Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

台風は皆様のところではどのようでしょうか?当地は今のところ静かです。


「悪魔の足」に関して、以前「『悪魔の足』のリハーサル初日:The Black Box Clubのウェブサイトより」の記事の最後にこんなふうに書きました。

それから「悪魔の足」の幻覚のシーンで使われている、ホームズの子供の頃と思われる写真、あれはジェレミー自身の子供の頃の写真を使ったと書かれている本があるのですが、皆様はどう思われますか?私はその記述を読むまでは、考えたこともなかったのです。あまりに古めかしい洋服ですし。でも今では(7割9分くらいの感じで)そうかもしれないと思っています。

これについて、よい機会ですので書いてみます。

グラナダシリーズのプロデューサーであるMichael Cox(マイケル・コックス)の本"A Study in Celluloid"に、以下のような記述がありました。ここでGaryとあるのは、上にあげた以前の記事でもご紹介した、「悪魔の足」の脚本を書いたGary Hopkins(ゲリー・ホプキンズ)です。


Gary(ゲリー)の脚本で特に私がひきつけられたのは、ホームズの悪夢の具体的なイメージを示していることだった。そのすべてが、このエピソードの間ずっとホームズがとりつかれていた死のイメージを表現していて、カイン、オイディプス、ネブカドネザル、そしてホームズ自身の宿敵モリアーティの禍々しい姿が画面に次々と映し出される。この一連の映像に特に興味がある読者は、"It's a Print!: Detective Fiction from Page to Screen"という本を読むとよいかもしれない。これはWilliam ReynoldsとElizabeth Trembleyが編集した本(Bowling Green state University Popular Press、1994年発行)で、その中でDr Trembley とKen Hannamは、この悪夢のシーンを詳細に分析している。

[O]ne of the aspects of Gary's script which particularly appealed to me was that he offered specific images for the nightmare which Holmes undergoes. They are all images of death which has obsessed Holmes throughout the episode—Cain, Oedipus, Nebuchadnezzar and his own nemesis, Moriarty—orchestrated by the director into a disturbing series of images. Readers who are particularly interested in this sequence might like to track down a book called It's a Print!: Detective Fiction from Page to Screen, edited by William Reynolds and Elizabeth Trembley (Bowling Green state University Popular Press 1994), in which Dr Trembley and Ken Hannam analyse the nightmare in depth.



それで、この本に興味を持ってGoogle Booksで探してみたら、ありました。(二つ目のアドレスは"Jeremy Brett"でこの本の中を検索した結果のページです。)
http://books.google.com/books?id=d7m8gSLmjEQC&
http://books.google.co.jp/books?id=d7m8gSLmjEQC&q=jeremy+brett

ホームズの幻覚についての分析は24ページから27ページにあって、27ページに脚注の(3)として、その時のホームズの動き、音楽や効果音、ホームズの幻覚の内容がコマを追うようにして示されています。その中にこういう一節があり、私には意外なことが書かれていました。


ホームズがこちらに走ってくるのが二つの直立した岩の間から再びみえて、そして楕円形の鏡がそのイメージの手前、スクリーンの真ん中方向へ浮かぶようにあらわれる。それからホームズがクローズアップとなり、その背後は嵐のような空で、恐怖感が高まっていく。荒れ狂う波が少しの間あらわれ消えるのと同時に鏡がまたみえてくる。鏡にはジェレミー・ブレットの子供の頃の写真がうつる。だからおそらくそれはホームズの子供の頃を示しているのだ。

Again we see Holmes running toward us between the two uprights; then an oval mirror floats in front of that image to the center of the screen. A close-up of Holmes, with stormy sky in background, growing alarmed. Another glimpse of the waves appears, and fades out as the mirror fades in. The mirror itself then becomes a photograph of actor Jeremy Brett as a child, so presumably of Holmes as a child.



この最後のところで驚きました。あの写真はジェレミーの写真なのでしょうか?あまりに古めかしい洋服、雰囲気ですし、髪型もやはり古い感じがします。だから当時の誰かの写真をどこからか持ってきたものだと私は思い込んでいました。

Devils foot

それで、もう3年も前になりますがファンフォーラムでこれを尋ねたことがあります。皆さんは、これがジェレミーの写真だと思いますか?と。

それに対して、これはジェレミーのお父様の写真ではないか、ビクトリア朝風の写真だから、と答えてくれた人がいました。別の人が、これはジェレミーだと思うと言い、さらに、耳がジェレミーだ、と言う人がいました。

耳!確かにジェレミーの耳は特徴的なんですよね。前からみると、ちょっと耳の上がとがってみえます。そう言われてみればその通り、この子の耳はジェレミーの耳の特徴を備えています。でも、この洋服はあまりに古いものにみえませんか?

そうしたら、これは子供用のNorfolk jacketで、エドワード朝時代にはすでにすたれているスタイルだ、ジェレミーの写真をホームズの子供時代に相当する時期の写真に重ね合わせたものだと前から思っている、という人がいました。なるほど、切り貼りしたという可能性は考えていませんでした!たしかに顔の向きとからだの傾きが、ちょっと不自然かもしれません。

これをきいて、一気に7割9分、いえ今回これを書くために見直した後は9割3分くらいまで確信を持てるようになりました。この髪と洋服を手で隠せば、うん、確かにジェレミーにみえます。皆様はどうですか?もしかしたら以前から疑問の余地なく、これはジェレミーだと感じていたかたもいらっしゃるかもしれませんね。

マイケル・コックスが、幻覚シーンに興味がある人はこの本を読むようにと勧めているのですから、彼はもちろんこの本を読んだのでしょう。そしてこのシーンを含めてグラナダホームズを論じた章("Holmes Is Where the Heart Is: The Achievement of Granada Television's Sherlock Holmes Films")を書いたElizabeth Trembleyは直接マイケル・コックスに取材したようで、出典・引用元のリストの中にマイケルへの2回の個人的インタビューをあげています。また彼女は雑誌The Armchair Detective1992年第1号ではジェレミー、エドワード、マイケルの三人にインタビューしていますから、もしかしたらジェレミーにもこのシーンについて尋ねたかもしれません。この写真がジェレミーの写真だという彼女の記述の信頼性は、そう低いとは思えません。

写真を並べてみますね。2枚目は「四つの署名」からです。どうでしょう?

Devils foot2
Sign.jpg

RM
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コメント

深層心理に死の象徴

こんばんは ご無沙汰しています。
この『悪魔の足』に出てくる 恐怖や悪のモチーフについて、
ナツミさんのところで、言及させてもらったので、またまた
お邪魔します。
ジェレミーさんの事 というよりは、取り上げられた理由に
ついて、なので ちょっとトピずれになりそうで、記事UPの
ときは、ROMしてしまったのですが…。

> ずっとホームズがとりつかれていた死のイメージを表現
…と、ある中で、子供の頃が浮かぶというのは、どういう
意味なのかな〜と、視聴時に気になったのです。
こちらでの解説を拝見して、あれは やはり不吉なものを
羅列していたのだな、というのは 解ったのですが、己の
幼少時が それに該当する…というのは、いったいどんな
含みがあるのでしょう。
怖いことがあった?
それとも「あの頃は幸せだったのに…」という こと?
制作陣とジェレミーさんは、どんな背景を 考えていたので
しょうね−。

billylabさん、いらっしゃいませ!

こんばんは。ナツミさんのところで、私のブログも話題にして下さっているのを拝見していました。お話に加わるところまでいけなかったのですが、喜んでいましたよ!(ナツミさんも、こんばんは、そしてありがとうございます!)

>己の
>幼少時が それに該当する…というのは、いったいどんな
>含みがあるのでしょう。
>怖いことがあった?
>それとも「あの頃は幸せだったのに…」という こと?

「あの頃は幸せだったのに…」ではなかったと思います。少なくともジェレミーは、ホームズは幸せな子供時代をおくったとは、決して思っていませんでしたから。例えばDavid Stuart Daviesにジェレミーが語った説明に、こんなものがあります。抄訳です。

あの頃の子供がよくそうされていたように、静かにさせるために幼児用のベッドにきつく、くくりつけられていたと思う。寒々とした家で、ホームズは21歳になるまで父親を知らなかっただろう。父を見たことはあっても、話したことはなかったはずだ。母親にキスされたことはあっても、それは彼女がディナーへいく途中で、それで全部だった。子供の頃から孤独な、ヴィクトリア朝の典型的な育ちかただ。彼は母親の方により似ていたとおもう。彼女は頭がよかった、でももちろんその頃の女性はものを言うことがほとんど許されていなかった。

まだ続くのですが、こんな感じです("Bending the Willow"より)。

製作陣がどう考えていたかはわかりませんが、ジェレミーが自分の写真を持ってきた時は(あれがジェレミーの写真だとして、ですが)、明るい無邪気な笑顔のものはさけたのではないでしょうか。

こんなふうに思いましたが、どうでしょう。

子どものころ

こんばんは!RMさん、その節は勝手にリンクさせていただいてしまって失礼しました。

グラナダ版及びジェレミーの見解は、RMさんにお話いただければ嬉しいなあ、と思っていたので、billylabさんへのお返事を私も興味深く読ませていただきました。ありがとうございました!

著名なシャーロッキアンであるベアリング・グールドの「伝記」では、ホームズ家はさまざまな国を旅して暮らす、ちょっと変わった一家となっていました。幼少時代のホームズについてどんな説をとるかによって、ホームズの演じ方も変わってきますよね。
「金縁の鼻眼鏡」でのマイクロフトとのやりとりを観た時も感じましたが、ジェレミーの中では、かなりはっきりとホームズの子ども時代や、お父さんとの関係のイメージができていたんですね。そして、それは温かい思い出ではなかったのですね。

今更ですが、この記事のおかげで、私もあの写真はかなりの確率でジェレミー本人!と思うようになりました!耳もですが、透明感のある瞳の雰囲気も同じですよね。

ナツミさんも、いらっしゃいませ!

こんばんは!およびたてしてしまいました。いえいえ、リンク、うれしかったんですよ!遊びに行こうと思いつつ、ちょっとマゴマゴしているあいだに、お二人とも来てくださいました!

>著名なシャーロッキアンであるベアリング・グールドの「伝記」では、ホームズ家はさまざまな国を旅して暮らす、ちょっと変わった一家となっていました。

そうだったんですか!それはまた、興味深いイメージですね。読んでみたいなあ。

ベアリング・グールドの「伝記」、思い起こせば今年のお正月にサンプル版で冒頭を少し読んで楽しんで、それっきりになっていました。ああ、宝の山は1年たってもほとんど同じ高さでそびえています!

>ジェレミーの中では、かなりはっきりとホームズの子ども時代や、お父さんとの関係のイメージができていたんですね。そして、それは温かい思い出ではなかったのですね。

そうですね。ジェレミーにとってホームズは、悲しみや暗さをその内に持つ人物だったのですね。そしていつものように、詳細にその人物像を思い描いていたのですね。一つにはジェレミーは役者として、複雑な人間を演じることを望んでいたということもあるでしょうし、ジェレミー自身がとても複雑な人だったということもあるでしょう。

あ、「ジェレミーはとても複雑な人だった」と書いたそばから、「ひとはみな複雑だ」という言葉が自分の内からわいてきました。えへへ、こんなこと言い出すと何も書けなくなりますね。

>今更ですが、この記事のおかげで、私もあの写真はかなりの確率でジェレミー本人!と思うようになりました!耳もですが、透明感のある瞳の雰囲気も同じですよね。

わーい!あの写真については他の方がどう思われるか、知りたかったんですよ!なるほど、瞳もそうですね。

悪魔の足というより悪魔のような教育?

RMさん、ナツミさん、ありがとうございます。
この作品における ホームズの深層心理シーンへ込めた背景、
少し 近づけました。(^^)

ナツミさんに教えて頂いた、『ブナ屋敷』の台詞からうかがえる
ホームズ幼年期へのシャーロキアンの方々の見解や、
RMさんにご指南いただいた David Stuart Daviesさんの
コメントから察するに、
このシーンに出てくるものは、総じて暗鬱とした記憶なのですね。

> 明るい無邪気な笑顔のものはさけた
たしかに (一般的に)子供らしいと言われるような表情では
ないですねー。
そのためか 逆にジェレミーさんらしい特徴が 際だって
いるようです。ナツミさんのおっしゃるように、澄んだ瞳とか。
まっすぐな目力とか。
(自分は別人の可能性もあるとは、微塵も疑っていなかったので、
 まさか そんな意見もあったとは…驚きました。(^^;)
 リアルタイムの視聴ではないせいかも、ですが)

>> ジェレミーの中では、かなりはっきりとホームズの子ども時代や、
>> お父さんとの関係のイメージができていたんですね。
>> そして、それは温かい思い出ではなかったのですね。
それを思うと、おたくである筈のモファット、ゲイティス両氏が
別の説を取ったのは、かなり 意外というか、イレギュラーな
ことだったンですね。

…というより、自分は
> 静かにさせるために幼児用のベッドにきつく、くくりつけられていた
> 寒々とした家で、ホームズは21歳になるまで父親と<<中略>>
> (まともに)話したことはなかったはず
これらのことに、ビックリしました。
もちろん 日本も家督制度が根付いていた頃は 父親絶対主義では
ありましたが。
しかし ベッドにくくりつける…というのは、英国人のシニカル
すぎる表現なのか、文字通りのことなのか…。(00;)
そりゃあ 幼少時代が陰惨な思い出になりそうです。

いらっしゃいませ!

billylabさん、またお運びくださって、ありがとうございます!

>そのためか 逆にジェレミーさんらしい特徴が 際だって
いるようです。ナツミさんのおっしゃるように、澄んだ瞳とか。
まっすぐな目力とか。
(自分は別人の可能性もあるとは、微塵も疑っていなかったので、
 まさか そんな意見もあったとは…驚きました。(^^;)
 リアルタイムの視聴ではないせいかも、ですが)

わあ、そうだったんですね!うれしいなあ、やっぱりジェレミーなんですね!私はあの記述をみつけるまでは、全然そう思っていなかったんですよ。そんな手間をかけて、ジェレミー自身の子供の頃の写真を使う可能性なんて、想像していなかったんです。そしてあの写真の中に、大人になったジェレミーと共通するところも、その頃は特に感じなかったのです。

>それを思うと、おたくである筈のモファット、ゲイティス両氏が
別の説を取ったのは、かなり 意外というか、イレギュラーな
ことだったンですね。

暗い子供時代というのはジェレミーが持っていたイメージなので、一般のシャーロッキアンにはいろいろな見方があるのでしょうね。

>しかし ベッドにくくりつける…というのは、英国人のシニカル
すぎる表現なのか、文字通りのことなのか…。(00;)

うーん、そもそも私の訳が適当かどうかわからないです。原文はこうです。
"He was tied very tight as a child in the cot as they used to in those days to keep them quiet."

訳した時には比喩的表現でなく文字どおりととったのですが、私が間違っているかもしれません。

>そりゃあ 幼少時代が陰惨な思い出になりそうです。

そうですね。比喩的な表現だったとしても。

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