Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

それでは、この放送の時にジェレミーが語った内容を、一部を省略した形でご紹介します。

私はレパートリー劇団(いくつかの演目を交互に上演する劇団)で俳優としての第一歩をふみだして、長年にわたってロンドンやニューヨーク、そしてローレンス・オリビエが率いたナショナル・シアターで、多くの舞台をつとめました。どうしてこのようなことを「The Week's Good Cause(今週のチャリティ活動)」の番組の中で、今お話しているのでしょう?今週のチャリティはThe Manic Depression Fellowship(躁鬱病患者友の会) のためのもので、私自身も躁鬱病(双極性障害)と診断されているので、これから何を話そうとしているかをよくわかっていて、自分がこの重い精神の病にかかっているのだということをお話する前に、私は成功している俳優だということを皆さんに思い出していただく必要があるからです。

躁鬱病はひどい抑鬱状態から気持ちの高揚と過度な活動状態まで、気分が著しく変動する重い精神の病です。この変動は、月曜日の朝の憂鬱な気持ちが幸せな気分へとかわっていくような、多くの人が経験するものとはまったく違います。

躁状態ではひどく活動的になりエネルギーに満ちた状態になって、思考がものすごい速さであふれ出て眠れなくなったり、お金を浪費したり、妄想をいだいて非現実的なことを信じたりします。私自身も躁状態の時に、まわりの人を当惑させたり困らせたりするようなことをしてきました。

鬱になると恐慌状態となってエネルギーがまったくなくなり、自殺を考えるようになります。治療を受けていない躁鬱病患者の7人に1人が自殺をはかり、そして100人に1人がこの病気にかかります。家族、友達、雇い主にとってこの病気がひどい重荷となり、この病の人が孤立したり解雇されたり、家を失ったり破産したりする場合があります。

私が1986年にMaudsley Hospital(モズレー病院)に入院した時には、混乱してまわりの何もかもがわからなくなって、うつ伏せになってこぶしを握りしめて顔におしあてていることしかできませんでした。私は自分が思いたがっているよりもずいぶん以前から、自分の気分の変動に対処してきたのだと思います。しかし俳優という職業では気分が少し普通ではないことがかえって助けになることもあって、銀行や学校で働くよりもはるかに、私の気分の変動はゆるされてきたのだと思います。

そして成功をおさめたことで、自分がこの病気にかかっていることを公に認める勇気を持つことができました。この病気のために仕事をやめなければならないようなことにはならず、満ち足りた成功した人生をおくっていると伝えて、同じ病気の人を力づけるために。この病気は治療し、対処することができるものなのです。この病気は来ては去って行くものであり、症状が一時的にあらわれる期間以外は健康にすごせるのです。

もしも今までお話したことが少しでも自分にも当てはまると思うのでしたら、医者に予約をとり、The Manic Depression Fellowship(躁鬱病患者友の会)に連絡してください。この会は躁鬱病患者のための全国的な自助団体です。すばらしいことには、おもに躁鬱病患者によって運営されていますから、どうしたら患者の力になれるかをよく知っています。英国には116の自助グループがあり、援助や情報や印刷物を得たり、同じ状況にある他の人達と出会うことができます。


この後、このチャリティは自助グループをさらに作るためのものであり、一つのグループをつくり維持するためには年に500ポンドが必要であること、そのために寄付がとても助けになることを述べて、寄付をしてくれる人のために住所と電話番号を伝えます。電話番号を全部で4回言うのですが、最後に "I'll repeat the phone number," という言葉をはさんで朗々と友の会の番号を2回読み上げ、少しの間をおいて"Thank you." と言って終わります。

はじめてきいた時は、これが最後の"Thank you" だと思って悲しくて胸がいっぱいになりました。今でも胸がいっぱいになりますが、でも今はこの"Thank you" の中に、伝えようと思っていたことを伝えられた、この病気の人の役にたつことができた、俳優という声のプロとして、声と言葉を使ってメッセージを伝えることができた、といううれしさと充実感、そしてそのような場を与えられた感謝の気持ちを感じるのです。The Manic Depression Fellowshipの理事が、ジェレミーは少年のように喜んでいた、と言っていたのを先日紹介しましたが、そのような純粋な喜びと感謝を内に感じます。はじめの、特に声が低くなったときの弱々しいとさえとれるような声から、あのあたたかさにあふれた声になり、最後は朗々と電話番号を読み上げ、そして少年のように純粋なこころで「ありがとう」を述べる。ああ、ジェレミーらしいなあ、と思います。

ジェレミーは1989年のBBCのラジオインタビューで、インタビューアの問いに答えて病気の時の話をしていて一瞬絶句した後、辛いけれどもこの話をするのは、自分と同じ状況にいる人達に希望を与えたいからだと言っていました。ジェレミーはその言葉どおりに、たくさんの人に希望を与えながら最後まで生きた人だと思います。(このインタビューの録音をきくことができる場所については「『戦争と平和』の撮影の頃;オードリー・ヘップバーンの伝記とBBCのインタビュー番組より」でふれました。)

「ジェレミーは私にとって希望の象徴です。あなたにとってもそうでありますように。」と言ってくださった方がいらっしゃいました。本当にそうです。私にとってジェレミーは、人はこのように生き、このようにこの世を去ることができる、そしてこの世を去った後も、このように生き続けることができる、という希望の象徴です。そして今回このブログを通じて、ジェレミーを通じて、読んで下さった方から支えていただきました。今私は数日前には考えられなかったくらい、希望を持っておだやかな気持ちですごしています。笑みもこぼれます。どうもありがとうございました。

原文を読みたい方のために最後に英語原文を記します。なお「The Week's Good Cause (1995) その1」で書いたように、本に記されたものを参考にしていますが、一部録音をききながら修正、加筆しています。その部分にあやまりがないようにと願っています。次回はもしかしたら、ジェレミーにとって、まわりの人にとって、この病気がどのようなものだったかについて、私が感じていることを書くかもしれません。

RM

(英語原文)
I started my acting career in repertory and have over the years appeared in many plays in London and New York and the National Theatre under the banner of Laurence Olivier. Now, why am I telling you this in The Week's Good Cause slot? Because this week's charity is the Manic Depression Fellowship and I myself have been diagnosed as manic depressive, so I know what I am talking about and I need to remind you that I am a successful actor before admitting to having a severe mental illness.

Manic depression is a severe mental illness which causes excessive mood changes with swings from extreme depression to great elation and hyperactivity. These swings are quite different from the range of moods from Monday-morning lows to being on top of the world, which most people understand and experience.

In mania people have tremendous activity and energy levels, won't be able to sleep because of their rapid flow of ideas; will spend money irrationally; will have hallucinations and lose touch with reality. I personally have done some extremely embarrassing and destructive things when I've been high.

When clinically depressed, one has panic attacks, no energy and suicidal thoughts. One in seven people with manic depression untreated will commit suicide. And one in a hundred of the population will have this illness. It can put a real strain on family and friends and employers and can lead to isolation, unemployment, loss of home and bankruptcy.

When I was admitted to the Maudsley Hospital in 1986, I was so confused I couldn't relate to anything or anyone around me. All I could do was lie face down with my fists clenched in my face. I believe I have been coping with these severe mood swings for many more years than I like to think, but being a member of a profession where being a little mad helps, my moods were tolerated far more readily than if I worked in a bank or a school.

And it is my success which gave me the courage to admit publicly that I had this illness as an encouragement to others that It had not stopped me from being employed and leading a fulfilled and successful life. It is an illness which can be treated and managed. It comes and goes and in between the bouts of illness people are well.

If any of this sounds familiar, make an appointment with your GP and contact the Manic Depression Fellowship. It's the national self-help organization for people with manic depression. It is a remarkable organization because it is largely run by people with manic depression, so they really know how to be of help. There are a hundred and sixteen self-help groups in the United Kingdom. They can offer support, information, literature and the opportunity to meet other people in a similar situation. [...]

Thank you.

追記:音声ファイルを追加しました。Jeremy Brett Informationより頂いたファイルから雑音のみの右側をとりのぞいたもので、約4分半です。(2011年12月21日)







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和訳には間違いがあるかもしれません。最近は必ず英語原文を併記・またはアドレスを書いて読めるようにしていますので、どうぞそちらも参考になさってください。

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