Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

「お鼻の話」です、「お花の話」ではなく。

前回の記事「舞台 Draculaの頃のインタビュー;新聞記事(1979)より」で、「『鼻の穴が大きいんです。』彼は鼻の穴を広げて、危険な印象をかもし出した。」と書いたところは、原文では"'I have enormous nostrils.' He flared them to menacing effect." となっています。これで思い出したのですが、1992年のインタビューで、ホームズを演じる時、"[...} my nostrils flare [...}."と言っています。

その部分を引用して抄訳します。TADとあるのはインタビューアです。

Holmes' Encore
The Armchair Detective, pp.4-13, Vol.25, No.1, 1992

TAD: ジェレミー、同じ役を、毎回どうやって新しい気持ちで演じることができるのですか?

Brett: どんなふうにホームズを演じたらよいか、今でも学んでいる最中なんですよ。本当にむずかしいのです。まだ半分も彼の演じかたをわかっていません。いつもやりすぎてしまいます。いろいろなことをやってみるのが問題なんです。ホームズはうちに秘めたエネルギーを持ったままで、外には大いなる静けさをあらわします。そのとき私は静かにしているのですが、でも体がいろいろと動いて、鼻の穴を膨らませたり、眉をあげたりしてしまうんです。そうすると、体のいろいろなところをやたらにぴくぴく動かしている俳優、になってしまいます。

(追記:「鼻の穴を広げる」とはじめは書いていましたが、この記事の文章の訳としては「鼻の穴を膨らませる」にかえました。コメント欄でナツミさんとお話していて、こちらのほうがよいと感じたからです。)

最後の2つの文章の原文は "But I twitch, my nostrils flare, my eyebrows arch. It comes across as an over-the-top twitching actor." です。いつもながらジェレミーは謙虚で熱心で、そしてユーモアも忘れないのですよね。

眉がアーチを描くのは、これはもう見事ですよね。人はあんなふうに、それぞれの場面で微妙なニュアンスをともなって、眉を動かせるものなんでしょうか!ホームズを演じるとき以外のジェレミーでは、あれほど見事な眉の動きをみたことがないので、ホームズを演じる中でつくっていった動きなのでしょうね。

そして、鼻のことです。これ、私は気がつかないし気にならないのですが。ホームズの鼻の穴、広がっていますか?

そもそも"my nostrils flare." を「鼻の穴が広がる」と解釈してよいか、100%の自信はないのです。私の辞書にはそのものずばりの例文がなかったので。でもGoogle Imagesで検索すると、確かにそういう画像がたくさん出てくるので、多分大丈夫でしょう。

『Scrawl』のインタビューから(1989年)(2)」の記事でご紹介したインタビューでは、「ホームズを演じるようにと言われたとき、驚きました。僕の鼻はそんなに大きくないのに、なぜ僕なんだろう?って。」と言っています。ホームズの鼻はhawk-like noseと言われていますね。ジェレミーはホームズにうってつけの鼻を持っていると思います。だから逆にこんなふうに、自分の鼻をジョークのタネにするのかもしれませんね。

そして、物理的に鼻の穴は広がらなくても、ジェレミー本人としてはやり過ぎたと思うときもあって、それを鼻の穴で象徴的にあらわしたのではないかと思うのです。でもそんな心配はないですよね。ホームズの感情にそってジェレミーの表情は実に見事に動いて、見ている人を魅了しますもの。

ところで私がジェレミーのホームズをみて驚くのは、目が「物理的に」(つまり修辞的に表現して、ではなく文字通りに)輝くところです。どうやったら、あんなことができるのでしょう!

RM
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コメント

ジェレミーの表情

ほんとうに、生き生きしていますよね!
ホームズって、冷静で無表情のように思われてる方もたくさんいるようなのですが、少なくともジェレミーのホームズは全然違いますよね。
原作には「いたずらっ児の目をして」という表現が出てくるのですが、ここで私はいつもジェレミーのくるんと目を輝かすさまを思い浮かべます。

ワトスンがホームズの物語を書こうと思ったのは、もちろん彼の推理がすごかったからでしょうが、それ以前に人間としての面白さに興味をひかれたのだと思います。子どもが珍しい動物をじっと見てしまうように、片時も目が離せない感じが文章から伝わってきます。

その感じを視聴者にも抱かせなくてはならないのだから、ホームズ役は並大抵の仕事ではないですよね!その点ジェレミーの表情や動きは、みんなの目をシャーロック・ホームズという生き物に釘付けにしたと思います。

ところで、日本にいると目や口はともかく、眉や鼻の動きって、あまり語られることがないような気がします(いや、『眉をひそめる』とか『鼻の穴を膨らませる』という表現もあるし、私が気づいていないだけでしょうか?でもやはり意識的に眉を上げ下げしてみせたり鼻をツン、とさせる人は日本の大人には少ないと感じるのです)
ジェレミーが鼻の穴や眉のオーバーアクトを気にしているのは面白いですね!鼻の穴で危険な印象をかもし出せるなんて、意識したことすらありませんでした。

えっ、いたずらっ児?

>原作には「いたずらっ児の目をして」

そんな記述があるんですか?! ジェレミー・ホームズそのものじゃないですか!

>ここで私はいつもジェレミーのくるんと目を輝かすさまを思い浮かべます。

「くるんと」目を輝かす、って素敵な表現ですね。そうそう、そんな感じです。

>片時も目が離せない感じが文章から伝わってきます。

わあ、そうなんですか!ナツミさんのお話をうかがうと原作の魅力が伝わってきて、そしてグラナダシリーズがどんなに見事にそれを映像であらわしたかがわかってきます。おっしゃるとおり、ホームズに目が釘付けなんですよね。

そして「鼻の穴を膨らませる」という言い方、それ、いただきます!私、「鼻の穴を広げる」と書いて、なんか即物的な表現だなあ、と思っていました。「鼻の穴を膨らませる」という言い方で、感情の表出を象徴的にも表現しますよね。

ドラキュラのインタビューでは、ジェレミーはおどかすように実際に「鼻の穴を広げ」てみせて、ホームズの時は、おもしろい事件に興奮した時か、解決して得意げな時に感情が表情にあらわれて「鼻の穴を膨らませ」たようにジェレミーが感じたのではないかと思います。「鼻の穴を膨らませる」、それでいきます!

眉に関しては、これは本当に見事ですよね。西洋の人は眉をよく動かすのでしょうか。でもジェレミーが演じているホームズ以外で、あそこまで見事な動きを私はみたことがないので、ホームズが特別なのでしょうか。原作で、ホームズの眉の動きには言及があるのかしら、と思ってざっとGoogleで検索したら、A Study in Scarlet (Holmes glanced at me and raised his eyebrows sardonically.)、The Hound of the Baskervilles (Holmes raised his eyebrows in surprise.)、Mazarin Stone (Holmes glanced at it with raised eyebrows and an amused smile)、と次々に出てきましたが、ワトスンは自分が眉をあげた時のことはいちいち書いてはくれないでしょうから、ワトスンと比べるわけにもいかないので、ホームズが多いのか普通なのか、うーん。

わあ!

「膨らませる」を採用していただきありがとうございます!案として書いたのではなくて、鼻の動きを表す表現の一例として思い出しただけなので全くの偶然なのですが、RMさんの翻訳のお役に立てたのならうれしいです!

ここはホームズ原作のことをお話する場ではないのに、RMさんの優しさに甘えてしょっちゅう原作の話をしてしまい、ご不快に思われる方がいたら申し訳ありません。でも、あと少しだけ書かせてください!

「いたずらっ児の目」は延原謙(新潮文庫)の訳(『マスグレーヴ家の儀式』)ですが、この短篇に限らず、ワトスンがホームズを描写する時には"mischievous"という言葉がよく出てくるようです。「いたずらっぽく」「からかうように」とも訳されています。映像化されたホームズは本当に色々で、最近ではロバート・ダウニー・Jrのホームズもmischievousな感じが強いと思うのですが、私は一番にジェレミーの表情、とくに「目」を思い出します!

ホームズの眉については「フランシス・カーファックス姫の失踪」に"heavy, dark brows"と書かれていますね。その「動き」についてはたくさんでてくるのですね。一度付箋をしながら読んでみたいと思いますが、太くて黒い眉なら、動きも目立ったのではないかと思います。ジェレミーの眉はまさにイメージどおりですよね!

ホームズの眉の動きが特に多いか普通かはわからないのですが、ワトスンがこうして動きや表情を描いてくれることで、ホームズはずいぶん人間らしく、親しみやすい印象になっていると思います。
ジェレミーは文章でなく演技で、それと同じことをしているのですよね。ホームズになりきるために、ワトスンの目をも持っていたのでしょうね。

原作のお話、大歓迎ですよ!

ここに来てくださる方の中には、私のように、子供用に書き直されたホームズや映像作品しか知らないかたもいらっしゃるかもしれません。そういうかたは、私と同じで、原作のお話を喜んでくださるでしょう。そしてもともとのシャーロッキアンのかたは、原作のお話の仲間入りをしたいと思ってくださるかもしれませんね。

>ワトスンがホームズを描写する時には"mischievous"という言葉がよく出てくるようです。

本当ですね!今検索したら、"with a mischievous twinkle" という表現を4カ所でみつけました。"mischievous"を含む他の表現も、もっとあるようですね。わーん、なんて素敵なんでしょう!ジェレミーのイメージですね。ロバート・ダウニー・Jrはみていないのですが、そうですか、彼も"mischievous"な面をみせてくれるのですね。

ホームズ役の話が来た後にジェレミーが原典を読み直した時に、"Holmes chuckled and wriggled in his chair"という表現を「赤髪連盟」の中にみつけて驚いた、と言っていましたが、"with a mischievous twinkle" も私にとって同じような驚きです。ジェレミーは"mischievous"をどう思ったでしょうね。

>ホームズの眉については「フランシス・カーファックス姫の失踪」に"heavy, dark brows"と書かれていますね。

そうなのですか。調べたら、延原謙訳では「太い眉」になっていますね。ジェレミー・ホームズは、今まであまり太い眉だとは思わなかったのですが、素顔の写真とくらべると、確かに濃くて太い印象があります。そういえばあるインタビューで "[...] my eyebrows were glued up, then very gently filled in." と言っていました。ジェルで固めて持ち上げて上にアーチを描かせて、さらに眉墨で少し濃くする、という感じでしょうか。(少し前のところで、自分の眉は元々はアーチを描いていない、と言っています。)このインタビューを読んだ時は何のことかぴんと来なかったのですが、わかった気がします。わあ、うれしい!

>ジェレミーは文章でなく演技で、それと同じことをしているのですよね。ホームズになりきるために、ワトスンの目をも持っていたのでしょうね。

これはおもしろいですね。ジェレミーがホームズになるとき、ワトスンの視点も同時に持っていた、ということですね。うーん、これはおもしろいですね!特に、ジェレミーがワトスンを演じたこともあるということ、自分はワトスンのほうに近い、とよく言っていたことを考えると。

記事本文の内容とはちょっとずれるんですが

鼻のオーバーアクション、日本の大人はしない、というナツミさんのコメントから連想したことを書いてもいいでしょうか。

「第二の血痕」で敷物はがして床の隠し場所を見つけたけど手紙が入ってなかった時、「Empty! フガー!」って激しく鼻を鳴らしますよね。わたしは最初これに気づいた時とてもびっくりしました。日本語吹替だと露口さんは鼻を鳴らしてはいなくて、悔しそうな嘆息のみです。日本人はあんまりこういう風に「くそっ」という意味で鼻を鳴らしたりしないから驚いたというのと、ジェレミーみたいなかっこいい美形がこんな下品な音を(笑)、しかも思い切り発するなんて、という驚きと、ダブルの衝撃でした。
「ブルース・パーティントン設計書」冒頭でも、「悪漢どもは何してる(折角犯罪に格好の霧なのに)」と文句垂れて、新聞読んでるワトスンに「こそ泥ならいるが」と言われた時にも「フガ!」って鼻を鳴らします。こちらは第二の血痕とは少し意味合いが違って「はん!くだらん!」みたいな感じですよね。こちらの意味だと第二の血痕の悔しさの意よりは、日本人的に「鼻を鳴らす」という行為でそれを表すのに違和感が無いです。けど、やっぱりジェレミーみたいなかっこいい(以下略・笑

あと、これもナツミさんのコメントの「ホームズになりきるために、ワトスンの目をも持っていた」という着眼点も、とてもおもしろいです。言われてみればそうですよね。ワトスンが書いてくれて初めて、わたし達の目にホームズという人の姿が立ち現われてくるんですものね。

今日更新の新しい記事からリンクしてくださったお蔭で、読みきれてない過去の興味深い記事やコメントにも出会えて嬉しいです!

あの「フガー!」ですね!

まるさん、こんにちは。
今は無くなってしまったフォーラムで「第二の血痕」が話題になったとき、みなが口々にあの「フガー!」が大好きだと言っていました。
英語ではsnortって言うことをその時に知りました。

>日本語吹替だと露口さんは鼻を鳴らしてはいなくて、悔しそうな嘆息のみです。

吹き替えではため息だったんですね。たしかに、悔しいときや怒ったときにああいう鼻の鳴らし方をするって、日本の文化にはなさそうです。日本でああいう音をきくとしたら、感情表現の一つというよりは、酔っ払っているひとが鼻がつまっているのを無理してとおすとか、そんな場合でしょうね...とわかったようなこと言っていますが、どうやったらあの音がでるんでしょう。ジェレミーがしていることならなんでも真似してみようと思うけど、これは難しそう。

>こちらは第二の血痕とは少し意味合いが違って「はん!くだらん!」みたいな感じですよね。こちらの意味だと第二の血痕の悔しさの意よりは、日本人的に「鼻を鳴らす」という行為でそれを表すのに違和感が無いです。

なるほど、日本で「鼻を鳴らす」というのは軽蔑の時ですね。

>あと、これもナツミさんのコメントの「ホームズになりきるために、ワトスンの目をも持っていた」という着眼点も、とてもおもしろいです。言われてみればそうですよね。ワトスンが書いてくれて初めて、わたし達の目にホームズという人の姿が立ち現われてくるんですものね。

これもとても面白いですよね。ジェレミーがインタビューで、ワトスンを演じた経験があってとてもよかったと言っていたのを思い出します。

ふがふが(鳴らしまくり

> 今は無くなってしまったフォーラムで「第二の血痕」が話題になったとき、みなが口々にあの「フガー!」が大好きだと言っていました。
> 英語ではsnortって言うことをその時に知りました。

やっぱりみんなあれが大好きなんですね(笑)
かっこよくきまってるとこを見るのももちろん嬉しいけれど、ああいうのを見るのはまた特別にうれしいものですよね。ふふ。
snortですか。学校では習わない英語ですねぇ。

> どうやったらあの音がでるんでしょう。

えっ。こうやって…… フガー!(盛大に鳴らしました)
わたしはあのシーンみるたびに真似しちゃいます。

あと、敷物をはがす時の手つきも真似しちゃいます。
なんというか、いつもこの言い方してて我ながら芸がないとおもうけど「無駄に美しい」ですよね。あのバレリーナのような手先の形。かっこよくて美しくて変で、みるたび笑っちゃいます。

えーっ、私できないです、うらやましい!

>> どうやったらあの音がでるんでしょう。

>えっ。こうやって…… フガー!(盛大に鳴らしました)
>わたしはあのシーンみるたびに真似しちゃいます。

昨夜、見直し(聞き直し)ました。あれって要するにブタの鳴き真似と同じですよね、と言うと身も蓋もないですけど。そして私、ブタの鳴き真似できないんです!ああ、くやしい、うらやましい。

>あと、敷物をはがす時の手つきも真似しちゃいます。

ああ、あそこですね!

>なんというか、いつもこの言い方してて我ながら芸がないとおもうけど「無駄に美しい」ですよね。

まさに「無駄に美しい」です。

>あのバレリーナのような手先の形。かっこよくて美しくて変で、みるたび笑っちゃいます。

いやもう、ほんと、幸せな笑いですよね。

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 RM

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