Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

前回、マンチェスターで建築中の221Bでの写真をご紹介しました。ジェレミーは赤い表紙のホームズ選集を手にしていました。

建築中のグラナダスタジオでの写真;The Television Sherlock Holmesより

ジェレミーが読んだホームズの本というと、あと2冊思い出します。一つは学校の課題で読んだ(あるいは読まされた)本。その時のことを話しているインタビューは、以前の記事でご紹介しました。一部を再度載せます。

「私が子供だった頃」後半

17歳でロンドンのThe Central School of Speech and Dramaに入学しました。

その4年前に、後に重要なことだったとわかる出来事がおきました。学校の休みの宿題で、アーサー・コナン・ドイルのシャーロック・ホームズを読むように言われたのです。読んでいたBigglesの本をいやいやながら中断しなければならなかったので、はた迷惑な宿題に思えました。ワトスンは好きでしたが、ホームズは独善的な知ったかぶりに思えました。


あまり良い印象はなかったようですね。でもちゃんとその時のことを覚えていたのですから、ホームズは気に入らなかったにせよ、この物語世界の中に何か心に残るものがあったのかもしれません。

そしてもう一つは、休暇で滞在していたバルバドスで読んだホームズ。このことはDavid Stuart DaviesがDancing in the Moonlightなどで触れていて、りえさんも最近のブログで紹介してくださいましたね(第2章 バイオグラフィー 18 )。ここではジェレミー自身が寄せた、Peter Haining著 The Television Sherlock Holmesの序文から一部をご紹介しましょう。英語の原文はこちらで読めます。

http://jeremybrett.livejournal.com/22952.html

グラナダテレビからホームズ役の打診があった8週間後に、ホームズのドラマ化の話は取り消され、私はほっとしてテンペストのプロスペロ役を演じるためにカナダへ向かった。その後バルバドスで休暇をすごしたのだが、私を家に招いてくれた人の一人が、自分が90歳の誕生日に贈られたドイルの全集を親切にも私に貸してくれたので、夜になるとその本を開いてのんびりと楽しんだ。学校時代以来のドイルで、子供の時は後に控えている試験のために仕方がなく読んだようなものだったが、今回は夢中になった。ビクトリア朝最後の頃のロンドンの、ガス灯が灯り霧でかすむ街路と、刻み煙草のにおいを魅惑的に感じた。

Dancing in the Moonlight などで読んだ時は、ジェレミーがバルバドスで楽しんだ本と建築現場に持ち込んだ本は同じもののようになんとなく思っていたのですが、後者の本は前回のインタビューで話しているようにロンドンの書店で買ったものでした。ですからバルバドスで読んだのは、あれとは別の本でした。

2010年、ウェブサイトThe Brettish Empireに、バルバドスでジェレミーと親しかった人からのお便りが掲載され、ジェレミーはバルバドスでその人のおじいさんのホームズを読んだ、と書かれていました。ということはお便りの主は、90歳のお誕生日に贈られたホームズの本をジェレミーに貸した、そのかたのお孫さんなのですね。

http://www.brettish.com/a_77th_birthday_tribute_to_jerem.htm
(The Brettish Empireのこのページには、マンチェスターの建築現場で赤い表紙の本を持つジェレミーの写真が載っていますが、上で書いたように、この本はバルバドスで読んだ本ではありません。)

このお便りには、ジェレミーがバルバドスで、そしてイギリスでどんなだったかが書かれていて、とてもうれしい内容でしたので、次回一部を訳してご紹介します。

RM
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コメント

二度目の読書

ジェレミーがホームズにいい印象がなかったというのは過去記事で拝読していましたが(『独善的な知ったかぶり』とは!)二度目に読んだ時も、自分から望んで、ではなく偶然によってのことだったのですね。
わたしにとって、ジェレミーはまさに21世紀にホームズを手渡してくれた人、なので不思議な感じです。

大人になるにつれて本の印象が変わる、気づかなかった良さに後から気づく、という感覚、すごく共感できます。子どもの頃に比べて経験を積んだ分、考え方が変わっているからだと思います。特に、自分の経験した立場や職業に関する話は、劇的に印象が違っていることがあります。
ジェレミーは、すでに一度ホームズ役の依頼を受けていたのですね?ひょっとしたら、もし自分がホームズを演じたら、と想像しながら二度目の読書を楽しんだのでしょうか。想像の中で、ホームズとして19世紀のロンドンを走り回っていたのかもしれませんね。「ガス灯が灯り霧でかすむ街路と、刻み煙草のにおい」という具体的な描写からは、なんとなくそんな印象を受けます。

ジェレミーははじめは、

あんまりホームズは好きじゃなかったのですね。

>大人になるにつれて本の印象が変わる、気づかなかった良さに後から気づく、という感覚、すごく共感できます。子どもの頃に比べて経験を積んだ分、考え方が変わっているからだと思います。

なるほど、私は実は子供の頃から本の好みはあまり変わらないほうなのですが、 ナツミさんとジェレミーは、だんだんと本の印象がかわっていくタイプなのですね。ジェレミーは「細かい描写が本のページから飛び出して(中略)、以前はみえていなかったイメージがこころの中にあらわれた」と書いています。そして「私の中の俳優の部分が、ホームズを追いはじめた」とありますから、まさに俳優としてのジェレミーがホームズに魅了されたのですね。

>ジェレミーは、すでに一度ホームズ役の依頼を受けていたのですね?

はい、Michael Coxによれば、1981年秋に最初にジェレミーに役の依頼をしたそうです。でもドイルの後期作品の著作権がアメリカでは切れていなくて、ある会社がその権利を買い取って、ホームズとワトスンという人物にまでアメリカでの権利を主張したために、アメリカにも映像を売る予定だったグラナダテレビは2年間待たされ、結局裁判所はグラナダの主張を認めました。

>ひょっとしたら、もし自分がホームズを演じたら、と想像しながら二度目の読書を楽しんだのでしょうか。

ナツミさんと同じように私も、バルバドスですでにジェレミーは演じる可能性を考えながら読んでいたと思います。グラナダが勝つという予想が、その頃はついていたのではないかと思っています。

ジェレミーによれば、Michael Coxからのシリーズ撮影決定と最終的な依頼の電話はその後です。「9月」と言っていますから、1982年9月でしょう。(備忘録のように書いてしまいますが、The Brettish EmpireによればカナダでのTempestが1982年5月から、建築中の221Bの写真は1982年のもの、ホームズの撮影開始がMichael Coxによれば1983年6月。)

>想像の中で、ホームズとして19世紀のロンドンを走り回っていたのかもしれませんね。

はい!そう思います!想像しているジェレミーを想像すると、わくわくしますね!

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 RM

Author: RM
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和訳には間違いがあるかもしれません。最近は必ず英語原文を併記・またはアドレスを書いて読めるようにしていますので、どうぞそちらも参考になさってください。

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