Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

前々回の「Sir Ian McKellen、ハムレット、そしてホームズ」の記事で思い出した事を書きます。

以前、Sir Ian McKellen(イアン・マッケラン)の公式ホームページに行ったことがありました。Edward Hardwicke(エドワード・ハードウィック)が映画 Richard III (1995) に出演してLord Stanleyを演じた写真を検索していた時でした。サー・イアンはこの映画に主演すると共に、二人の脚本担当の内の一人で、エグゼクティブ・プロデューサーの一人でもありました。(http://www.imdb.com/title/tt0114279/fullcredits?

エドワードの写真があって、サー・イアンの言葉が読めるのは、このページです。
http://www.mckellen.com/cinema/richard/screenplay/100.htm
ずっと下にスクロールして、SCENE 102と書かれたところにあります。サー・イアンのエドワード評を一部引用します。

エドワードはOlivier(ローレンス・オリヴィエ)が、自身が率いるナショナル・シアターに参加させた若い俳優達のうちの一人だった。すばらしい演技をする。

Edward was one of Olivier's young recruits to his National Theatre and he does a brilliant impersonation.


この他にホームページの中のE-Posts (Q&A) というページには、サー・イアンによる "Answers to fan's most pressing questions"があります。
http://www.mckellen.com/epost/index.htm

そこに、ジェレミーのホームズのことが2回書かれていますので、今日はその内の一つを引用します。「シャーロック・ホームズ関連のプロジェクトに関わったことがありますか?」というファンの質問への答えの前半部分です。

E-Posts
Correspondence with Ian McKellen
29 January 2002
http://www.mckellen.com/epost/m020129.htm

William Gillette(ウィリアム・ジレット)がConan Doyle(コナン・ドイル)による物語を劇にして、最初に劇場でホームズを演じて以来、多くの俳優がホームズで名声を得てきました。これまでで私が一番好きなのは多分、英国のテレビシリーズでホームズを演じたジェレミー・ブレットでしょう。彼は、神経質で普通の人とは違うホームズのいろいろな面をその演技で表現しましたから。ホームズを演じるのは素晴らしいでしょうね。何でも知っていて、何でもできて、好きなことだけにとりつかれているんですから。

Many actors have triumphed as Holmes ever since William Gillette, the first stage sleuth, starred in his adaptation of the Conan Doyle tales. My favourite so far was perhaps Jeremy Brett in the British television series, because he brought out Holmes' neuroses and eccentricities. It must be a fabulous part, all-knowing, all-achieving, obsessed.


これは2002年ですからもちろんサー・イアンはまだ、自分が老ホームズを演じることになろうとは知らない時です。ジェレミーが演じたホームズについての感想が、前々回の記事のコメント欄でお話して追記にも書いたものと、かなり違うのが興味深いです。もちろんジェレミーをいくつもの面で評価していて、違うときの質問に違う表現で答えた、という点もあるでしょうが、今回ジェレミーのホームズを思い出して、あらためて感じたこともあったのかもしれません。老いたホームズを演じたからこそ、ジェレミーのホームズのなかにあらわされた苦悩する面に、自身のホームズとのつながりを感じたのかもしれません。

もう一つ、2004年のページでジェレミーに言及しているところは、次の機会(次回?)に触れます。

RM
ジェレミーとは全然関係ないと思われるようなことをここに書くのは、二回目でしょうか。でも実はちょっと関係あるんですよ。

はじまりはナツミさんのブログ、「21世紀探偵」のこの記事のコメント欄でした。
ユリイカ2014年8月臨時増刊号

ナツミさんのブログが「ユリイカ」のシャーロック・ホームズ特集号で紹介され、その文章が掲載されたことを知らせてくださった時の記事なのですが、そのコメント欄で、それぞれ自分がなぜこの名前を使っているかということが話題の一つになりました。私が、私の場合ははじめてネットに書き込んだ時のままの名前で、それは漫画家の三原順さんのファンの集まりでした、とお答えしました。そうしたらその場にいらした方も、新たに書き込んでくださった方も、それぞれに三原順さんの作品がご自分にとってどんな意味があるかを語ってくださって、言わば、ナツミさんちのお茶会の一角に三原順さんの話でもりあがる「三原テーブル」が、しばしの間ひらかれたのです。

ナツミさんはカップにお茶を注ぎつつ、あたたかい目で見守ってくださったので、私たちは「はみだしっ子」やその他三原さんの作品のことをこころおきなく懐かしく語り合いました。そしてこんなにも三原順さんの作品が今でも私たちに大きな影響を与えていることにこころ踊らせたのでした。

ナツミさんのブログは私にとって大切なお隣さんで、ジェレミーのおかげでできたご縁です。そこで思いがけず三原順さんの作品を愛する多くのかたの声をきけたことは、うれしいことでした。ね、ですからここで三原順さんの没後20年展のご紹介をすることは、ジェレミーと全然関係ないこととも言えないでしょう!


私が「はみだしっ子」に出会ったのは、(三原テーブルでは中1と書きましたが多分間違いで)中学校2年生の冬です。1巻と2巻が発売されていました。それから「はみだしっ子」と共に時がたって、連載の最後のページを、時がとまったような一瞬のなかで開いたときには高校3年生でした。生きていく道・大人への道、それは誰にとっても、私にとっても、それぞれに中身や重さはちがっても何かしら困難がともなう道で、私なりの旅路はそれからも続いたのですが、その途中での最後のページ、あのページの風景を私は、希望をあらわすものと受けとめました。あの最後のページはこれからも生きていけるという希望でした。

大学にすすんだ私は、漫画を読むことからは遠ざかりました。ふたたび三原さんの名前をみたのは1995年か1996年、書店に置かれた漫画の本の、多分帯に書かれていた、「遺作」の文字とともにでした。1997年ごろ、思い立ってネットで検索して三原順さんのファンの方のサイトを知って書き込み、そこで知り合った方にさそわれて、1998年12月のある土日に開かれた「三原順展」のために上京しました。ファンによる手作りの展覧会で、原画や連載時の付録などのほかに、作品中に出てくる物に見立てたり、手作りしたものもおいてありました。エルの蹄鉄とか、トリスタンのマッチとか。私は遠いところからポッと行って、その掲示板の方が手配してくださっていた旅館でたくさんのメンバーと楽しくおしゃべりして、東京在住の方以外でそこに泊まり、次の日の朝にはまた地元東京の方も旅館に来てくださって、会場には二日間とも行って懐かしい思い出をつくりました。私の手元には片付けの時か何かに頂いたトリスタンのマッチがあります。裏にボールペンで書かれた「古くからある弁護士の格言」は、あれからの時間の中で少し色あせています。展示の予備のものを頂いたのだったと思います。

三原さんがご縁で知り合った何人かのかたとは、今でもやりとりがあります。(私は筆無精で、ずいぶん失礼してしまいましたが。)そのうちのお二人が、三原順さんの没後20年に際しての今回の復活祭にも深く関わっていらっしゃって、そのお一人の応援ブログがこちらです。愛情も情報もリンクもいっぱいあります。
三原順復活祭 応援blog

また、ナツミさんがしばらくの間「三原順復活祭」をプロフィール欄で紹介してくださっていて、そこでリンクを貼っていらしたのが、ここにも来てくださったことのあるbillylabさんのブログです。上でご紹介したナツミさんちの「三原テーブル」でも、billylabさんといろいろなお話ができました。ご自分のブログでこの復活祭のことをたくさん書いていらっしゃるだけでなく、「三原テーブル」の時よりもずっとずっと前から、三原さんのこと、はみだしっ子のことを何度もブログに記していらっしゃいました。そしてBBCの「シャーロック」のことも。こちらでコメントなさる時にアドレスも記してくださっていたので、ここにそれを書かせていただきますね。
Purple Horizon


私は年末から万全の状態ではなくなって、この先の予定をたてられずにいたのですが、少し回復しかけたので3月には上京しようという気持ちになってきました。いま行かなかったら後悔しそうですから。それでこの催しについて、ここでもご紹介したいと思えるようになりました。ああ、本当は、四期にわけた展示中の第一期にも行きたいのですが。第一期は3月2日までで、グレアムと「 はみだしっ子」特集です。

三原順さんの漫画に思い出があって、この催しについてご存知でなかったかたが、リンク先の記事でしばしあの作品の世界をふりかえり、あの頃のご自分に出会ってくださいますように。

行けることになれば、私にとって久しぶりの東京です。できれば寄席にも行って、そして美術館や古本屋も楽しんでこようと思います。

RM
前回の「"Playing the Dane" (1994)」で引用した文章の中で、このドキュメンタリーの出演者の一人としてSir Ian McKellen(イアン・マッケラン)の名前があがっていました。その時、ああ、サー・イアンもホームズを演じるというニュースがあったけれども今どうなっているかしら、と検索したのですが、最新の状況を伝える記事はまだないようだったので、触れずにいました。でもそれから間もなく、たくさんの記事がネット上にあらわれました。サー・イアン主演の映画"Mr Holmes"のプレミア上映がBerlin film festivalで行われたそうで、その記事です。その中の一つから引用します。

'I relate to the way Sherlock talks about death': Ian McKellen on his new film role
The Observer, 8 February 2015
http://www.theguardian.com/culture/2015/feb/08/sherlock-film-mr-holmes-ian-mckellen

シャーロックはすでに120人もの俳優が演じているけれども、ハムレットを演じるのとほとんど同じです。役を役者個人のものにはできない。もしそう思って演じるなら間違っている。

(中略)

私の世代のひとの多くはジェレミー・ブレットがホームズだと感じているでしょう。ホームズをテレビで演じていました。とても長い間、そして驚くほどすばらしく。あの演技に挑むなんていうことも考えていません。

"Sherlock has already been played by 120 actors and it's rather the same thing as playing Hamlet. The role doesn't belong to you and, if you think it does, you have the wrong idea. [...]

People of my generation tend to look to Jeremy Brett, who played him on television. He did it for such a long time and so astonishingly well. I would not even want to challenge that performance. [...]"



最初の部分で面白いと思うのは、ホームズを演じることについての気持ちは、ジェレミーとも一致しているということです。ジェレミーはいつも、ホームズを演じる俳優の長い連なりの中の一人ということを意識していましたね。ホームズとハムレットの二つの役を演じたこの二人の俳優は、同じようなことを感じているのでしょう。

そして、先日の記事でジェレミー演じるハムレット評を紹介した中の、「これまでに高名な俳優たちが自分の考えるハムレットを私達に示してきたが、ブレットは私達自身のハムレットを目の前にみせてくれる」という表現とも呼応しているように思います。ホームズとハムレット、どちらを演じる時も、役を自分という個人に引き寄せすぎると何かが失われてしまうのでしょう。ジェレミーもサー・イアンも、それがわかっているのでしょう。ジェレミーは特にbecomerですものね。

引用箇所の2番目の部分、ホームズは役者個人の持ち物ではないことを認めた上で、でも実際にはある世代の人はジェレミーこそがホームズだと感じているということを、サー・イアンの口からきけたのはうれしいことでした。たくさんの俳優が今までもこれからも演じるホームズ、だからこそ面白い、でもこころに永遠に残るホームズは観ているそれぞれの人にあって、それがジェレミーのホームズだという人がたくさんいるということですね。もちろん私もそうです!

RM

追記:この記事を書いた後で読んだインタビューで、サー・イアンはさらにこういうふうに言っていました。コメント欄でナツミさんともお話しましたが、うれしくて追記してまで引用します!

『ホビット 決戦のゆくえ』ロングインタビュー
第1回:イアン・マッケラン(ガンダルフ役)
http://www.cinematoday.jp/page/A0004356

「わたしが素晴らしいと思ったシャーロック・ホームズは、ジェレミー・ブレットがイギリスのテレビシリーズで演じたものだ。苦悩する男だ。彼は問題を抱えた人ばかりの世界にいて、何とか助けようとする。」


"Playing the Dane"は1994年10月30日にBBCで放映されたドキュメンタリー番組で、"Dane"はデンマーク人ですから、"the Dane"はここではデンマーク王子であるハムレットのことをさします。

この番組の説明を以下のページから引用します。

BFI Screenonline
"Hamlet On Screen"
http://www.screenonline.org.uk/tv/id/566312/

Sir Ian McKellen, Richard Briers, Jeremy Brett, Steven Berkoff, Frances de la Tour, Kevin Kline, Christopher Walken, Christopher Plummer, Stacy Keach, Tom Hulce が、シェークスピアのもっとも難しくもっとも厳しい役を演じた経験を語る。

[A]ctors Sir Ian McKellen, Richard Briers, Jeremy Brett, Steven Berkoff, Frances de la Tour, Kevin Kline, Christopher Walken, Christopher Plummer, Stacy Keach and Tom Hulce discuss the experience of playing Shakespeare's most demanding role [...]


BFIのこちらのページにも記述がありますので、備忘録代わりに記します。
http://explore.bfi.org.uk/4ce2b7dd17ff0
昨年はじまったThe BBC genome projectの、この番組に関するページ。
http://genome.ch.bbc.co.uk/a9194dc869a84315a25921a2980844a1
British Universities Film & Video Councilのページです。
http://bufvc.ac.uk/shakespeare/index.php/title/av36504

1994年10月30日放映で、撮影がいつだったかはわかりませんが、1995年9月に亡くなったジェレミーの最後のインタビューということになるのかもしれません。Jeremy Brett Informationでは"This was one of the last interviews Jeremy gave"と書いていて、一番最後とは限定しきれていないのですが。(追記:「映像での」最後のインタビュー、と書くべきでした。ごめんなさい。)
http://jeremybrett.info/tv_dane.html

ジェレミーがこの番組中で、ハムレットを演じた経験をどのように語っているかはまたあらためて。こんな中途半端な終わり方をするならば、まとめてゆっくり書けばいいのにと思いながらも、ぼちぼちと書くのが性にあっているようなので。

これをご紹介したくなったのは、ここ数回でハムレットを話題にしているからというのが一番ですが、もう一つには、よろこびと悲しみはほとんどの場合別々のものではなく、よりあわさっているということを、このところ感じているからです。ハムレットを演じた自分の経験と、この重要な役についての考えを語る機会を得たことは、ジェレミーにとって大きなよろこびであるとともに、劇場でも映像作品でも、もう主要な役を得ることはできない健康状態である身をあらためて感じる悲しさも、また大きかっただろうと想像します。

人生のほとんどのことは、毎日の小さいことから人生の一大事まで、よろこびと悲しみの両方を同時につれてくるのだろう、そのどちらをもみとめて受けとめて、あとはゆだねて生きていこう、そういう気持ちの今の私に、ジェレミーはそうやって生きて、そうやって亡くなったのだろうと思わせてくれます。

さあ、二時過ぎと遅くなってしまいました。(誤字脱字がありそうだけど、明日訂正しましょう。*訂正しました)ではおやすみなさい。

RM

 RM

Author: RM
コメントは承認後に公開されます。古い記事へのコメントも大歓迎です。2010年8月7日に始めました。
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和訳には間違いがあるかもしれません。最近は必ず英語原文を併記・またはアドレスを書いて読めるようにしていますので、どうぞそちらも参考になさってください。

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