Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

今日は前回の写真からの連想で、
1. 役の顔でない、
2. アップではない、
3. あまり知られていない写真
を選びました。例によって私の好きな「芋づる式」です。

下のリンク先はThe Priory Scholars of NYCというホームズ愛好家グループのウェブサイトです。サイトの一番上に掲げた写真では、たくさんのシャーロッキアンに囲まれて額に入れた何かを手渡されて、ジェレミーが嬉しそうに笑っています。
https://prioryscholarsnyc.wordpress.com

この写真を私は、雑誌の1985年のインタビュー記事に添えられていたときにはじめてみました。インタビュー記事の題や雑誌名は以下のとおりです。
Interview With Jeremy Brett
by Rosemary Herbert
The Armchair Detective, Vol.18, No.4, Fall 1985

インタビュー記事中の写真の説明に、1985年3月27日、ニューヨークのBogie's Restaurantで、ジェレミー・ブレットはThe Priory Scholarsの名誉会員証を授与された、とあります。アメリカ PBS での放送初日は1985年3月14日だそうですから(http://www.ihearofsherlock.com/2014/03/sherlockian-history-30-years-ago-today.html)、その直後ですね。

このインタビューの内容は何度かこのブログでも引用したことがあります。たとえばこちらです。
恐怖の感情:1985年のThe Armchair Detective のインタビューより


半年くらい前でしょうか、上にアドレスをあげた、The Priory Scholars of NYCのウェブサイトをみつけました。このサイトのArchivesにある一番古いページは2014年10月ですから、その頃にサイトをたちあげたのでしょう。ジェレミーが会員に囲まれて会員証を手に笑っている写真の下、Historyという文字をクリックすると、二回の休止期を経て2012年に活動を再開したグループの歴史が紹介されていて、そこでもジェレミーのことが触れられています。
https://prioryscholarsnyc.wordpress.com/about/

そしてアーカイブ中の一番古い記事からの引用です。

PRIORY SCHOLARS AT SIXTY
Susan Rice
https://prioryscholarsnyc.wordpress.com/2014/10/21/priory-scholars-at-sixty/

グループの集まりに参加したもっとも有名なゲストはもちろんジェレミー・ブレットで、1985年の集まりの最初の半時間ほどを、会員と共にすごしました。ジェレミーは本当に楽しい人でした。親しくいろいろなことを話してくれましたし、彼のホームズの特徴をすぐにその場でやってくれました。そしてグループの一人一人の話をきちんときいてくれました。とても残念なことに、私自身は仕事が長引いて、集まりに駆けつけたのはジェレミーがその場を去った後でしたが、皆は目を輝かせて、そのときの会話を一語ももらさず話したくてたまらない様子でした。

The most famous guest, of course, was Jeremy Brett who joined us at Bogie's for a half-hour or so at the start of a meeting in 1985. He was a delight — cordial, informative, quick to demonstrate some trick of his Holmes — and he took the time to listen to individuals in the group. Sadly I had to solve some problem at work and arrived at the meeting moments after he'd left, but everyone was still starry-eyed and eager to report on every word.


ああ、ジェレミーらしい、といつものように思います。

これをみつけたときは、雑誌で写真をみるのとはまた違ったうれしさがありました。ジェレミーがアメリカでこの写真に写ってから流れた時間も含めて感じられて、ジェレミー、このグループの人たちがあなたに会ったことを大切にして、30年ほどの時を経て写真をウェブサイトの一番上に掲げましたよ、とこころの中で話しかけました。

小さいですけれども、笑顔が良い写真です。自分のホームズがアメリカでもホームズを愛するひとたちに受け入れられて、皆とホームズの話ができて、うれしかったことでしょう。

RM

追記:日本やアメリカや世界のほかの国々がこんなことになっているのに、こんな平和な記事を書いていてよいのかという気持ちにもなりますが、今ここでの小さな幸せを自分で感じることと、まわりで起きていることを見て自分で感じることと、きっとどちらも大切ですね。
今日はeBayに出品されたMy Fair Ladyの写真のご紹介です。

http://www.ebay.com/itm//371811867822

スマートフォンなどではどう見えるのが私にはわかりませんが、コンピュータからでしたら左上の写真をクリックすると、かなり大きな画像になります。(すでに落札されていますので、数ヶ月で削除されると思います。)

Audrey Hepburn(オードリー・ヘップバーン)とジェレミーが雨の中で最初に会うシーンの撮影時です。George Cukor監督がオードリーに何か話していて、ジェレミーがそのすぐ近くで監督の方を見ています。

My Fair Ladyの撮影時の写真はJeremy Brett Informationに何枚もありましたが、これはそこにもありませんでしたので珍しい写真の部類にはいります。それででしょう、サイン入りというわけでもないのに結構な値段で落札されています。

私ははじめてではないのですが、以前のものはジェレミーの左目は完全に影になっていて表情がわかりませんでしたので、今回の写真はうれしいものでした。

RM
ジェレミーがホームズを語るとき、それぞれのインタビューでいろいろな面に焦点をあてます。ホームズは子供にとってのヒーローだと言っているもの、ホームズとワトスンの友情を語っているものをここ数回で引用したので、ホームズは健全で明るいようにも思えてきますが、もちろんそうではないですよね。ジェレミーはホームズのすばらしさだけではなく、ホームズが内に持つ暗さも見事に表現したのですよね。

本の中のあの複雑な人物を、生身のからだで演じたのがジェレミーでした。そしてbecomerのジェレミーは、しばしばホームズは好きではないと言っていました。(追記:あ、「しばしば」というのは言い過ぎでしたね。「ときどき」に訂正します。ジェレミーにとってホームズの一面である闇の部分は「時に」苦痛だったのでしょう。)

今日引用するのは、ホームズのそんな面を語っているものです。

Super sleuth could be a crook
by Charles Fraser
Evening Times, Sep 20, 1985
https://news.google.com/newspapers?id=Ego-AAAAIBAJ&pg=6012%2C4891201

ジェレミーはホームズのことを調べていくうちに、ホームズの卓越した頭脳と同じくらいに、その尋常ならざるふるまいや性格を重視するようになった。

「できる限り、危うい人間として演じました。ホームズはおそろしく複雑で、他人と交わらない人間でした。並外れた能力を持つ孤独な男です。
彼はコカインとモルヒネ中毒でもありました。誰もが眠りについている夜中にロンドンの通りをさまよう、こころを乱した夜の鳥です。
ホームズは女嫌いです。そして決して鹿撃ち帽をかぶったりしませんでした。田舎で、鹿撃ち帽をかぶるのによい時以外はね。
妙なことに、ホームズのふるまいや性格を研究してどんな男かわかればわかるほど、彼のことが好きでなくなりました。」

Jeremy's study of Sherlock Holmes led him to emphasise his eccentricities as much as his brilliance.
"I tried to play him as dangerously as possible," explains Jeremy. "Holmes was the most complex and isolated creature. He was a lonely man with brilliant instincts.
"But he was also addicted to cocaine and morphine. He was a demented nightbird who roamed around the city streets when everyone else was asleep.
"He was a dedicated woman-hater. And he would NEVER have worn that deer-stalker hat, except perhaps in the correct circumstances in the country.
"Oddly enough," Jeremy admits, "the more I delved into Holmes's personality and character and the more I understood him, the less I liked him."


ホームズが持つ能力とともにこの危うい暗さを、本から抜け出たように表現したからこそ、ジェレミーのホームズはいままでもこれからも、「自分にとってのホームズ」と多くの人に思われ続けるのでしょう。

RM
先月書いた記事「戦車の前に立つ青年:1989年のインタビューより」でご紹介したインタビューからです。2ページあるインタビューのうちの今度は1ページ目からで、ホームズとワトスンの友情についてです。ここで言っている「芝居」とは、"The Secret of Sherlock Holmes"のことです。

出典は以下で、実際のインタビューは1989年の終わり近くにおこなわれました。インタビューのPDFファイルのダウンロード方法については、先月の記事をご覧ください。
"The Wonderful Mystery of Sherlock Holmes"
Scrawl, 2002
https://questingbeastscrawl.blogspot.jp

「男性が互いに腕を組んで歩いているのは妙だと思われるようになりました。ホームズとワトスンはそうしていたものです。親子が道を横切るときのようにね。長いことホームズとワトスンは元祖『おかしな二人』なんじゃないかと思われてきました。この芝居の意味は、最も純粋で素朴な友情をみることができる点だと思います。これは二人の男の劇で、二人とも孤独で何かに傷つき、一人は天才、一人は良き市民です。二人ともそれまでの人生の歴史があります。彼らの友情は澄み切った水のようで、私たちにははっきりとそれがみえます。その純粋さ、そして昔風の品性、信頼、思いやり、礼節がそこにあります。そういった多くのことがその頃は大切にされていましたが、いまは変わってしまいました。」

"It's no longer palatable to see two men arm in arm. Holmes and Watson used to walk around linking arms—like a father and son crossing the road—and it has been suspect for years, they must have been the original 'odd couple'. I think the value of the play is showing friendship in its purest naivety and simplicity. It's a play about two men, both lonely, both lost. One is a genius, one a good man. Both have lived a bit. And their friendship is there like a pool of clear water to see right through, that purity and all those old fashioned things like honour, trust, consideration, manners. So many things were valuable then, and that's changed."


この現代社会のスピードと、ときにはつながりすぎ、ときにはおそろしく分断されすぎている、ひととの関係を思うとき、昔風の友情を語る言葉にほっとします。

もちろんジェレミーは、ホームズの頃が何もかもよかったと言っているわけではありません。上の引用部分に先立つところで、こう言っています。

「あの時代にもどりたいなんて決して思いません。あの頃の貧乏な人々がどれほどみじめな貧困の中にいたか想像もできないし、女性の境遇はあの頃からとても変わりました。いまや男女は友達にもなれます。あの時代、女性はあがめられるだけで、実際の自分をみてもらえず、男性はクラブへ出かけ、女性は家にいてお茶を飲んでいました。いまや全部かわって、私はこうなってよかったと思います。」

"I don't think we'll ever go back, thank God, because we have no idea just how unbearably poor it was, and remember that women have moved much faster—now men and women can be friends. Then, they were worshipped, put on pedestals, the men went off to their clubs and women sat and had tea. Now that's all changed, and I'm very glad about that [...]"


当時のひどい貧困についても女性の立場についても、いまはこうなってよかった、ただし男性どうしの友情については...と先の部分に続きます。

男女の間での友情という言葉で、ジェレミーが二度目の奥様のJoanのことを最高の友人で最愛のひと(my greatest friend and heart)と言っていたことを思い出します(「入院」)。ジェレミーにとって同性の間でも異性の間においても、friendshipが一番大切だったのだろうと感じながら、私にとってのfriendshipを思ってみます。

RM
新年のお慶びを申し上げます。当地は明るい陽射しの元旦で、私は初詣にも初売りにもなーんにも行かず、のんびりと過ごしました。

まず最初に、年末にネットでみつけた記事からご紹介します。BBCでSherlockを演じているBenedict Cumberbatch(ベネディクト・カンバーバッチ)へのインタビュー記事中の、彼の言葉です。

New year, new Sherlock
by Gabrielle Donnelly
Daily Mail Online, 30 December 2016
http://www.dailymail.co.uk/femail/article-4074250/New-year-new-Sherlock-Benedict-Cumberbatch-marriage-children-ll-different-supersleuth-new-series.html

ジェレミー・ブレットがホームズを演じたテレビシリーズをとてもよく覚えています。私の家でいつも繰り返し再生されていました。母がジェレミーの友人でしたから。(同じ時に演劇学校のthe Royal Central School of Speech And Dramaに在籍していた。)彼は素晴らしいなあと思いながら観ていました。

'I have very strong memories of the television series with Jeremy Brett, which was always being replayed in our house because my mother was a friend of his [they attended the Royal Central School Of Speech And Drama at the same time], and I thought he was extraordinary.'


ベネディクトがこうしてジェレミーのことに触れてくれるのは初めてではなくて、何度もこうしたインタビュー記事で目にしているのですが、それでもやはり嬉しいです。嬉しさついでに、新年はじめての記事でご紹介しました。

今までにも何度か彼がジェレミーの名を出しているのをご紹介していますが、一番最近では、3年前のお正月だったのですね。やはりよいお天気のお正月でした。「私は三が日はひたすら家にいるのが常で、初詣にも初売りにも行ったことがないのです」なんて、同じことを書いています。
宝の山の端っこをかじったお正月、そしてベネディクト・カンバーバッチの言葉も少し

その他、以下のような記事でも彼の言葉を引用しました。ご参考までに。
ジェレミーのホームズが愛されていること;Sherlock(シリーズ2)の放送にあわせたトークショー (2012) から
補遺、備忘録 その3(Benedict Cumberbatchとジェレミー)
補遺、備忘録 その7(Benedict Cumberbatch, Martin Freeman, Top 5, Top10)

こちらはベネディクトによる、ジェレミー・ホームズの顔真似もご紹介した記事です。「ベネディクトはジェレミーが演じるホームズの表情の変化に魅せられていたようで、BBCのドキュメンタリー・シリーズ Timeshift の中の How to be Sherlock Holmes (2014) でもそれに触れていました」と書きました。
ホームズの瞬間的な笑み

上の記事であげた番組のクリップがYoutubeにアップロードされました。番組全体ではなく一部分ですから、ここにアドレスを記しましょう。クリックすると顔真似のところからはじまります。
https://youtu.be/lRdd1_bZTo0?t=2m3s


ベネディクト・カンバーバッチが自分よりも前にホームズを演じたジェレミーを評価し尊敬してくれるように、ジェレミーもBasil Rathboneの名をあげて、自分にとってのホームズは彼だ、と言っていましたね。

一方、次にホームズを演じる俳優、次のホームズ作品については、ベネディクト・カンバーバッチは若いですからまだ言及していませんが、ジェレミーは自分の次の俳優がまたホームズを演じるだろうという気持ちが、いつもこころの中にありました。ちょうど、ハムレットをその時代・時代のすぐれた俳優が演じた長い歴史があるように、ホームズもまたこれからも演じられていくだろうと。自分はその歴史の中の一人だと。それを示すジェレミーの言葉として、以前も引用しましたが、やはりこれが好きで思い浮かびます。少し訳をかえて再度引用します。

2ページに分かれて書かれた記事で、引用部分は2ページ目からです。
Brett remains the screen's definitive Sherlock
by Terry Pace
Times Daily, Sep 15, 2004
https://news.google.com/newspapers?id=vXs0AAAAIBAJ&pg=2282%2C2345201
https://news.google.com/newspapers?id=vXs0AAAAIBAJ&pg=4181,2325690

「重要な役は何度も何度も、世代を越えて演じられるものなのです。シャーロック・ホームズという役に私なりの何かを残して、次の人に --- 違う時代のための違うホームズに手渡すことができれば、と願っています。

「その時までの間この役を演じることができて、コナン・ドイルと彼が作り出した人物のために何かができたのをとても幸せに思います。」そしてブレットはこう言った。「自分が一生懸命やってきたことが、認められずじまいではなかったと確かに感じています。それは役者としてとてもうれしいことなのです。」

"Great roles are meant to be played again and again, from one generation to the next. I shall hopefully leave my mark on Sherlock Holmes and then pass on the part to someone else—a different Holmes for a different era.

"Until then, I must say that I feel very fortunate to have had my day and to have done some service to Conan Doyle and the character he created," Brett concluded. "I do know that my efforts have not gone unappreciated. For an actor, that's a very good feeling."


ホームズを演じた俳優の歴史の中にいる一人として、"A different Holmes for a different era"(違う時代のための違うホームズ)に無事に役を手渡せることを喜びとしていたジェレミーのことを思います。ジェレミー亡きあとホームズを演じた俳優は何人もいるでしょうが、この言葉でいつもベネディクト・カンバーバッチが思い浮かびます。

RM

 RM

Author: RM
コメントは承認後に公開されます。古い記事へのコメントも大歓迎です。2010年8月7日に始めました。
私の記事へのリンクはどうぞご自由になさって下さい。
和訳には間違いがあるかもしれません。最近は必ず英語原文を併記・またはアドレスを書いて読めるようにしていますので、どうぞそちらも参考になさってください。

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