Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

前回前々回のインタビュー記事からもう少し。ただし今回はこの中でのジェレミーの言葉ではなく、インタビューの最初に書かれている、インタビューアのジェレミー評です。ジェレミーがどんな感じかがよくあらわれていて、「そうそう、そうなんですよね」と言いたくなります。

このインタビューの書誌情報です。
Interview with Jeremy Brett
by Rosemary Herbert
The Armchair Detective, Vol.18, No. 4, Fall 1985

ここから一部を引用しているのが以下のサイトで、今回の部分はそちらにも載っています。
http://www.the-line-up.com/jeremy-brett-sherlock-holmes/

ただし大文字か小文字か、ハイフンをつけるかなど、些細な点ですが雑誌と違っているところがあったので、下では雑誌での形にもどしています。

私がテーブルについていると、元気いっぱい、いろいろな考えや面白いエピソードをたくさんたずさえて、ジェレミーがやってきた。たばこに火をつけるためにマッチをさがしていたが、ジェレミーに言わせればたばこは彼の「呼吸装置」だ。その様子には、自身が演じているホームズのような厳格さはない。スクリーンでは明晰で厳しい観察眼をみせるその目も、いまはすばやくて、踊るように軽やかな、輝く緑の目だ。(中略)

実際のジェレミー・ブレットはあたたかくて快活で、服装はカジュアル、髪がちょっとくしゃくしゃだ。その声と発音はちょっとしたおしゃべりのときでさえ、撮影のリハーサルのときと同じように印象的だし、何かを実際に説明するためにメーキャップなしに突然ホームズの顔にかわるのをみると、俳優としてのすばらしさがわかる。その鋭い視線とすがたで、目の前にいる話上手な楽しいひとが急にシャーロック・ホームズになる。そしてまたすぐに、彼独特の愛嬌のあるいたずらっぽい笑いにもどるのだ。

I was already seated at my table when Jeremy made his appearance, full of energy, brimming with ideas and anecdotes, and looking for matches with which to start up his “breathing apparatus,” the cigarette. In appearance, he proved far less austere than his Holmes portrayal; the same eyes that seem full of intelligence and scrutiny on the screen are darting, dancing, luminous green. [...]

In person, Jeremy Brett is warm and animated, casually dressed, even a bit tousled. His voice and accent are as impressive in small talk as they are in rehearsed scenes, and his skill as an actor is shown when in a moment he turns his face, without make-up, into that of Holmes, to illustrate a point. The posture and the piercing eyes say it all; suddenly the conversationalist across the table is Sherlock Holmes. Then, just as quickly, his face breaks into a winning, whimsical smile all his own.


"Jeremy Brett is warm and animated, casually dressed, even a bit tousled" (あたたかくて快活で、服装はカジュアル、髪がちょっとくしゃくしゃ)って、目に浮かぶようですね。そのくしゃくしゃぶりは、このインタビューにつけれられた写真をみていただくとわかります。ネット上では"A Dedication to Jeremy Brett"という、更新が2000年に止まった古いサイトでみることができます。
http://www.oocities.org/~smidden/picself.htm
真ん中あたりに"During an interview for The Armchair Detective in fall of 1985, Jeremy was 'casually dressed, even a bit tousled' and 'full of energy.'"とあってその下にセピア色の写真が4枚、横に並んでいるのがそれです。写真をクリックすると本来は大きな写真になるはずなのですが、 現在ではそのファイルが失われています。かわりにウェブアーカイブサイトに保存されているファイルへのリンクが書かれていますので、大きな写真をみたいかたはそちらへどうぞ。

突然ホームズになるところも目に浮かびます。たとえばもう少し後の、BBCの The Wogan Interview (1988)でも、ホームズを演じる難しさを話すところで、一瞬ホームズになってみせますね。
https://youtu.be/eqp_9KBlC3o?t=6m44s
6m53sくらいからホームズになり、そして7m10sくらいからワトスンになります。あるいはジェレミー本人にもどるといった方がよいかもしれません。ここでも"a winning, whimsical smile all his own"(彼独特の愛嬌のあるいたずらっぽい笑い)をみせてくれています。1985年のアメリカでも、この笑顔だったのでしょう。

こんな感じで、実際には言葉だけで読むインタビューですが、ジェレミーをみているような、その声をきいているような気持ちにさせてくれる、インタビュー記事の導入部でした。

RM

追記:そうそう、そういえばBBC4で2004年に放送されたドキュメンタリー A Study in Sherlockの中に、The Wogan Interviewからの抜粋も含まれていたのでした。その部分がYoutubeにあって、こちらの方が画質がきれいですから、まだのかたは下記のビデオもどうぞ。3m26sくらいからホームズになり、そして3m43sくらいからワトスンになります。
https://youtu.be/rA8GxCzSLZY?t=2m58s
ホームズにかわるところも、もっとはっきりわかりますし、その前後の笑顔もなんとも素敵です。

前回引用した、子供のころよく踊っていたという箇所のすぐ後です。これは「最後の事件」の撮影のあとアメリカにもどっていた時のインタビューですから、インタビューアもアメリカの人です。イートン校の説明をしているのはそのためです。

学校に行っていたころ、ソプラノの声でした。イギリスの有名なパブリックスクールの一つ、イートン校に行っていたんです。その歌声でなんとか学校生活を切り抜けていたんですが、変声期にはいると、その取り得がなくなってしまいました!

大げさすぎるといつも言われていました。少年聖歌隊員の中のトップだったので、ソロは全部私が歌っていたんです。ひどく劇的に歌い上げて、気持ちを高ぶらせていました。

あるカレッジの美しい礼拝堂での夕べの祈りの時でしたが、窓から光の筋が射し込んでいました。もちろん僕は光の中に歩み入りました。でも夕方の太陽ですからもちろん、射し込む場所が少しずつ動きました。それで、僕も動かなきゃなりませんでした。みんな気づいていました。(笑い)

At school, I had a soprano voice. I was at Eton, one of the great English public schools, and I got through that basically on my voice. When that broke, my gimmick had gone!

I was always accused of having histrionic tendencies. I was the number one chorister in the boy's choir, so I had all the solos. I used to dramatize them quite dreadfully and get quite emotional.

I remember one time it was evensong in a wonderful college chapel, with shafts of light coming in through the window. Of course, I moved into the light. But, being sunlight, of course, it moved a little bit, so I had to move with it. This was spotted. (He laughs.)


Interview with Jeremy Brett
by Rosemary Herbert
The Armchair Detective, Vol.18, No. 4, Fall 1985

"becomer" のジェレミーは、役になりきって演じるときと同じように、歌うときもその気持ちになりきっていたのでしょうね。"I was always accused of having histrionic tendencies"(芝居がかっているといつも責められた)などと言っていますが、でもこれはジェレミーのいつもの、自分の話でひとをくすっと笑わせるための表現という面もあるでしょう。実際、ファンレターもたくさんもらったと別のインタビューで言っていますから、ジェレミーの歌はすばらしかったでしょうね。

夕方の礼拝堂での光景も目に浮かぶようです。ジェレミーは決して、自分を目立たせるために光の中に入ったのではないのでしょう。特別な瞬間を感じとってそれを全身で受けとめ表現する少年だったのだと思います。

そしてここにもちゃんと、くすっと笑わせるところも入れていますね。


このインタビューはとてもよいもので、ここからのみじかい引用はこのブログで何度がしています。また以下のサイトにもかなりながくこのインタビューから引用されています。興味のあるかたはどうぞご覧ください。なお今回の部分は以下のサイトには含まれません。
http://www.the-line-up.com/jeremy-brett-sherlock-holmes/

RM
「ダンス」ということで思い出した、もう一つのことです。インタビューでのジェレミーのこんな言葉です。

Herbert: どんなふうにして俳優になったのですか?小さい頃どんな子供でしたか?

Brett: 私の母はとても素晴らしいひとでした。私は四人の息子の一番下ですが、私が生まれるずっと前から母は、俳優か何か、そういうことをするようになる子供が欲しいと思っていたそうです。子供の頃わたしはよく踊っていましたけど、それをとがめられることなんて、なかったのです。

Herbert: Can you tell us something about yourself and how you came to be an actor? What were you like as a boy?

Brett: Well, my mother was a remarkable lady. I was the youngest of four sons, and I'm told [that my mother] had made up her mind long before I was born that she wanted something like an actor. I was not discouraged when I used to dance a lot as a child.

Interview with Jeremy Brett
By Rosemary Herbert
The Armchair Detective, Vol.18, No. 4, Fall 1985

"she wanted something like an actor"というのは、芸術の道に進む子供がいるように願っていたということだろうと思いました。芸術といってもいろいろありますが、特にからだを使って表現するような舞台芸術に関わる、俳優・ダンサー・歌手などのことだと想像します。だからしょっちゅう踊っていた小さなジェレミーを、愛しげに見守りこそすれ、とがめるなんてことはしなかったのでしょう。

お母様はそういう子供がほしいと思うくらいに、芸術に興味と愛情と理解があったのですね。以前「母のことなど:1984年のインタビューより」の記事でご紹介したインタビューでも、「母は家にいつも音楽と活気をもたらしました」とジェレミーが言っていましたから、ご自分でも音楽をなさったのでしょう。

「役者の道にすすむように励ましてくれたのは母です。母は美しくて魅力にあふれていて、半分がアイルランド人、全部がクエーカーでした。私達の家はイングランド中央部にある大きな屋敷で、コベントリーから少しはずれた田舎にありました。母はこの家をいわば『フラワー・パワー』(訳注:慣習にとらわれずに愛と反戦をひろめる、60-70年代のヒッピーたちの運動)のやりかたで切り盛りしていたんです。いつも困っている人を連れてきて住まわせていました。Westonという名の一家全員が戦争の間ずっと厩舎にいたことを覚えています。母は家にいつも音楽と活気をもたらしました。」

"It was my mother who encouraged me to act. She was a dazzling woman, half Irish and fully Quaker, and run our home, a large country house deep in the Black Country outside Coventry, in a sort of "Flower Power" way, always filling it with people that she'd picked up. I remember her bringing home a whole family called Weston during the war and all of them stayed in our stables. She brought music and life."

The More Than Elementary Mr. Jeremy Brett
by Marianne Gray
Woman and Home interview, June 1984

ジェレミーは、自分が美しい歌声の子供だったことはいろいろなところで言っています。それだけでなく、踊りまわっていた小さな男の子だったというのも、想像するとかわいいですね。

RM
前回ご紹介したMartha Graham Dance Company(マーサ・グレアム・ダンスカンパニー)の公演の様子をもう少し知りたいと思っていたら、こんな新聞記事がみつかりました。

New Graham Dance Work Spans Several Decades
Record-Journal, Apr 4, 1985
http://news.google.com/newspapers?id=ZaBHAAAAIBAJ&pg=2240,613263
(青く印がついているテレビ欄の下です。)

感情をかきたてるようなオルガンとパンフルートでのルーマニアの民族音楽につれて、ジェレミー・ブレットの繊細な表現のナレーションが語られ、カンパニーの15人のダンサーがソロモンの雅歌を踊った。

Accompanied by a sensitive narration by Jeremy Brett to a recording of Romanian folk music excitingly performed by organ and pan flute, 15 Graham dancers dance a literal interpretation of the Solomon's verses.


オルガンとパンフルートの音楽だったのですね。パンフルートは私はもう長いことききませんが、昔ラジオでGheorghe Zamfir(ゲオルグ・ザンフィル)の演奏がよく流れていたのを思い出しました。1980年に初来日したそうです。よくきいていたのはその頃だったのでしょうか。
http://artist.cdjournal.com/a/gheorghe-zamfir/111872

そうしたら、この公演で使われた音楽もザンフィルによる録音だったそうです。それを知っただけで、このダンスをより想像できるようになって、身近になりました。

DANCE: MARTHA GRAHAM GIVES PREMIERE OF 'SONG'
by Anna Kisselgoff
The New York Times, April 3, 1985
http://www.nytimes.com/1985/04/03/arts/dance-martha-graham-gives-premiere-of-song.html

音楽はルーマニアの民族音楽の録音で、Gheorghe Zamfirのパンフルート演奏、Marcel Cellierのオルガン伴奏である。

The music, incidentally, is a recording of selections from Rumanian folk music on the plan [sic] flute by the flutist Gheorghe Zamfir with Marcel Cellier on the organ.



さて、音楽は録音だったということで、ジェレミーの朗読はどうだったかというと、実際に劇場で読んだ回と、直後の4月29日に始まる"Aren't We All?"の公演準備と重なって、録音の時とがあったようです。4月21日までの3週間が"Song"の公演でした (The New York Times, April 23, 1985)。

以下はジェレミーのインタビュー記事からで、リンク先の記事の2ページ目からの引用です。
FROM SHERLOCK TO MODERN VILLAIN
by Judy Klemesrud
The New York Times, May 26, 1985
http://www.nytimes.com/1985/05/26/arts/from-sherlock-to-modern-villain.html

ブレット氏はブロードウェイでの"Aren't We All?"の舞台が始まる前に、マーサ・グレアムの新しいバレエ''Song''の舞台裏でナレーションを担当した。何回かはそこで実際に朗読し、"Aren't We All?"のプレビュー(試演会)があった何回かは録音が使われた。ブレット氏は、それまで俳優として演じた中でもっとも重要な四つをあげるように、といつか言われることがあったら、"Song"をその一つにきっと選ぶだろうと言った。「人生でもっとも喜びを感じたものの一つです。私はマーサ・グレアムの前に跪きます。彼女はアメリカにとって(アメリカ合衆国のシンボルと言われる)クライスラー・ビルディングとおなじくらい重要な存在です。」彼は9月のパリでの"Song"の公演で、8回ライブでナレーションを行う計画だと述べた。

Before he opened on Broadway, Mr. Brett was the behind-the-scenes narrator of Martha Graham's new ballet, ''Song.'' Some nights he performed live; on the nights he was appearing in previews of ''Aren't We All?'' a recording of his narration was played. He said that if one day he was asked to name the four most important things he had done as an actor, he would certainly mention ''Song.'' ''It was one of the greatest joys of my life,'' he said. ''I kneel at the altar of Martha Graham. I think she is as important to the United States as the Chrysler Building.'' He said he plans to do eight live performances of ''Song'' in Paris this September.


最後に言っている9月のパリでのナレーションは残念ながら実現しなかったのだと思います。この年(1985年)の9月にはホームズの撮影に入っていたと別のインタビューで言っていましたから(「最初の入院の時(または「必要とされること」);インタビュー記事 When the lights went out (1990) より」)。でもジェレミーにとって、このバレエ公演での朗読がとても幸せな経験だったということがこの記事でわかります。そして、その時その時の自分の仕事、演じている役や事柄にいつも熱中して全力を傾けるところ、一緒に仕事をしているひとを情熱的にほめるところが、いかにもジェレミーらしいですね。たとえばこの時から7,8年たって「生涯でもっとも重要な四つの仕事」をきかれたときに、"Song"がはいらない可能性が無きにしもあらずだと私は思うのですが、それでもこのときにこう言っているジェレミーが、ジェレミーらしくて好きです。

RM

 RM

Author: RM
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和訳には間違いがあるかもしれません。最近は必ず英語原文を併記・またはアドレスを書いて読めるようにしていますので、どうぞそちらも参考になさってください。

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