Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

BBC FOURのドキュメンタリー番組、Timeshift のSeries 13, Episode 7として、"How to be Sherlock Holmes: The Many Faces of a Master Detective" が12日夜に放送されました。この番組のウェブサイトはこちらです。
http://www.bbc.co.uk/programmes/b03pzsd9

イギリス国内からは(あるいは何らかの特別な手段を持っている人は)、BBCのウェブ上のiPlayerでも観ることができます。あと4日間です。

この回はホームズの映像作品についてのドキュメンタリーですから、もちろんグラナダ・シリーズも取り上げられていますが、1時間番組のうちの5分間ほどだったようです。それだけ映像化されたホームズはたくさんあって、興味深い話題に事欠かないということでしょう。グラナダのファンとしては、5分間では少し残念ですが。


今日ご紹介したいのは、番組では流されずに、このウェブサイトだけで聴ける音声があるということです。

Web exclusive: Peter Wyngarde on double detection (audio)
Peter Wyngarde recalls playing opposite two iconic television Sherlocks – Douglas Wilmer and Jeremy Brett.
http://www.bbc.co.uk/programmes/p01nwbs6

これはこの番組のナレーターをつとめた、Peter Wyngarde(ピーター・ウィンガード)が語っている録音です。彼は「三破風館」でラングデール・パイクを演じました。

(私の聞き取りが正しければですが)最後のところが胸を打つのです。

He [Jeremy] loved him [Holmes] like a father, he loved him like a son, and above all he loved Sherlock Holmes as a man."

ジェレミーは、ホームズのことを父のように愛し、息子のように愛しました。そして何よりも、シャーロック・ホームズを一人のひととして愛したのです。



もちろん私たちは、一言では言い切れないほど、ジェレミーのホームズに対する気持ちは複雑だったことを知っています。"Bending the Willow" には "a love/hate relationship" と書かれていますし、Edward Hardwickeもジェレミーが亡くなった後のインタビューで [He had a] love-hate thing [with Holmes] という表現をしています。(http://news.google.com/newspapers?&id=XHlGAAAAIBAJ&pg=3660,774774

魅力的だと思うところも、嫌いなところもありました。知れば知るほど好きでなくなると言い、もう演じないと言ったこともありました。もちろん、ホームズを演じることは他のどの役よりも難しく、だから面白い、ともよく言っていました。時によっても、気持ちがとても変わりました。

でも、それほどまでにホームズはジェレミーにとって「生きていた」ということでしょう。紙にかいて切り取ったような、ぺらぺらの姿ではなかったのでしょう。近くにいるからこそ、その良いところも嫌なところも見えてしまう。理解しようとするからこそ、自分に受け入れ難いところも見えてしまう。時に魅かれ、時に疎ましく思う、振り払いたくも思う。


ピーター・ウィンガードももちろん俳優として、一つの役を演じ続けることの大変さ、しかもその役がホームズであるということの持つ意味も十分わかっているでしょう。ホームズを演じた10年間の内に、ジェレミーの健康状態が悪化していったのも知っているはずで、彼と共演した時のジェレミーのからだは、かなり弱っていたでしょう。

それでも彼が、ジェレミーはホームズを愛していた、と繰り返して、最後に「ジェレミーはホームズを一人のひととして愛していました」と言ったことに、胸を打たれます。

RM

追記:"as a man"を"he loved" を修飾していると考える、すなわち"as a man"はホームズのことではなく、ジェレミーのこと、という解釈も成り立つのではないかと思ってネットで例文を調べましたが、前者に相当する例が最初の方に出てきました。それと、その前のfatherもsonも(日本語に訳すとどっちともとれるようになりますが)ジェレミーのことではなくホームズのことを指しているはずなので、そこからの流れにより、上記のように解釈しました。もしもそれは違うという方がいらっしゃいましたら、指摘して頂けるとありがたいです。
関連記事

コメント

RMさん、みなさん、こんばんは。

NHKテレビ版シャーロックホームズ本の前書きでジェレミーがホームズについて少しだけ語っていますが、その中で(みなさんご存知だと思いますが)『〜サボイでお茶の約束をしたけど、叶わなかった〜』読んだ時に面白い事を言うなぁ、と思ったのですが、RMさんの仰る通り、ジェレミーはホームズやワトスンを生きた人間として考えていたんですね。
世界一有名な探偵を演じるのは並々ならない努力や苦労があったと思います。
役になりきるだけではなくて、尊敬したり、時には軽蔑したり、ホームズだけではなく、今まで演じた役の全てがジェレミーには生きている人間なんですね。
パイク役のピーターさんピッタリハマり役!本そのままのイメージです。

いつもありがとうございます。

初めてコメントを書きます。
この番組はとても見たかったので(勿論グラナダ版がどんな風にどれだけ紹介されるのか、気になっていたのです)、ご紹介頂いて感謝致します。
それから、最近は新聞雑誌記事、書籍など文字媒体だけでなく、音声も文字起こしして下さって本当にありがたいです。文書なら何とか読めますが、聞き取りが私はできないので…。
丁度、Bending the WillowでThe Secret of Sherlock Holmesの章を読んでいて、love/hate relationshipのくだりが出てきました。ジェレミーのホームズに対する気持ちはやはり複雑なのですね。今までもそのことについて考えていましたが、RMさんのおかげでひとつ考えが深まったような気がします。
ありがとうございます。

トビィさん、こんばんは。

>『〜サボイでお茶の約束をしたけど、叶わなかった〜』読んだ時に面白い事を言うなぁ、と思ったのですが、

私もあれは面白いと思いました。ああいう言い方はジェレミーらしくて、具体的なイメージをともなって気持ちにはたらきかける表現なんですよね。「ジェレミー語」という言葉を使っていた人もフォーラムにいたように。

>今まで演じた役の全てがジェレミーには生きている人間なんですね。

そうですね!ジェレミーはどんな役を演じる時でも生身の人間としての存在や感情を大切にしていましたね。それがたとえドラキュラであっても。

そういえば、「以前の別の仕事を参考にしたり、自分の想像力を使ったりして、ホームズにいのちをふきこむ必要がありました」って言っていましたね!(http://upwardjb.blog112.fc2.com/blog-entry-377.html)やっぱりホームズは生きていたんですね。

>パイク役のピーターさんピッタリハマり役!本そのままのイメージです。

そうだったのですね。私はジェレミーのことをこう言ってくれたことで、ピーター・ウィンガードに感謝の気持ちでいっぱいです。

たけさん、初めまして。

コメントを残して下さってとてもうれしいです。(メールアドレスは書いてくださらなくてもコメントを投稿できますので、どうぞ次回からはそのようになさって下さいね。今回のアドレスは削除しています。)

記事を喜んでくださって、ありがとうございます。聴き取りは、全然自信がないのです。(何しろ、英語の歌詞なのにポーランド語だと思って英語への翻訳を頼んだ、という前歴があります。http://upwardjb.blog112.fc2.com/blog-entry-204.html)それで、後で確かめて頂けるように、読んでいる方もネット上で音声を聴けるものを選んでいます。

そういえば、Youtubeにあるジェレミーのインタビュー番組のいくつかは、ファンの手でトランスクリプトが作られているのをご存知でしょうか。以前、葉月さんのブログでご紹介したら、一つについて訳をして下さったのがあります。ご参考までに。(http://atbakerstreet.jugem.jp/?eid=38)葉月さんのブログは更新が停まって久しいのですが、本当に大好きなブログです。ちなみにこのインタビューでは、ジェレミーがちょっとハイだったのではないかと思って時に少しだけ心配にもなりますが、エドワードがそばに控えていてくれるので、安心していられます。

番組の話にもどりますと、この番組については、BBCのSherlockのファンのほうが、話題にしているかもしれませんね。私はそちらは読んでいないのですが。私の得た情報では、グラナダ版についてはドラマからのクリップの他に、Mark GatissとBenedict Cumberbatch、俳優のTim Pigott-Smithのコメント、そしてWogan Interviewからのクリップ(これは "A Study in Sherlock" の中で使われたWogan Interviewのクリップのさらに一部です。 http://upwardjb.blog112.fc2.com/blog-entry-255.html参照)が流れたようです。ですからこの5分間については、新しい映像は特になかったようで、BBCにはまだDVDになっていないジェレミーの映像がたくさんあることを考えるとちょっと残念ですが、それらはホームズ関係ではないので、仕方がないことかもしれません。Benedictが何を言ったかはSherlockのファンが流してくれるかもしれませんね。 

>丁度、Bending the WillowでThe Secret of Sherlock Holmesの章を読んでいて、love/hate relationshipのくだりが出てきました。ジェレミーのホームズに対する気持ちはやはり複雑なのですね。

ちょうど読んでいらしたのですね。おっしゃるとおり、複雑だと思います。時によっても気持ちが変わったようですし。私も、これからも映像を通して、そしてインタビューなどの記事を通して、ジェレミーの気持ちを感じてみたいと思っています。そしてその旅路の果てには「ジェレミーはシャーロック・ホームズを一人のひととして愛した」という言葉にまたたどりつくのかもしれません。単純な明るい愛情ではなく、揺れ動きながらも底の底での理解でつながっている愛情として。

よければどうぞ、またいらして下さいませ。

ご親切にありがとうございます。

How to be Sherlock Holmesの内容の詳しいご紹介、ジェレミーのインタビューを書き起こして下さっている方がいらっしゃることなど、ご親切に教えていただきありがとうございます。
Bending the Willowにある、ジェレミーが想像したホームズの少年ー青年時代は、暗いものではありますが、父親をもと軍人としたり、ホームズは多分歌うことや聖歌隊が好きだろうと言っていたり、ジェレミーのことかしら?と思うことがあって興味深かったです。もし本当に、ジェレミーがホームズのことを心から嫌っていたらそんな風には想像しないと思うのです。ホームズに対しては複雑な思いを抱きつつも、自分との共通点を探しながら(無意識にかもしれませんが)愛そうとしていたのかな、という気がしています。

なかなか時間がないので、コメントさせて頂くことはあまりないと思いますが、いつもこちらは読ませていただいています。
これからもよろしくお願いいたします。

聖歌隊にはびっくり

たけさん、こんにちは。
私も同感です。ジェレミーはホームズの少年・青年時代をとても具体的に考えていて、その中に自分の経験も入れているのですよね。少年ホームズが聖歌隊で歌ったということ、イートン校に行ったということの中にも、自分の記憶も入れているのでしょう。

>ホームズに対しては複雑な思いを抱きつつも、自分との共通点を探しながら(無意識にかもしれませんが)愛そうとしていたのかな、という気がしています。

ホームズと自分は全然違う、と言いながら、それでもホームズの中に自分を探したのでしょうね。

いつも読んで下さっているのですね。ありがとうございます。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://upwardjb.blog112.fc2.com/tb.php/518-8edb94bd

 RM

Author: RM
コメントは承認後に公開されます。古い記事へのコメントも大歓迎です。2010年8月7日に始めました。
私の記事へのリンクはどうぞご自由になさって下さい。
和訳には間違いがあるかもしれません。最近は必ず英語原文を併記・またはアドレスを書いて読めるようにしていますので、どうぞそちらも参考になさってください。

全ての記事を表示する

04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08 

QR