Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

ジェレミーのまたいとこDaphneの息子であるMartin Clunesが、ジェレミーについて話していることを先日からご紹介しています。今回は伝記の中身を抄訳して引用します。

伝記のタイトル・著者と、その一部が読めるアマゾンのサイトは以下のとおりです。

Martin Clunes: The Biography
By Stafford Hildred and Tim Ewbank, 2010
http://www.amazon.com/dp/1844549011/

28ページから
(Martinの父である俳優Alec ClunesはMartinが8歳の時に亡くなったこと、Martinの母Daphneは若い頃Orson Welles(オーソン・ウェルズ)の元で働いていて、彼にまつわるエピソードがClunes家で語り継がれていたことを書いた後)、それよりはるかに直接的にMartinに影響を与えたのは、ジェレミー・ブレットだった。彼はMartinの母のいとこ(注: first cousinとしてありますが、正しくはsecond cousin, つまりまたいとこのようです)である。「ジェレミー・ブレットはすばらしい人でした。ジェレミーといると、本当に楽しくて幸せな気持ちになるんです。私は彼から大きな影響を受けました。思っていた以上の影響を受けていたのです。」

Martinの母は若い頃ブレットととても親しかった。彼女は2, 3歳しか年上ではなくて、彼がイートン校にいた頃、よく連れ出しては映画館で一日に2本の映画をみた。「それからジェレミーは、Henry FondaやAudrey Hepburnと共演した『戦争と平和』の撮影でヴェニスにいた時、Robert Gravesのお嬢さんの部屋を借りて住んでいたのです。なにもかもが素敵ですよね。ジェレミーはいつも前向きで、人を元気づけてくれました。」

Martinが演劇学校を卒業する頃、ブレットはシャーロック・ホームズを演じるためにハリウッドからイギリスにもどってきた。Martinと妹が幼い時からそれまで、ジェレミーはおもにロサンジェルスに住んでいたが、親戚である彼らのことを気にかけて、すべての面で支えてくれた。Martinの大きな耳を後ろにおさえる手術のためにお金を出すとさえ言ってくれた。「ジェレミーはいつも愛情と支援をあふれるほどに与えてくれました。ジェレミーの家族もそうでした。ジェレミーはその時、小切手帳を出してくれていました。」Martinは一瞬考えたが、耳の手術はしないことに決めた。「鏡の前に立って、耳を後ろにおさえてこう考えるのです。『こうしてもかわらないね』。本当のところは、僕はとても虚栄心が強くて、自分が虚栄心が強いということを人にみせたくないんです。僕は隠すのが上手なんですよ。」

しかしMartinは、ブレットを賛美することに関しては決して隠さなかった。「ジェレミーはこの仕事での、僕の父親でした。彼が何かの時には僕のことをおもって、力になってくれることがわかっていました。どんな時でも。」


Martinの耳の手術の話は、2002年のインタビューでも話しています。
http://findarticles.com/p/articles/mi_qn4156/is_20021215/ai_n12579485/
"The Man who became Sherlock Holmes"の本にも書かれていて、たしかりえさんが紹介してくださっていたと思います。

Martinは突き出た大きな耳を持っていて、それでいじめられたりもしていたようですが、後にこの特徴が俳優としての強みになったようです。ですから手術しなくてよかったのですが、Martinはジェレミーが彼のことを気にかけてくれていたことの例として、この話をするのを好んだのでしょう。

今年の9月にMartinはイギリスBBCのラジオインタビュー番組Desert Island Discsに出演したのですが、インタビューアからの「ジェレミーはあなたが大人になる過程で、重要な役割を果たしたのですか?」との問いに、熱心であたたかな口調で「そのとおりです!」と答えています。ききとれるところを簡単に記すと、「彼といると本当に楽しい気持ちになったんです。ジェレミーのおかげで、僕は自分を信じることができるようになりました。ジェレミーは本当にすばらしい人でした。彼が亡くなってさびしい。本当にさびしいです。彼の息子のDavidとはとても親しくしています。僕たちの家族は近くに住んでいたのです。」そして耳の手術の件も話しています。インタビューアに「普通俳優志望なら手術をすると思いますが、なぜしなかったのですか?」と尋ねられて、ここでは「わかりません。」と言った後、「耳のことに自分では気づいていなかったのかもしれません。」と言って笑っていますが、これは多分冗談で言っているのだと思います。とても特徴的な耳ですから。

Desert Island Discsの音声は、BBCのこちらのページの "Download to keep" をクリックするとダウンロードできます。23分から、ジェレミーのことを話しています。興味のある方はどうぞ。
http://www.bbc.co.uk/radio4/features/desert-island-discs/castaway/eb84bf0d
リンク先の写真をご覧になると、Martinの耳がどんなかをわかっていただけるでしょう。

ジェレミーが、生まれ育った家であるThe Grangeにいたころ、自転車で週に4回映画館に行っては映画をみていた、オリヴィエの「ヘンリー五世」をみて俳優を志した、ということは、読んだりインタビューできいて知っていましたが、イートン校の頃にも映画をたくさんみていたという具体的な話は、はじめて読みました。ジェレミーにとって、すごく幸せな時間だったことでしょう。

イタリアでRobert Gravesのお嬢さんの部屋を借りて住んでいた、と言っていますが、ジェレミーの親友のRobert Stephensの伝記では、RobertとRobertの最初の(間違えました)二度目の奥様となるTarnをイギリスから呼んで、しばらくそこで楽しく3人で過ごしたという記述を読むことができます。Robert Gravesというのは有名な詩人、小説家だそうです。


ジェレミーを個人的に知っていた人が、ジェレミーを語っている言葉を読むのが好きです。いろいろな人の言葉で、一人の人間としてのジェレミーがより立体的に具体的に多面的に、自分のこころの中に刻みこまれていく気がします。ですから、Martinの伝記を読めたのも、とてもうれしいことでした。

同じ意味で、少しでも多くの作品にふれたい、映像をみて音声をききたい、写真をみたい、インタビューを読みたい、そしていろいろなことを感じたいと思います。私のこの気持ちが、ひとをあきれさせなければいいが、と時々思います。亡くなって久しい異国の俳優をこのように思うことは、以前の私なら考えられないですし、他人のことであれば、以前なら常軌を逸していると思いかねなかったことですから。

ただいつも思うのは、それは「たまたま」ジェレミーだった、ということです。他の人でもよかったし、他の人である可能性もあった。でもそれはジェレミーだった。そして別の言い方をすれば、それは「運命的に」ジェレミーだった、ということだと思うのです。私はこの2年間、それまでの人生とは違って、すべての面においてこうして自分が偶然と必然の間ですごしていることを感じてきました。それは、その時まで気がつかなかっただけで、ずっとそうだったのだと思います。そしてこの「偶然と必然の間」という感覚を得た事で、この2年間に私の外部と内部でおきたいろいろなことを、より受け入れやすくなったと感じています。

次回もこの伝記から引用します。

RM
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コメント

ひょっとして

「ジェレミーの写真集(再度のご紹介)」ジェレミーの写真集(再度のご紹介)のコメント欄では、マーカスさんのサイトのご紹介をありがとうございました!フルスクリーンモードで堪能して参りました。ああ、暇さえあれば、いや、なくても覗いてしまって、今週は仕事が進まない進まない…!

他の写真も、とても印象的でどきっとさせられるものばかりですね。日本の少女マンガのような目をしたお人形の写真もありました。りえさんは、マーカスさんはキティちゃんもお好きと書いていらっしゃいましたね。芸術家の目、異文化からの目で切り取られた風景や物、人々の表情って、自分で見るのとはまるで違うように見えて、とても魅力的です。

そして、今回の記事です。Martinさん自身のことでなくて恐縮なのですが、Robert Gravesはひょっとして映画「アラビアのロレンス」のモデルになった、T.E.ロレンスの評伝を書いた方でしょうか?もしそうだったら嬉しい偶然です!私、ホームズも好きですが「アラビアのロレンス」も大好きなのです。ジェレミーがロレンスの友人でもある方のお嬢さんの部屋に下宿していたなんて、びっくりです。

知りませんでした

写真、見て下さってうれしいです。大きな写真はまた格別ですよね。私もデスクトップで写真を開いては、喜んで見とれています。Peopleのところにはお人形の写真もありましたね。最近、お人形を撮った写真集を発売なさったようです。

はい、キティちゃんがお好きということ、りえさんのブログにありましたね。それまでに見ていた写真のイメージからは思いもよらなかったのでびっくりしました。

Robert Gravesについては、知りませんでしたので調べたら、おっしゃるとおりT.E.ロレンスの評伝を書いた人で、友人なのですね。Robert StephensもMartin Clunesもわざわざ彼の名前をあげているし、フォーラムでも、「あのRobert Gravesのお嬢さん!」という感じの反応があったので、よほど有名な人なのだろうか、と思っていました。ジェレミーはどんなご縁で、部屋を借りたのでしょう。いろいろなことを調べていくうちに、自分が興味がある人や物事が、思わぬ形でつながっていくのはうれしいですよね。ジェレミーとRobert Gravesのお嬢さんとの接点も、いつかわかる時がくるかもしれません。

あらら

リンク貼るの失敗してしまいましたね。修正させていただきました!RMさん、観てくださっている皆様、お見苦しくてすみませんでした。

お人形の写真集、どんなのでしょう。気になります。一度でいいからマーカスさんの目を通して世界を見てみたいものです。風景が全然違って見えるのでしょうね。

Robert Gravesのお嬢さんについて私も少し調べてみたのですが、wikiによると8人もお子さんがいらっしゃるのですね~!ジェレミーに家を貸したのが誰だったか、わかるといいのですが。これをきっかけに、また誰かの中に生きているジェレミーを感じられたら嬉しいです。

私は知人のとても小さなお嬢さんとよく一緒に過ごすのですが、子どもの愛情って本当にさまざまなものに、すごい情熱で向けられるんですね。家族だったり、お友達だったり、動物だったり、お人形だったり、アニメの登場人物だったり。
その中から彼女が何を選んでいくかは、本当に「たまたま」の出会いのタイミングに左右されるのでしょうけれど、それが「運命」というものなのかもしれない、と思います。
RMさんがジェレミーに出会ったように、彼女にも素敵な運命が待っているといいなと思っています。

Diana Gravesだそうです。

1行目の修正ありがとうございます。私が自分のコメントの中でこの件にふれた箇所は、ナツミさんが修正なさった時点で消してしまいました。残しておけばよかったですね。

ところで、ジェレミーの親友のRobert Stephensの自伝では、お嬢さんの名前はDianaと書かれているのですが、Wikipediaには該当するお名前がないですね!うーん、名前は同じ「Robert Graves」でも違う人なのかしら、とネットを調べたら、その名も"Robert Graves Resources"(www.robertgraves.org/trust/index.php?id=32)というサイトがあって、そこの"Family Tree"に"Diana Graves"の名前がありました(1915年生、1975年没、Michael Goughと結婚)。Dianaの父 (1880年生)とRobert Graves (1895年生)が、違う母から生まれた兄弟なので、DianaはRobert Gravesの娘ではなく姪になります。そしてWikipediaで調べたら、Diana Gravesが結婚したMichael Goughは俳優で、Laurence Olivierが監督と主役をつとめた映画Richard III (1955) にも出ていて、この映画にはMartin Clunesの父のAlecも出ていました!(さらに、Edward Hardwicke の父のCedricもです。)War and Peaceは1956年の映画ですから、ほぼ同じ頃のことになります。Dianaは自身も女優だったようですが、女優としてはそれほど有名ではないようです。また、ジャーナリストという肩書きがついている場合もあって、本も書いているようです。

というわけで、ジェレミーは俳優として直接Michael Goughを知っていたか、あるいはAlec Clunesを通じて知った、あるいは女優としてのDianaを知っていたのではないでしょうか。

ではなぜDianaがRobert Gravesの娘とされたかですが、Robert Stephensの自伝は、自伝とは言いながらペンをとったのは有名な劇評家で、彼のチェックも逃れ、David Stuart Daviesもそのまま"Dancing in the Moonlight"でRobert Stephensの自伝を引用し、Martin ClunesもDianaの名前は出さないまでも、Robert Gravesの娘と言っていることから、ジェレミーが間違えてRobert Stephensに伝えたのではなく、またRobert Stephensが思い出を語る時に間違えたのではなく、広範囲に間違えられていたのではないか、というのが私の推測です。まあ、8人も子供がいたら、8人も9人もそうかわらなかったりして。Robert GravesとDianaの手紙が残っていたり、Robertの日記にDianaの名前があがっていたりするようで、親しくしていたのでしょう。

今回はジェレミーをめぐるいろいろな人達のつながりが感じられて、嬉しい気持ちでした。


お人形の写真集、ジェレミーの写真集と同じサイトで発売していて、中身も少し見ることができますよ。(www.blurb.com/bookstore/detail/2665132)私はお人形より、それを撮影している様子をとった写真がおもしろかったです。

>風景が全然違って見えるのでしょうね。

マーカスが日本で撮った写真をFacebookやFlickerで見せていただいたのですが、とても面白かったです。マーカスのウェブサイトの、チベットの写真もよかったですね。

>子どもの愛情って本当にさまざまなものに、すごい情熱で向けられるんですね。

ああ、本当にそうでしたね。私もそうでした。

>RMさんがジェレミーに出会ったように、彼女にも素敵な運命が待っているといいなと思っています。

:-)

わあ!

さっそく詳細な情報をありがとうございます!名探偵の部屋を訪れた依頼人の気分です。

お嬢さんではなくて、仲の良い姪御さんだったのですね。お子さんたちやその結婚相手もそれぞれ才能豊かな方々だったようですが、同じ職業を選んだ姪御さん、実の娘さんと同じように可愛がっておられたのでしょうね。ジェレミー・Martinの関係と同じですね。
そして、「リチャード三世」で彼女の夫やMartinのお父さん、さらにEdward Hardwicke のお父さんまでつながるとは!英国の俳優の歴史は、様々な家族の歴史でもあるのですね。あ、どこの国ももそうなのかしら。日本は歌舞伎と言う家族で継承していく伝統芸能があるし、「2世俳優」さんも多いですよね。

そして、Laurence Olivier。彼にグラナダテレビの「シャーロック・ホームズ」シリーズのスタッフがモリアーティー役を依頼しようとした(?)というジェレミーとDavid Burkeの会話を私のブログで教えていただきましたが、ここでもつながるのですね!
ジェレミーにつながる人々のお話から、少しずつ当時の芸能界が覗けるのがとても面白いです。ジェレミーの生きた世界は、彼が関わった作品だけじゃなくて、さまざまな窓から覗けるのですね。

そして、マーカスさんの写真集観ました!たしかに撮影の様子が面白い!(バスから「何だあれ?」と言う風に眺めてる人たちも…)
日本のアニメ風人形(着ぐるみ?)の見せる表情もとても興味深かったのですが、「それを一生懸命撮影してる酔狂な僕たち」みたいな意識もひっくるめてマーカスさんの世界なんでしょうね~。なんだか親しみを感じます。

わーい!

>名探偵の部屋を訪れた依頼人の気分です。

最高の褒め言葉をいただきました!

>ジェレミーにつながる人々のお話から、少しずつ当時の芸能界が覗けるのがとても面白いです。

本当ですね。私も2年前には知らなかったイギリスの俳優の名前を、今ではたくさん知っています。それがこうして少しずつつながっていくのが、うれしいです。エドワードのお父様の名前まで出て来るとは思いませんでした。

そう、ナツミさんのところでお話しした、 Laurence Olivierとその奥様のJoan Plowright と、モリアーティ役依頼の件、こちらにもいつか書きましょう。ジェレミーとOlivierの間のエピソードも。

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 RM

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