Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

ジェレミーがこの世を去ったのは、1995年の今日でした。

David Stuart DaviesがSherlock Holmes GazetteのIssue 13に書いた追悼文、
"A tribute and a fond farewell to Jeremy of the Brett" の中の文章を今日はご紹介します。

引用部分の最初にある「衝撃的な知らせ」とは、亡くなる年の2月に心筋症と診断されたことをさします。そしてタイトルと一番最後にある "Jeremy of the Brett" という表現は、この追悼文の最初のところで、ジェレミーの留守番電話にメッセージを残すと折り返しかかってくる電話はいつも、明るい声での "'Hello, Davld, it's Jeremy of the Brett here" という言葉から始まったという思い出に由来します。この "Jeremy of the Brett" というニュアンスが私には正確にはわからないのですが、ユーモアを含んだ、少しおどけた感じがあるのだろうと想像しています。一番最後にこの言葉が出てくるところの訳文では、残念ですがその感じは出せませんでした。

亡くなる年の6月に撮影がおこなわれたと書かれている映画「モル・フランダース」全般については、こちらのサイトに日本語の説明があります。
http://movie.walkerplus.com/mv30616/
Jeremy Brett Informationでの説明はこのページで、写真が1枚掲載されています。
http://jeremybrett.info/film_moll.html
DVDは北米版が発売されています。
http://www.amazon.com/dp/B000053VB3
ジェレミーが亡くなった後に、映画監督がこの撮影の時のジェレミーについて語った言葉が含まれる記事を、The Los Angeles Timesのサイトで読むことができます。
http://articles.latimes.com/1996-06-09/entertainment/ca-13116_1_sherlock-holmes
この記事や映画について、いつかまたあらためてご紹介する機会があるかもしれません。

その後にふれられているRadio 4での放送については以前ご紹介しましたが、躁鬱病(双極性障害)への理解と、この病にかかっている人、そうかもしれない人への助言と、自助グループを作るための寄付を呼びかけたラジオ放送でした。下の3つの記事の内の3番目に載せたプレーヤーで、ジェレミーのこの時の声をきくことができます。Jeremy Brett Informationにあるファイルから、雑音のみの右側の音をとりのぞいたものです。これが放送されたのが、亡くなる9日前の9月3日でした。収録は8月23日と書かれたイギリスのラジオ番組データベースがあったのですが、そのサイトは今はなくなってしまいました。この日付が正しいかどうかわかりませんが、8月末というのは多分あっているでしょう。
The Week's Good Cause (1995) その1
The Week's Good Cause (1995) その2
The Week's Good Cause (1995) その3

それでは、Sherlock Holmes GazetteのIssue 13からの引用です。


衝撃的な知らせにひき続くその年、JBは驚くべき勇気をもって、自分の人生の状況がかわってしまったことに、まっすぐに向き合った。6月にアイルランドで、映画「モル・フランダース」の撮影に1日だけ参加した。Radio 4では自分の躁鬱病(双極性障害)について話して、聴く人のこころを動かした。ディズニーの「ターザン」で声を演じる話もあったが、それは1996年はじめに収録されるはずのものだった。

そしてその間、話を向けられるとホームズのことをいつも喜んで話した。シリーズを共につくったチームを大切に思っていて、会話の中に彼らの名前がよく出てきた。Esther Dean(衣装担当)、Patric Gowers (音楽担当)、David Round (小道具担当)などなど。そしていつも "darling" や "dear" などの愛情を示す言葉が添えられていた。二人のワトスンへの愛情もまた、同じように明らかだった。Edward Hardwickeはずっとジェレミーと連絡をとりあっていて、フランスに来て自分の家族と一緒に過ごさないかと誘っていたが、悲しいことに健康状態が許さず、その誘いを受けることはかなわなかった。

ジェレミー・ブレットは9月12日の火曜日、眠りのうちに安らかにこの世を去った。

「シャーロック・ホームズの冒険」をわくわくしながら肘掛け椅子で観た人も、実際に彼と会うことができた人も、どちらであろうと私たちはみな、本当に幸せにも、ジェレミー・ブレットと知り合えたのだ。

In the year that followed this devastating news JB exhibited tremendous courage in facing up to his changed fortunes. He did one day's filming in Ireland on the film Moll Flanders in June and spoke movingly about his manic depression on Radio 4. He was likely to have been one of the voices in the proposed Disney cartoon Tarzan which is due to be recorded early in 1996.

And all the time he was always happy to talk about Sherlock Holmes. He loved the team that worked on the programme and their names would pepper his conversation coupled with terms of endearment: Esther Dean (costumes), Patric Gowers (music) David Round (prop buyer) etc. His love of his two Watsons was equally apparent. Edward Hardwicke was constantly in touch with JB, even inviting him to spend some time with his family in France, but sadly he was not well enough to take up the offer.

Jeremy Brett died peacefully in his sleep on Tuesday, September 12th [ …].

[ …] Whether we Just sat in our armchairs and thrilled to The Adventures of Sherlock Holmes or were luckier in having met the man in person - we are all privileged to have known Jeremy of the Brett.



これをご紹介した理由の一つは、ジェレミーがホームズの撮影を離れた後も、グラナダの仲間たちを大切にしていたことが書かれていたので、前回前々回からの続きの記事にふさわしいと思ったことですが、それ以外にも今日にふさわしいところ、こころ動かされるところがたくさんありました。

ジェレミーが最後の年にもホームズのことを楽しく話したというのも、うれしいですね。今さらこの場所では言うまでもないことですが、ジェレミーはホームズに魅せられ、彼を演じたことを誇りに思って喜んでいたのですね。もちろんホームズは本当に難しい役だったでしょうし、演じていた間にジェレミーの人生には辛い出来事が起こりました。ホームズは好きではない、もう演じない、と言っていた時期も何度かありました。人によってはジェレミーのことを、ホームズに苦しめられ、ホームズと同化しようとして、ついには病に倒れた不運で悲劇的な俳優だと思っているようです。でも私はそのようには見ません。ホームズの本質をとらえて映像の中でいのちを与え、自らも永遠に忘れられることのない存在となった、偉大な俳優です。ここに来て下さるかたも、同じ思いでしょう。

そしてもうひとつ、人間としてもとても魅力的でとてもおもしろくて、会ったこともないのにその姿と声と存在からだけで、こころゆさぶられる人が少なからずいる、という不思議なひとです。ただ私は、ジェレミーだけが特別な人間だ、と言うつもりはありません。素晴らしい人はいろいろな世界にたくさんいますから。またなんの欠点もない天使のようなひとだ、などと言うつもりもありません。ジェレミーの人生を美化して、夢のようなおとぎ話を語っているという印象を持たれないようにと望んでいます。

でも私の場合4年前に、言わば出会い頭にぶつかったのがジェレミーだったことが、とても不思議でありがたい偶然でした。私の生と死を見る目、世界と自分を見る目がかわりました。ジェレミーと出会わなくても、たとえば樹々の間を渡る風によっても、感じ得たことかもしれません。それでも、不思議でありがたいなあ、という気持ちはずっとかわりません。

そして世の中には、いろいろな形でジェレミーと出会った人、気がついたらぶつかっていた人は、国を問わず年齢を問わず、たくさんいるのですね。本当に幸せにも私たちはジェレミーと出会うことができましたね。だから、ここに来てくださるかたと一緒に「ありがとう」の気持ちを、ジェレミーがこの世を去ったこの日に、あらためてこころをこめておくりたいと思います。

RM
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コメント

RMさん、みなさん、こんにちは。

いつもジェレミーを思う時、笑顔ですよね。

作中でもよく笑っていましたが、一番ジェレミーらしい笑顔だなと思うのが、公園の芝生(?)で紺色のシャツに胸元には赤いバラ、そして赤い靴下(笑)で左手を挙げて笑っているジェレミーです。

ジェレミーを知らなかった時は「ホームズに憑りつかれた俳優」ぐらいの感覚でしたが、今はそれが間違いだったとわかります。
あんなに楽しんで撮影していたのですから。
病気でも何でも知らない、というのは怖いですね。

ジェレミーやここで会える皆さんに、私もこころをこめて「ありがとう」送ります。

いつもありがとうございます!

RMさん、本当に感謝!感謝!!
>「シャーロック・ホームズの冒険」をわくわくしながら肘掛け椅子で観た人も、実際に彼と会うことができた人も、どちらであろうと私たちはみな、本当に幸せにも、ジェレミー・ブレットと知り合えたのだ。
← 本当にそうです!
  そしてRMさんのこのブログのお陰で益々幸せです!!!
  本当にいつもありがとうございます!
  他に言葉がありません。
  これからも楽しみにしています。
  ジェレミーの19回目の命日、心より哀悼の意を表します
  合掌

トビィさん、こんにちは。

>いつもジェレミーを思う時、笑顔ですよね。

本当にそうですね!ジェレミーが私たちに贈ってくれるのは、笑顔ですね。

>あんなに楽しんで撮影していたのですから。

私もそう思います。そしてエドワードが言うように、共演者やスタッフにとっても、幸せな現場だったのですよね。

>一番ジェレミーらしい笑顔だなと思うのが、公園の芝生(?)で紺色のシャツに胸元には赤いバラ、そして赤い靴下(笑)で左手を挙げて笑っているジェレミーです。

わかります!満面の笑みで、風を受けた髪が光に透けて光っていて、左手がきれいに上に伸びているのですよね。

それで思い出したことがあります。りえさんと一緒に奈良でお会いした、The Secret of Sherlock Holmes上演時に楽屋でジェレミーを撮影した写真家のMarcus Tylorが、トビィさんが描写されたその写真をネットで見たからと言って、後日メールで送って下さいました。劇場からすぐのレストランで行われたパーティの時とジェレミーは同じ服で、同じように赤いバラを胸元にさしている、多分同じ頃に撮られたのだろう、Amazing.と書いていました。パーティもあの服ですか!と思いました。ジェレミーらしいですね!

みんみんさん、わーい!

こんにちは!メッセージをありがとうございます。ジェレミーと出会えたおかげで、私とみんみんさんのご縁もはじまって、お知り合いになれましたね!

読んでくださるかたのおかげで、このブログを続けています。みんみんさんも、どうもありがとうございます!

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 RM

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