Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

ジェレミーが、ワトスンをどのように演じたかを話している言葉をご紹介しています。いろいろな時にワトスンを演じた時のことをきかれていて、たとえば1991年のアメリカでのインタビューでは、くまのプーさんのように演じた、と言っていることを前回ご紹介しました。
ワトスンをどのように演じたか その1:くまのプーさんのように

(ジェレミーがワトスンを演じた舞台の宣伝用写真を、りえさんのブログで見ることができます。りえさんのブログのこちらのページの2枚目の写真をご覧ください。)

今日は前回のジェレミーの答えとは少し違ってきこえて、でもとても興味深いことを言っている雑誌でのインタビューをご紹介します。雑誌 Scarlet Streetの1992年のインタビューからの引用で、SSとあるのはインタビューアのJim Knüschを、JBはもちろんジェレミーを意味します。


SS: あなたはホームズとワトスンの両方を演じた、数少ない俳優の一人ですね。ドクター・ワトスンの役作りはどのようにしたのですか?

JB: 私は幸運なことに、軍人の息子なのです。私には軍人の血が流れていると思っています。とても情熱的で、ホームズのためなら何でもする、というワトスンを演じました。ホームズに対する敬愛の念を強く持っていて、でもホームズが自分自身を大切にせずに、心身を損なうようなおこないをすると、怒ってうろたえる --- ものすごくうろたえました。ホームズのためなら、ひとを殺すことさえしたでしょう。彼のためならひとを殺すことも辞さない。そんなふうに演じました。

(原文)
SS: You're one of the few actors to play both Holmes and Watson. What was your approach to the character of the doctor?

JB: Well, I was fortunate, being the son of a soldier. I have some military blood in my veins, I suppose. I played him with enormous enthusiasm and devotion to Holmes. With enormous respect, although I got quite angry and upset—very upset—when Holmes abused himself. I would kill for him. Would kill for him. That's how I played Watson.

("abuse oneself" は多分、主にコカインの注射のことなのでしょう。)


私がこの答えを興味深いと思う理由の一つは、ジェレミーがお父様が軍人であることにまず言及していることです。David Stuart Daviesは本の中で、最期までジェレミーは父親に対してある種の強いわだかまりを持っていた、と読者がとれるようなことを書いています。最後に会った時にジェレミーがホームズの子供時代を詳細に話した中で、「ホームズの父親は、太ったガマガエルのような退役軍人だったと思う」("His father was a fat, ex-army toad, I think.") と言ったことを紹介して、その直後に、ジェレミー自身と退役軍人だった父親の関係は難しいものだった、と記しています("To me the most telling phrase refers to Holmes's father: 'ex-army toad'. Brett's relationship with his own soldier-father was a difficult one." Bending the Willowより)。

でも私は、このブログでも2回ほどふれたのですが、ジェレミーのお父様へのあたたかい気持ちを、そこかしこで感じるのです。もちろん、一般的に男親と息子の関係がどのようなものか、私にはまったくわからないのですから、私が間違っているのかもしれませんが。でも、俳優になることを反対された時はとても辛かったと思いますが、最期までジェレミーが父親に負の感情を抱いていたとは、私は思いません。今までにこのブログで書いたこと以外にも、いくつかそう思う理由があるのですが、おいおい書いていきましょう。

それでこのインタビューにもどると、ワトスンの演じ方についてたずねられて、自分が軍人の血をひいていることをまっ先にあげていることにおどろき、そして、ああやっぱり、と思ったのです。演じるのが楽しかったワトスン、(プーさんのように)誰にでも好かれていたワトスン、元軍医でホームズの良き友人で、ホームズを守る強い気概を持っていたワトスン。そのワトスンを演じる時に、こころのどこかにお父様の存在があったということ。それをとてもうれしく感じました。

そしてもう一つ興味深かったことは、「ホームズのためならひとを殺すことも辞さない」というつよい表現を2回くりかえしていることです。ジェレミーはホームズの物語を、なによりもまずホームズとワトスンの友情の物語としてみていたのだろう、とあらためて思いました。そして自らがホームズの時も、ワトスンがこのように思っているということを、こころの奥底で知っているホームズを演じていたのだろう、と感じました。

RM


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コメント

ワトスンへの信頼

「ホームズのためならひとを殺すことも辞さない」!

なんと、この言葉、後々複数の「ホームズ」映像化作品に受け継がれているではありませんか…!

ワトスンが単なるホームズの引き立て役ではなく、彼自身とても複雑な人物だということを、ジェレミーは理解してくれていたのですね。いや、世界のどこにも「単純な人物」なんていなくて、どんな人物を演じるにしても、彼は理解しようとしたのでしょうね。

お父様への感情、私も気になります。
ジェレミー演じるホームズが、兄のマイクロフトに兄弟のお父さんのことを口にする場面がありますね。そのお父さんが、グラナダ版では退役軍人という設定なのですね。あの時ホームズはとても複雑な顔をしていましたが、ジェレミー自身のお父さんへの気持ちはどうだったんでしょうか。あたたかい気持ちであればと願いたいです。

>そして自らがホームズの時も、ワトスンがこのように思っているということを、こころの奥底で知っているホームズを演じていたのだろう、と感じました。

ほんとうに!態度はそっけなくても、いつもどこかに感じられるワトスンへの信頼は、こうやってジェレミーの中に息づいたのですね。

りえさんのブログに先ほどお邪魔して来ました。

ジェレミーの演じるワトスン見たかったので写真だけでも感動しました(;∀;)
永久保存ものです!!
この場をお借りして、りえさんありがとうございました。

お父様との関係は以前なにかで読んだような気がします。
「役者になるなら、ハギンズ姓は使うな」と言われてブレットに改名したんですよね。

酷い事を言う父親だと思いましたが、今思えば、
「役者になる覚悟を持て!」と言う父親なりの息子への励ましだったのかな?

「最期までジェレミーが父親に負の感情を抱いていたとは、私は思いません。」私もRMさんと同感です。

そうなんです!

ナツミさん、こんばんは。

>なんと、この言葉、後々複数の「ホームズ」映像化作品に受け継がれているではありませんか…!

この言葉にBBCの「シャーロック」でのジョンを思い出しました。私はまだ第一シーズンしか観ていないので、特に "A Study in Pink" での、ピストルで狙いをつけるジョンの顔が脳裏に浮かびました。(急いで白状しますが、しばらく観ていないので、実際にピストルをかまえたジョンのアップが作品中にあったか自信がないのです。まあ、私の脳内再生の結果ということで。)

>ワトスンが単なるホームズの引き立て役ではなく、彼自身とても複雑な人物だということを、ジェレミーは理解してくれていたのですね。

はい、そう思います!そして、ナツミさんも書いてくださったように、そういうワトスンへのホームズの気持ちを、ジェレミーはちゃんと私たちにみせてくれましたね。

>ジェレミー自身のお父さんへの気持ちはどうだったんでしょうか。あたたかい気持ちであればと願いたいです。

このあと、トビィさんへのお返事にも書きますが、私はジェレミーは、特に大人になって俳優という仕事で生きていけるようになった後、お父様への気持ちの上での距離は近くなって、性格はずいぶん違っても、強い敬愛の気持ちを持っていたと思っています。David Stuart Daviesの本はとてもよい本ですが、このことに関しては彼の考えは違うと思います!

素敵でしょう!

トビィさん、こんばんは。

>ジェレミーの演じるワトスン見たかったので写真だけでも感動しました(;∀;)

ジェレミーのワトスン、ホームズの時とは雰囲気が違って、でもとても素敵ですよね!私もあの写真は大好きです。まさに、誰にでも好かれて友情にあついワトスンですよね。

>「役者になるなら、ハギンズ姓は使うな」と言われてブレットに改名したんですよね。

はい、そうなんです。でもハムレットを演じた時は、ハギンズにもどすようにジェレミーにすすめたし、お芝居のことも何もわからないのに、ジェレミーをみるためだけに劇場に足を運び、長いドライブで疲れはてて劇の間は眠っていて、芝居がはねたらジェレミーの顔をみて「よくやった!」とほめるような、そんなお父さんだったのですよね。

>酷い事を言う父親だと思いましたが、今思えば、
「役者になる覚悟を持て!」と言う父親なりの息子への励ましだったのかな?

トビィさんと似たようなことを思っていました。ナツミさんへのコメントにも書きましたが、私はジェレミーは父親のことをとても尊敬していて、好きだったと思うのです。それは、似た性質を持っていて何でもわかりあえる父として、ではなく、子供が大人になり自立していく過程で、その前に立ちふさがる壁となり、その子が乗り越えて自分の足で歩き出したら、その子の今いる世界がもうよくわからないのに、自立と成功を手放しで喜ぶ父として。子供の頃は距離をおいていたとしても、大人と大人として気持ちの上でどんどん近づいていったのではないかと思っています。

何より、インタビューでジェレミーが父を語る声をきけば、「太ったガマガエル」に父への複雑な気持ちを投影していた、などというDavid Stuart Daviesの説は間違っていると思えるのです。

>私もRMさんと同感です。

ああ、ありがとうございます!

ホームズのためなら

RMさん、みなさん、こんばんは。

ジェレミーのおかげで、ワトスンという人物像が私の中で、よりくっきりとしてきたように思います。
そうですよね、ワトスンは(お金がない中で医者になるためということもあったとは言え)軍医にまでなった人なのですから、普段は温厚で紳士ですけれど、心の中には熱く燃えるものを持っていたでしょうね。
そして、グラナダのシリーズでは、そんなワトスンの気持ちをホームズがちゃんとわかっているということが、ジェレミーの視線ひとつで、ジェレミーが口の端をちょっとあげただけで、見ている私たちにもはっきりとわかりましたね。

私も、ジェレミーはお父さまをとても好きだったと思います。
長じてからはもちろん、子どもの頃でさえも、お父さまは社会的な役割の顔のみで子どもに接するような人ではありませんでした。
ですから、時に考え方の違いなどから対立したとしても、ジェレミーは、一人の人間としてのお父さまから、不器用な愛情を充分に感じていたでしょうし、お父さまをとても好きだったと思います。

>でもハムレットを演じた時は、ハギンズにもどすようにジェレミーにすすめたし、お芝居のことも何もわからないのに、ジェレミーをみるためだけに劇場に足を運び、長いドライブで疲れはてて劇の間は眠っていて、芝居がはねたらジェレミーの顔をみて「よくやった!」とほめるような、そんなお父さんだったのですよ ね。

そうそう、これです! 私もこれを読んで、思いました。
お父さまにとって他のことは、まあいいんですよね(笑)
お芝居も芸能界のこともよく分からないけど、ジェレミーがいるなら、そこへ行く、ジェレミーがやるなら、それを見る。
ジェレミーは苦笑していたかもしれませんが(笑)、とても嬉しかったと思います。

わあ、うれしいです。

たまごさん、こんばんは。

>普段は温厚で紳士ですけれど、心の中には熱く燃えるものを持っていたでしょうね。

そうですね、いざとなったらホームズのためには何でもする、というところが、心の内に感じられますね。私は原作はきちんと読んでいないので、グラナダ・シリーズの二人のワトスンからの印象ですが。

>そして、グラナダのシリーズでは、そんなワトスンの気持ちをホームズがちゃんとわかっているということが、ジェレミーの視線ひとつで、ジェレミーが口の端をちょっとあげただけで、見ている私たちにもはっきりとわかりましたね。

そうなんですよね!あの目、あの視線、あのちょっとした表情の変化で、何ですべてを語れるのでしょうね!だから他に誰が画面に出ていようが、ジェレミーに目が釘付けになるのですよね。

>私も、ジェレミーはお父さまをとても好きだったと思います。

わあ、賛同してくださって、うれしいです。

>ジェレミーは、一人の人間としてのお父さまから、不器用な愛情を充分に感じていたでしょうし、お父さまをとても好きだったと思います。

>お芝居も芸能界のこともよく分からないけど、ジェレミーがいるなら、そこへ行く、ジェレミーがやるなら、それを見る。

はい、ジェレミーはすごくうれしかったと思います!

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