Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

BBC Genome Projectは、イギリスのテレビ・ラジオ情報誌Radio Timesに掲載されたBBCの番組予定表を元にアーカイブを作成する、BBCのプロジェクトです。
http://www.bbc.com/news/technology-29643662

そのtwitterで、5月12日のtweetとして、An Ideal Husband (1969) からの写真が載っていました。Mabel Chilternを演じたSusan Hampshireのお誕生日だったそうです。後ろにいるジェレミーではなくSusan Hampshireの方にカメラの焦点があっていますが、でもこの作品は大好きな作品、Susan Hampshireもとても魅力的だったので、うれしい写真でした。
https://twitter.com/bbcgenome/status/862978158722723842

これはスクリーンショットではなく、宣伝用写真ですね。ビデオテープの時代、そのケースにトリミングされて使われていました。
https://www.amazon.co.jp/dp/B000062XO0
でも大きな写真は私ははじめてです。

面白いのは、この作品をご覧になったかたは気づかれるかもしれませんが、二人の服は最初のパーティのときの写真、でも少しだけ写っている黄色いバラは後半のChiltern家のシーンでのバラに見えることです。

なお似た構図の白黒写真が1969年5月のRadio Timesに載っていましたが、今回の写真ではありませんでした。白黒ですから黄色いかどうかはわかりませんが、その写真にもバラがうつっていました。

下にアドレスを書いたページには今回の写真と同じ、パーティでの二人の写真があります。これもスクリーンショットではなく、2014年にBFI Southbankで上映されるときのお知らせで使われた写真です。それ以前には私は見たことがありませんでした。
https://screenplaystv.wordpress.com/2014/04/28/the-edwardians-play-of-the-month-an-ideal-husband-bbc1-1969/

私はtwitterをしていませんし、BFI Southbankのページもジェレミーがらみで数回しか見たことがありません。それでもこういう辺境(?)にある新しい写真や珍しい写真をみつけるためにどんなことをしているか、書いてみますね。みなさんもうよくご存知のことかもしれませんが。

時々Google Imagesで画像検索するときに、たとえばこの一ヶ月以内の写真、といったフィルターをかけると、この一ヶ月の間に更新されたページに載っている写真がひっかかってきます。そうすると時々私にははじめての写真がでてくるのです。"Jeremy Brett"だけで普通に検索すると有名な写真ばかりがヒットするので、こうしています。Googleでジェレミー関連のニュースや動画を検索するときも同様です。

宣伝のためにたくさん撮られた写真のうちで、当時使われたとしても今ではほぼ忘れられた写真、あるいは実際には使われなかった写真というのはずいぶんあるのでしょう。少しずつそういうものが出てきて、時々検索にひっかかってくるとうれしいと思っています。


An Ideal HusbandはDVDになっています。とってもおすすめです。喜劇ですよ!
https://www.amazon.co.jp/dp/B0019BI1FA
このDVDには他に、ジェレミーがBasil Hallwardを演じたThe Picture of Dorian Gray (1976) も入っています。

RM
自分にとっての映像上のホームズはBasil Rathbone(バジル・ラスボーン)だということ、いろいろなインタビューでジェレミーは話していますね。たとえばこのブログではこちらで触れました。
Rathboneへの敬意

それではどのワトスンがもっとも好きなのでしょう。もちろんグラナダ・シリーズ以前ということです。そのことを話しているインタビューは、私はこれしか思い出せません。
Baker Street Regular: Jeremy Brett and Edward Hardwicke
Interviews by Jim Knüsch
Scarlet Street, No.5, 1992

ジェレミーが、どのホームズとワトスンが好きか質問されている部分で、SSはインタビューア、JBはジェレミーです。

SS: あなた方より前の作品で、特に素晴らしいと思うホームズかワトスンはいますか。
JB: 一番好きなのはJames Mason(ジェームズ・メイソン)だと思います。私が一番好きなワトスンです。一番好きなホームズはこれからもずっとRathbone(ラスボーン)でしょう。ラスボーンは、Paget(パジェット)の挿絵がそのまま動いているようにみえます。William Gillette(ウィリアム・ジレット)はもちろん見たことがないのです(笑い)。

SS: Are there any predecessors in either role that you particularly admire?
JB: I suppose my favorite one is James Mason; that's my favorite Watson. I guess my favorite Holmes will be Rathbone forever. He seems to me to be the Paget drawings on the move—not having seen William Gillette, of course (laughs).


James Mason(ジェームズ・メイソン)が一番好きだと言っています。彼がワトスンを演じたのは、Murder by Decree (1979) で、ホームズはChristopher Plummer(クリストファー・プラマー)でした。ちなみにクリストファー・プラマーは、「ジェレミーにBAFTA賞を!」の活動を支持するメッセージを書いています。
https://web.archive.org/web/20120229202932/http://www.bafta4jb.com/2011/10/a-letter-of-support-from-christopher-plummer-cc/

演じるという私たちの職業にジェレミーがどれだけの貢献をしたかを見落としてしまって、しかるべき賞を与えないというのは、ひどく残念なことだと思います。たとえば彼はシャーロック・ホームズで世界的な名声を得ましたが、いままで私が観たうちで最高のホームズでした。もっとも完全に近く、もっとも人並みはずれていて、断然、一番本物のホームズでした。

It seems a crying shame to ignore Jeremy and his outstanding contributions to our profession. His Sherlock Holmes for example, which made him an international star, is the best interpretation of the role I have ever seen - the most complete, the most eccentric, the truest by far.


自分もホームズを演じたクリストファー・プラマーが、これほどジェレミーを讃えてくださったことにこころ打たれます。

さて、ジェレミーが過去の作品の中で一番好きなワトスンであるJames Mason(ジェームズ・メイソン)は、1984年になくなったのですね。ジェレミーのホームズはまったく、あるいはほとんど観ていないでしょう。とても残念です。

クリストファー・プラマーとジェームズ・メイソンの二人が出演した作品の邦題は「名探偵ホームズ 黒馬車の影」だそうで、DVDも出ています。「シャーロック・ホームズと切り裂きジャックの対決を描いたミステリー」と書かれています。
https://www.amazon.co.jp/dp/B008RVBX6O

ジェレミーはどういうところが好きだったのでしょう。The New York Timesの映画評を斜め読みしてみました。Mr. Mason's Watson is a splendidly staunch and reliable friend(ジェームズ・メイソンのワトスンは誠実で頼りになる友人だ)と書かれています。
http://www.nytimes.com/movie/review?res=9A00EEDF1331E432A2575AC0A9649C946890D6CF

この、ホームズの良き友としてのワトスンを、グラナダシリーズより前に演じたからこそ、ジェレミーに、自分たちより以前の作品で「私が一番好きなワトスン」と言わせたのかもしれませんね。機会があったら観てみましょう。


ところでジェレミーが「William Gillette(ウィリアム・ジレット)はもちろん見たことがないのです」と言って笑っているのは、ウィリアム・ジレットがホームズを演じたサイレント映画は1916年のもので、しかも映画は失われていたからです。

ところが2014年にフランスでこの映画のフィルムがみつかったという話はご存知のかたもいらっしゃるでしょう。
https://en.wikipedia.org/wiki/Sherlock_Holmes_(1916_film)


なお以前に下の記事に書きましたが、このインタビューは今では全文をネット上で読めます。
「青い紅玉」が大変だった理由:1992年のインタビューより

このインタビューの他の部分にも興味があるかたはどうぞ。少し誤植等がありますので、私は元の雑誌から引用していますが。

RM
前回に引き続き、もう一回だけこの音源について書きたくなりました。

二ヶ所引用して、その部分の英語と日本語を書いてみましょう。一つ目はジェレミー演じるOrlandoが、Rosalindへの恋の詩を森の木に貼り付けながら語る独白、二つ目はちょうど前々回ご紹介した写真のシーンにちがいないと私が思う箇所です。引用元の音源は、前回ご紹介した、こちらです。
https://www.youtube.com/watch?v=RI-SydR5YA0
https://www.youtube.com/watch?v=IEpxtPdiUmk

まず一つ目。43秒の音声で、途中でジェレミーの声が大きくなりますので、イヤホンの方は注意なさってくださいね。








環境によっては上に設置したプレイヤーが見えないかもしれません。その場合はこちらをどうぞ。別ウィンドウで開くはずです。(でも携帯電話でどうなるかは私にはわかりません。ごめんなさい。)
As You Like It clip 1 (ACT 3 SCENE 2)

情熱的ですね!"Run, run, Orlando" 「走れ、走れ、オーランド」なんて自分に言っています。でも、ところどころわかるけれども、あまりわかりません。

そこで英語で読んでみます。第三幕 第二場からで、テキストは下のアドレスのページからいただきました。元のサイトでは、下線部がひいてある単語をポインタで触れると、単語の意味も教えてくれます。
http://internetshakespeare.uvic.ca/doc/AYL_M/complete/

下では音源でのセリフがシェークスピアの元のテキストと少し変わっているところがあっても、そのままにしています。

ACT 3
SCENE 2. The forest.

ORLANDO
Hang there, my verse, in witness of my love;
And thou, thrice-crowned Queen of Night, survey
With thy chaste eye, from thy pale sphere above,
Thy huntress' name that my full life doth sway.
O Rosalind! These trees shall be my books,
And in their barks my thoughts I'll character,
That every eye which in this forest looks
Shall see thy virtue witnessed everywhere.
Run, run, Orlando, carve on every tree
The fair, the chaste and unexpressive she.


でも日本語訳が欲しくなります。そこでここは著作権が消滅している坪内逍遥訳「お氣に召すまゝ」でいきましょう。これがまた時代がかっていて面白いのです。旧仮名遣いです。こちらのサイトからいただきました。
http://books.salterrae.net/osawa/html/asyoulikeit.html

オーラ
おれの作った歌よ、そこに掛かってゐて、おれの切なる戀の證據人になってくれ。(と天を仰いで) それから、夜の女王と崇めるお月さん、あなたは、其清淨な目で以て、其天上の蒼い圓座から、 わたしの一生を支配しさうなあの女獵師の名を讀みおろしてゐて下さい。……おゝ、ロザリンド! ……此邊の木どもをば、おれの手帖代りにして、其幹へおれの思ふことを刻み附けておかう。 此森の中にゐる限りの者の目が、至る處で、お前の淑徳が讚美してあり證明してあるのを見るやうにするために。 さ、走れ~、オーランドー。一本々々の木毎に、あの美しい、淨らかな、迚(とて)も言葉に言ひあらはせないあの人の名を刻みつけろ。


うわあ、面白いけど読みにくい旧漢字もあります。戀(恋)、證據人(証拠人)、圓座(円座)、獵師(猟師)、此邊の(此の辺の)、ですね。

なんだか、日本のシェークスピア受容史に触れているような気がします。


さて、二つ目は前々回ご紹介した写真のシーン、つまりRonald Pickup演じるRosalindと、ジェレミー演じるOrlandoが手をとりあっていて、Charles Kay演じるCeliaがその間にいる、というシーンの音声だと私が思う箇所です。

Orlandoは男装しているRosalindに促されて、本人を前にしているとは知らぬまま、恋するRosalindへの告白の練習をおこないます。二人は結婚式の真似事をすることになり、Rosalindは従姉妹のCeliaを呼びます。

三人ともとても真面目な顔をしているのは、これが結婚式の誓いの場面だからでしょう。

この場面の音声はこちらです。こちらも途中で声が大きくなりますからご注意ください。1分37秒です。








あるいはこちらでどうぞ。
As You Like It clip 2 (ACT 4 SCENE 1)

ACT 4
SCENE 1. The forest.

ORLANDO
I would not have my right Rosalind of this mind, for, I protest, her frown might kill me.
ROSALIND
By this hand, it will not kill a fly. But come, now I will be your Rosalind in a more coming-on disposition; and ask me what you will, I will grant it.
ORLANDO
Then love me, Rosalind.
ROSALIND
Yes, faith, will I, Fridays and Saturdays and all.
ORLANDO
And wilt thou have me?
ROSALIND
Ay, and twenty such.
ORLANDO
What sayest thou?
ROSALIND
Are you not good?
ORLANDO
I hope so.
ROSALIND
Why then, can one desire too much of a good thing? -- Come, sister, you shall be the priest and marry us. -- Give me your hand, Orlando. -- What do you say, sister?
ORLANDO
Pray thee, marry us.
CELIA
I cannot say the words.
ROSALIND
You must begin, 'Will you, Orlando --'
CELIA
Go to. -- Will you, Orlando, have to wife this Rosalind?
ORLANDO
I will.
ROSALIND
Ay, but when?
ORLANDO
Why, now; as fast as she can marry us.
ROSALIND
Then you must say, 'I take thee, Rosalind, for wife.'
ORLANDO
I take thee, Rosalind, for wife.


そして「お氣に召すまゝ」坪内逍遥訳、第四幕 第一場の途中からです。
http://books.salterrae.net/osawa/html/asyoulikeit.html

オーラ
眞(ほんと)のロザリンドさんには、そんな料簡でゐて貰ひたくない、なぜなら、 あの人が憎さうに睨んだりなんかすりゃ、わたしは殺されッちまふから。
ロザ
何の、睨んだぐらゐで蠅一疋だって死ぬものか!だが、これから氣を變へて、 どうやら靡(なび)きさうなロザリンドさんになるからね、 何なりと要求して御覽、諾(うん)といふから。
オーラ
ぢゃ、ロザリンドさん、わたしを愛して下さい。
ロザ
はい~、年が年中でも。
オーラ
で、良人(をつと)にして下さるか?
ロザ
はい、二十人分でも。
オーラ
え、何ですって?
ロザ
あなたは善良でせう?
オーラ
その積りです。
ロザ
ぢゃ、善良な代物は餘計に仕入れて損はしないでせう?さ、妹、お前さん牧師の役をして、 わたしたちを結婚さしとくれ。オーランドーさん、手を。……え、妹、どう?
オーラ
(シーリヤに)式を行って下さい。
シーリ
わたし文句を知らないわ。
ロザ
まづ、初めに、「オーランドーよ、卿(おんみ)は……」
シーリ
分ってよ。……オーランドーよ、卿(おんみ)はこれなるロザリンドを妻とせん心なりや?
オーラ
はい、さやうです。
ロザ
だが、いつ?
オーラ
今です。式が濟み次第に。
ロザ
ぢゃ、あんあてゃ斯ういふのよ、「ロザリンドよ、われは卿(おんみ)を妻としてめとったり」と。
オーラ
ロザリンドよ、われは卿(おんみ)を妻としてめとったりッ。


シーリアの「わたし文句を知らないわ」で観客は大笑いしています。ここのシーリアの調子に、親しいロザリンドがオーランドに夢中なのを、ちょっとからかう気持ちを感じます。

そしてオーランドの「われは卿(おんみ)を妻としてめとったりッ。」なんて、面白いですね。ジェレミーはここを長い沈黙の後で、静かな、こころのこもった声で言っています。あんまり長いので、上の音声クリップでは沈黙を少し削りましたが、観客は長い沈黙の間、ジェレミーをみつめていたでしょうね。前々回の写真は、私はこの沈黙の時ではないかと想像しています。目を伏せているジェレミーを、ロザリンドとシーリアの二人がみつめています。その後観客席から少し笑いがおこります。ジェレミーのオーランドがあまりに逡巡しているためでしょうか。

シーリア役は、この公演でもたしかにCharles Kayが演じているように思います。彼の声は聞き分けられます(少なくともそのつもりです。)Ronald Pickupの声は確信までは持てないのですが、おそらく彼だと思います。

今回これを書くために、同じところを何回も聴き直して、ジェレミーだけではなくRonald PickupもCharles Kayも見事な演技、見事な台詞回しだと思いました。観客もとても喜んでいますね。これからもっと調べてもっと聴いて、もっと楽しみたいと思います。

RM

 RM

Author: RM
コメントは承認後に公開されます。古い記事へのコメントも大歓迎です。2010年8月7日に始めました。
私の記事へのリンクはどうぞご自由になさって下さい。
和訳には間違いがあるかもしれません。最近は必ず英語原文を併記・またはアドレスを書いて読めるようにしていますので、どうぞそちらも参考になさってください。

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