Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

旅先で偶然ジェレミーと出会ったアメリカのライター、Fred Myers氏が2007年に書いた文章です。会った場所はハワイ、時はジェレミーがロサンジェルスで舞台にたっていた時ですから、1978年から1981年の間、40代後半でしょう。旅先での短い出会いがMyers氏にこれだけの深い印象と忘れられない思い出をもたらしたことに、こころ動かされました。そしてこの時のジェレミーの姿は、私のこころにも深く刻まれました。目に見えるものをこえて、美しいもの、聖なるものを感じて、すべてを抱きしめつながろうと手を差し伸べた姿。イートン校の聖歌隊でソロをつとめていた頃、聖堂の窓から射し込んだ一筋の光の中に思わず歩み入った、少年の感受性そのままに大人になったジェレミーを感じました。一部を翻訳して引用します。

Myers氏がハワイでの取材旅行のあと、アメリカ本土へ帰る前の休暇旅行として、ホノルルから水中翼船に乗ってマウイへ着いた時のことです。レンタカーのスバルの後部座席に荷物を放り投げた時、誰かが大きな声で呼んでいるのに気づきました。

「背が高い、濃い色の髪の男性が急いで近づいて来て、はっきりとわかるイギリスのアクセントで、もしもラハイナへ行くのなら乗せてくれませんか、と言いました。彼はジェレミーと名乗り、俳優だと自己紹介しました。ロサンジェルスでの舞台が昨夜終わって、今日の朝不思議な衝動が自分をおそった、そして『考えたりするな、ただ行動しろ』という声がきこえて、それでその衝動に従ってかばんに必要なものだけつめてタクシーでロサンジェルス国際空港へ向かい、航空会社のカウンターで、次のフライトがどこ行きだろうとそれに乗りたいと言った、と説明してくれました。数分でホノルル行きの飛行機が出ます、と係の女性が答え、そして彼はホノルルについたのでした。観光案内所でどこへ行くのがよいだろうかと尋ねると、マウイが人気があります、水中翼船で行くと飛行機とはまた違った経験ができますよ、と教えてくれて、そしてその旅の途中で乗客の1人が、ラハイナホテルに泊まるのがよいとすすめてくれたそうです。」

Myers氏は、思い立って衝動にまかせて空港へ行き、次に離陸する飛行機に飛び乗った彼のことが気に入りました。自分が夢見ていたことを実際にやってのけた人として。ラハイナに着いてからMyers氏が翌日のドライブに彼を誘うと、彼は本当にうれしそうに笑いました。翌朝一緒に朝食をとった後、ドライブに出発しました。

「両側に海と陸の風景が広がる曲がりくねった道のカーブをまがるたびに、見たことのない景色がつぎつぎと姿をあらわしました。話をしているうちに、私はすぐにジェレミーが特別な人であることに気づきました。ジェレミーの観察眼、外界を見る目は、彼が自分の内面の感覚や感情を見る目を反映して、彼独自の味わいを持っていました。美しさへの感受性がとてもゆたかで、彼が口にする言葉は、まるで内面の深いところから今日初めて生まれた言葉であるかのように、すべてが深い意味を持っていました。」

ところどころで車をおりました。その内のある場所でのことです。

「彼は浜辺の大きな岩の上に登り、顔を太陽に向けて両手を上にさしのべ、目を閉じて動きをとめ、じっとたっていました。下で私はゆっくりとカメラを持ち上げ、その写真を撮りました。みる人によっては、ちょっと芝居がかっていると感じたかもしれません。でも私は、彼が自分の近くの目に見えるものだけでなく、その向こうのすべてのものを抱きしめて、すべてとつながろうとしているのがわかったのです。」

ドライブを楽しむうちにも、彼は次第に、誰も自分がどこにいるかを知らないこと、特にエージェントが知らないことが気がかりになってきたようでした。Myers氏は彼にハワイを離れてほしくないと思っていましたが、彼の心配も理解できました。1時間後、空港で彼はMyers氏の手をかたく握って、あなたと一緒でとても楽しかったと言い、それから搭乗手続きの入り口に進み、ふりかえって最後に手をふり、そしてみえなくなりました。

「数ヶ月後のある夕べ、私はテレビのチャンネルをまわしていました。突然信じられない思いで目が画面に釘付けになりました。それはジェレミー・ブレット、スバルでのドライブ仲間で、あの岩の上にたって太陽の方に顔を向けていた、あのジェレミーだったのです。短い間ではあっても、完全に自由な時間を楽しもうという衝動に身をまかせた、あのジェレミーだったのです。」

当時、イギリスの傑出した俳優だった彼は、その後シャーロック・ホームズを演じることでさらに有名になり、世界中の批評家が、彼以上にすばらしいホームズはいないと賞賛しました。

「私は人生を過ごしてきたなかで、多くの創造的な仕事にたずさわる人々に会ってきました。ライターであることの喜びの一つです。でも、ジェレミー・ブレットほど素晴らしく、そして完全に創造的であった人を他に知りません。そして彼ほど、高貴な輝きを放って内側から自然にあふれる自由な魂を感じさせてくれた人を他に知りません。

ライターである私と俳優である彼が偶然出会ったのは、なんと驚くべきことでしょう。

名声や富によってではなく、はじめて見るものを共に感じることのできる能力によって、会って突然一緒に時をすごすことになったのは、なんと驚くべきことでしょう。

人生とは、本当に、なんと驚くべきものなのでしょう。」


出典
The ByLine」2007年7月号
http://www.ageditors.com/members/byline/Jul07/Full.html

RM
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コメント

偶然

なんて感動的なんでしょうか…
感動のあまり溜め息がもれますね。

偶然にジェレミーに会うなんて羨ましい!

そして、偶然であった相手に特別な人だと思わせる彼のたたずまいや行動には本当に尊敬の念を抱かざるを得ません!
行動や発言が突飛でも変人ではなくて何か特別なものを持っている人だと認識されるのはやはりジェレミーの魅力と人徳のいたすところなのでしょうか…

ジェレミーのオーラを実際にあって感じてみたいものです……

ああ、胸が苦しい!これが恋なんでしょうか!(笑)

おお、この記事も思い出深いものです

Mokaさん、古い記事にコメントありがとうございます。ハワイでのジェレミーのことを書きたいというのも、このブログをはじめるきっかけの一つでした。

>そして、偶然であった相手に特別な人だと思わせる彼のたたずまいや行動には本当に尊敬の念を抱かざるを得ません!
>行動や発言が突飛でも変人ではなくて何か特別なものを持っている人だと認識されるのは

本当にそうですね!ジェレミーを形容する言葉はいろいろとききますが、マイヤーズさんは、突然旅先で出会った誰とも知らぬ人の中にみた特別な何かを言葉にして下さって、こころに響きます。普段の生活から切り離された、一期一会の出会いだったからこそ、ジェレミーの存在の一番奥のところ、魂の輝きを言葉にすることができたのかもしれませんね。

>ああ、胸が苦しい!これが恋なんでしょうか!(笑)

うふふ、Mokaさんも重症ですね。

重症どころか

重症どころか不治の病かかってしまいました(笑)
明日はDavid Burkeのお誕生日なのですね!さっそく、LINEのひとことをDavid Burkeへのお祝いにしてきました!

アドレス削除の気遣い、ありがとうございます。
買いかぶりというのはどのような意味かはまだ分かりませんが、RMさんが私の尊敬する方ということは変わりません!

不治の病とは

同じ病にかかってしまいましたねー。

>買いかぶりというのはどのような意味かはまだ分かりませんが、RMさんが私の尊敬する方ということは変わりません!

「はじめに」のところにお返事書きました!

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 RM

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