Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

Daniel Radcliffe(ダニエル・ラドクリフ)が映画の宣伝も兼ねて、今月20日にツイッターで質問に答えたそうです。その内容の紹介がいくつかのサイトに載っています。

たとえばこちらはRadioTimesのページです。
http://www.radiotimes.com/news/2014-10-20/10-things-we-learned-from-daniel-radcliffes-twitter-qa
"10 things we learned from Daniel Radcliffe's Twitter Q&A"
By Kasia Delgado
RadioTimes, 20 October 2014

その質問の一つに「今まで共演したことがなくて、いつかぜひ一緒に仕事をしたい俳優を3人あげてください」というのがありました。実際のツイッターのページはこちらです。
https://twitter.com/LionsgateUK/status/524201099465879552

ダニエルはこう答えています。

ジョージ・クルーニー、ジェニファー・ローレンス(格好いい!)、ジェレミー・ブレット(もしタイム・トラベルができるなら)。

George Clooney, Jennifer Lawrence (she's so cool!), Jeremy Brett (if time travel is possible.)


「いつかぜひ一緒に仕事をしたい俳優」と問われて、すでにこの世にはいないジェレミーの名前をあげるのですから、ダニエルがどれほどジェレミーの演技が好きで、共演したいと思っているかを想像することができます。

ダニエルがジェレミーの名前をあげているインタビューや記事を4つみたことがあります。その時から彼がジェレミーをとても好きなことは知っていましたが、今回あらためて、そして以前よりさらにうれしく思いました。

RM
一週間くらい前のナツミさんのブログの「ドラマ・クイーンはどっち?」を拝見して、嬉しくなってしまって「勝手に連動企画」です。ナツミさんの記事はこちらです。
http://sherlock221b.blog.fc2.com/blog-entry-346.html

ジョンとシャーロックはお互いに「おおげさなやつ」と思っているんですね。特にシャーロックもジョンを「ドラマ・クイーン」と思っているというところが微笑ましく思えました。自分のことは棚に上げて!

ちょっと見、全然似ていなくて、正反対のように自分たちでも思っていて、でもどこかに似たものを持っていることを無意識の内にもあらわしてしまう二人。そんなことを思いました。

そこからの連想です。ジェレミーはホームズと自分は正反対だ、とよく言っていましたね。でもジェレミーはホームズのことを、そしてジェレミーの友人の俳優はジェレミーのことを、それぞれ「ドラマ・クイーン」って言っているんです。うふふ、ジェレミーったら、自分のことは棚にあげて!

「犯人は二人」でBertrand(ベルトラン)を演じたNickolas Grace(ニコラス・グレイス)は、Scarlet Streetのジェレミー追悼特集でジェレミーの思い出を語るなかで、ある出来事に関連して、ジェレミーは「とても素敵に芝居がかっているんです!」("A true drama-queen in the best sense!")と言っています。
"A true drama-queen";Nickolas Grace のジェレミーを偲ぶ言葉(1996)より

そしてジェレミーは、1987年出版の"Granada Companion, Number One: A Sherlock Holmes Album—A Centenary Celebration of Sherlock Holmes" でホームズを描写する中で、ホームズのことを「ちょっと芝居がかったこともします」("He can be a bit of a drama queen.")と言っています。
ホームズの複雑さ;A Centenary Celebration of Sherlock Holmes (1987) より
(前回は原文引用無しの抄訳でしたが、今回は原文を引用して訳しています。)

「ホームズはとても複雑な男です。音楽が好きでバイオリンの名手、冗談が好きで、自信満々、少しうぬぼれているところもあるかもしれない。ほめられるのが好きで、自分以外の名探偵に関しては口が悪いのです。

「ちょっと芝居がかったこともします。自慢しますし、ひとに注目されるのが好きだったりします。特に事件の謎がやっと解けた時にはね。

「難しい事件ではこころの中まで張りつめた状態にあります。事件が解決したときには、ちょっと芝居がかったとも言えるかたちで、その張りつめたものが爆発するのです。

「そういったところをいくらかでも、自分が演じるホームズの中にあらわそうとしています。」


"He is complex. He loves music — he plays the violin very well — he enjoys a joke, he is vain, maybe a little conceited. He likes to be praised. He can be bitchy when he assesses other great detectives.

"He can be a bit of a drama queen; he shows off sometimes, he's something of an exhibitionist, especially when he has pulled off a coup.

"On a difficult case he may build up considerable tension within himself, which explodes in a genial bit of theatricality when the problem is solved.

"I've tried to get some of that into my Holmes."


"Granada Companion, Number One: A Sherlock Holmes Album—A Centenary Celebration of Sherlock Holmes"
Edited by Michael Cox and Andrew Robinson
Published by Karizzma, 1987

これを読むと、ジェレミーのホームズが見事にその全部をあらわしていることに感嘆します。ホームズの複雑さを言葉で説明して、それを実際に表現しているというのは、すごいことですね!でもその中で、音楽が好きで冗談が好きでちょっと芝居がかっているなんていうところはジェレミーとも共通しますね。もっとも芝居がかりかたが二人はちょっと違っていて、ニコラス・グレイスが語った出来事でのジェレミーは、友への思いやりからくる真剣さが、実際の状況から少し遊離していて、いい意味で芝居がかってみえたのですが。

それにしても、ホームズとは正反対で、自分にはホームズと似ているところは一つもないといつも言っているジェレミーを思って、ちょっと微笑ましくなります。

RM
今日別のことに関する記述をさがしていくつかの記事をざっと読んでいたのですが、ジェレミーがBasil Rathbone(バジル・ラスボーン)に関して、あることを話しているのにぶつかりました。私にはこれははじめて知ったことでしたので書いてみます。ジェレミーの言葉の中には、前回もあった William Gillette(ウィリアム・ジレット)の名前も出ています。

「すごく気がすすみませんでした」とブレットはその時のことを思い出しながら言った。「ホームズを演じて、何か新しくできることがあるだろうか?何と言っても自分の前にはあのたくさんのホームズがいたのだから。そんな競争の中で生き残れるだろうか?」(中略)

「ラスボーンの後を継ぐなんてできるわけがない」ブレットはグラナダからシリーズでの主演を提案された時に思ったことをこう話した。「コナン・ドイルはアメリカの偉大な俳優のウィリアム・ジレットに『あなたはホームズそのものだ』と言ったそうです。もし私が光栄にもラスボーンに会うことができたなら--- 彼の友人と、彼が教父(godfather)をつとめた教子(きょうし; godson)には会いました。すばらしい人だったそうです--- ラスボーンに私は同じことを言ったでしょう、『あなたこそホームズです。』」


"I was very hesitant," Brett remembered. "After all, what could I possibly add? First there were all the Holmeses who had gone before me. Could I survive in such competition?" […]

"How could I follow Rathbone?," Brett recalled thinking when Granada offered him the series. "Conan Doyle told the great American actor, William Gillette, 'You are Holmes.' If I'd had the honor of meeting Rathbone — I've met some of his friends, and his godson, and they say he was a splendid person — I'd have said the same: 'You are Sherlock Holmes.'"


"Brett creates 'The Ideal Holmes'"
By Terry Pace
Times Daily, Aug 31, 1989

ラスボーンの友人たちと教子(きょうし; godson)に会ったということ、はじめて知りました。わざわざ会いに行ったのでしょうか?ラスボーンの友人たちというのが俳優ならジェレミーと接点があってもおかしくないですが、ラスボーンが教父をつとめた人が長じて俳優になったという可能性はそうは高くないでしょう。ちなみにラスボーンは1892年生まれだそうですから、1933年生まれのジェレミーより41歳上ですね。

Jean Conan Doyle(ジーン・コナン・ドイル)はこう言っていました。

ジェレミーは、私にわざわざ連絡をとって会いにきた、ただ一人のホームズ俳優でした。

He was the only actor who has played Sherlock Holmes who took the trouble to get in touch with me and to come and see me.


Scarlet Street, Vol.21, 1996

ラスボーンの友人たちと教子(きょうし)にもわざわざ話をききにいったとしても、ジェレミーなら不思議はないという気がします。

偶然会ったのだとしても、ジェレミーの言葉からは、自分の前にホームズを演じた俳優への敬意が伝わります。ジェレミーの、演じるという仕事に関するまっすぐさを、いつも感じます。

RM
前回の記事の「授賞式で贈られたパイプ」でご紹介した写真の説明文に、「ホームズ・スタイルのパイプ」という言葉がありました。ホームズ・スタイルというと、少なくともジェレミーのホームズの前までは、キャラバッシュ・パイプが一般的だったのでしょう。

キャラバッシュ・パイプは特にWilliam Gillette(ウィリアム・ジレット)とBasil Rathbone(バジル・ラスボーン)のホームズに特徴的だったようですね。Wikipediaの記事のアドレスです。
http://en.wikipedia.org/wiki/Tobacco_pipe#Calabash

ウィリアム・ジレットは舞台でホームズを演じて大成功をおさめ、1916年には映画にも出演したそうです。ホームズがキャラバッシュ・パイプをふかすことなど、一般の人が持つホームズのイメージで原作には直接由来しないものには、ジレットがつくりあげたものが多いということです。ちなみに、失われたと思われていたジレット主演の1916年のサイレントのホームズ映画が、フランスでみつかったというニュースが今月はじめに流れましたね。
http://www.theguardian.com/film/2014/oct/02/holy-grail-of-sherlock-holmes-films-discovered-at-cinematheque-francaise

ラスボーンについては今日ご紹介する記事の中にも書かれているように、ジェレミーにとっての映像上でのホームズはラスボーンが演じたホームズでした("However, to Brett himself, the quintessential Sherlock Holmes is Basil Rathbone.")。

さて、ホームズを原作の姿にもどしたグラナダシリーズでは、キャラバッシュ・パイプは使われなかったのですが、例外があります。多分皆様ご存知でしょう、「最後の事件」のスイスでのシーンで、ジェレミーがキャラバッシュ・パイプをくわえていましたね。途中で口からはずしてパイプに眼をやりましたが、私にはパイプを興味深げにながめているようにみえました。そして軽く微笑みます。

このパイプのことにふれているインタビューをご紹介します。

"Five New Cases For Brett's 'Holmes'"
By Jerry Buck
The Free Lance-Star - Nov 12, 1991
http://news.google.com/newspapers?&id=pgFOAAAAIBAJ&pg=4710,2174495

ブレットは鹿撃ち帽もインバネスコートも身につけず、キャラバッシュ・パイプもくわえない。すべて原作にはなく、俳優たちが後で演出のために加えたものだからだ。ブレットはシルクハットか中折れ帽をかぶり、柄(え)の長いパイプを吸う。しかしあるエピソードでは彼はキャラバッシュをふかした。これはラスボーンとジレットへの賞賛の挨拶だとブレットは言った。ジレットはホームズを舞台で演じた最初の俳優で、1893年のことだった。

(訳注:ジレットがホームズを演じた年も、彼がホームズを演じた最初の俳優というのも、おそらく間違いだと思いますが、そのまま訳しました。)

Brett doesn't wear a deerstalker hat or the Inverness cape or smoke a calabash pipe, all of which were embellishments added by performers. Brett wears a top hat or a homburg and smokes a long-stemmed pipe. In one episode he did smoke a calabash, which he said was a salute to Rathbone and William Gillette, the first actor to portray Holmes on the stage in 1893 [sic].



このシーンでキャラバッシュ・パイプをくわえたことについて、Michael Coxが"A Study in Celluloid"でこう書いていたのは覚えていました。「最後の事件」に関する章から引用します。

このエピソードではジェレミーは、ホームズなら絶対これと一般に思われたり面白がられたりしているキャラバッシュ・パイプを、ちゃんと知っていますよという合図として、口にくわえた。

In this film Jeremy allowed himself the calabash pipe of Holmesian caricature as a nod to the legend.


ちょっと意訳しました。ニュアンスが違っていないといいのですが。

この記述では、ジェレミーが積極的にこのパイプを選んだことはうかがえましたが、二人の先輩俳優への挨拶として、というのは先に引用したジェレミーへのインタビュー記事ではじめて読んだので、ちょっと面白いと思って書いてみました。

RM

追記:ジェレミーがキャラバッシュ・パイプをくわえている宣伝用写真を、Jeremy Brett Informationからどうぞ。(このサイトは写真のアドレスをかつてつけかえたことがあります。またそうなって違う写真にかわったらご容赦を。)
http://jeremybrett.info/Holmes_C/images/Colour_Holmes%20%2899%29.jpg
思いがけず間があいて、すでに週末ですね。今日は写真のある場所をご紹介しましょう。

eBayに出品されていた写真2枚です。いつもと同じお断りですが、数ヶ月後には削除されると思います。以下のアドレスのページを下にスクロールすると、写真のおもてと裏を見ることができます。Pipesomoker of the Yearに選ばれた時の写真ですね。写真の裏には"DATE ISSUED: 26th January 1989" とあって、おそらくこの1989年1月26日がこの写真が使われた記事の発行日なのでしょう。

http://www.ebay.co.uk/itm/390926886322
http://www.ebay.co.uk/itm/161416501744


同じ時の写真と思われるものは、今までにも何枚も見たことがあります。いずれも、ホームズの衣装だけどジェレミーの顔、という写真でした。 たとえばAssociated Press (AP) のページではこちら。
http://www.apimages.com/metadata/Index/AP-VM-FILE-GBR-XEN-LON4-BRETT-DEAD/800d4c2687e0da11af9f0014c2589dfb
笑顔がとても好きな写真です。これはジェレミーが亡くなったことを知らせる記事につけられました。撮影は1989年1月17日と書かれています。

Alamyのページではこちら。
http://www.alamy.com/stock-photo-Jeremy_Brett_Pipesmoker_of_the_Year_1989_He_arrived_at_the_Savoy_to-20135880.html
ここでも撮影の日にちは1989年1月17日となっていますので、二つの会社が別個に記述しているこの日付はこれで間違いないでしょう(書かれている日付が間違っている場合も時々あるのです。)

この写真のキャプションには「ハンサムキャブでサボイホテルに到着して賞を授与され、パイプを吸っているところ」(He arrived at the Savoy to collect the award by Hansom Cab and smoking a pipe) と書かれています。なるほど、よくみる一連の写真は授賞式が行われたホテルの外で撮られたものだったのですね。


そして先に紹介したeBayの2枚の写真の裏の説明も興味深いのです。ちなみにこれらの写真は今ではネット上の複数箇所でみられますが、私の知る限りでは写真だけが再投稿され、裏の文章について言及しているのをみたことがありません。写真の由来、いつどこでどんな状況で撮影されたものか、どんなメディアに載ってどんな説明文が書かれたかということに興味がある人は少ないようですが、私は些細なことを知るのも大好きです!

写真の裏の記述は2枚とも同じです。私が興味深く思ったのは、次のところです。

パイプを気持ちよくふかしている功績が認められ、最近ジェレミーは"Pipesmoker of the Year"(パイプ吸い年間大賞)に選ばれ、ロンドンのサボイホテルで、記念として特別につくられたホームズ・スタイルのパイプを贈られた。

In recognition of his pipe-puffing habits, Jeremy was recently chosen as Pipesmoker of the Year at the Savoy Hotel in London where he was presented with a special "Holmes"-style pipe made in his honour.


それでは写真にうつっているパイプが、おそらくこの時に記念に贈られたものなのですね!サボイホテルでの授賞式はどんなだったでしょう。左胸のバラと左耳のイヤリングは、受賞式の時からつけていたのでしょうか。ジェレミーはどんな笑顔でパイプを受け取ったでしょう。

こんなふうに小さなことを知るのも嬉しいし、そこからさらに想像をめぐらせるのもまた楽しいのです。

RM

追記:この賞の名称はWikipediaによれば"Pipe Smoker of the Year"(http://en.wikipedia.org/wiki/Pipe_Smoker_of_the_Year)ですが、上では写真のキャプションのとおりに"Pipesmoker"と表記しました。
ウェブサイト"The Brettish Empire" に、ジェレミーの言葉を短く引用した、引用集のページがあります。このページに限らず、このウェブサイトのオーナーは、ほとんどのページできちんと出典を最後に示していて、好感が持てます。

この引用集の中でも特に短く、なんということもない軽い言葉とさえ言えるようなものを思い出しました。

http://www.brettish.com/Quotes_of_Note.html
"Speak, JB!"
By Lisa Oldham

"Ohio"(オハイオ)っていう言葉が大好きです。英語の単語のなかで、むかしからいちばん好きな言葉の一つです。二つ'O'があるのがすごく特別な感じで、書くのが好きなんです。

"I love the word 'Ohio.' It's always been one of my favorite words in the English language. It has two 'O's in it, which makes it so very special. I just love to write it."

TV column, Tom Feran, Cleveland Plain Dealer, December 12, 1991.



このところ言葉・声・イメージ・子供の頃の感覚といったもののことを考えたり感じたりすることが多く、コメント欄で、はまぐりさんと楽しくお話させていただいていますが、その言葉の持つ本来の意味をこえて、ある言葉が好きという感覚も子供のものですよね。日本語だったらこの漢字の形が、その並びが好き、ひらがなの曲線のつらなりが好き、声に出した時の響きが好き、というものから、今となってはその時のことは意識にはのぼらないけれども、昔読んでもらった本の中にあって、当時はよく意味がわからなかった不思議な言葉だった、などというのもあるでしょう。

ジェレミーが話すのを読んで、ああ同じ感じを持っているんだなあ、と嬉しくなった事を思い出しました。ジェレミーは"Ohio"と書くのが好きだと言っていますが、ジェレミーの書く文字はのびのびしていて楽しそうで、みていて気持ちいいんですよね。"O"の字も楽しく書ける字だったのでしょう。

ジェレミーの字は、たとえばこちらでどうぞ。
私信(2)
昨日の記事の補足と、葉書
ホテルのスタッフへの手紙(1994年)

そして、ジェレミーは西部劇をみてカウボーイになりたかったと言っていますから、"Ohio"という言葉の向こう側には、カウボーイへのあこがれがひめられているのかもしれません。

それから私にとっては、二つの"O"とそれに囲まれた"hi"の、音の感じも面白いです。ジェレミーにとってもそうだったらいいなあ。

"Ohio"という言葉が好きって、実に他愛ないこととも言えますが、私にとっては言葉へのそういう感覚が面白く、うれしく感じられました。

RM
前回の記事で引用したインタビューで、ジェレミーが自分はホームズと正反対で、"an extrovert, a romantic, and not that serious" だと言っています。この"a romantic"を最終的には「夢想家」と訳しましたが、"a romantic"で連想した文章があります。

以下に引用するのがそれで、これはCharles Edward Pogueのブログに書かれていた文章です。彼はWikipediaでは映画とテレビの脚本家となっています。
http://en.wikipedia.org/wiki/Charles_Edward_Pogue

ブログで自身のことを俳優・劇作家・脚本家と書いているとおり、俳優としての経歴もあり、「四つの署名」を下敷きにした劇"The Crucifer of Blood"でジェレミーと同じ舞台にたっています。ジェレミーはご存知のようにこの時ワトスンを演じていて、Charlton Heston(チャールトン・ヘストン)がホームズでした。一方Charles Edward Pogueの役名はMordecai Smithで、「四つの署名」ではオーロラ号の所有者の名前ですね。この劇ではどういう人物だったのかくわしくはわかりませんが、下にあげるページにジェレミーの彼への言葉が書かれている公演の宣伝用写真を載せていて(ただし字が薄くて最後の「from J.B」しか私には読めないのですが)、その写真の説明に「床に倒れているのが私」と書いています。ですから彼は多分被害者の役だったのでしょう。

ブログのこの日の記事は、オスカーやトニー賞やエミー賞を受けた時の自分のスピーチを想像することからはじまり、このように続きます。

スピーチで誰に感謝の気持ちを述べるだろう?何の経験もなく誰にもみとめられていなかった頃の自分に手を差し伸べ、押し上げてくれた人たちに感謝を伝える。ある程度成功したひとを後押しするのには普通たいした危険はない。でも取るに足らないちっぽけな存在の若者に機会を与え、才能があるかどうかもわからない人物を励まし助けるというならどうだろう?

そして彼は、想像上のスピーチで感謝する人として、高校の先生方をまずあげます。あと何人かの名前の後に、"The Crucifer of Blood"の脚本家でこの時の公演の舞台監督もつとめたPaul Giovanniにも感謝しています。彼は自分に役を与えてくれて気にかけてくれた、と。そしてその次がジェレミーです。

http://poguespages.blogspot.jp/2009/04/those-who-deserve-thanks-or-mentors-who.html
Pogue's Pages:
"Those Who Deserve The Thanks (or The Mentors Who Took The Real Chance On You)"
By Charles Edward Pogue, April 30, 2009

ジェレミー・ブレットはチャールトン・ヘストンと共にこの芝居の主要な出演者で、彼も私のことを気にかけてくれた。俳優や脚本家として今まで仕事をしてきた中で、私が出会った数少ない本物の紳士のなかの一人だった。出演者のパーティで突然微笑みかけて、自分にはわかっているんだというふうに私にむかって指をふって、「君は騎士と、妖精の住む城と、竜と、夢の世界を呼び出すその素晴らしい想像力を持っていて、でも誰にもそれを理解されていないと思っているだろう。でもひとにはちゃんとわかるものだよ!」そのあふれるばかりのやさしさは、私にとって大きな意味を持っていて、決してその時のことを忘れなかった。彼は公演の間もその後も、何度も私を励ましてくれた。

Jeremy Brett, who starred in the play with Charlton Heston, was another one who "cared". One of the few true gentlemen I've met in the business. I remember once, at a cast party, he suddenly smiled and wagged a knowing his finger at me, "You have this wonderful imagination that conjures knights and faery castles and dragons and marvelous dreams and you think no one sees it, but...they do!" That great kindness meant a lot to me and was never forgotten. It was just one of many encouraging generosities he showed me during the run of the show and after.



こうやって若者を励ますところがジェレミーらしい、と読んでいてうれしくなりました。本物の紳士はあたたかい思いやりを持っていて、まわりの人の気持ちや状況を敏感に察して、はたらきかけてくれるのですね。はまぐりさんが以前の記事のコメント欄で「『人の心を瞬時に察知し、手を差し伸べる能力』を持っている人のようですね」と書いてくださいましたが、その表現はジェレミーのこういう本質をよくあらわしていると感じます。

そして、この励まし方が印象的でした。君は想像力に富み、物語世界に生きることができる人だね。でもそれは自分の中だけのことで、現実世界とは関係のない単なる自己満足だとがっかりすることもあるだろう。でもそうではなくて、君のまわりの人にも君の演技を観る人にもちゃんと届くものだ。何より僕にはわかる。自由に想像の翼を広げてごらん。そんなふうに私にはきこえました。

皆様は想像力ゆたかな子供でしたか?私はそうでした。本を読んでは想像していました。いえ、子供はみな想像力にあふれた小さな芸術家かもしれません。ジェレミーも、子供はみな俳優だと言っていましたね(「子供の頃のこと;1987年のインタビューより」)。

ジェレミーは特に、演じる役になりきる"becomer"であるためにも、想像の翼を大切にしていたのでしょう。

前回の記事のタイトルを「ドイルが朝、読んできかせたホームズ;1989年のインタビューより」としましたが、朝というのはジェレミーの想像で、実際には朝は、この父にとってゆっくり読みきかせる時間や気持ちの余裕がなかったかもしれませんね。

また前回私は「明日の朝きかせてね、と頼まれて前の夜に書き上げた部分を、朝の食卓で読んでいるのでしょうか」とも書きましたが、これもジェレミーの言葉を受けての私の想像の産物にすぎません。

それでもやっぱり、こうやって具体的に想像することで生まれてくる心象風景の豊かさというものが好きです。それはたとえ実際とは細部では違っていても、何かの真実を伝えてくれるものだと思います。そしてジェレミーが「青い紅玉」をあげてくれたおかげで、冬の朝の空気まで感じることができます。こういうところが"a romantic"である楽しさですね。



ところで、りえさんが現在の最新記事「『マイ・フェア・レディ』ロンドン・プレミア映像 」で、私の以前の記事を紹介して下さいました。りえさんの「『マイ・フェア・レディ』50周年記念ブルーレイ 」の記事について、私がメールを差し上げた件に関連してです。りえさん、ありがとうございました!

りえさんのブログをご存知の方も多いでしょうが、私がジェレミーのホームズを再発見した時に出会って、その数ヶ月後にドキドキしながら初めて書き込んだ場所です。第一回目のコメント欄では、私は「ジェレミーさん」と書いていました。ああ懐かしい!

RM

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Author: RM
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和訳には間違いがあるかもしれません。最近は必ず英語原文を併記・またはアドレスを書いて読めるようにしていますので、どうぞそちらも参考になさってください。

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