Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

先日、「『四つの署名』撮影時の写真と、Joanとの写真」の記事中で、このように書きました。

「特に『四つの署名』の写真をみながら、作品撮影時のジェレミーに思いを馳せています。毎日をどんな気持ちですごしたでしょう。『四つの署名』は、ジェレミーの最初の入院で延期され、退院後はじめて撮影した作品でした。最初は一歩一歩手探りで撮影をしていったのではないでしょうか。そんなことを微塵も感じさせない見事なホームズでした。1987年に出版された "Granada Companion, Number One: A Sherlock Holmes Album—A Centenary Celebration of Sherlock Holmes" のインタビューでは、ジェレミーは一番誇りに思っている作品(The programme I'm most proud of)として、『四つの署名』をあげています。」

具体的にはこのように言っています。最初に好きな作品について答えて、その次からです。

The programme I'm most proud of? That's a different matter. Again, personal: The Sign Of Four.

It was very demanding because it's a full-length film with a great number of varied scenes―tremendous action. I wasn't in normal health at the time, and in particular, I had to do a lot of walking about on roofs, and I've no head for heights. I was pleased with myself when I got through that film in one piece.

一番誇りに思っている作品ですか?それは先ほどの一番好きな作品とはまた違っていて、これも個人的な選択ですけれども「四つの署名」です。撮影はとても大変で、集中力と技術が必要でした。たくさんのシーンが組み合わさっている長編で、身体的な動きも激しいものでしたから。撮影の時には健康状態が普通じゃなくて、特に屋根の上を歩きまわるシーンがあったのですが、僕は高いところは苦手なんです。撮影が全部無事に終わった時は達成感で一杯でした。


ジェレミーは高いところは苦手だったのですね!「四つの署名」だけでなく、「修道院屋敷」や「ソア橋の謎」を思い出して驚いてしまいます。そしてここでは身体的な健康状態について話しているようにもきこえますが、双極性障害の悪化とその治療によって、もう以前のようには演じられないのではないかという不安の方が大きかったのではないでしょうか。少なくとも入院中はそのような不安をエドワードに話していたということを、Bending the Willowで読みました。エドワードの言葉です。

I remember him saying a terrifying thing to me at this time. Terrifying for an actor. He told me one day that he was really frightened and I asked him why. He said, "Because by balancing me and subduing me, I may have lost it―lost the ability to act." I understood that fear and it was very real for Jeremy.

(入院していた頃)、ジェレミーがとても恐ろしいことを僕に話したのを覚えています。俳優にとって本当に怖いことなんです。ある日ジェレミーが、とても怖いんだ、と言うので、何故?と問うと、「精神状態のバランスをとって感情を抑えることで、演じる能力を失ってしまったかもしれない。」その恐怖は僕にはよくわかりました。そしてジェレミーにとってそれは、実際に目の前にある恐怖だったのです。


以前はできていたことが、もうできないのではないか、という恐怖。それを知っているかたもいらっしゃるでしょう。ジェレミーとくらべるのもおこがましいですが、私も知っています。ある日ポキリと自分の中で何かが折れてこわれた後、長い不安な時を経て、以前はたやすくできていたことを、今日新しく生まれたような不思議な気持ちで、とりもどしていく。薄紙をはがすようによくなっていく時の感謝の気持ち。

りえさんのブログで読むことができるNPRのインタビュー(1991)でも言っていました。トランスクリプトと訳を拝借します。

「The Best of NPR」インタビュー内容 4

I remember saying if I can get to Manchester, I'll be all right. And then I made The Sign of Four, and I began to feel better.

マンチェスターまで行けるかなあ、それが出来たらきっと大丈夫だよ、なんてよく言っていたものです。そして「四つの署名」の撮影をして、少しずつ楽になっていきました。


まず最初はマンチェスターのスタジオまで行けたら、という気持ち、こうして一歩ずつ進んでいく気持ち、よくわかる気がします。そしてついに撮影がすんで、ほっとしてうれしかったことでしょう。だから「一番誇りに思っている作品」としてあげたのだと思います。本当に見事なホームズ、見事なジェレミーでした。そんなことを感じながら、「『四つの署名』撮影時の写真と、Joanとの写真」でアドレスを書いた、撮影現場での笑顔の写真をみていたのでした。

RM
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