Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

前回の記事で話題にした、グラナダ・チームのスタッフたちとジェレミーの関係をプロデューサーのMichael Cox(マイケル・コックス)が書いた、"A Study in Celluloid"の文章をご紹介しましょう。前半部分は以前、「話をきくこと」という記事で引用しました。その部分をまず、もう一度載せます。


しかし撮影班はジェレミーのためなら、何でもしただろう。理由は二つある。ジェレミーは仕事を何よりも大切にして全力をつくしていたから。そして彼は全員と、仕事をこえた関係を築いていたから。撮影の初日に全員の名前を覚えただけではなく、誰の車が車上荒らしにあったか、誰の赤ちゃんが具合が悪いかも知っていた。ひとの気をひくためにお座なりにたずねたのでなく、本当に心から知りたいと思っていたのだ。

But a film crew would do anything for Jeremy and there were two reasons for this. First, because he was absolutely professional in his work and second, because he knew them all personally. Not only had he memorised everyone's name by the end of the first day's shooting but he also knew whose car had been broken into or whose baby was ill. And this was not a trick to curry favour; he genuinely wanted to know.



今日のところは、このすぐ後からです。

ジェレミーは、スタッフの見事な仕事をものすごく賞賛した。カメラの微妙な動き、ロケ地の選択の素晴らしさ、あるいは照明の具合が美しいというような、どんなことでも。ライヘンバッハの滝で彼とEric Porterのかわりをつとめた、恐れを知らぬ二人のスタントマンにシャンペンを準備したのも、ジェレミーだった。そして男性にも女性にも、何か特別なことがあれば、いつもお祝いに花を贈っていた。「だってね、だれでもみんな花が好きなんだよ。」そう信じていた。一方で番組の制作者を批判することもあったが、それも同じところから来ていた。ジェレミーと私とで意見がくい違うと、よく私のことを「悪魔の代弁者」(わざと反対意見を述べる人)と呼んだ。つまり私が本心から彼の考えとは違う方を選ぶなんて、そんなことがある訳がない、という意味だ。しかし最後は二人のうちのどちらかが、相手方に十分な理由があることや、そうする必要性があるのを認めることになった。

He was lavish in his praise of a job well done, whether It was a tricky camera movement, a beautifully chosen location or a striking piece of lighting. It was Jeremy who bought the champagne for those two intrepid stunt men who stood in for him and Eric Porter at the Reichenbach Falls. And he would send flowers, both to men and to women, to celebrate any special occasion. 'After all,' he reasoned, 'everybody likes flowers.' By the same token he could be critical of those who were running the show. If he and I had an argument, he would often call me 'the devil's advocate', implying that I could not possibly believe in a position other than his own, but one or other of us would bow to reason or necessity in the end.



前半部分、ジェレミーがスタッフの仕事ぶりによく気がついて賞賛した具体的な例として、カメラワーク・ロケ地選び・照明が出てきました。前回の話に出た録音がここで出てこなかったのが残念ですが、でも録音は作品をつくる上でとても大きな位置をしめる部分ですから、ジェレミーがその技術に注目して、その出来栄えを大切にしなかった訳がありませんね。

後半部分の、マイケルとジェレミーの議論の様子も興味深いですね。「悪魔の代弁者」と呼んだというのは、「当然君も僕と同じ意見だよね、議論を深めるために反対意見を仮に言ってみただけだよね」ということのようです。
参考:devil's advocateを演じてみよう(http://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/tips/tips010/basics/discussion/column2.html

そうではなくて、本当に違う意見を持っていたとなると議論がさらに白熱し、自説を主張しあったのでしょう。

原作に忠実なホームズを作ろうという、グラナダシリーズの方向を決めて実行にうつした、その中心人物がこの二人ですから、言わば盟友と言えます。だからこその、遠慮のない議論だったのでしょうね。そして、原作そのままにとは言っても、映像化するにあたっての制約もあり、改変することで作品としてより魅力的になることもあったのですから、最後はどちらかが納得して自説を撤回したのでしょう。この二人の議論、特にジェレミーがどんな調子だったか想像するとおもしろいです。

ジェレミーはマイケル以外の人、脚本家や監督が原作から離れようとした時には多分もっとやわらかな言い方をしたはずです。David Burkeが書いていたと思うのですが、ジェレミーはいつも原作から離れそうだったら何とか戻そうとしたが、それは学校の校長のような態度ではなく、ユーモアと魅力いっぱいの様子だったのがとてもよかった、と。(今ざっと調べたのですが見当たらなくて、その部分を正しく引用できないのですが。)

だからなおさら、ジェレミーがマイケルに対して真っ向勝負に出ていたというのが最初意外で、そして逆に彼ら二人の信頼関係を感じました。

ジェレミーと裏方のクルーとの関係、プロデューサーのマイケルとの関係がそれぞれに、グラナダシリーズの素晴らしさの源の、大切な要素だったのでしょう。

RM
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コメント

今朝はお寒うございますね。

RMさん、みなさん、こんにちは。

>撮影班はジェレミーのためなら、何でもしただろう。<

ジェレミーが病気を押して撮影に乗り込んだときに、スタッフが連携して病院に入院させた。というのを知って何でもするスタッフだな、と感心していたのですが、ジェレミーもスタッフのためなら何でもしましたよね。

スタッフ全員の名前や何から何まで知っているなんてジェレミーの記憶力は凄いですね!!

ブルーレイで画像が鮮明になって、(ジェレミーだけ見てしまいがちですが)背後のセットやエキストラの方々に撮影がいかに細部にこだわっていたかわかります。

>ジェレミーと裏方のクルーとの関係、プロデューサーのマイケルとの関係がそれぞれに、グラナダシリーズの素晴らしさの源の、大切な要素だったのでしょう。<
あれ以上のホームズはもう完成しませんよね。

本当に!

トビィさん、こんばんは。トビィさんのお住まいのところも寒かったのですね。私も今朝は久しぶりに、掛け布団を使いました。

>ジェレミーが病気を押して撮影に乗り込んだときに、スタッフが連携して病院に入院させた。というのを知って

そうだったのですね、それは知りませんでした。ジェレミーとスタッフは、お互いがお互いのことを、とても大切に思っていたのだろうと感じます。

そう、ブルーレイになってアップでない時のジェレミーの表情もよくわかるようになって、私もジェレミーだけを目で追ってしまいがちなのですが(うふふ)、その他の部分も楽しめますよね。調度品とか新聞とか洋服とか、細かいところにも気を使ったのでしょうね。

>あれ以上のホームズはもう完成しませんよね。

ヴィクトリア朝を舞台にした、原作に忠実なホームズとしては、いつまでも残ると信じています!

おはようございます

たまたま昨日読んでいた本のお話だったのでついご報告したくなりました
NHKシャーロックホームズ という本が手元にありますが スタッフがジェレミーを入院させたということも書かれていました が当時はジェレミーの神経症の悪化でスタッフによる強制入院と 扇情的に書き立てられ彼もスタッフもとても傷ついたとありました
持ち上げたり突き落としたり マスコミの常ではありますが 残念なことですね

この本のはじめにジェレミーの前書きがあって ホームズへの想いがジェレミーらしい表現で書かれているのですが 追伸に 「今は薬のためにスリムでないことをお詫びします 医者によれば遠からずまたスリムな体でお会いできるとのことです」とあります

こんなお詫びをするジェレミーの人柄に胸うたれます

正典すべての映像化が叶わず惜しむ気持ちはありますが あらためてジェレミーやスタッフの方々の想いにふれて ありがとう 言いたくなりました   

よっしいさん、こんばんは。「NHKシャーロックホームズ」に載っていたのですね。この本はもうずいぶん読み返していなくて、いろいろと記憶から抜け落ちているのでした。今度また読んでみますね。教えてくださってありがとうございました。"Bending the Willow"にはEdward Hardwickeの言葉として、グラナダがジェレミーを、より気持ちよく過ごせそうな病院に転院させたとありますが、そもそもの入院にもグラナダテレビが関わっていたということが書かれているのですね。

そしてお詫びの件、ジェレミーは、みていてこころが痛む時があるくらい、まっすぐですね。

>あらためてジェレミーやスタッフの方々の想いにふれて ありがとう 言いたくなりました   

本当にそうです。ありがとう、という言葉が一番ふさわしいと、私もつよく思います。

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 RM

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