはいった時もそうだった。ジェレミーにとってひどく困難な時だったはずなのに、どれほどの心遣いとやさしさを示してくれたことか。

I remember that before we started to rehearse The Secret of Sherlock Holmes I went to the phone several times with the intention of telling Jeremy that I couldn't do it - I hadn't been on a stage for several years and found the idea of two-handed play somewhat daunting. In fact I never picked up the phone. I knew Jeremy wouldn't hear of it.

Jeremy was always positive, optimistic and so encouraging. It was much the same when I joined the series after David had left. It must have been a very difficult time for Jeremy, but you would never have guessed. His concern and care were overwhelming.


The Ritual, Autumn 1995 (No. 16)


これを読み返した時に、3月末にイギリスの新聞 The Guardian のウェブサイトで読んだ、Martin Clunes(マーティン・クルーンズ)の言葉を思い出しました。エドワードとマーティンとでは状況が違いますが、励ますひと、前向きな気持ちにさせてくれるひととしてのジェレミーを書いているという点では、同じように思えたのです。

マーティンに関しては以前、彼の伝記の中でジェレミーに触れている箇所をご紹介しました。
Martin Clunesの伝記(2010);その1
Martin Clunesの伝記(2010);その2
Martin Clunesの伝記(2010);その3

マーティンは特に喜劇俳優として有名ですが、喜劇だけではなく、たとえば"Inspector Morse"(インスペクター・モース)のシーズン6エピソード2の"Happy Families"で、ジェレミーの最初の奥様であるAnna Massey(アナ・マッシー)と共演しています。最近では動物をめぐるドキュメンタリー番組のホストでも有名です。(ドキュメンタリー番組でのマーティンにふれた、この記事にある写真はなかなかいいですね。)

マーティンの母親がジェレミーの母方のまたいとこになります。(以下の引用箇所に先立つところには、マーティンの母親がジェレミーの姉または妹のように書かれていますが、間違いです。)マーティンの父親は有名な俳優でしたが、マーティンが8歳の時に亡くなりました。マーティンは1961年生まれで、ジェレミーの息子のデイビッドが1959年生まれですから、ジェレミーにとっては甥のようだったかもしれません。マーティンとデイビッドは今でも親しいようで、デイビッドの一家がよくマーティンの家にくることが、今日は引用しない箇所に書かれていました。

マーティンは父の死後、寄宿学校に行きましたが、そこでの辛い経験についてはこの記事でも少し触れていますし、いくつかのインタビューでも話しています。

それでは、The Guardian からの引用です。

Martin Clunes: My family values
The Guardian, Friday 28 March 2014
http://www.theguardian.com/lifeandstyle/2014/mar/28/martin-clunes-doc-martin-my-family-values


ジェレミーは本当に素晴らしいひとでした。わくわくするような魅力にあふれたひとで、いつも、僕はすごいんだって感じさせてくれて、自分に自信を持たせてくれました。つまり、人生において自分はちゃんと正しい道を歩んでいるって思うことができました。ジェレミーはまわりに大きな力を与えるひとで、僕たちはみんな彼が大好きでした。

(少し意訳しました。大きな間違いはないことを願っています。いつもながら原文もあわせて引用します。)

He was an absolutely lovely man. Very exciting and glamorous, he'd always make me feel amazing and full of confidence; like I'd picked the right thing to do in life. He was a real force and we all loved him.


少年期や青年期には、特有の迷いや劣等感があるものだと思います。寄宿学校でいじめられていた頃も、俳優をめざす時も、俳優になってからも、自分はこれでいいのか、と悩むことがあったのでしょう。でもジェレミーと一緒にいるといつも気持ちが前向きになったのでしょう。ジェレミーはマーティンに、自分は大丈夫だという自信を持たせてくれたのですね。ジェレミーってやっぱりこういう人なんですよね。ますますジェレミーのことが好きになります。

RM
3年半くらい前、このブログを始めてすぐの頃に、「グラナダ・ホームズのテーマ曲の楽譜」という記事を書きました。このブログは手紙を書くのにも似ている、いつか読んでくださる方宛も含めて、と思うことがありますが、この楽譜の記事はまさに「未来への手紙」だったようで、数年たってからもコメントを頂きましたし、バイオリン弾きの方のブログで紹介していただいたこともありました。楽譜をさがして検索なさるかたが、今も時々来てくださっているかもしれません。

それで今日も手紙のような気持ちで、最近知った楽譜をお知らせします。

この情報を知ったのは、Facebookの"The Secret of Sherlock Holmes"のページです。
https://www.facebook.com/holmesonstage

このページに、「グラナダ・ホームズのテーマ曲の楽譜」で私がアドレスを書いたサイトの楽譜が、画像として載せられていました。(残念ながら採譜した人や元サイトに関する情報はどこかで抜け落ちたのでしょう、出典への言及はありません。)この投稿のコメント欄に追加情報として別のサイトのアドレスが書いてあって、そこに行ってみると3つの曲の楽譜がありました。(こちらはちゃんと元サイトを尊重したやり方で、うれしいです。)

それで、そのサイトのアドレスを記します。
http://www.maestrostudio.net/violin/

"The Maestro's Studio..."という名前のウェブサイトで、バイオリンで弾けるようにこのウェブサイトの持ち主が採譜してアレンジした楽譜が数十曲おさめられています。そのいくつかにはピアノの伴奏がついています。

グラナダ・ホームズの曲は真ん中より少し下に

Sherlock Holmes - Patrick Gowers
Sherlock Holmes - Finale - Patrick Gowers
Sherlock Holmes - Lucretia Venucci - Patrick Gowers

とあります。オープニングテーマ曲だけにはピアノ伴奏がついています。その次で "Finale"となっているのは、CDの一番最後の曲のようで、CDでは「空き家の怪事件」より"Baker Street Reunion"(「再会」)と曲名がついています。"Lucretia Venucci" は「6つのナポレオン」からでCDでは13曲目、"Lucretia Venucci and her family"(「ルクレチア・ベヌーチと家族」)です。この二曲はバイオリンソロのみの楽譜となっています。PDFファイルとして楽譜をダウンロードできる他、拡張子がmidのMIDIファイルも用意されています。

バイオリンを弾くかた、あるいは近くにバイオリン弾きがいらっしゃるかた、お役にたてたなら嬉しいのですが。私はそれに当てはまらないのですが、でもテーマ曲の伴奏のピアノ譜をいつか弾いてみたいと思います。

RM

追記:個人が曲の一部分を採譜した簡単な楽譜ですが、厳密には著作権に触れるのかもしれません。ご指摘があればこの記事を削除します。また当然のことではありますが、楽譜は私的利用にとどめてくださいませ。
"The Television Sherlock Holmes" によると、グラナダ・シリーズの最初のエピソードである "A Scandal in Bohemia" の放送がイギリスではじまったのが、1984年4月24日夜9時だそうです。それから今日で30年たつのですね。

ジェレミーはどんな気持ちで、どこでこの最初の放送日を迎えたのでしょう。よい作品ができていることは、俳優もスタッフももちろんわかっていたはずです。でも評判や視聴率というのはまた別のもので、ふたを開けてみないとわからないところがあったでしょうね。

実際の放送より何年も前から多くの人が関わり、あれだけのセットを作って撮影が行われた大きなプロジェクトも、視聴率が悪ければ次のシリーズはもう作られないことになっていたのでしょう。責任感の強いジェレミーのこころのうちが推しはかれる気がします。

あなたのホームズは、30年が過ぎた今日も輝き続けていますよ、とその頃のジェレミーにささやきたい気持ちです。敬愛と感謝の気持ちを込めて。


以下は、1985年に"Aren't We All"公演中の楽屋でジェレミーにインタビューしたときのことを1995年に書いている記事からの引用で、番組が好評であることがわかった時のことをジェレミーが話している部分です。


「このプロジェクトが成功した時、批評がいくつも載って、それがこれ以上ないくらい素晴らしかった時、安心の衝撃で打ち倒れそうでした。」

"And when the project succeeded, when the reviews were in -- and they were surpassingly lovely -- I was pole-axed with relief."


The San Diego Union-Tribune, Sep 15, 1995


"pole-axe"というのは戦闘用斧のことで、動詞ではウィズダム英和辞典によれば

…を(戦闘用おので)殺す[なぐり倒す]; …をひどく驚かせる.

となっています。"be pole-axed with relief" という表現そのものはGoogleでの検索ではみつからなかったので、幾分「ジェレミー語」の面もあるのかもしれません。こういう劇的な意味を持つ動詞を、安心した時の描写に使っているのを読むと、自分の演じたホームズが受け入れられ賞賛された時のジェレミーの安堵がどれほど大きかったかを感じられるような気がします。

RM
以前の記事を読み返していると、リンクが切れていることに時々気がつきます。申し訳ないと思いつつ、そのままにしています。写真も、当時よりも画質のよいものがネット上にあらわれているものもあるのですが、これもそのままです。

でも今日は、YouTubeのビデオで、ちょっと珍しくて素敵な映像なのですが消えてしまって、今となっては由来を知らない方は探すのが難しいだろうと思われるものについて、ひとつご紹介しましょう。

Edward Hardwicke(エドワード・ハードウィック)が亡くなったときに、エドワードを偲んで書いた記事の一つに、ビデオクリップを二つご紹介したものがあります。
Edwardが素敵な、番外編のビデオ
このうちの最初のビデオは、"The Disappearance of Lady Frances Carfax"(レディー・フランシスの失踪)撮影の時の、エドワードの失敗シーンでした。

これはずいぶん以前に、あるファンがジェレミー目当てというわけではなく失敗映像総集編のテレビ番組をYouTubeで観ていて、たまたまみつけて大喜びで報告してくれて、別のファンがその箇所を切り出してあらためてアップロードしたものです。そのアップロードしたクリップを前回ご紹介したのですが、これがしばらく前になくなってしまいました。でももとの総集編の映像はまだYouTubeに残っていますし、DVDになっていないようですから、ここでご紹介できます。クリックすると該当箇所から始まります。1分11秒から約10秒間と短いですけど、どうぞお楽しみください。

It'll Be Alright On The Night 6 - pt4


直前までのジェレミーのシリアスな演技、エドワードのワトスンがピストルを取り出し、ジェレミーのホームズがちらりと目をやる、そして...。音にちょっとびっくりした後のジェレミーの密かな笑みと、エドワードのなんとも複雑な表情。何度みても笑ってしまいます。こういう瞬間が、撮影の時にはいろいろとあったのでしょうね。撮影の様子について、想像の翼を広げるよすがともなります。

RM

追記:今年になってアップロードされたこちらのファイルも同じ番組の録画でした。28分48秒からです。
It'll Be Alright on the Night 6 (1st December 1990)
https://www.youtube.com/watch?v=0zKWruJJK2A&t=28m48s

画質は変わらないようにみえるので、アップロードファイルの元となったビデオは同じものかもしれません。これによれば、1990年12月1日に放映されたようですね。「レディー・フランシスの失踪」自体のイギリスでの放映は、1991年2月です。
前回、童話の語り手としてのジェレミーの声を聴くことができるオーディオブックをご紹介しました。ホームズとしてのジェレミーの声しか知らない方は、びっくりなさったでしょうか。1972年発売のLPですから、30代後半です。若々しくて楽しげな声ですね。(環境によっては、私が抜粋した33秒のオーディオはお聴きになれないかもしれません。どうぞ元のサイトにある26分のオーディオでお楽しみ下さい。)

ジェレミーの声はかすかな陰影から劇的な跳躍まで、目が離せない、いえ、耳が離せないです。豊かな色彩をもつという印象をもちます。その色彩はもちろん、20代で演じたトロイの王子と、30代での童話の語り手と、50代でのホームズとで同じではないのですが、いずれも声と言葉のすみずみにまで表情があらわれるということでは一緒です。それから音楽のようですね。1961年にハムレットを演じた時の評に、"Mr. Brett's speaking of the language had a consistently fine and expressive musicality(ブレット氏の台詞の語り方は、はじめから終わりまで美しく表情豊かな音楽性を持っていた)というものがあります。(The Brettish Empireより)

ジェレミーの声の特質について、他にもいくつかの形容が思い浮かびます。Edward Hardwickeは "powerful voice"と言っていましたし(「短所・長所;1989年のインタビューより」)、 Michael Coxが "resonant voice"と言っていたのも覚えています("Remembering Jeremy" その他)。"velvet voice"という表現も、ファンの間でもよく耳にします。

"velvet voice"に関しては、この前ご紹介した記事(The San Diego Union-Tribune, Sep 15, 1995)の中に、おもしろいことが書かれていました。


ジェレミーは切れのよいベルベットのような口調で語った(もし「切れのよいベルベットのような口調」なんてものがあればだが。そして実際あるのだ。)

[He spoke] in his crisply velvet tones (if there are such things, and there are).



"crisp"と"velvet"は本来両立しないものなのでしょうが、この筆者はジェレミーの口調の特質として、どうしてもその両方を言いたかったのでしょうね!

そして今度は役による声の違いを考えるとき、ジェレミーがホームズの声をさがすプロセスを語っているインタビュー (Reading Eagle, Jul 10, 1990) を思い出します。
becomerであること(1)


「そしてせりふをささやいてみます。声をさがすためにささやいて、ささやいて、ささやいてみます。イメージが流れ続けるように、ささやき続けます。彼のことがわかったと思ったとき、彼が充分自分の中に入ってきたときに、その言葉を声に出して語りはじめるのです。これは本当にわくわくするようなプロセスです。」

And you whisper, whisper, whisper because you have to find the voice. You keep whispering so the imagination keeps going. When you think you've got him – or he's enough in you – you speak. It's an enormously exciting process.



たしかにジェレミーのインタビューの時の声と、ホームズを演じている時の声は、同じではないですね。こうして声も含めて、ホームズになりきるのですね。これを読むとジェレミーは演じるのが本当に好きだったのだと思いますし、あのホームズを10年以上、そうして演じ続けたエネルギーに、あらためて尊敬と感謝の気持ちを持ちます。

RM
先日、ジェレミーの声やその表現の豊かさのことを書いた時に、オーディオブックも好きだということをお話しました。そこで今日は異色のオーディオブックをご紹介しましょう。

ジェレミーのオーディオブックとしては、シェークスピアの作品が一番多いのですが、その他にバーナード・ショーの作品や、詩を朗読したものなどもあります。でも一番かわっていて、一番愛らしいのは、これでしょう。"Puss in Boots" (長靴をはいた猫)です。

ジェレミーは役柄を演じているのではなく、語り手(Storyteller)です。だから子供達に、そして私たちに語りかけてくれるのです。LPとして1972年に発売され、残念ながらCDにはなっていませんし、デジタル化された音源を販売するAudibleなどのサイトで検索しても、今のところみつかりません。

Jeremy Brett Informationで一部を聴くことができます。このサイトの前身のJeremy Brett Archiveでは、ジェレミーが語る部分のみをつなぎあわせたファイルがアップロードされていましたが、現在はLPのA面全体をおさめたファイルに差し替えられています。

以前のファイルよりも今のファイルの方が音がいいです。そして、つぎはぎではありませんから、話の筋を追うことができます。ただ、以前のファイルでは聴けたB面でのジェレミーの語りを、聴くことができなくなってしまいましたが。

場所は以前から何度かご紹介したことがある、"Sound Files"というセクションで、下にそのリンクを記しています。リンク先のページの上から五つ目の "Puss in Boots.mp3" と書かれたところをクリックすると音声が流れ、右クリックでダウンロードができるはずです。以前もお願いしましたが、「英米の法律で認められる公正な利用(フェアユース)によって、著作権を持たない著作物をこのウェブサイトで使用しますが、読者はこれを営利目的では使用しないようにお願いします」と書かれていますので、どうぞ守ってください。

これがそのページです。
http://jeremybrett.info/media.html

猫の役は Judi Dench(ジュディ・デンチ)です。この女優をご存知の方もいらっしゃるでしょう。今はDame Judi Denchですね。最近では "Philomena" (2013)(あなたを抱きしめる日まで)に主演しました。

この録音の中でのジェレミーの声をちょっとだけここでお聴かせしましょう。33秒間です。途中で長靴をはいた猫と、猫のご主人である、粉引きの三男坊の声も入ります。









この"beautiful"という言葉の言い方、なんて素敵なんでしょう!そして後半、愛らしくてやさしい、上下にゆれる節(ふし)がついているようなしゃべり方も好きです。

私はこれを聴いて以来、"beautiful"という単語に出会うと、このジェレミーの声と調子がこころの中によみがえります。

RM

先日の記事で、ジェレミーがホームズを描写する言い方の中で、具体的なイメージをともなうものをいくつかあげました。最後にあげたのは馬のイメージでしたが、その後ジェレミーはさらに言葉を足しています。そこも含めて、再度引用します。前回も書きましたが、記事は1995年に書かれましたが、ジェレミーの言葉は1985年のものです。

"It's elementary: Brett was our finest Holmes"
By Don Freeman
The San Diego Union-Tribune, Sep 15, 1995


「ホームズは私にとってはいつも、脚(あし)を時にかすかに震わせるサラブレッドです。 それはあの頭脳のすばやい動き、あの突然の直感からくるのです。ホームズは時に無礼で、ひとにいらいらして、急にぶっきらぼうになることもある。愚か者にがまんがならないのはよく知られています。決して緊張をとかない。いつも仕事に没頭している。

こういうところをすべて表そうとしました。この男の驚くべき素晴らしさを。」ジェレミー・ブレットは言った。

"Holmes, it has always seemed to me, was like a Thoroughbred horse whose legs are often slightly trembling. All of this was due to that quickness of brain, that quicksilver intuition. Holmes could be rude, impatient, suddenly abrupt, and his intolerance of fools was legendary. He was never relaxed. Holmes was always engaged in his work.

"I tried to show all of this, all of the man's incredible brilliance," Jeremy Brett said.




ジェレミーはホームズを、いろいろなふうにたとえていますが、ここではサラブレッドにたとえています。

これを読んでうれしかった理由の一つは、ホームズをジェレミーにとって特別な存在である馬にたとえている、ということです。ご存知のとおりジェレミーは小さい頃から馬と一緒に育って、競技会にも出たし、騎手になりたかったと言っています。馬は親しい友人であるとともに、その素晴らしさに驚嘆させられる存在でもあったのではないでしょうか。そしてこれは、身近に馬と接したひとならではの表現なのだと思います。

そしてもう一つは、馬のことを知らない私にも、ホームズの持つある性質を、生き生きと伝えてくれたことです。

私のイメージはこんなです。レースを前にして、走ることに集中して、強いられたからではなく自ら意図したわけでもなく、ただ自然にからだのすべてが走り出すことに向かっている。高ぶった気持ちは決して緊張からではないし、それが走ること自体を妨げることはない。それは喜びからというには、あまりに本能的に思える。走ることに関係ないものは、すでにもう目には入らない。誇り高い一頭のサラブレッド。

ひとによって、また違うイメージを持つのでしょう。でもこんなふうに、ジェレミーの言葉にはしばしば、心象風景をさそうようなところがあるように思います。いくつかの記事でそういう表現にふれました。(三番目は、ちょっと奇妙な表現のおはなしです。)
Jean Conan Doyleとジェレミー(5)
子供の感受性(「Mystery!: A Celebration」から)
ジェレミー語;1988年のインタビューから

今回もまた、ホームズの持つあの頭脳の動きと直感、あのある種の無作法さと誇り高さに対する私のイメージに、美しい色と動きを加えてくれました。

RM

追記:以下のページにこの新聞のアーカイブがあり、有料ですが記事を読むことができます。
http://www.newslibrary.com/sites/sdub/
ご存知のかたもいらっしゃるでしょうが、まだのかたに、ちょっとだけご紹介します。

以下のリンク先に、株式会社アルクの2014年4月4日付けプレスリリースが載っています。

19世紀と21世紀のシャーロック、誌上対決! 『ENGLISH JOURNAL』2014年5月号、4月5日発売

ここにありますように、特別企画が「ベネディクト・カンバーバッチ vs. ジェレミー・ブレット シャーロック・ホームズ新旧対決!」となっています。

ベネディクト・カンバーバッチの情報を載せていらっしゃるサイトで、この特別企画について読むことができます。雑誌のページを撮った写真も何枚かついています。
http://news.benedictcumberbatchfanjp.org/2014/04/cdenglish-journ-342b.html

私も、一人のジェレミー・ブレットファンとしての視点から、この記事を紹介してみます。

・タイトルページ:ジェレミーの写真がいいです。ほぼ同じ構図で、おそらく同じ時に撮られたと思われる写真をネット上で8、9枚くらいでしょうか、知っていますが、これはその内では比較的珍しいものです。こうしてあらためてみると、ジェレミーは目が大きい!

・「はじめに」(全1ページ):このページの右下で使われているジェレミーの写真、裏焼きですね!正しい向きの写真では右側にいるはずのデイビッドのワトスンが切り取られて、反転されています。同じ時に撮影された他の写真が、これにもかなりあります。上であげた写真ほどではありませんが、この写真が使われるのも少し珍しいです。

・「新旧シャーロックを採点」(全3ページ):イギリス人男性とカナダ人女性が、二つの作品を五つの項目に関して10点満点でそれぞれに採点するというもの。採点理由や感想も書かれています。この部分は、二つの作品を観ていない人の興味をひく、あるいはグラナダ版を昔観ていた人に懐かしさを感じさせて、もう一度引き入れる、という役割ははたすかもしれません。でもすでに観ている人にとっては、特に興味深い観点、新しい知識、膝をたたくような解釈はみつからないでしょう(少なくともグラナダ版については、そういう感想を持ちました)。お楽しみ記事としてはいいと思います。それから、時々二人のコメントの中の単語やフレーズを括弧内に英語で記しています。たとえばジェレミーの声を「いぶしたような(smouldering)」と書いていて、こういう表現を知ったのは面白かったです。全部英語の原文も併記してもらえたら、もっとよかったでしょう。(この雑誌のどこかにそれがあるようでしたら、ごめんなさい。まだ全部は読んでいません。)

・「新旧ホームズセリフを大検証」(全3ページ):5つのポイントについて書かれています。しかしグラナダホームズの台詞に直接ふれているのは、最初のPoint 1だけです。あとの4つのポイントでは、現代版の台詞に使われる言葉を解説していて、それなりによかったのですが、グラナダホームズファンとしては、ちょっと残念でした。せっかく英語雑誌で取り上げるのですから、二つの作品の英語の比較に期待していましたから。ただ、BBC版の英語に興味があるかたには、面白いでしょう。

・「ホームズ研究家が語る 新旧シャーロックの見方、楽しみ方」(全2ページ):二つの映像作品、そしてドイルと原作にふれていて、短いですが、面白く読めました。ジェレミーの少年時代の失読症(私の記事中での訳語は、難読症・識字障害)と、発音の明瞭さを関連づけるような記述がありましたが、ジェレミーの言語障害(構音障害)と発音との関連の方を強く思っていたので、この解釈には意表をつかれて興味深かったです。

この後、ベネディクトのインタビューのトランスクリプトが2ページついていました。このインタビューはCDに入っているようですが、まだ聞いていません。

さて、1,512円のこの雑誌を、普段は買っていないけれどもこの号だけ購入するジェレミーのファンがいるとしたら、どんな理由で買うのでしょうか。はい、それは私です。私の理由を書きましょう。

1. 日本での初放送が1985年4月13日、それからほぼ29年がたって、ジェレミーのホームズが英語雑誌に取り上げられたのは、やはりうれしいです。手元に持っておきたい気持ちがあります。でもジェレミーと、そのホームズへの言及の量だけから考えると、すごく高いけど。

2. そう考えるなら高いけど、でもこれは英語雑誌。本来は英語の勉強のためのもので、有効活用することができるはず。

と言う訳です。

これはホームズ初心者、BBC版シャーロックは初心者以前、という、あるジェレミーファンの意見と感想です。他のかた、特にBBC版シャーロックのファンは、また別の感想をお持ちになるでしょう。興味を感じた方は、ご自分で手にとって確かめてごらんになることをお勧めします。

RM
ジェレミーがホームズを語る中での、イメージがこころのうちに生まれるような言葉が好きです。たとえばDavid Stuart Daviesの本の書名になっている"Bending the Willow"も"Dancing in the Moonlight"も、ジェレミーがホームズを演じることに関して語った言葉に由来します。

ホームズを表現した言葉としては、"damaged penguin" というのもありますね。インタビューでこう言った後、にこっと笑っていましたから、半分冗談の愛称ですね。「傷ついたペンギン」、「鬱屈したペンギン」と訳しましょうか。これも、そうきいたとたんに、一人(?)たたずむ孤高のペンギンが思い浮かんで、ホームズの姿と二重写しになります。テレビインタビュー以外でも、何度かこの言い方をするのを読んでいます。

"animated spider"もありました。「生気にあふれた蜘蛛」という感じでしょうか。この言い方は、ウェブサイト"The Brettish Empire"によれば、Radio Times (19-25 March, 1994) からだそうです。この記事が手元にあるか、今度確認してみましょう。これも多分、少しいたずらっぽくにっこりしながら言ったのでしょうね。

ジェレミーが"animated spider"と、ホームズを描写したのに関しては、「最後の事件」でモリアーティのことをホームズがワトスンに語ったときに、"He sits motionless, like a spider in the centre of its web, but that web has a thousand radiations, and he knows well every quiver of each of them. He does little himself. He only plans." (延原謙訳:巣の中央にいるクモのようにじっとしているが、その網には放射状の線が無数にあって、その一本一本の振動が手にとるようにわかる。自分ではほとんど何もしない。計画立案をするだけだ)と言ったのを思い出します。ホームズはモリアーティとは違って、自らも生き生きと動き回るのですね。

"He was a sort of determined nightbird" と言っていたインタビューもありました。
1986年の新聞記事"Goodbye to Baker St."より(2)
何か決意を胸に秘めて、夜どおし起きているふくろう、というぐらいの感じでしょうか。

さて、最近また別の表現を読んで、これも好きだったので引用します。1995年9月15日付けの記事からですので、ジェレミーが亡くなった直後です。1985年に"Aren't We All"公演中の楽屋で、ジェレミーにインタビューした時のことを書いている中で、ジェレミーのこういう表現がありました。

"It's elementary: Brett was our finest Holmes"
By Don Freeman
The San Diego Union-Tribune, Sep 15, 1995


「ホームズは私にとってはいつも、脚(あし)を時にかすかに震わせる競走馬です。」

"Holmes, it has always seemed to me, was like a Thoroughbred horse whose legs are often slightly trembling."



元は「サラブレッド」となっていますが、日本語では「サラブレッド」は、子供の頃から「純粋培養」された人の比喩として使われることもありますので、ここでは「競走馬」と訳しました。

皆様はジェレミーのこの言葉から、どんなイメージを持ちますか?

この後ジェレミーはもう少し言葉を続けています。それは(多分)次回引用しましょう。

RM

 RM

Author: RM
コメントは承認後に公開されます。古い記事へのコメントも大歓迎です。2010年8月7日に始めました。
私の記事へのリンクはどうぞご自由になさって下さい。
和訳には間違いがあるかもしれません。最近は必ず英語原文を併記・またはアドレスを書いて読めるようにしていますので、どうぞそちらも参考になさってください。

全ての記事を表示する

09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08 

QR