Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

リハーサル中の写真や、「ウィステリア荘」のリハーサルをしているところだとジェレミーが話している映像をご紹介したので、連想で、「悪魔の足」の脚本家がThe Black Box Clubのウェブサイトに書いている、リハーサルに同席した時のことを含む文章を思い出しました。

その前にThe Black Box Clubのウェブサイトについてお話します。以前ジェレミーのインタビューが載っているということで書いたことがあります。その時は登録しないと読めなかったのですが、今は読めます。ただし、このサイトはわたしの環境では文字と背景と写真の配置がひどく乱れてみえて、内容がとても読みづらいので、テキストエディタにコピーをして読んでいます。皆様の環境ではどうでしょうか。インタビューのページのアドレスと、私の以前の記事の場所を書きます。

インタビューのページその1
http://www.theblackboxclub.com/#/jeremy-brett/4549127010
インタビューのページその2
http://www.theblackboxclub.com/#/jeremy-brett-2/4549886437

このインタビューを紹介した記事
The Secret of Sherlock Holmes上演中のインタビュー
こちらの記事でもちょっとだけ触れています。
俳優であることの重圧;インタビュー記事 When the lights went out (1990) より

さて、本題にもどって、今日ご紹介するのはこちらです。
http://www.theblackboxclub.com/#/gary-hopkins/4549170665

The Black Box Clubのメンバーの一人であるGary Hopkinsが書いた文章です。彼は26歳の時に、原作をもとに脚本をつくる練習のために、「悪魔の足」の脚本を書いて、グラナダテレビに自ら送ります。彼にはエージェント(代理人)もまだいなかったのですが、もしも代理人がいてこのことを相談したら、そんな馬鹿なことで自分をわずらわせるなと言っただろう、と書いています。頼まれてもいない脚本を、20代の若者が世評の高いテレビシリーズのために書いてテレビ局に送るというのは、普通に考えれば常識はずれでしょう。ところが驚いたことに、その脚本が使われることになったのです。そしてリハーサルの初日を迎えます。

1987年の10月だったそうです。前回の映像の中で、ジェレミーが「銀星号事件」と「悪魔の足」の収録をすでに終えたと言っていたように、この「悪魔の足」のリハーサルは、前回ご紹介したビデオの収録時の1988年はじめより、数ヶ月前のことになります。

リハーサルの最初の日の朝、主要キャストとクルーが脚本の読み合わせのために集まりました。まずは台詞がどんなふうか、全体の時間がどのくらいになるかを皆が把握するためのものでした。

リハーサルのことを書いている部分を引用します。


Jeremy BrettとEdward Hardwickeに会ってとても興奮しました。長年にわたって二人の仕事と作品が大好きで、楽しんできましたから。ジェレミーは、私がこの場でとても歓迎されていると感じさせてくれましたし、他のキャストもそうでした。そしてジェレミーは私に、読み合わせのあいだ自分の隣に座るように、と言ってくれました。(中略)

ジェレミーは自分の台詞を、かなり淡々と、劇的にではなく読んでいました。一方(Mortimer Tregennisを演じた)Damien Thomasはコーンウォール方言の練習に熱心だったので、演技をしているのが、より感じられました。俳優たちがどんなふうに自分の台詞を読んでいても、自分にあったやりかたであるならば、監督のKen Hannamは満足していました。実際の仕事は昼食の後はじまり、それから10日間続く予定でした。そしてその後の2週間の撮影は、すべて冬のさなかのコーンウォールでおこなわれることになっていました。

It was a great thrill to meet Jeremy Brett and Edward Hardwicke, both of whom I'd admired for their work in many other productions over the years. Jeremy made me feel very welcome, as did the rest of the cast, and invited me to sit beside him during the read-through. [...]

While Jeremy gave a fairly monotone, undramatic reading of his dialogue, I remember that Damien Thomas was keen to practice a Cornish accent and therefore delivered more of a performance. The director, Ken Hannam, was happy for his actors to read their parts in whatever ways they felt most comfortable. The real work would begin with rehearsals that were scheduled to start after lunch and go on for the next ten days. And then there would be a two-week film shoot based entirely on location in Cornwall in the middle of winter.



こんなふうにリハーサルがはじまったのですね。ジェレミーが最初はむしろ淡々と台詞を読んでいた、というのが興味深かったです。はじめからホームズを演じていてはとてもやっていけないし、その必要もなくて、多分リハーサルの最初の頃はかなりの部分はまだ、あの「ホームズ」ではないんだろうなあ、と想像しました。まず最初に読み合わせ、それから10日間のリハーサルの間に、監督の演出のアイディアが俳優やスタッフに示され、議論され時に修正されて、ジェレミーの中でホームズの具体的な動き、こころの動きと体の動きができあがって、台詞が体にしみこんでいくのでしょうね。

この文章の内容も含めて Gary Hopkinsが語っている映像が、YouTubeにあります。
Return to Sherlock Holmes: The Case of the Youngest Pen Part One
Return to Sherlock Holmes: The Case of the Youngest Pen - Part Two

Part 2の6分12秒くらいから、リハーサルの初日のことが語られます。9分3秒には、この前ご紹介した、眼鏡をかけている写真が使われています。そして11分11秒くらいから、俳優達のスケジュールはかなりタイトで、リハーサルが終わる頃には台詞を覚えて、撮影が始まる時には俳優達も含めてすべての準備ができている必要があった、と言っています。ホームズの台詞の多さを考えると、あらためて驚いてしまいます。


さて、「悪魔の足」にはホームズがコカインを捨てるシーンがありますが、これはジェレミー自身の発案で、そうするにあたっては、ホームズ アーサー・コナン・ドイル(訂正しました。わはは。)の娘である Jean Conan Doyleに許可をもらった、といろいろなインタビューで言っていましたね。このシーンもリハーサル中に提案されたのでしょうか、それともその前の段階で脚本に改変が加えられたのでしょうか。

ジェレミーは彼女と親しくて、連絡を絶やさなかったようです。一緒の写真をご存知の方も多いでしょう。クリックで大きくなります。
http://jeremybrett.info/behind/imgpages/image027.html
028.jpg

どの記事だったでしょうか、"Scarlet Street"のジェレミー追悼号だったかもしれませんが、Jean Conan Doyleは、ホームズを演じた俳優の中で自分に連絡をとっていろいろと話をきいたのは、ジェレミーだけだ、と言っていました。ジェレミーが彼女のことをとても大切に思っていることが、いろいろな時に感じられました。

それから「悪魔の足」の幻覚のシーンで使われている、ホームズの子供の頃と思われる写真、あれはジェレミー自身の子供の頃の写真を使ったと書かれている本があるのですが、皆様はどう思われますか?私はその記述を読むまでは、考えたこともなかったのです。あまりに古めかしい洋服ですし。でも今では(7割9分くらいの感じで)そうかもしれないと思っています。このこともいつか記事にしたいと思っています。もしあの写真がそうだったら、このリハーサル中のジェレミーからの提案だったのかもしれません。

RM
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コメント

ジェレミーとホームズ

「The Black Box Club」、登録しなくても読めるようになったんですね!
でも、私の環境からも見えにくかったです!すてきなデザインなんですけれど。

「悪魔の足」の裏話、興味深いことがいっぱいでした。ジェレミー、ドイルの娘さんとこんなに仲が良かったのですね!

ドイルの遺族には、言葉は悪いのですが、ホームズの二次創作に「厳しく口を出す、煩い人」というイメージがあったのです。でも、彼らの気持ちを考えたら、ホームズはサー・アーサーの分身、いわば家族のようなものですから、家族の良識を逸脱して捩じ曲げられた姿が一人歩きするのは耐えられないですよね。
そして、ジェレミーはジーンさんの気持ちをわかっていたのでしょうね。彼は本当に、ホームズを「人間」として愛していて、だからこそその「家族」にも敬意を持って接したのでしょうね。

「悪魔の足」の脚本が採用される経緯(ドラマのようなお話!)や、リハーサルの様子も面白かったです。
ここ数年またホームズ・ブームが来ていて、アレンジの効いたものが話題になっています。グラナダ版は「正統派」としてそれらと対比されることが多いですが、それを創るのがいかに大きな「冒険」であったことか!何度でも、拍手を贈りたくなってしまいます。

RMさん、みなさんこんにちは。

「コーンウォール」ジェレミーがいつかそこに住みたいと言ってた場所ですよね。
テレビで見ると殺風景な場所ですが、何かそこにインスピレーションを感じたのかな?
私も自分の目でいつか見てみたいです。

>読み合わせのあいだ自分の隣に座るように、と言ってくれました。
場慣れしていない人間には、こういう気遣いって嬉しいものですよね。
いかにもジェレミーらしい優しさです。

>ジェレミーは自分の台詞を、かなり淡々と、劇的にではなく読んでいました。
まぁ!!そうだったのですね。
確かに四六時中ホームズのテンションでいるのは疲れますものね(^^;

Jean Conan Doyleさんとの画像いいですね。
低いところにいて(座って?)彼女の顔を見つめているジェレミーが紳士に見えます。

私もナツミさんと同じで>ドイルの遺族には、言葉は悪いのですが、ホームズの二次創作に「厳しく口を出す、煩い人」というイメージがあったのです。
パロディ本でも酷いホームズ本とかありますから、そういうのを目にするとやはり、大事な作品が粗末に扱われるのは腹立たしいですもんね。

ジェレミーの普段というのが、どういった人なのか知らないのでこういったお話が聞けるのは貴重です。

ホームズをとても大切に思っていたんだと思います

ナツミさん、
なるほど、シャーロッキアンにとっては、二次創作をするのも読むのも、ホームズにまつわる大きな楽しみの一つでしょうから、そういうイメージもあるのでしょうね。想像できます。

>そして、ジェレミーはジーンさんの気持ちをわかっていたのでしょうね。彼は本当に、ホームズを「人間」として愛していて、だからこそその「家族」にも敬意を持って接したのでしょうね。

はい、ジェレミーはホームズをとても大切に思っていて、だからこそ、何年演じてもホームズをつかまえることはできない、それが面白い、と言ったり、時には「ホームズは嫌いだ」と言ったりしたのだと思います。そしてドイルに対する責任も強く感じていて、ドイルの娘さんの気持ちを傷つけるような作品にはしたくないと思っていたのでしょう。

>グラナダ版は「正統派」としてそれらと対比されることが多いですが、それを創るのがいかに大きな「冒険」であったことか!

なるほど、「正当派」を創ることが「冒険」だったということ、考えていませんでした!そういえば"The Bending The Willow"に、今の私たちには想像もできないが、製作の初期には、このシリーズが失敗する場合のことを考えながらつくっていた、という意味の記述がありました。初期もそうですがその後も、原作に忠実であろうとすることも、その中で映像化のための改変を加えることも、みんな「冒険」だったのですね。

トビィさん

>「コーンウォール」ジェレミーがいつかそこに住みたいと言ってた場所ですよね。

そうだったのですね、それは知りませんでした。どこに書いてあったか覚えていらしたら、今度教えて下さるとうれしいです。

>場慣れしていない人間には、こういう気遣いって嬉しいものですよね。
いかにもジェレミーらしい優しさです。

同感です!わあ、ジェレミーらしいなあ、って思いました。

そして、ジェレミーとジーンさんのあの写真、私も好きです。ジェレミーは紳士だし、それからあの写真では、女性を敬うナイト(騎士)っていう感じもありますよね。

>ジェレミーの普段というのが、どういった人なのか知らないのでこういったお話が聞けるのは貴重です。

そう言っていただいて、うれしいです!私も脚本家のかたのこの文章を読んで、リハーサルの初日の様子や、若い脚本家にジェレミーがどんなふうに接したかがわかって、とても興味深くうれしかったのです。でも言ってみれば、とてもちいさな逸話ですよね。こういう逸話を一緒に喜んでくださるかたがいらっしゃるのは、本当に幸せなことです。

RMさん、連続でお邪魔します。

ごめんなさい!私の勘違いでした。
ジェレミーがいつから住みたいと思っていたのは、コンウォール地区ではなかったみたいです。

『シャーロック・ホームズの世界』マーティン・ファイドー(北原尚彦 訳)ラジオとテレビP129からです。
シリーズのロケ撮影で西ペンウィズの荒野にあるカーン・ガルヴァンに行った際などは、その地の不気味かつロマンチックな情景、グレード・カルヴァンの巨岩によって引き立つ荒涼さ、ディン・ドン・ウエストやグリーンバロウの鉱山の山、ナイン・メイドンズの歯が欠けたストーン・サークル、南北にひろがる海にいたく感銘を受けた。そこで彼は即座に、いつの日かその土地に家を持とう、と決心したのである。
この本でもジェレミーは周囲の物事に対し、実に感受性が強かった。
と記載されています。

ジェレミーと一緒なら、どんな場所でも毎日が楽しいですよね!

トビィさん、調べてくださって、そして長く引用して下さって、どうもありがとうございます!この本は読んだことがありませんでした。近くの図書館にありましたので、さっそく手配しました。

検索したら、ペンウィズ半島って、コンウォール州の西に位置しているみたいですね。だからトビィさんが 最初に書いてくださったのが正しかったのではないでしょうか。とにかく読むのが楽しみです。アマゾンをみたら、著者はホームズの専門家ではないそうですね。その分、シャーロッキアンではない私にもとっつきやすいかもしれません。

>ジェレミーと一緒なら、どんな場所でも毎日が楽しいですよね!

本当ですね!「ジェレミーは周囲の物事に対し、実に感受性が強かった」なんて、おおいにうなずけます。うれしいご紹介をありがとうございました!

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 RM

Author: RM
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私の記事へのリンクはどうぞご自由になさって下さい。
和訳には間違いがあるかもしれません。最近は必ず英語原文を併記・またはアドレスを書いて読めるようにしていますので、どうぞそちらも参考になさってください。

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