Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

前回の最後で、ジェレミーがお父様の乗馬ズボンを持っていることにふれました。乗馬ズボン以外にも、ジェレミーが父親の持ち物を持っていることを話しているインタビューがありました。

それは父のメダル、つまり勲章で、1985年にアメリカで舞台に出演した時のインタビューでバッグの中に持っていました。1985年というと、「最後の事件」の撮影がすんでアメリカにいるJoan Wilson(ジョーン・ウィルソン)のもとに戻った時で、ジョーンの病気のことは二人にはすでにわかっていましたが、このインタビューでは口にしていません。

二カ所引用しますが最初の部分の前では、自分はひとの中にいるのが好き、ダンスをしに行ったりするのが好きなのに、ホームズを演じてから世捨て人のようになった、と話しています。その後からです。

From Sherlock to Modern Villain
The New York TImes, May 26, 1985
http://www.nytimes.com/1985/05/26/arts/from-sherlock-to-modern-villain.html

「ホームズはとても複雑な性格で、そばにいて気が休まらない人物です」と言った。「僕はホームズに会うために道を渡ったりはしませんね。ホームズを演じる時には、愛情なんていうものはどこかに置いておかないといけません。彼は歩く頭脳みたいな人間で、とても失礼で『ありがとう』さえ言わないんです。」

そんな陰気な経験の後だからこそ、Willie Tathamを演じるチャンスに大喜びで飛びついたと言う。今Brooks Atkinson劇場でリバイバル上演されている、Frederick Lonsdaleの1923年のコメディ''Aren't We All?'の中の役だ。「楽しい休みがほしかったんです。そして妻の近くにいるいいチャンスでもありますからね。」

''He's a very complicated character, very uncomfortable to be around,'' he said. ''I wouldn't cross the road to meet him. When you play him, you leave out love, you leave out affection. He's a walking brain who's very rude, and can't even say thank you.''

After such a depressing experience, Mr. Brett said he jumped at the chance to play Willie Tatham in a revival of Frederick Lonsdale's 1923 comedy ''Aren't We All?'' now at the Brooks Atkinson. ''I wanted a holiday,'' he said, ''and it was also a chance to be near my wife.''


ブレット氏は自身が演じるWillieのために、彼の人生の複雑な歴史を考えだした。ブレット氏が言うにはWillieは第一次世界大戦に従軍したが、同じ年代の友人はほとんどそこで戦死してしまった。「Willieの境遇は私の父が元になっているんです。父はHenry William Hugginsといって、第一次世界大戦に参加した有名な軍人でした。私のこの演技を父に捧げます。父の勲章を今も持ち歩いているんですよ。」彼はショルダーバッグをあけて、時を経て光沢の失われたメダル四つを出してみせた。

Mr. Brett [...] worked out a complicated history for his character, Willie. As he sees it, Willie served in World War I and lost most of his contemporaries to the casualty lists. ''I based Willie on my father,'' he said. ''He was Henry William Huggins, a famous soldier in World War I. I dedicated my performance to my father. I even have his medals.'' He unzipped his shoulder bag and pulled out four tarnished medals.


引用した部分についてもう少し書きたいので、多分次回まで続きます。

RM
後回しにしていたのを書くだけの余裕ができたので、1975年のThe Guardianから前々回引用した部分で思い出した事など、ぼちぼちと書いてみます。

まず、少ない服を着られなくなるまで着るということと、ひじがすり切れたセーターの話から連想したのはEdward Hardwickeのジェレミーを語る言葉です。以前「ジェレミーの白いカーディガン」の記事中で引用したときは原文を書いていなかったので、原文併記の上で再度、ただし訳を一部変えました。

「ジェレミーのお気に入りで、よく着ていた服は、黒いカシミアのセーターと白いコットンのズボンでした。ある日私がスタジオについたとき、ジェレミーもタクシーから降りるところでした。前にかがんで運転手に代金を払ったその時、何回も何回も洗濯して長く着ている白いコットンのズボンの、ウエストの布が残りの部分から破れて、ズボンのそこから下の部分が地面に落ちたのです。ジェレミーはズボンと格闘しながらなんとか衣装部屋に入って行きましたが、その時のジェレミーのあの笑い声はリバプールまできこえていてもおかしくありません。」

'Jeremy's favourite outfit in which one usually found him was a black cashmere sweater and white cotton trousers. One day I was arriving at the studio and Jeremy was getting out of a taxi. As he leant forward to pay the cabby, the waistband of this particular much-laundered pair of white cotton trousers parted company with the legs, which fell to the floor. Jeremy then struggled into Wardrobe where his laughter could have been heard in Liverpool.'

Bending the Willow
by David Stuart Davies

前々回引用した1975年のThe Guardianの記事にあった、ギリシャからのあの白いカーディガンは、「ジェレミーの白いカーディガン」で書いたように1974年から1988年まで目撃(うふふ)されていて少なくとも14年は着ていたのですが、あれは丈夫でひじに穴があいたり、どこか破れたりしていなかったのでしょうね、多分。

そして17歳の時のはじめてのスーツというのは多分あの、Brettという名前の元になったスーツですね。このスーツの話は何度か話しているのを知っていますが、1991年の"Desert Island Discs"のインタビューではこんなふうです。RDとあるのはインタビューアです。

RD: それなら「ブレット」という名前は、どこから来たんですか?

JB: スーツの上着の内側からなんですよ!父が僕にはじめてのスーツを作ってくれて–––実際は二着だったんですが–––それがウォリクシャーのウォリックにある「ブレット」という仕立て屋のものだったんです。イングランドの地図の真ん中にピンをさしたら、そこがウォリクシャーです。その仕立て屋から名前をもらいました。父はそのことを喜んだので、それでよかったんです。


RD: Where did you get the name "Brett" from in that case ?

JB: The inside of my jacket! My father had my first suit made for me—actually two—by a tailor called Brett of Warwick in Warwickshire. Warwickshire, if you put a pin in the centre of a map of England, that's exactly where it is. So I took the name from that, and it pleased my father, so that was good enough.

From "A thrilling time" published by JBSF

スーツから名前をとったことは知っていましたが、私が知っている中では、あのスーツは父親が作ってくれたものだ、実際には二着作ってくれた、と言っているのはこのインタビューだけです。そしてそのスーツを41歳の時も持っていたのですね。

このスーツではないかとも想像できるスーツを着て、父親と一緒に歩いている写真があります。この写真を私がはじめてみたのはLiveJournalのファンコミュニティ"For Fans of Jeremy Brett"でだったのですが、2009年のこの記事からは残念ながら今では写真がなくなってしまいました。でもまずはこのページのコメント欄から引用します。
http://jeremybrett.livejournal.com/209568.html

私ちょっと思ったんですけど... 写真のジェレミーのスーツは、"Brett and Co." (ブレット社)のスーツかもしれないなんて、思います?

ああ、そういえばその可能性がありますよね!そうかもしれないですね。


私もこの写真をみたとたんに、そう想像したんです。

それでその写真ですが、私がLiveJournalで見た写真(後述するように雑誌の記事中の写真)と同じものがアップロードされている最近のページは、たとえばFacebookのこちらです。ぼんやりしていますけど。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10202712193740514

いかがでしょう。父親からはじめてのスーツを作ってもらった17歳からそう間もない頃のジェレミーにみえませんか?ちなみにジェレミーの髪の分け目を考えると裏焼きじゃないかと思うのです。車の向きからみてもあやしいんじゃないかと思うのですが、スーツの前打ち合わせがよく見えないので断言はできません。

なお上記二つのページのどちらにも、この写真がもともと載っていた雑誌名などの情報も、写真のキャプションもきちんと書かれていないので、記録として書いておきます。それでなければ、このぼんやりした写真はジェレミー・ブレットの写真ではなく、ジェレミーという名の別人のものかもしれないとも言えますし。

Why Sherlock Holmes Nearly Killed Jeremy Brett
TV Times, March 5-11, 1994

この号の雑誌の表紙と、記事のタイトルが書かれたページ
http://www.crazyaboutmagazines.com/ourshop/prod_625439-TV-Times-magazine-Emma-Forbes-and-Phillip-Schofield-cover-511-March-1994.html

キャプション:
ジェレミーは俳優になることで、元軍人の父(上にあるのはジェレミーと一緒の50年代の写真)にショックを与えてしまった。しかしジェレミーの俳優人生はすばらしいものになった。

Jeremy Shocked his soldier father (above with Jeremy in fifties) when he became an actor. But his career flourished [...]



1975年のThe Guardianの記事中のジェレミーの言葉にもどると、父の乗馬ズボンを持っているというのもはじめて知って、うれしくて微笑ましいエピソードでした。お父様は1965年に亡くなっているので、この1975年のインタビュー時には、亡くなった後も10年間乗馬ズボンを持っていたことになります。

RM
「続きを後日」の分が今週は書けなくなってしまったので、別の内容で更新します。

David Burke(デイビッド・バーク)の声や調子もとても好きなので、オーディオブックのサンプルで聴くことができるデイビッドの声をご紹介しましょう。Naxos Audiobooksでシェークスピアの長編詩を読んでいます。

William Shakespeare
Venus and Adonis, The Rape of Lucrece
http://www.naxosaudiobooks.com/342912.htm

上記のページの"Audio Sample"をクリックしてください。すぐにデイビッドの声が、それからヴィーナス役の声に続いて、またデイビッドのナレーションにもどります。これは2006年発売ですから今から約10年前、ワトスンだった時から約20年後です。押し付けがましさや、もろさとは無縁で、安心してずっときいていたいような声、きちんとそこにいる声です。アマゾンに転載されている2007年のAudioFile Magazineの書評(オーディオブック評)でもナレーションをほめています。
http://www.amazon.com/dp/9626344296

Naxosでは他にも録音していて、タイトルだけあげると、Pygmalion, The Tempest, King Lear, Waiting for Godotです。

PygmalionといえばもちろんMy Fair Ladyの原作ですね。Doolittleの役ですからコックニーのアクセントで話したのでしょうね、きいてみたいです。サンプル音声には残念ながら入っていないのですが。出演者などの情報が読めるカタログのページはこちらです。
http://www.naxosaudiobooks.com/326812.htm

The TempestではIan McKellen、Benedict Cumberbatchと共演しているんですよ。これも機会があったらきいてみたいなあ。
http://www.naxosaudiobooks.com/230812.htm

King Learではサンプル音声にデイビッドの声が、台詞は短いですが、ところどころ入っています。Kent伯爵の役です。
http://www.naxosaudiobooks.com/324412.htm

Waiting for Godotでもサンプルで声をきくことができます。Estragonの役、靴をぬごうとしてウンウン言っています。
http://www.naxosaudiobooks.com/240212.htm

最後にNaxosのサイトでの朗読者紹介ベージ、下記がデイビッドのページです。
http://www.naxosaudiobooks.com/davidburke.htm

中にこうあります。

He has also appeared in Richard III and Coriolanus for the Almeida Theatre at the Gainsborough Studios and on tour in Japan and the USA.


えっ、ツアーで日本にもいらしていたのですか?

RM
前回ご紹介した記事中のジェレミーの言葉を少し引用してみますね。

From the archive, 20 May 1975: Archetypal English fashion for men
The Guardian, 20 May 2015
http://www.theguardian.com/fashion/2015/may/20/english-fashion-richard-briers-jeremy-brett-1975

彼が着ていたのは、緑のカシミアのプルオーバーと、黒のベルベットのズボンだった。

いつも最新流行の服で身を包んでいるひとだと想像していたのだが、ブレットはすぐに否定した。「家では普通こんなです」と言う。「一年に一度、ズボン2本、プルオーバー3枚、シャツ4枚を買うくらいですね。」(中略)

「戸棚の中の服で、新しい着方を考えだすのが好きです。でも選べる服は限られていて、なぜって僕のセーターはほとんど、ひじに穴があいているからなんです。好きな服はぼろぼろになるまでずっと着ます。17歳の時のはじめてのスーツをまだ持っていますし、父の乗馬ズボンだってまだありますよ。ほんのちょっとだけセンスがあれば、お金をかけた服を着る必要はないと思います。」


[H]e had on a green cashmere pullover and black velvet trousers.

Brett quickly dispelled my idea that he's a walking fashion plate. "This is usually what I wear around," he explains. "I'll buy a couple pair of trousers, three pullovers and four shirts once a year." [...]

"What I like to do is open the cupboard and invent. But my selection is usually limited because most of my sweaters have holes at the elbow. If I find something I like I'll flog it to death. You know, I still have my first suit I got when I was 17 and things like my father's riding breeches. If you can just have a tiny little bit of flair you don't really have to dress up."


この時はまだ41歳のジェレミーですが、ホームズを演じていた50代のジェレミーとすでに同じですね!私達がよくみる私服の写真の多くは50代で、そのうちの多くで同じ(ような)服を着ていて、まさにぼろぼろになるまで着ているという感じです。

そして、服を買う枚数も普通より少なかったということでしょう。「...でしょう」という曖昧な書き方をしたのは、私はさらに少なく、一昨年は夏用ジーンズを一本、昨年は冬にプルオーバーを二枚買っただけなので、いったい普通の人がどのくらい買うものなのか、よくわからないからです。まあでも、ジェレミーと私は洋服の買い物が少ないところが似ている(?)ということで。

この引用部分に関してもうちょっと書きたいことがあるので、続きを後日。

RM
このところホームズに関するお話が続いたので、ちょっと話題をかえてみます。先月20日にイギリスの新聞The Guardianのウェブサイトにアップロードされた記事についてです。これはちょうど40年前となる1975年5月20日の記事の再掲です。

From the archive, 20 May 1975: Archetypal English fashion for men
The Guardian, 20 May 2015
http://www.theguardian.com/fashion/2015/may/20/english-fashion-richard-briers-jeremy-brett-1975

1975年5月というとジェレミーは41歳です。ファッションに関する記事なので、かなり大きな写真が3枚掲載されていて、私は3枚目が一番好きです。あ、でも1枚目と2枚目も好き!筆者はジェレミーを家に訪ねたようですから、3枚の写真の背景は当時住んでいた家なのだと思います。おそらく下記の記事中のインタビューにあったCampden Hillの家でしょう。はじめてこの家の中と外をみました。(Anna Masseyの自伝、Robert Stephensの自伝、David Hugginsへのインタビュー記事などでNotting Hillの家として言及されているのと同じ家のはずです。)
お金のこと; 1973年のTV Timesのインタビューより

3枚目の写真のキャプションにはこうあります。

ジェレミー・ブレットはペルーでこのクリーム色のフェルトの帽子を買った。カーディガンは友達がギリシャから買ってきてくれたものだ。

Jeremy Brett bought his cream felt hat in Peru. A friend brought him the sweater from Greece.


このカーディガンについては、2年前に話題にしました。
ジェレミーの白いカーディガン

上の記事では、1974年から1979年の間に放送された複数の作品で同じ白いカーディガンをジェレミーが着ていること、1988-9年の舞台"The Secret of Sherlock Holmes"の楽屋の外での写真や、当時のインタビューに載った写真にもこの服でうつっていることを書きました。

それではあのカーディガンは、ギリシャからやってきたのですね!そしてペルーで帽子を買ったというのはおそらく、南アメリカのヒッチハイクの旅でのことですね。
南アメリカでのヒッチハイクの旅; Desert Island Discs (1991) から (1)
ジェレミーのギターと歌

こうしてこのThe Guardianの記事は、3枚の素敵な写真だけではなく、以前話題にしたことに関して新しいことがわかるという点でもうれしいものでした。さらにジェレミーがここで言っている内容も、なかなか面白いのです。またあらためて、いつか引用しましょう。

RM

 RM

Author: RM
コメントは承認後に公開されます。古い記事へのコメントも大歓迎です。2010年8月7日に始めました。
私の記事へのリンクはどうぞご自由になさって下さい。
和訳には間違いがあるかもしれません。最近は必ず英語原文を併記・またはアドレスを書いて読めるようにしていますので、どうぞそちらも参考になさってください。

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