Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

今日は前の記事からの続きを書くつもりでしたが、ちょっとお休みします。かわりに、映画"Mr Holmes" (2015) でホームズを演じている Ian McKellen(イアン・マッケラン)のインタビューに、ジェレミーの演技にふれている箇所があったのでご紹介したくなりました。

ちなみに以前もサー・イアンのジェレミーに関する言葉を何回か記事にしました。
Sir Ian McKellen、ハムレット、そしてホームズ
Sir Ian McKellenのホームページより(1)
Sir Ian McKellenのホームページより(2)
Sir Ian McKellenのインタビュー(2015)より

"Mr Holmes"が日本で現在公開中ということで、日本のウェブサイトにこんなインタビューが載っていました。

『Mr.ホームズ 名探偵最後の事件』イアン・マッケラン インタビュー
MOVIE Collection, 2016/03/17
http://www.moviecollection.jp/interview_new/detail.html?id=561

そのうちシャーロック・ホームズのテレビシリーズが始まり、毎週のように見ていました。俳優としての自分に多大な影響を与えたのが、ジェレミー・ブレットがホームズを演じたシリーズです。60年代か70年代だと思いますが、ジェレミー・ブレットは非常にロマンティックで、外見が良く鉤鼻の俳優でしたね。彼はシャーロック・ホームズの別の一面、不穏な一面を表現しました。ホームズの暗い一面を。薬物を摂取し、女性との交流を避け、異常なほど精神的に乱れたホームズです。
 そのことは、常にシャーロック・ホームズに当てはまると思います。彼はどちらかというと落ち着きのない人物で、自分の持つエネルギー全てを、レーザー光線を当てるように、あるいは小型の望遠鏡で覗くように、問題に集中させるような男です。

ジェレミーはホームズの暗い一面を表現したというところ、そして引用箇所の最後にあるホームズの描写を、いろいろな場面を思い出しながら読みました。もちろんこれだけではなく、ジェレミーのホームズにはかっこよさもユーモアもあるのですが、ハムレットよりも複雑だとジェレミーが言ったホームズの性格や個性はおもに、サー・イアンがふれたところにあらわれているのでしょう。

なお、「60年代か70年代だと思いますが」とありますが、実際にはご存知のようにグラナダ版の放映は80年代から90年代にかけてです。(訂正:読み返したらこれは多分私が意味を取り違えていて、ジェレミーがロマンチックな役をしていたのは60年代か70年代、と言っているのでしょう。)

このインタビューは他にも興味深いことがいろいろと語られています。残りはリンク先のページへどうぞ。


他にもサー・イアンのインタビューで、ジェレミーのことにふれているものがネット上にありますので、今日はあと三つご紹介しましょう。

Sir Ian McKellen: Closer to Holmes
by Stephen Jewell
NZ Herald, Jul 19, 2015
http://www.nzherald.co.nz/entertainment/news/article.cfm?c_id=1501119&objectid=11483525

"A great Sherlock for me was Jeremy Brett," he continues, referring to the late British actor, who took on the lead in the 1980s in Granada's acclaimed Sherlock Holmes TV series. "With that, you've got a very troubled man but then he's living in a world of troubled people, trying to help them."

これは、以下の記事の追記部分で引用したインタビューと共通する言い回しが多く、同じものを元にしているようです。
Sir Ian McKellen、ハムレット、そしてホームズ

再掲します。
『ホビット 決戦のゆくえ』ロングインタビュー
第1回:イアン・マッケラン(ガンダルフ役)
http://www.cinematoday.jp/page/A0004356

「わたしが素晴らしいと思ったシャーロック・ホームズは、ジェレミー・ブレットがイギリスのテレビシリーズで演じたものだ。苦悩する男だ。彼は問題を抱えた人ばかりの世界にいて、何とか助けようとする。」

並べて読むと、ちょうど上の部分を訳したものになっているようです。


二つ目はこちらです。
MR. HOLMES: Ian McKellen On Playing Sherlock, Middle-Earth Nostalgia, and More
by Brian Formo
COLLIDER, July 16, 2015
http://collider.com/ian-mckellen-sherlock-holmes-movie-lord-rings-trilogy-hobbit/

Do you have a favorite?

McKELLEN: No! They're all Sherlock Holmes aren't they? Well, yes I suppose I do: Jeremy Brett; he was an English actor who was on television quite a long time ago, these were straightforward, (Sir Anthony) Conan Doyle stories, but he discovered the dark side of the character. He wasn't just a suave know-all, he was a deeply troubled man, and he caught on to the fact that Sherlock was too much brain, too little heart. I feel some sympathy in that.

映像化ホームズ作品のリストをみているサー・イアンにインタビューアが、「特に好きなホームズはいますか」と問うのにたいして、「全部好きですよ!みんなシャーロック・ホームズですからね。ああ、一番好きなホームズ、いますね。ジェレミー・ブレットです」と答えています。「『特に好きなホームズ』というのはなくて全部好きです」と言っている時にはもう、次にジェレミーのことを話そうと思っている感じが私にはします。


そして最後にこちらを。
Ian McKellen Talks About Sherlock Holmes and the Dilemma of Age
By EW STAFF
Entertainment Weekly, July 16 2015
http://www.ew.com/article/2015/07/16/ian-mckellen-sherlock-holmes

Jeremy Brett, who played it on British TV for 10 years, said that Sherlock Holmes was like the dark side of the moon.

Yes, have you ever seen his Holmes? Just wonderful. He's dead now, unfortunately. I think that of all of them, his was the most satisfactory. And at the time his was quite revolutionary. His wasn't just a suave know-it-all. His Holmes was more troubled. But I guess it all depends on the scripts too. The material is excellent.

インタビューアがジェレミーの言葉を引用するのに対して、サー・イアンは「彼のホームズをみましたか?まったく素晴らしかった。残念なことにもう亡くなってしまったけれども。今までのホームズ映像化作品のうちで、彼の演じたホームズが一番よいと私は思います。あの頃、あのホームズは革新的なものでした」と言っています。


今回の4つのインタビューは、その全体も充実したよいものでした。でもジェレミーのファンとしては、ジェレミーの後輩にあたる名優が、こうしてジェレミーのホームズのことを高く評価して何度も口にしてくださっていることが、何よりもうれしいことでした。

RM
前回の続きです。

「8ヶ月たった頃には、そうやってベッドで過ごすのが楽しくなってきました。それで両親はベッドの足もとにオートバイを置きました。それをみてはやく元気になろうと僕が思うように。」

両親が思ったとおりになった --- すべてがうまくいったわけではないが。ジェレミーはベッドから出て、ごう音をたててオートバイで田園地帯を走り回り、生け垣を飛びこえてバスの下に滑り込み、足の指を全部折った。ベッドに逆戻りだった。


'After eight months, I began to enjoy it. So my parents put a motor bike at the foot of the bed as an incentive to me to get well.'

It worked—though not perfectly. Young Jeremy rose, roared around the countryside on his bike, went over a hedge and under a bus and broke all his toes. Back to bed.


こう話している時のジェレミーの顔が思い浮かびますね!いたずらっぽい笑顔でしょうね。

オートバイは昔も今も(それとも今は違うのでしょうか?)男の子のあこがれですね。男の子だけでなく私も、いつかオートバイに乗りたいと20歳過ぎて思い始めて、30歳で免許(当時の中型限定自動二輪免許)をとったことを思い出しました。それでごう音たてて走り回ったかどうかのお話はまたいつか(?)。

そういうわけで、ジェレミーがオートバイで走り回った時の気持ちを想像しています。でも怪我しちゃったんですね。

私はこの部分を読んで、もう一つ別のことを思いました。一度死の淵まで行ったあと、現世の元の生活にすんなりともどれるひともいるでしょうが、ジェレミーはそうではなかったのではないかと。もともとは、いつも走り回っているようなとても活動的な子供だったことが、インタビューなどで話していることからうかがえますから、ベッドからなかなか離れられないというのは、とても特別な状態だったのでしょう。

そしてオートバイで怖いもの知らずで走り回って怪我をするのも、ベッドに逆戻りなのも、この世にもどるための一種の儀式であり、ジェレミーにとって必要な時間だったのではないでしょうか。

私がそう思う理由の一つは、ジェレミーが他のインタビューで語っていることや、本に書かれていることなのですが、それを次回引用しようと思います。

RM
少し肌寒い晴れた日に空と木を見上げていて、十代のジェレミーが車輪のついたベッドから見上げた木々のことを思い出しました。

イートン校の生徒だった16歳のとき、テムズ川での水泳でリューマチ熱にかかって、Warwickshire(ウォリックシャー)の家で8ヶ月の間、ベッドで寝ていなければならなかった。

「そのベッドは僕の王国でした」とジェレミーは言う。父親がベッドに車輪をつけてくれたので、家のまわりの小道で押してもらえた。「横になったまま木々が通り過ぎていくのをみていました。ベッドにいたままで試験をうけたし、チェスも習ったし、皆が僕を気にかけてくれて関心の的でした。」


He was a 16-year-old Eton schoolboy when a swim in the Thames left him with rheumatic fever, confining him to bed for eight months at the family house in Warwickshire.

'That bed was my kingdom,' he says. His father fitted wheels to it so he could be pushed around the country lanes. 'I could lie there watching the trees go by. I did exams from there, learned chess, I was the centre of attention.'

Why Sherlock Holmes Nearly Killed Jeremy Brett
TV Times, March 5-11, 1994
(ただしタイトル以外の書誌情報は、このページの情報が正しければ、ということになります。
http://www.crazyaboutmagazines.com/ourshop/prod_625439-TV-Times-magazine-Emma-Forbes-and-Phillip-Schofield-cover-511-March-1994.html

水泳の季節の後8ヶ月間寝たままで、回復期に外に出たとすると、私のイメージではジェレミーがベッドによこになったまま見た木々は3月の木々なのです。12月、1月ではあまりに寒いですし。全然違うかもしれませんけど。

こうしてその頃のジェレミー、その頃を思い出しているジェレミーをこころに思い描くのも、好きです。

車輪をつけてくださったのがお父様というのも、微笑ましいですね。

RM
前回の記事で、「お料理についてジェレミーが話しているインタビューを思い出してみると、二つあります」と書いた、その二つ目をご紹介しましょう。

For fans of Jeremy Brett という場所は、もう長いこと投稿するひとがいなくて休止状態ですが、まだ中身を読むことはできます。以下のページに雑誌記事をスキャンしたものが載っていて、投稿者は"TV Times, 16-22 Feb 1991"と紹介しています。これは、ホームズを演じるのをやめる、と言っていた時期のインタビューです。
http://jeremybrett.livejournal.com/117315.html

このインタビューについては、5年前のこの記事の中で書いたことがありました。
becomerであること(3)

でもその頃はまだ原文併記を原則としていなかったので、今回はあらためて元の文章も引用して、訳も少し変えてみます。

(ホームズを演じなくなれば)また危ないことでもできるようになるのを楽しみにしている、とブレットはいたずらっぽく言う。「スキーにも行けて、足の骨を折るかもなんて心配しないでいられます。馬にも乗れて、首の骨を折ってもかまわないし、朝起きてスコットランドにドライブに行きたいと思ったら行けます。料理もまたできて、スープストックを作ってもフリーザーに残ったままにならずに、ちゃんと使えるとわかっています。」

Brett is also impishly looking forward to taking up perilous pursuits. 'I can go skiing and not worry if I break a leg,' he says. 'I can go horse-riding and not care if I break my neck. If I wake in the morning and feel like driving to Scotland, I can do that. I can cook again—make a stock and know I'll use it, rather than leave it in the freezer.'


首の骨を折ってもかまわない、という時のジェレミーのいたずらっぽい笑みが想像できます。馬とともに育って乗馬は得意なジェレミーですから、馬から落ちるはずがないのですが。

そして"I can cook again"と言っていますね。スキー・乗馬・ドライブに続いて、わざわざこう言うということは、お料理は好きだったんですよね、多分。

ところで、"make a stock"はスープやソースのためのストック(だし汁)を作ると解釈しましたが、後で使うための保存食のことを言っている可能性もあるのかもしれません。でもとにかく、ゆで卵のためじゃないですよね!

この後またホームズを演じると決心するのですが、それまでのあいだ休暇を楽しめていたことを、25年たったいま祈ります。

RM

 RM

Author: RM
コメントは承認後に公開されます。古い記事へのコメントも大歓迎です。2010年8月7日に始めました。
私の記事へのリンクはどうぞご自由になさって下さい。
和訳には間違いがあるかもしれません。最近は必ず英語原文を併記・またはアドレスを書いて読めるようにしていますので、どうぞそちらも参考になさってください。

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