Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

あいだに二回、他の内容をはさみましたが、Chicago Tribuneのインタビュー記事を読んで思ったことを書いている続きです。記事の場所を再度ご紹介します。

Holmes Is Where His Heart Is
Jeremy Brett Has Settled Into The Sherlock Role For The Long Haul
Chicago Tribune, November 12, 1991
By John Blades
http://articles.chicagotribune.com/1991-11-12/features/9104110810_1

「子供達がホームズをとても尊敬しているようだとは、前から感じていたんです。でもこのプロモーション・ツアーで、それがなぜかがわかりました。ドイルはホームズに、子供が持っている感覚をすべて与えたのです。直観や推理というのは、子供の感覚があってこそのものですから。」

その考えが正しいことがはっきりとわかったのは、セント・ルイスでの出来事からだった。8歳のMichael McClure(マイケル・マクルア)が、集まった「何千人」ものシャーロッキアンの中から進み出て、はにかみながら絵を手渡した。シャーロック・ホームズが竜に立ち向かっている絵だった。「『いつも夢に竜がでてきて怖かったんだよ。』ってマイケルは僕に言ったんです。『でもシャーロック・ホームズが竜を殺してくれたんだ!』」


ホームズが子供の感覚・感受性を持っている、ということを少し別のみかたで述べているのを以前紹介したことがあります。
「子供の感受性(「Mystery!: A Celebration」から)」
これはジェレミーの表現が大好きなので、もう一度書き写します。

「遠くのくもの巣が朝露で光っているのを、子供がどうやってみつけるか、知ってますよね?うしろで蠅が飛んでいてもきこえるし、お母さんが二階で髪を洗っている音だってきこえる。2マイル先でお父さんの車がゆっくりとうちに向かっているのだって。犬が裏庭で何かをひっかいているのもきこえて、その時自分は何をしているかというと、ジグソーパズルをやっていたりするんですよね?ドイルはホームズにこういう子供の感受性を全部持たせているのです。」

今回のところは少し違う言い方ですが、子供はホームズのことを自分の味方、自分の感覚をわかってくれる人、困難に立ち向かう時に助けてくれる存在としてみていることを、ジェレミーははっきりと感じたのだと思います。そしてそれをとても喜んだのでしょう。また別のインタビューでは、「お父さんとお母さんがけんかしていたので、ホームズに言いつけるよ、って僕は言ったんです」、という手紙をもらったと述べていたのを覚えています。また「ホームズさん、お父さんがお母さんをたたくのをやめさせてください、」という手紙をもらった、と違うときに言っていました。こういう手紙には充分に気を配らないといけない、返事を出すとともに、その近くのしかるべき機関に知らせて調べてもらう、とジェレミーは言っていたと記憶しています(記事がみつかったら、またご紹介します)。こういう、ジェレミーがこころを痛めるような手紙も来たのですね。大変だったのですね。でも、一人一人の子供のことを心配しているのが、いかにもジェレミーらしいなあと思います。

そして、マイケル・マクルア君の名前を懐かしい気持ちで読みました。こちらで紹介した、あのマイケル・マクルア君です。
「becomerであること(2)」

ジェレミーが会った時は8歳だったのですね。ジェレミーに絵を手渡して、ジェレミーが一瞬の内にホームズになってくれるところをみて、お誕生日にはイギリスから電話をもらったマイケル。今は28歳くらい、どこに住んでいるでしょう。今でもホームズが好きでしょうね!



最後にBBCのSherlockのお話を少し。イギリスでSherlockの第一話が最初に放映されたのは、昨年の7月25日(日曜日)だそうです。一年がたちました。シャーロッキアンが集うあるフォーラムでは、去年のこの日をどのようにすごし、放送をみたあとどう思ったか、という話題が出ていました。

私の一年前の思い出はこうです。この放送に先だって7月23日にBBCのウェブサイトに紹介記事が載り、シャーロッキアンのJean Uptonが新しいSherlockをとてもほめていました(http://www.bbc.co.uk/news/entertainment-arts-10725501)。私は複雑な気持ちでした。ジェレミーこそがホームズだ、と彼女は言ってくれないのだろうか、と。Jean Uptonは以前ご紹介したように、ジェレミーが亡くなる間際まで親交があった人で、ジェレミーから「熊の抱擁」を受けたのも彼女だったからです。
「最期の日々(1)」
「熊の抱擁」

でも一年たった今、私はSherlockをDVDでみて、現代に舞台をうつしたSherlockを楽しみ、第二シーズンの企画・撮影・放送に立ち会う(というほどではありませんが、いろいろと噂を楽しむ)ことができるのを喜んでいます。もしもビクトリア時代のホームズだったら、まだ気持ちが整理できていなかったかもしれません。また、俳優や制作スタッフがグラナダ・シリーズを好きだということを知らなかったら(コメントをいただいたナツミさんのおかげです)、まだこだわっていたかもしれません。でも今は純粋に、新しいホームズ譚を楽しんでいます。Sherlockの第1シーズンはすでにアメリカPBSでも放映され、たくさんの新しいホームズファンも生んでいるようです。Sherlockを契機に、ジェレミーのホームズとはじめて出会う人もいるでしょう。マイケル・マクルアはアメリカにまだ住んでいて、Sherlockを観たでしょうか。ジェレミーとのことを懐かしく思い出しながら、現代版も楽しんだでしょうか。

RM
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コメント

素敵なお話ありがとうございます

「ホームズ」が子どもたちにとってヒーローなのだ、というのには実感をもてます。私自身そうでしたし、仕事で関わっている子ども達も、いくら考えてもわからない問題に突き当たると「コナン君に手紙を書こう」と言いだしたりします。(『名探偵コナン』君がすなわち彼らに一番近い『ホームズ』なのでしょうね。)
サンタクロースだったり、ドラえもんだったり、名探偵だったり、そういった子ども達の「ヒーロー」は、いつか実在しないと分かる時が来ますが、子ども達の心の中の大切なものを周りの大人がどう扱うかはだいじな問題だと思います。信じさせることの是否は別として、何かを信じる、大事にすると言う行為に敬意を払ってもらえるかどうかが、子どもの人格形成に大きく影響する気がするのです。

ジェレミーがホームズの中に子どもを見つけた、というのはとても興味深いです。子ども達が憧れるヒーローには、どこかしら子どもの部分があるような気がします。(コナン君も姿が子ども、というところが人気の秘密なのでしょうね)
子どもたちの憧れや、彼らの抱えた問題に向き合おうとした時点で、ジェレミーの中にも子どもたちが求める「ホームズ」がいたと言えると思います。ジェレミーを通してホームズに出会ったマイケル君が、素敵な大人になっていてくれたらいいですね。そして、お母さんが叩かれているとジェレミーに訴えた子のお家の問題が解決したこと、その後幸せに暮らしていることを願ってやみません。

そして、思い入れが深ければ深いほど、ヒーローが世代交代していくことは私たちにとってつらかったりもしますよね。私にとってもジェレミー・ホームズは大きな大きな存在で、RDJホームズや現代版ホームズは「変化球」だからこそ受け入れられたような気もします。実は「ドラえもん」でも「サザエさん」でも、未だに新しい声優さんに違和感を感じている保守的な私です。
でも、「ホームズ」でも「ドラえもん」でも、自らを育んでくれた「古いもの」への感謝と尊敬を忘れずに「新しいもの」を作り出そうとしているスタッフのエネルギーに、何か尊いものを感じます。それを視聴者として受け止める自分も、確かにジェレミーが生きた時代の続きを生きているのだ、と時々胸を熱くしてしまいます。

もうすぐ日本でも「Sherlock」の放送がありますが、新しいファンが増え、過去のよいものとつながるきっかけになったらよいですね。

私も生き生きと感じられるようになりました

「コナン君に手紙を書こう」、わあ、子どもたちはそう言うんですね!それをうかがって、私にとっても、ジェレミーに手紙を書いた当時の子どもの気持ちが、身近に感じられるようになりました。そして子どもの心の中の大切なものを、子どもが大切に思う心を、まわりの大人が尊重し、見守ること。こうしてナツミさんに言葉にしていただくことで、私も自分の子どもの頃を思い出しました。私は「ホームズ」ではなくて、「赤毛のアン」や「秘密の花園」が好きだったんです。空想することと本を読むことが好きでした。

子どもにきちんと向き合う人は、自分が小さかった頃の気持ちを覚えている人かもしれませんね。ジェレミーもまた、そういう人だったような気がします。(以前「私が子供だった頃」という記事をご紹介したことがあります。http://upwardjb.blog112.fc2.com/blog-entry-36.html

コナン君が子どもの姿をしていることが、子どもにとってどんな意味を持つか、考えてもいませんでした!おもしろいですね。ホームズの中の子どもの部分も、私は気づきませんでした。ジェレミーの表現は、詩的で、でも具体的、目に見えるようで、素敵でしょう!ジェレミーはいつもこうやって役作りをするのですね。だからみている子どもたちにも、何かが伝わるのでしょう。そして子どもたちは現実の中でも、ジェレミーのホームズから力を得たのですね。

BBCの「Sherlock」は、同時代を生きる喜びがありますね。あの世界が、「今」である、という意味での同時代、制作者が「今」新しいものを生み出している、という意味での同時代。そして、制作者が「今」生み出しているものは、ジェレミーたちが生み出したものと、間違いなく直接つながっている。だからジェレミーたちは、「過去」ではなく「今とつながっている」のですね。とても素敵なお話をありがとうございました。

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 RM

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