Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

前回、エプロンをしている写真をご紹介しました。そこからの連想でお料理についてジェレミーが話しているインタビューを思い出してみると、二つあります。一つはBrettish Empireで読める、このインタビューです。

LUCKY PENNY TALKS TO JEREMY (D'ARTAGNAN) BRETT
by Lucky Penny
Diana - The Paper for Girls Who Love Good Stories, 25 March 1967, #214
http://www.brettish.com/JB_Meets_Diana.htm

好きな食べ物はなんですか?レシピを教えてくださいますか?
なんでも好きで、特に、上手に焼いた特大のミックスグリル、最後にレモンパンケーキ、なんていうのが最高です。でもレシピは何も教えてあげられないのが残念です。僕の料理はゆで卵に始まりゆで卵に終わる、という具合ですから。


What do you most like to eat? Can you give me the recipe?
I like to eat everything--my fave food is a very well-cooked, giant-sized mixed grill, with lemon pancakes to finish me off. But, I'm sorry I can't oblige you with a recipe, my cooking begins and ends with boiled eggs.


well-cooked は特にお肉の場合は、よく焼いたという意味もあるようですが、ここでは、上手に焼いたというふうにとりました。

イギリスのmixed grillってどんなのかしらと思って調べたら、Wikipediaで "English mixed grill, consisting of lamb chops, lamb kidneys, beef steak, Gammon, tomato and mushrooms," The New York Timesの記事の中で "The British grill lamb, tomatoes, mushrooms, the dry-brined pork known as gammon" と書かれていました。

どちらにも gammonという言葉が出てきたのですが、私は知りませんでした。研究社新英和中辞典によると「《主に英国で用いられる》 燻製(くんせい)[塩漬け]にした豚のわき腹肉[もも肉]」だそうですね。おいしそうにきこえますがどんなでしょう。いつか食べてみたいです。

以前の「学生時代の恋、好きなポップス、好きな食べ物:1967年の雑誌インタビューより」の記事では"Favourite food is a good old-fashioned fry up"となっていて、これはフルイングリッシュブレックファストだと、さきさんから教えていただきました。Googleの画像検索の結果をみたらfry upとmixed grillは揚げるか焼くかの違いはあるけど、感じはかなり似ているようにみえました。おもに素材の味で勝負っていうのが好きだったのかしら、などと勝手に想像しました。

さて、そしてジェレミー自身のお料理の腕については、これはどうとったらよいでしょうね?つくれるのはゆで卵だけだったのでしょうか。私は、これは自分のことをこんなふうに言って、くすくす笑わせているんだと思います。だって前回の写真では、お料理を全然しないひとのキッチンの様子にはみえませんでしたもの。

RM
最近、記事が「かたい」かもしれないと思います。週に2回くらい書いていたときとちがって、ちょっとがんばってしまうところもあるのでしょう。ぶらぶら歩きねと自分にささやいて、写真を2枚ご紹介しましょう。

まずは写真の商用データベースのAlamyにある、ちょっと珍しいかもしれない写真で、エプロン姿でフライパンを右手にもって、左手で塩かなにかをふっています。やっぱり左利きだと左でふるんですね。写真はクリックで大きくなります。
http://www.alamy.com/stock-photo-actor-jeremy-brett-jeremy-brett-born-peter-56556341.html

エプロンにはリボンがついているなあと思っていたら、拡大していただくとわかるのですが、燕尾服の襟と、シャツと蝶ネクタイがプリントされているんです。

同じ時に撮られたに違いない写真が、他の写真データベースにありました。イギリスの新聞 Daily Mailのアーカイブです。さっきのよりも真剣な顔で、フライパンを前にしています。
http://mailpictures.newsprints.co.uk/view/19457113/elib_asscmmglpict000005011360_jpg

いつの写真かが1枚目ではわからなかったのですが、2枚目では"Date of photography: 03/04/1958" となっていますから1958年4月3日撮影で、Anna Masseyと結婚したのが同じ年の5月26日ですから、二人の婚約・結婚に関する新聞記事に使われたのでしょうね。ジェレミーは24歳です。

こちらの写真ではエプロンはよくみえないのですが、明らかに同じ時の写真です。腰のところにポーチのようなものがさがっているのがみえますが、ベルトにくっつけているのでしょうか。2枚目では写真のキャプションが "Actor, Jeremy Brett cooks in his Chelsea home" となっていますから、ジェレミーの家の台所だということもわかりました。結婚後もここに住んだのかしらと思ってAnna Masseyの自伝"Telling some tales"で今さがしたら、「二人は結婚式の二日後にチェルシーにあるジェレミーの小さな家にもどった」(We returned to Jeremy's little house in Chelsea after two days [...]) とありましたから、ここが二人の家になったのですね。

というわけで、エプロン姿のジェレミーの写真2枚をご紹介する、ぶらぶら歩きの記事でした。

RM
前回と同じ記事からです。前回も書きましたが、記事の題と筆者は
'At Last I'm Free From the Shadow of Holmes'
by Jo Weedon

掲載された雑誌とその日付は(今日の部分はBrettish Empireでは引用されていませんが、前回と同じ記事ですから)Brettish Empireによれば以下のとおりです。
Woman's Own, March 11, 1991.

前回はJoan Wilson(ジョーン・ウィルソン)が膵臓がんの治療を受けていたころのことでしたが、その次の部分では、彼女が亡くなってから悲しみと憤りとにおそわれた、でもジョーンはかえってこないこと、ジョーンのいない人生の生き方をみつけなければならないことがわかっている("I realise she's not going to come back and I must find another way of living.") と話しています。その後からです。

4年前に精神疾患で危機的な状態に陥った。病が重かった数ヶ月のあいだには、もう生きていたくないと思ったことも何度かあった。10週間にもわたって薬の投与と心理療法を受けながら、必死で病気とたたかった。(中略)

病気になったためにわかったことがたくさんある。そしてジェレミーはその経験を話すのを恥ずかしいことだとは思わない。「話したことでとてもよかったのは、よく知られた俳優の私がとても重い病気だったと言うことで、ひとに希望を持ってもらえることです。

それをきいたひとが、自分は一人じゃないと思えるのです。とてもたくさんのひとが普段は言わない自分の病気のことを口にして、私がとても助けになっていると言ってくれます。もしもこころの病で倒れる瀬戸際のひと、あるいは回復の途中のひとを安心させ元気づけることができているなら、私の人生は無駄ではないと思えます。

精神疾患にかかるのは恥ずべきことだというひどいみかたがあります。病気になった人は社会から孤立してしまいますが、本当に必要なのはひととのつながりです。偏見がはびこっていますが、この病にかかった人が望んでいるのは、あたたかい思いやりなのです。」


[F]our years ago, he lost his grip and suffered a major breakdown. Through the darkest months of his illness, there were times he did not want to live and for 10 long weeks he struggled to get better with drugs and therapy. [...]

He's learnt a lot from his illness and he's not ashamed to talk about it. "One good thing that has come out of it all is that, because I'm well-known, I can say I've been desperately ill, and give others some hope.

"One realises one isn't alone. An awful lot of people have come forward and said how I have helped them. If I have given reassurance in any way to anyone on the brink of, or recovering from, a breakdown then I won't have lived in vain.

"There's a terrible stigma about mental illness. People become isolated, but what they really need is some company. There's so much bigotry. Yet people who are suffering need compassion."


精神疾患を認めることで負の烙印を押されかねないという状況のなかでは、病気の苦しみだけではなく社会から受け入れらない苦しみを持つことになります。有名な俳優が病から回復して仕事に復帰していること、それを公にしていることに励まされる患者がいる。それがジェレミーにとって大きな意味を持っていたということですね。

今度はジェレミーに実際に会ったひとの気持ちを想像すると、同じ苦しみを経験しているひとが深いところで共感してくれたという安堵も感じられたのでしょう。以前「『息子の涙が彼を救った』:病気について話している記事から」で引用したジェレミーの言葉を思い出します。劇場の楽屋を訪ねるファンで、わずらっているひと、病から回復したひとを、「私はただ抱きしめるだけです。この苦しみを経験しているひとにとって、抱きしめ合うことは気持ちを癒す薬になるのです。」 ("I just hug them. It's a terrific medicine for someone in that position.")

RM
前回はがんの化学療法をうけていた女性が、ジェレミーとのディナーでこころなぐさめられていた様子をご紹介しました。今日は、ジェレミーの二度目の奥様のJoan Wilson(ジョーン・ウィルソン)が膵臓がんの治療をうけていた時のことをジェレミーが話している記事をご紹介しましょう。ご存知のように、ジョーンは治療の甲斐無く、亡くなってしまいました。ジェレミーの悲しい思い出をきくのはためらわれるかたもいらっしゃるかもしれません。でも喜びも悲しみも含めてすべてそのひとだということで、私はここにその時のことも書きたいと思います。

記事の題は以下のとおりですが、私が持っているこの記事の画像ファイルには雑誌名や日付が載っていません。
'At Last I'm Free From the Shadow of Holmes'
by Jo Weedon

今日ご紹介する中のかなりの部分がBrettish Empireにも引用されています。
http://www.brettish.com/later-stages.html

そしてそれによるとこの記事が載った雑誌とその日付は以下のとおりです。
Woman's Own, March 11, 1991.

ジョーンがアメリカで治療を受けていたとき、ジェレミーははるか離れたイギリスでホームズに全力で関わっていた。

「不安でいっぱいで、そのためにジョーンのそばについていることができないくらいでした。といっても、ジョーンは化学療法を受けている時に私にそばにいてほしいとは思っていなかったのですが。『あなたはこういうこと、見ていられないわ』と言ってました」とジェレミーは懐かしさの笑みをみせた。

ジョーンはアメリカのテレビ局の重役だった。彼女はもちろん正しくて、ボストンの病院にはじめて一緒に行ったとき、ジェレミーは気が遠くなった。
「治療室に入って、ジョーンの抗がん剤治療のための準備がされているのをみたんです。ただただ茫然としました。」

「でもそれほどの衝撃をうけたのはそこに2歳の女の子がいたことで、抗がん剤治療で髪が全部抜けてしまっていました。ジョーンとその女の子、その二人をみているのは私には耐えられなかった。気を失ってしまいました。」

「私はそんなふうで、役立たずでした。『もう来ちゃだめよ。来てもあなたにとって、よいことは一つもないから』とジョーンは言ったけど、すまないと謝って、次も彼女につきそって行きました。今度はもう少しちゃんとしていられました。」


When Joan was having treatment in the States, Jeremy was thousands of miles away, committed to Holmes.

"I felt so frustrated that I couldn't be with Joan, although actually she didn't really want me around while she was having chemotherapy. She said, 'You're not up to this'," he recalls with a smile.

Joan, an American television executive, was right, of course. The first time he went with her to a Boston clinic, Jeremy fainted. "I walked into the treatment room and saw the equipment pointing up at her. I just fell apart.

"But what really threw me was a two-year-old girl who'd lost all her hair because of the chemotherapy. Seeing Joan and that child together was just too much for me. And I fainted.

"I was such a dead loss. Joan said, 'You mustn't do any more of this; it doesn't do you any good'. I apologised, and in fact I did go again and was better."


ジョーンが「あなたはこういうこと、見ていられないわ」と言ったのは、ジェレミーの性質を知っていたからですね。ひとの苦痛を自分のこころにもからだにも、感じてしまうということでしょう。ジェレミー自身よりもよくジェレミーのことをわかっていたようですね。ジェレミーがこの言葉を口にしながら微笑んだのも、そういうジョーンを愛しく思い出してのことでしょう。

こうしてジョーンの治療の様子を知っていたので、前回ご紹介した友人が抗がん剤治療を受けていたときにも、彼女が身体的・精神的にどんな困難に直面しているかもわかっていたし、彼女のために少しでもなにかしたい、楽しい時間も持ってほしいと思ったのでしょう。

このインタビュー記事の別の部分も次回ご紹介したいと思います。今度は自分の病のことを話しています。


さて、グラナダ版ホームズが、また違うかたちで発売されるようですね。デアゴスティーニ・ジャパンから、「隔週刊 シャーロック・ホームズの冒険 DVDコレクション」が2月2日から発売されているということです。
http://deagostini.jp/shdmt/?server=01

くわしいことは私は知らないのですが、ウェブサイトをみるとノーカット・デジタルリマスター版DVDつきマガジンとのこと。「詳細な解説マガジン」と書いてあります。シャーロッキアンでグラナダ版にもくわしいかたが執筆・監修をなさっているとよいなあと思います。

こうして形をかえてこの作品が何度も世に送りだされるのをみると、ジェレミーのホームズのいのちがずっと続いて行くことを確信できます。

RM

 RM

Author: RM
コメントは承認後に公開されます。古い記事へのコメントも大歓迎です。2010年8月7日に始めました。
私の記事へのリンクはどうぞご自由になさって下さい。
和訳には間違いがあるかもしれません。最近は必ず英語原文を併記・またはアドレスを書いて読めるようにしていますので、どうぞそちらも参考になさってください。

全ての記事を表示する

07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08 

QR