Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

先日ご紹介したこのインタビューの中から、もう少し書きたくなりました。今までの記事はこちらです。
大病の後に;インタビュー記事 When the lights went out (1990) より
インタビュー記事 When the lights went out (1990) 中の写真

ジェレミーの演技、特にホームズの演技をみていると圧倒されるような存在感と輝きなので、才能とカリスマ性を持った俳優として順風満帆の人生を送ってきたように思えますが、実際には多分そうではなかったのでしょう。1989年におこなわれた、The Black Box Clubのインタビューで、自分の俳優人生を振り返って一言で言うと?とインタビューアに問われて、"I have been incredibly lucky" 「本当に幸運でした」と答えています。いつかご紹介しましょう。それは、幸運に恵まれて何の障害もなかった、という意味ではなく、俳優としてはもう駄目かと思ったが、まわりの人にも助けられてここまで来た、という内容でした。いくつもの話が同時に来て、どれを承諾して演じるか選ぶことができるような、そんなことはまったくなくて、いつも自分から出て行って仕事をさがしていた、とも言っていました。今日ご紹介する部分でも、俳優であろうとすることの重圧について話しています。

妻の死とホームズを演じることの重荷で病に倒れてしまった、と話した後からで、一部省略して訳します。自分はこの役をやっていけるのか、失敗することで俳優としての道を絶たれるのではないか、という重圧を感じていたのですね。そしてジェレミーは演じることが大好きである分、人並みはずれた努力をしたのだと思います。

「心の重圧は何よりもまず、自分は俳優なのだ、と自信を持って思うことができなかった、ということと関わっていました。私は有名な軍人の父と、アイルランドのクエーカー教徒の母との間に生まれたのですが、どうしたらこの二人から俳優が生まれる計算になるのかわかりませんでした。私が自分の俳優としての能力を信じられるようになるには、とても長い時間がかかりました。」

子供のころ舌癒着症で、手術を受けるまではRとSがうまく発音できなかったことも、俳優としてはやっていけないのではないかと彼に思わせた。「『言葉を語ること』を仕事としているのが、ただ信じられなかったのです。ベオグラードでThe National Theatreの芝居に出ていた時、ある朝目が覚めた時に『僕は俳優なんだ』と思ったのを覚えています。でもそう思えるのは本当に稀なことでした。

「僕がホームズの役を演じないかと打診された時、失敗するに違いない、と思ってとても暗い気持ちになりました。それまでにあんなに多くの人が見事に演じてきたのに、僕に何ができるでしょう?」

ブレットはホームズ役をひき受けることを決意して見事に演じ、広く賞賛された。



最近、ジェレミーがギリシャ悲劇のオイディプスを30代で演じたオーディオブックのLPを手に入れて、聴いています。ジャン・コクトーがオイディプス悲劇を元に書いた「地獄の機械」のオーディオブックです。「おまえは父を殺し、母と交わって子をもうけるだろう」という神託のままに、地獄の機械の歯車がまわって圧倒的な悲劇の結末へと進んでいくオイディプス、しかも最後の時が来るまで、歯車が止めようもなく回っていることを知らないこのオイディプスを演じる、ジェレミーの声と表現のすばらしさ。英語を母語とする人ならはるかにそれを感じられるでしょうが、私でもジェレミーの演技に息を飲み、魅了されます。19歳の若者の時から、自らの目をつぶして、娘にともなわれて絶望のうちに放浪する最終場面まで。(シェークスピアよりはわかりやすい英語です。でもこういう時は特に、英語母語話者をとてもうらやましく思います。)

そのジェレミーが、「自分は俳優なのだ、と自信を持って思うことができなかった」と言っているのに驚くとともに、俳優であること、芸術家であるということは時になんとむずかしく、有り難い(有ることが難い)ことなのだろう、と思います。そしてジェレミーに出会って、その演技と芸術を味わうことができる有り難さを思います。

RM

追記:言葉が足りなかった気がして、翌日こちらに少し書き足しました。
昨日の記事の補足と、葉書
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