Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

以前4回このブログで引用した1990年のインタビュー記事の最後の部分です。
前の4回はこちらです。

大病の後に;インタビュー記事 When the lights went out (1990) より
俳優であることの重圧;インタビュー記事 When the lights went out (1990) より
最初の入院の時(または「必要とされること」);インタビュー記事 When the lights went out (1990) より
病から得たもの;インタビュー記事 When the lights went out (1990) より

また、インタビュー記事の原文はこちらで読めます。
http://jeremybrett.livejournal.com/105878.html


「病気になることが持つ悲しい面は、自分は社会ののけものだ、不良品だ、とどこかで感じてしまうことです。言ったりしたりすることすべてを友達が心配して見ていて、たとえばいつもよりすばやく耳をかくと、どこか悪いのではないか、と思われたりするのです。[...]

「ひととの関係も、ぎくしゃくとなりました。病気だった時のことを思い出すという理由で、親しかったひとに会いたくなくなったのです。10週間の間、辛い思いをしながら週に2回病院に来てくれたひとたちだというのに。いつかまた私があんなふうになるかもしれないと思って、とても心配しているのを感じて、心配されているというそのことで私も神経質になってしまいました。

「病気がなおったことで、自分を信頼して、自分のことを大切にできるようになったのは、とてもすばらしいことです。長く認めることができなかったことですが、今は自分自身を誇りに思っています。もう一度健康になることができてわくわくしていますし、家族や友達がほっとしているのを感じています。[...]」

"One sad aspect of being ill is that a part of you feels like a leper - you're damaged goods. After you've had a breakdown your friends watch every move you make. If you scratch your ear too quickly, they wonder if it signals a problem. […]

"My relationships were also hurt. I didn't want to be with people to whom I'd been close, because it reminded me that I'd been ill. Remember, they'd been through hell coming to see me twice a week in the hospital for 10 weeks, and they couldn't bear the idea that some day I might be ill again. They were terribly nervous about my health, and that, in turn, made me nervous.

"Recovering from my breakdown has done the most amazing thing for my confidence and self-esteem. I'm proud of myself, which has taken me a long time to recognise. I'm thrilled to be healthy again and I know it's relief to my family and friends. […] "



本当に率直に話している、という印象を持ちます。ジェレミーのこういうまっすぐさに、いつもこころをうたれます。

「いつもよりすばやく耳をかくと」というところは、いかにもジェレミーらしくて、きいている人が重い話題の中でもちょっとにっこりとできるように話すのも、インタビューアへの思いやりでしょう。

そして、親しい人への気持ちについて話しているところは、最初に読んだ時から心に残っていました。自分の感情をみつめて認めることができる素直さと、それを的確に言葉にできるちからというのは、俳優としてのジェレミーが役を理解する時の深さにつながるのだと思います。でも何よりも、人間として、こういうところがとても好きです。

ジェレミーは自分の気持ちにもひとの気持ちにも敏感なひとだと思うのです。そういうところにひかれて、でもそれはジェレミーにある種の傷つきやすさ(vulnerability)も与えたのではないかとも思います。

(でも一方で、David Burkeに「鉄面皮」なんて書かれちゃうのですよね!レストランの真ん中でデイビッドにセレナーデを歌うジェレミーです。)

一番最後のところは省略しましたが、この病気で家族や友人を悲しませるようなことはもう二度としたくないし、決してしない、と言って終わります。この後も何度か病気のために入院したことを思うと、ここを読むとこころが痛みます。でも、ジェレミーは病にたおれても、病むことの悲しみを経験しても、最後にはたちあがって私たちの前でホームズを演じてくれました。生きることを大切にして、自分自身を誇りに思って、まっすぐに生きたひとだと思います。

RM
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コメント

病気になった時、はじめて気づく事ってありますよね。
健康な身体の大切さ。
家族の暖かさ。
友人の優しさ。

そういった面でジェレミーは誰よりも痛感したはずです。

RMさんの仰る通り「生きることを大切にして、自分自身を誇りに思って」
だからこそ、私たちの大好きなジェレミーが今もあるのだと思います(*^∀^)

デイビッドにセレナーデを(鉄火面で)歌う茶目っ気ぶりが何とも愛おしいです♪
私もその場にいたらデイビットと同じように赤面するでしょうね(笑)

こんにちは、トビィさん

ジェレミーは自分をのことを愛して、気にかけて、思ってくれる人の気持ちに、すごく敏感だったと感じています。だからなおさら、トビィさんがお書きになったように、病気の時の家族や友人の気持ちが身にしみて感じられたのだと思います。

>だからこそ、私たちの大好きなジェレミーが今もあるのだと思います(*^∀^)

はい、そう思います!

そしてジェレミーは一筋縄ではいかないと言いますか(うふふ)、いろんな面があるのですよね。歌ってあげたかったら、断固歌ってあげちゃうのですよね。

素晴らしいインタビューですね。

RMさん、トビィさん、皆さん、こんばんは。
RMさん、素晴らしいインタビューをご紹介くださって、ありがとうございます。
正直、ジェレミーのこういうところは、私には凄過ぎて、もう「ジェレミー、すごい!」としか言いようがなくて、この感情を言葉にするのは本当に難しいです。

>自分の感情をみつめて認めることができる素直さと、それを的確に言葉にできるちからというのは、俳優としてのジェレミーが役を理解する時の深さにつながるのだと思います。

本当にその通りですね。
先のインタビュー記事も拝見しましたが、なんて心が豊かで、そして、なんて頭の良い人だろうと思います。
ジェレミーとはまったく比べ物にならないレベルではありますけど、自分自身への不安や、現実の中での葛藤など、自分の中にも確かにある感情、でも、今まで自分では言葉にできたことはなかったそれを、明確な形で目にして、ああ、と胸を突かれる思いがしました(RMさんの訳も素晴らしいです!)
心の機微に聡い感覚の鋭敏さと、すべてを愛を持って見ることができる心の温かさ、そして感じたことを言葉にできる聡明さ…。
良いときも悪いときも、どんなときでも、それこそ絶望感に苛まれ、打ちのめされた時でも、ジェレミーという人の中心にあるものの美しさに心が震えます。

でも、病気はつらいですね。
病気ということに関しては、自分が病気の時も、誰かが病気の時も、私はいつもうまく対応できなくて、近づいて失敗し、距離を置いて失敗し、いろいろ後悔があります。
結局は、病気というものに怖じ気づいている自分の心が原因です。
情が薄いんだなあと自分で自分にがっかりします。情けないですね。
だから、余計にジェレミーに憧れるのかもしれません。

いま、動画にありますツィギーといっしょの番組での「She Moved Through the Fair」がとても好きです。
悲しい歌なのかもしれませんが(いろいろと違う解釈がある歌のようですね)、旋律もジェレミーの声もただただ美しくて、どこまでも美しくて、聞く度に涙が出てきます。
でも、そう言いながら、ツィギーとのデュエットのシーンは嫉妬でまだちゃんと見られないんですよ(笑)
恋する乙女(←図々しい〜・笑)はしょーがないですね。

何を言っているのでしょうか、私は。
今日は全然まとまりません。こんな書き込みで、ごめんなさい。
でも、お話しできて、なんでしょう、勝手ながら、何だかちょっとほっとしています。

RMさん、本当にありがとうございます。
あなたがこのブログを作ってくださって、今ここにいてくださることに、心から感謝申し上げます。

たまごさん、こんばんは。

たまごさんと私と、ジェレミーのことを同じように感じているのを知って、とてもうれしくたまごさんの文章を拝見しました。そして、私がうまく書けなかったことを、たまごさんは言葉にして下さいました!

>心の機微に聡い感覚の鋭敏さと、すべてを愛を持って見ることができる心の温かさ、そして感じたことを言葉にできる聡明さ…。

本当にこのままです。ジェレミーはそういう人だったと思います。たまごさんが、ご自分が(そして私が)感じたことを言葉にして下さった聡明さにもこころを打たれました。

>良いときも悪いときも、どんなときでも、それこそ絶望感に苛まれ、打ちのめされた時でも、ジェレミーという人の中心にあるものの美しさに心が震えます。

すでにこの世を去って久しい、みたことも会ったこともない異国の人に、どうしてこんなに心をうごかされて、私の中でいろいろなことが変わったのだろう、どうして世界中に私と同じような人がいるのだろう、と思っていました。ぼんやりと思っていたことが、たまごさんが書かれたのを読んで、私の中で形をとりはじめました。

唐突なようですが、たまごさんの言葉で、八木重吉の詩「素朴な琴」を思い出しました。

この明るさのなかへ
ひとつの素朴な琴をおけば
秋の美くしさに耐えかね
琴はしずかに鳴りいだすだろう

ジェレミーの魂からあふれだす美しさとあたたかさの中で、私たちの魂もしずかに鳴りいだすのでしょう。

もちろん私は、ジェレミーを何の欠点もない人だと思って、理想化しようとしているのではありません。(たまごさんもそうですよね。)でもあの、ジェレミーから抑えようもなくあふれでる美しさとあたたかさのちからというのは、特別だと思います。そして、ジェレミーを知ることができて本当によかった、と感謝の気持ちをあらためて感じます。

たまごさんは病気に関して、特に何かお感じになることがあったのですね。私はまだよくわかっていないところがあります。私もこれから経験していくのかもしれません。その時には、ジェレミーが話していることが今とは別のみかたで理解できるようになるのかもしれません。

「She Moved Through the Fair」は私も大好きです。アイルランドのフォークソングだということは、以前調べて知っていましたが、歌詞の意味は漠然としかとらえていませんでした。今回Wikipediaを読んではじめて、いろいろな解釈が可能だということを知り、ますます美しく感じられました。民話や民謡って、現実世界から少し浮遊した美しさがありますよね。それを今までよりも強く感じるようになりました。

>あなたがこのブログを作ってくださって、今ここにいてくださることに、心から感謝申し上げます。

こちらこそ、ありがとうございます。このブログは、誰宛とも定かにはわからず書きはじめた手紙のようなものでした。ずいぶん以前ですが、届かない手紙を書き続けているような寂しさを感じたこともありました。でも今では、いつも読んでくださるかた、コメントを書き込んでくださるかたに確かに届いているということを感じています。たまごさんからこう言っていただいたことも、決して忘れません。どうもありがとうございました。

続けての投稿、すみません。

RMさん、皆さん、こんにちは。
前回、記事を拝見して揺れ動いた感情のまま、まとまらない書き込みをしてしまって、申し訳ありません。
それなのに、RMさんから、このようにあたたかいお返事をいただいて、本当にありがたく思います。
(聡明だなんておっしゃっていただいて誠に恐縮ですが、そろそろ語彙が尽きてきているのがお分かりかと思います・笑)

「素朴な琴」ご紹介くださって、ありがとうございます。
美くしさに耐えかね …そうかもしれません。
ジェレミーの在りようの美しさに、そうならずにはいられないのですよね。

>もちろん私は、ジェレミーを何の欠点もない人だと思って、理想化しようとしているのではありません。(たまごさんもそうですよね。)

そうなんですよね。
不思議なことのような、不思議なことでも何でもないような、おかしな感じなのですが、ジェレミーがまったく欠点のない人だったら、こんなに愛しくは思わなかったのではないかと思うのです。
そして、ジェレミーがまったく欠点のない人だったら、これほど美しくはなかったのではないかとも思うのです。

>たまごさんは病気に関して、特に何かお感じになることがあったのですね。私はまだよくわかっていないところがあります。

私もわかっているとはとても言えません。
自分自身については、これはまったく自分の責任で、怠惰にしていたら、ごく浅くそういう意識体験をしたというだけなのです。
それでも、そのときは、自分にとらわれて、まわりの人を気遣う余裕はありませんでした。
それから、近年、何人もの知人が病気になることがあり、その度に私は立ちすくんで、どうしたらいいのかわからなくなりました。
何かをしたら、もしくは何かをしなかったら、その人を傷つけるのではないかと恐れ、その恐れをさとられるのではないかと恐れ、結局そんなふうに思いやりでなく不安や恐れとともに行動したことで傷つけてしまったりしました。
私はいつも、病気ということに打ちのめされて、その自分の思いだけになってしまい、実際のその人の心の側にまで辿り着けないでいるのですね。
本当に、どんな時も変わらぬジェレミーの人へのあたたかさに憧れます。

>「She Moved Through the Fair」は私も大好きです。

こういう歌って、悲しい歌詞のものが多いような気がしますが、そこにはどういう人間の思いがあるのでしょうね?
この歌の男性は何を思っていたのか、ジェレミーはこの歌をどんなふうに解釈して歌ったのだろうと、興味を引かれます。
それにしても、アイルランドの曲は独特ですね。
ジェレミーがアイルランド民謡を歌ったCDとか、そのMusic Video(!)とかあったら、どんなに素敵だろうと妄想しました(笑)

>このブログは、誰宛とも定かにはわからず書きはじめた手紙のようなものでした。

手紙、ですか。素敵ですね。
自分から外へと出すものは、言葉であれ何であれ、手紙のような一面を持っているかもしれませんね。
誰かの思いがこもって、いつか誰かに届いていく。
ホームズをはじめとするジェレミーが作り上げた作品たちも、ジェレミーからこの世界への、私たちへの手紙なのかもしれませんね。

たまごさん、またお話できてうれしいです

>不思議なことのような、不思議なことでも何でもないような、おかしな感じなのですが、ジェレミーがまったく欠点のない人だったら、こんなに愛しくは思わなかったのではないかと思うのです。
そして、ジェレミーがまったく欠点のない人だったら、これほど美しくはなかったのではないかとも思うのです。

ああ、本当ですね!私は実は、ごくはじめの頃はちょっと、非現実的なかたちで、まつりあげてしまったようなところもあるのです。でも今はたまごさんと同じ気持ちです。

>何かをしたら、もしくは何かをしなかったら、その人を傷つけるのではないかと恐れ、その恐れをさとられるのではないかと恐れ、結局そんなふうに思いやりでなく不安や恐れとともに行動したことで傷つけてしまったりしました。
私はいつも、病気ということに打ちのめされて、その自分の思いだけになってしまい、実際のその人の心の側にまで辿り着けないでいるのですね。

具体的な状況はわかりませんが、そのようにいろいろと考えて恐れてしまうお気持ちはわかる気がします。そして、自分の中で堂々巡りをしてしまって、結局思いを届けることができなかった、と感じた時の苦しさも。

でも事情も知らずに勝手なことを申し上げることになるかもしれませんが、真実から来る気持ちは、どんな形であれ、本当は届いているとも思うのです。

>こういう歌って、悲しい歌詞のものが多いような気がしますが、そこにはどういう人間の思いがあるのでしょうね?

少しずれるかもしれませんが、このところ感じていたことを思い出しました。自分のからだの前面を無意識の内に自分だと思っているということに、私は最近気がつくことがあって、背中側に意識を持っていくと不思議な広がりを感じました。そしてある時、私自身には見えない私の背中、その背中の向こう側には黄泉の国が広がっているというイメージが浮かんで、それは不思議な安心感と静かさをもたらしました。黄泉の国、あるいは冥府、といってもよいかもしれません。死者の国、魂の国、喜びも悲しみもすべて含んだ、ほの暗い場所。

神話や民話や、そして「She Moved Through the Fair」の歌のようなフォークソングには、「天国」対「地獄」、「善」対「悪」、「喜び」対「悲しみ」という二元的な世界ではないものがあって、そのお話や歌を伝えてきた人々の喜びも悲しみも含んだ形で、私たちのこころの奥の何かと響き合うのではないか、そんなことを思いました。

>それにしても、アイルランドの曲は独特ですね。

ジェレミーはお母様のことをいつも「Irish Quaker アイルランドのクエーカー教徒」と言っていましたから、アイルランドの歌に特別な思いがあったかもしれませんね。(CDかビデオ、あったらいいですね!)

>手紙、ですか。素敵ですね。

実は、私が大好きなブログを書いていらっしゃるナツミさんが、ご自分のブログのコメント欄で最近、「RMさんのように誰かに心をこめて書いた手紙のようなブログ」と書いて下さって、それがすごくうれしくて、そして、ああ本当に私は手紙を書いているような気持ちだなあ、と思ったのです。

>ホームズをはじめとするジェレミーが作り上げた作品たちも、ジェレミーからこの世界への、私たちへの手紙なのかもしれませんね。

本当にそう思います。そしてこれからも、たくさんの人に届きますね。

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 RM

Author: RM
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