Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

ここのところ、「悪魔の足」に関する記事をいくつか書きました。思い出すことをもう一つだけ書こうと思います。

あの毒物の実験の後での、レオン・スターンデール博士とホームズの対決場面は印象深いものでしたね。博士がいきりたって机を倒してホームズに襲いかかろうとした「動」に対して、ホームズが指輪をすっと出して、静かな、でも力のある声で語りかけ、博士が指輪を見て、さらにホームズの目をみて、一瞬悲しげな笑みを浮かべるところ。二人の向こう側には、ちゃんとワトスンがひかえていました。

そのレオン・スターンデールを演じたDenis Quilley(デニス・クイリー)が、雑誌 Scarlet Street のジェレミー追悼号に文章を寄せていますので、その後半の段落を引用します。

なおこの号には、グラナダシリーズでジェレミーと共演した何人もの俳優を含む多くの人の言葉が載せられていて、このブログでも何度か紹介しています。
"This is your life" の撮影の時
ホームズがハドスン夫人に花をささげる場面;Rosalie Williamsのインタビュー(1996)より
Anna Calder-Marshallのジェレミーを偲ぶ言葉(1996)より
Edward Hardwickeのジェレミーを語る言葉;Scarlet Street (1996) より
"A true drama-queen";Nickolas Grace のジェレミーを偲ぶ言葉(1996)より
エレガント、そして「理」の人でもあるジェレミー;Nickolas Grace のジェレミーを偲ぶ言葉(1996)より


私とジェレミーが共演したのは一度だけ、シャーロック・ホームズのテレビシリーズでした。彼は奥さんを亡くした後で、精神的にも肉体的にももろくなっている状態でした。私がとても心うたれたのは、そんな状況の中で仕事を続けただけではなく、肉体面でも感情面でももっとも厳しいプレッシャーにさらされながら、気持ちが沸き立つようなあの素晴らしい演技をしたということです。仕事なんて放り出して、こう言うことだってできたはずです。「もう僕には無理だ。不幸な目にあってしかも病気なんだから、もうできない。」そう言うどころか、彼はその困難な状況を生きることによって、ホームズの演技をさらに深めていったように、私は思います。

The only time we actually worked together was in the Sherlock Holmes TV series. It was in the period after his wife had died and he was in a very fragile mental and physical state. What was very impressive to me was that, despite all this, he managed not merely to soldier on, but to give that extraordinary and electrifying performance of Sherlock Holmes under the most intense physical and emotional pressure. He could easily have packed it in and said, "I can't do this anymore. I'm too unhappy and too ill." Far from doing that, it even, it seems to me, deepened his interpretation of Sherlock Holmes.


Scarlet Street, Vol.21, 1996.


他の追悼文でも思いましたが、ジェレミーの仕事仲間や共演者の言葉ではいつも、人としてのジェレミーの強さと俳優としての卓越した技能とその深さをたたえることが中心になります。当時も今も、ある種の文章が、ジェレミーをまず悲劇の人としてとらえるのとは対照的です。そのような見方よりも、ジェレミーのまわりにいた人たちの目の方が、もちろん好きです。

私は、ジェレミーの人生にはたくさんの困難もあったけれども、まっすぐに生きて、たくさんの幸せを自分にもまわりにも世界にももたらした人だと思います。

一方で、こういうことを書いた後でいつも思うのは、ひとは本質的にみな同じだということです。誰もがそれぞれの困難とそれぞれの幸せを抱いて、生きて死んでいくということ。だから、ジェレミーはある意味では特別ではない。天使のようにあがめるのも、玉座の上にのせてしまうのも偏った見方でしょう。ものすごく、ものすごーく遠くから、でも一人の人としてのジェレミーを垣間見たいと思っています。

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