Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

前回の記事で、家族全員が会員になっているアーチェリークラブに、ジェレミーも21歳の時に入った、と言っているところを引用しました。そこから脱線して、ジェレミーが俳優として舞台にたつまでの4年間会うことがなかったお父様との和解について、書いてみようと思います。

The Central School of Speech and Dramaに在籍したのは、おそらく1951年から1954年(「The Central School of Speech and Dramaの頃」)ですから卒業が20歳。卒業後にマンチェスターのライブラリー・シアターで俳優としての第一歩を踏み出しています。YouTubeにあるBBCのThe Wogan Interview(http://www.youtube.com/watch?v=eqp_9KBlC3o)では、私の聞き取りが正しければですが、こんなことを話しています。もちろん逐語訳ではなく、だいぶん短く、ところどころをつなげています。話上手のジェレミーは、実に魅力的に話しています。1分30秒くらいからです。

「マンチェスターのライブラリー・シアターで兵士を演じることになって、父の軍人用ブーツを借りたいと母に電話でいいました。その後母から電話で、父が自分を観に来るようだときいてびっくりしてこわくなりました。公演の時に父のブーツをはいて舞台に歩き出すと、客席に父がいるのにすぐに気づきました。でも私だと気づいていませんでした。せりふはなかったのですが、歩くにつれて靴が鳴って、その音をきいて父は自分の靴に気がついたんです(笑い)。その後会いにきてくれると思ったのですが、父はあらわれませんでした。がっかりしてその頃住んでいたフラットに帰ると、父がシャンペンと2個のグラスを用意して段のところにすわっていました。『よくやった!("Absolute triumph!")』こんなふうに4年ののちに会いに来てくれたのですから、とてもこころが寛かったと思います。」

この後お父様は、舞台にたつジェレミーを観に車で劇場に来て、時に車での移動に疲れて客席でぐっすり眠りこんで、幕が降りると、劇はひどかったな、でもおまえはすばらしかった、よくやった!とほめたそうです(BBCラジオの1989年のインタビュー)。ジェレミーのお父様のことは何回か記事にしましたが、そこでも書いたように、演劇のことはまったく理解していなかったのですね。でも、俳優を志すことで一度は自分を当惑させた末の息子を、こんなふうにちょっと不器用に、ほほえましいやりかたで愛していたんですね。

俳優になることに父が反対した理由としてジェレミーは、俳優という職業のことをよく知らないうえに、アッパー・ミドル・クラスの人間にふさわしいと思わなかったこと、言語障害のある自分が俳優を志すのは無茶だと思っていたこと、そして4人の息子の誰も軍人にならなかったのにがっかりしたこと、という三つの理由のうちのいくつかを、いろいろなインタビューで話していますが、こういうお父様の反応をみると、二つ目の理由が相当大きかったのではないかと思います。舞台にたつジェレミーを観に来て、演劇のことも演じることもあいかわらずよくわからないけれども、職業人・社会人としての一歩を踏み出したようにみえる末の息子に安心したのでしょう。ジェレミーはこの後、アーチェリー・クラブにも入会して、舞台の合間に昔と同じように家族で楽しい時をすごしたのでしょう。

お父様の写真は、前回アドレスを書いたサイトにあります。写真への直接のリンクはこちらです。上のインタビューでジェレミーが、父の様子のことを "magnificent"と言っていましたが、たしかに堂々とした姿です。他のインタビューでは「胸板の厚い」という形容も使われていました(「両親のこと(その2); 1973年のTV Timesのインタビューより」)。

ジェレミーのお父様については、何回か記事にしたことがあります。
父と子
ワトスンをどのように演じたか その2;軍人の血
父のこと; 1973年のTV Timesのインタビューより

上で触れたThe Wogan InterviewのYouTubeでの映像は、残念ながら画面も音も荒いのですが、このインタビューの一部が使われている、2007年に放送された"A Study in Sherlock"ではとてもきれいです(「Time Shift (BBC) より"A Study in Sherlock" (2007)」)。以前この映像からスクリーンショットをとりました(「ジェレミーの笑顔」)。とっても素敵なので、そのうちの4枚を再度載せます。
Wogan_1.jpgWogan_3.jpg
Wogan_7.jpgWogan_8.jpg


もう一つ上で触れたBBCラジオの1989年のインタビューについては、ファイルの場所も含めて、以前「『戦争と平和』の撮影の頃;オードリー・ヘップバーンの伝記とBBCのインタビュー番組より」で触れました。

なお、お父様との和解のきっかけになった、ジェレミーが兵士を演じた劇はJeremy Brett Informationで演目と役柄を確認する限りでは、"Marching Song"ではないかと推測します。(http://jeremybrett.info/st_manchester.html

RM
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コメント

YouTubで観ましたが、内容はわからなかったのですが、とても楽しそうに話していますよね。
自信がみなぎるというか、本当に堂々としています。良い笑顔です。

ジェレミーにとってお父様は怖い存在だけど、大好きだったのがわかります。

お父様も自分のブーツを履いて演じている姿がとても嬉しかったのではないでしょうか?

>職業人・社会人としての一歩を踏み出したようにみえる末の息子に安心したのでしょう

もしかしたら、家族の誰よりもジェレミーの事を心配していたのかもしれませんね。

ステージにちょっと飛ぶようなステップで出てくるところ、そして話している時の表情・笑顔、ひとと話すのが好きな感じ、人前でも普段どおりで、かつ堂々としているところ、全部素敵ですよね。いつか、はじめからきれいな画像でみることができたら、と思います。

>ジェレミーにとってお父様は怖い存在だけど、大好きだったのがわかります。

そうなんです!私も絶対そう思うんです。トビィさんはご存知ですけど、ジェレミーがお父様に対してずっと強いわだかまりを持っていたようにとる人もいるのですが、そんなことはないと思います。

>お父様も自分のブーツを履いて演じている姿がとても嬉しかったのではないでしょうか?

そうですね!ジェレミーが、お父様が演劇を何も知らないことを、実に楽しそうに話すように、お父様も、自分のブーツを履いて自分の知らない世界で何かをやっている息子をみて嬉しかったでしょうね!この親子は、お互いに自分とは性格や資質が違うからこその、結びつきをもっていたような気がします。

>もしかしたら、家族の誰よりもジェレミーの事を心配していたのかもしれませんね。

本当ですね!

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 RM

Author: RM
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