Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

一つ前の記事で、

でももちろんジェレミーは、若者が新しい冒険に飛び込むことを、見境なく勧めていた訳ではないし、ましてや誰に対しても俳優になるように言っていた訳ではないはずです。若者がたちどまってよく考えること、自分が本当にやりたいことがわかる時がくるまで待つことの重要性もわかっていたのです。

と書きました。ジェレミーが、若者がいったんたちどまって時を待つことの意味について話しているのは、以前こちらの記事で抄訳をご紹介した、1989年のインタビューです。(慣用句や熟語と思われる部分が多くて、私なりの意訳になっています。間違っていないことを願っていますが、疑問がおありでしたらどうぞ原文もご参照ください。)今回は一部引用して、その部分について全訳しています。


"The Wonderful Mystery of Sherlock Holmes"
Scrawl 2002
Source: http://homepage.virgin.net/questing.beast/scrawl_pdfs1.htm
(このページの "download as PDF (98kb)" をクリックするとPDFファイルが開きます。)

つばめのように空中の一点でホバリングする時間は今の時代はゆるされないのです。ただ忙しく、忙しく、忙しくしていなければならない。たちどまってものごとをよく考える時間はなくて、すぐに何か行動をおこさなければならない。何をしたらいいかよくわからない人が、そのうちにお金がなくなると恐ろしくなって、お金のためだけの生活を送るようになるなんて、人生はそういうものではありません。

皆はすぐに「これからどうするの?」と尋ねます。何か落書きでもしながら、次にどうしたらいいかが自然にわかるまで待つ、ということはできないのです。「何か意見があるわけではなくて、ただ興味がもてないだけなんです」と言うのは難しい。

義理の息子のケイレブが「今やっていることに興味がもてないんだ」と、大学で3つ目の専攻分野を勉強している時に言ったのですが、その時こう尋ねてしまいました。「じゃあ、これからどうするつもり?」彼は言いました。「時が来て僕のやりたいことが僕の運命と交差したら、何をしたいかがわかるだろうね。」ケイレブはやりたいことをみつけたのですよ!彼のやりかたが正しいのです。でも、このせわしない世の中では、それはなかなか許されていません。

[...] “...There's no time to be like a swallow and hover in the air, you've got to be busy, busy, busy! No time just to stop and contemplate, you've got to get your act together. A lot of people don't know what to do about it, and when the chips are down, it's really terrible that people are daunted into living for money. It's not the right god.

“People ask, 'what are you going to do?' too soon. You can't just take a pencil and a sheet of paper and doodle until it comes to you... To say, 'I have nothing to put in its place, but I just don't want to do this,' – so difficult

“When my stepson, Caleb, said, 'I don't want to do this,' while studying for his third degree, I was guilty of asking, 'Well what are you going to do?' and he said, 'When my ambition crosses my destiny, then I'll know'. God bless him, he's got it! He's right. But that's not allowed to happen enough in the push-and-shove. [...]



ジェレミーがこういうことを話しているインタビューは、珍しいかもしれません。でも活字になっていないだけで、社会のこと、若者の生き方のことについても、きちんと自分の言葉で語れる人だったのですね。もっと聞いてみたかったと思います。でもある意味ではジェレミーは、人生にどのように向き合うか、を自分の生き方でみせてくれた人ですね。

現在さらに世界のスピードは上がって、たちどまることがさらに許されなくなってしまっています。若者には、いえ若者だけでなく誰でも、迷って失敗してやり直して、あるいは外からは無為に過ごしているようにみえても、時を待っている、という時間と空間が必要なのだと思います。私自身がそういう時を何度か過ごしてきました。それは先がまったくみえない時間でしたが、今思えばそういう時間が許されたのは、何と幸運だったのでしょう。

でもその頃のただ迷っていた私をみて、誰が「幸せな人」だと思うでしょう。そこからさらに連想が広がります。

ジェレミーの病の10年間を知った時の衝撃、あんなにも輝いている人に対してさえ、運命とはそんなに残酷なものなのか。でも今私は信じています。ジェレミーは、自分は本当に幸せだったと思いながら、この世を去ったことを。

苦しみを経験しながらも、幸せでいられるということ、不安や迷いや憂鬱の中にいてさえ、幸せでいられるということ、それがこの4年間で私が学んだことです。そしてほぼ毎日忘れるので、ほぼ毎日学びつつあることです。そしてその出発点は、ジェレミーといわば偶然にぶつかったことでした。

RM
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コメント

RMさん、こんにちは。

「時を待つことの意味」ずっと考えていました。

私も毎日が同じ事の繰り返しと時間に追われています。
働くって何だろう?と考えますが、私の場合はやっぱり「お金」が一番になってしまいます。
お給料を貰ったら、欲しかったDVDを買おうとか、美味しい物を食べに行こうとかそんな程度ですが・・・。

ジェレミーの言うお金だけの人生なんてつまらないと思うのです。
何か目標があれば良いのですが、ただお金のためだけに働くのは虚しいですね。

>ジェレミーの病の10年間を知った時の衝撃、

ジェレミーの人生を活字だけで読むと、なんて悲惨な人だったのだろう?!
と勘違いしてしまいますが、(私も勘違いしていたので)
けれどそんな事はなくて、RMさんや、みなさんのコメントなど読んで、
61歳で亡くなるまでジェレミーらしい、幸せで楽しい人生を過ごしたのだと感じます。
長く生きた方が勝ちとかではなく、いかに自分らしく生きるか。
今の時代難しいですけど。

トビィさん、こんにちは。仕事とお金とやりたいこと(あるいはやりたいことがないこと)の関係って、難しいですね。トビィさんのコメントを拝見して、あらためて考えていました。

お金は大切だし、お金がないとまず生活ができないし、お金のために働くのは当然ですよね。でもできればそこに「恐怖」という要素が少ない方がいいなあと思います。「恐怖」というのは、仕事を得られない、または失う恐怖、そのためにお金がなくなる恐怖、仕事の場で辛い目に会うことへの恐怖、すべてを含めてです。ジェレミーの言葉の「そのうちにお金がなくなると恐ろしくなって、お金のためだけの生活を送るようになるなんて、人生はそういうものではありません」というところをどう解釈するか(そもそも私の訳があっているか)という問題がありますが、私は、恐れだけに駆り立てられて、仕事も含めて、何か活動をおこすこと、それは何ともったいないことだろう、というニュアンスで受け取りました。もしも恐れしかなかったら、あるいはそれがあまり大きいようだったら、場合によっては立ち止まり、その場を退いて、時を待つこともあってよいし、それができる世の中であってほしいと思います。でもそれが今はさらに難しくなっているようです。

これからも折にふれて考えてみたいと思います。

>ジェレミーの人生を活字だけで読むと、なんて悲惨な人だったのだろう?!
と勘違いしてしまいますが、(私も勘違いしていたので)

私も「壮絶な苦闘のなかで」という、宝島ムックの初期(今確認したら、4巻まで)の解説文にまず衝撃を受けました。言葉というのは難しいですね。もちろん苦しみも大きかった、でも決してそれだけではなかった、ジェレミー自身にもジェレミーのまわりにも、たくさんの喜びと笑顔もあった、そのことをだんだんとわかるようになりました。

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 RM

Author: RM
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