Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

この写真は見たことがあるかたも多いかもしれません。Getty Imagesにある、舞台"The Secret of Sherlock Holmes"の一場面の写真です。クリックすると、Getty Imagesのページに飛びます。



そして最近eBayに、この同じ場面を撮った別の写真が出品されました。下にスクロールしていくと、写真と当時の説明文(キャプション)があります。(数ヶ月後には削除されると思います)
http://www.ebay.co.uk/itm/390904360827

これもいい写真ですね。二人とも少しずつ違う表情で、Getty Imagesにある写真はリトマス紙の色が変わる前、eBayの写真は変わった後かもしれません。こちらは全身が写っているのも嬉しいです。こういう姿勢だったのですね。そして靴の先にこすれた跡のようなものまでみえて、その場にいるような気持ちになって、ちょっとどきどきします。

以前、やはり同じ場面の、また違う写真がカバーにつかわれている雑誌をご紹介したことがあります。
Sherlock Holmes GazetteのDVD-ROM
こちらは器具が違うようなので、違う劇場での公演の写真かもしれません。(追記:違う劇場ではなく、同じWyndhams Theatreでの写真でした。ArenaPALにあるこの写真のキャプションより。)


さて、この場面に相当するのは、原作とグラナダ版では「海軍条約事件」の冒頭ですね。下は原作からです。

「ワトスン君、君はまたたいへんなときにやって来たもんだね。もしこの紙が青いままだったら、万事それでいいのだが、もし赤く変色したら、人間一人の生命にかかわるんだよ」といって彼は試験管のなかへリトマス紙を浸した。するとたちまち濁った紅いろにその紙は変色したので、「ふむ、やっぱり思ったとおりだ! ワトスン君、すぐすむからね。タバコならそのペルシャぐつのなかにあるよ」(中略)

「なあに、ただの平凡な殺人事件さ。君はもっと面白い事件をもってきたんだろう?君ときたらまったく犯罪の海燕だからな(訳注 海燕が現われると暴風雨がくるといわれる)。どんな事件だい?」(延原謙訳)


"You come at a crisis, Watson," said he. "If this paper remains blue, all is well. If it turns red, it means a man's life." He dipped it into the test-tube and it flushed at once into a dull, dirty crimson. "Hum! I thought as much!" he cried. "I will be at your service in an instant, Watson. You will find tobacco in the Persian slipper." [...]

"A very commonplace little murder," said he. "You've got something better, I fancy. You are the stormy petrel of crime, Watson. What is it?"



Jeremy Paulが脚本を書いた舞台"The Secret of Sherlock Holmes"にもこの場面があり、ホームズの台詞は原作と同じ、でもその後のワトスンの言葉が違います。

ホームズ:君はもっと面白い事件をもってきたんだろう? 君ときたらまったく犯罪の海燕だからな。どんな事件だい?

ワトスン:僕は婚約したよ、ホームズ。メリー・モースタンと。


HOLMES: You've got something 
better, I fancy. You are the stormy petrel of crime, Watson. What is it?



WATSON: I'm engaged to be married, Holmes. To Mary Morstan...



ホームズは表情を変えません。それからワトスンをあたたかく祝福します。でもワトスンが去った後ワトスンの椅子に座り、「ボヘミアの醜聞」のあの台詞を口にします。"I am lost without my Boswell."

この劇はこのように、原作の台詞を自在に使いながら進んでいきます。

この劇の音声の場所と利用にあたっての注意については、以前こちらでご紹介しました。
The Secret of Sherlock Holmesの全幕の音声と、Edwardの言葉

あらためてこうして原作と比べてみると、同じ台詞が違う場所で使われて、ホームズの隠されていた感情を表現するように変わっているのに気づきます。ジェレミーはいくつかのインタビューで、ホームズは「ありがとう」も「助けてくれ」も口にできないと言っていましたが、この劇についてはカナダの新聞でのインタビューでこのように言っています。

「この劇では、ホームズは苦痛の感情を吐き出してしまいたいと望んでいるのです。その並外れた頭脳ゆえに苦しんでぼろぼろになって、『助けてくれ、助けてくれ』と言うのです。」

"In this play, Holmes is longing to vomit his pain. He is saying, 'Help me, help me, help me!' while his genius torments him, takes him apart."


"Actor seeks new clues to the elusive, tormented Holmes"
The Globe and Mail (Canada), August 7, 1989

この劇は、ホームズとしての感情を吐き出せた、豊かな感情表現の力を発揮できたという意味でも、ジェレミーにとって重要な場だったのだと思います。

RM
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コメント

初めて みさせていただきました ありがとうございます 楽しいです またきます

みかりこさん、はじめまして

こんばんは。検索して、ここに来てくださったのでしょうか。楽しんでいただいているというのを知るのが、何よりのよろこびです。どうぞまたいらしてくださいね。

こんにちは

はじめまして
とつぜんの 書き込みにて 失礼します。
ご挨拶は 初めてなのですが、ナツミさんのブログで お名前を
拝見していました。
そして グラナダ版について 書いていらっしゃるんだー、と、
ときどき お邪魔していました。m(__)m
ジェレミー・ブレットさんのみならず、ワトスン先生、
ハドソン夫人ら についても、ご紹介されているので、初めて
知ることが多く、いつも興味深く拝見しています。
ナツミさんのブログでも書かせていただいたので重複しますが、
シャーロック・ホームズさんのサイトへのコメントは控えようと
決めていたので、今まで ご挨拶も差し上げませんでした。
また、ナツミさんの所で拙宅に言及を頂いた時も お返事せずに
失礼しました。
(コメント欄を 長くし過ぎてしまって 恥ずかしかったので。
 しかし まさか シャーロック・ホームズ関係で ああいった
 話題に振れるとは 思っていなかったので 驚きました)

でも やはり このままでおくのは いけないな、と、思い
ご挨拶させていただきますね。
丁度 大好きなワトスン先生とホームズさんの記事でしたし、
このタイミングだー と、思いました。
ジェレミーさんとエドワードさんの役を離れての親交についても
こちらで 教えていただいたように思います。
「じゃあ グラナダ版はどうだったんだろう?」と思うときに
いつも立ち寄らせていただいています。
(ご挨拶と言うより、お礼に上がった と言った方が
 いいです(汗))
これからも 記事を楽しみにしています。

わざわざお運びいただきまして、ありがとうございます!

billylabさん、こんにちは。最近ナツミさんのところでお名前を拝見して、でもその前に、ナツミさんちのコメント欄で思いがけず三原順さんのお話になった時に(ここをご覧の皆様へ。ナツミさんのブログのこちらの記事のコメント欄です。http://sherlock221b.blog.fc2.com/blog-entry-334.html)、「三原順」での検索でbillylabさんのブログをみつけてお邪魔しておりました。ナツミさんちのコメント欄にbillylabさんがいらっしゃった時に、直接ご挨拶をとも思いましたが、私も同じくコメント欄が長くなりすぎるのをおそれて、またの機会にと思っておりました。こちらこそ失礼いたしました。

>しかし まさか シャーロック・ホームズ関係で ああいった
 話題に振れるとは 思っていなかったので 驚きました

うふふ、私も驚きました。しかもあそこまで次から次に、はみだしっ子をご存知でお好きな方が「私もです!」と手をあげてくださるとは!

billylabさんは今でも、三原作品の復刊運動にかかわった方々、特に、笹生さんとも連絡がとれる場所にいらっしゃるのですね。私は1998年の原画展のときにはじめてお会いしたかたの何人かと、今でも少しのつながりを持たせていただいていますが、長い年月のうちに、三原順さんが好きということを通じてのつながりというよりは、昔お会いして、しばらくネットで語り合った人たち、という感じになっています。それでも、何人かが昨年の原画展にも行ったことなどをきいて、やはり原点ははみだしっ子だとこころのなかで再確認しました。私はそんなですが、十数年前に中心的な役割を果たした、笹生さんをはじめいろいろなかたが、三原作品に関して今も努力をしてくださっているのですね。それを教えてくださって、ありがとうございました。

こちらの記事も読んでくださっているとのこと、うれしいです。

>丁度 大好きなワトスン先生とホームズさんの記事でしたし、

お、ワトスン先生が先に来るということは、ナツミさんと同じようにワトソニアンでしょうか。

>「じゃあ グラナダ版はどうだったんだろう?」と思うときに
いつも立ち寄らせていただいています。

ありがとうございます!私はドイルの原作についてもBBC版のSHERLOCKについても初心者以前なのですが、SHERLOCKと原作の比較をなさっているナツミさんのところでずーずーしく(うふふ)グラナダ版のお話ばかりしています。またあちらでもお会いできたら嬉しいです。

お返事をありがとうございます。
おっしゃるとおりの ワトスン先生ファンです。(^^)
(ワトソニアンとは おこがましくて…(汗))
リンクしてくださった ナツミさんの記事のテーマである
『ユリイカ』でも 多くの方が解説されていますが、
多くのバディモノの原型であろう ホームズ&ワトソン。
系譜の二人組を見ても、いつも 主役を支える側が好き
なので、そういう人が自分のタイプなんだな〜と、思いました。
本記事のお写真の舞台、『The Secret of Sherlock
Holmes』の楽屋裏でも、ジェレミーさんがご病気で
荒れてしまったときに、「あれは 病気が君に言わせた
 言葉だろう?」と、エドワードさんが手紙を書かれた
お話しがありましたね?
(こちらで 拝見したと 思ったのですが、違ったら、
 すみません(汗))
そういう 人物像も 胸を打ちます。
ですので、グラナダ版においては、ワトソニアンという
より、ワトスン先生&エドワード・ワトソン・ファン
になってしまいました。

> 笹生さんをはじめいろいろなかたが、三原作品に関して今も
> 努力をしてくださっている
はい。自分は 年賀状くらいのご縁になってしまったのですが、
去年は イベントがあったので、若干のやり取りと あいなり
ました。
自分は RMさんや そのお友達となられた方々の流れに
ちょっと 遅れてしまったファンでした。
ですので、笹生さんが そういう人が現れる度に 面倒を
見て下さったのだと思うと、本当に 頭が上がりません。

すみません。また 長くなってしまいました。
ナツミさんのご厚意に甘えて、『21世紀探偵』さんにも
また お邪魔したいと思っています。
では、また。m(__)m

おお、やっぱりワトスン先生ファンでいらっしゃいましたか!

billylabさん、こんばんは。私は携帯電話を持っていないという絶滅危惧種のために、ネットにつなげない間、コメントの承認が遅くなって申し訳ございません。

>いつも 主役を支える側が好き
>なので、そういう人が自分のタイプなんだな〜と、思いました。

ということは、「はみだしっ子」で言えばアンジーですね!
と思った後でbillylabさんのブログに行きましたら、やっぱり「アンジー派」と書いていらっしゃいました。あ、さらに検索したら、18歳のアンジーと30代のアンジーの絵が!

それでは(ブログの中で萩尾望都さんの作品にも言及していらっしゃったので)「トーマの心臓」を読んでいらしたら、ユーリよりもオスカーかもしれませんね。私はグレアム派でユーリ派なんです。屈折した主役が好きなのかも。でもBBCのSHERLOCKではジョン派で、これは私にはジョンの方が屈折して見えるからかもしれません。

>エドワードさんが手紙を書かれた
お話しがありましたね?

はい、このブログで書いたことがあります。読んでくださってありがとうございます。手紙を書いた背景としてエドワードは、それは本来のジェレミーではなく、病気がすべてを誤解させているのだから、議論するのではだめだ、手紙を書かないとと思った、ということでした。

>ですので、グラナダ版においては、ワトソニアンという
より、ワトスン先生&エドワード・ワトソン・ファン
になってしまいました。

ああ、わかります!

そして、三原順さんの作品刊行などについて、

>笹生さんが そういう人が現れる度に 面倒を
見て下さったのだと思うと、本当に 頭が上がりません。

ずっと息長く活動をしていらっしゃるのですね。「活動」というよりもすでに日常という感じなのかもしれませんね。三原さんとその作品への、深い友情と愛情によるものなのでしょうね。

>ナツミさんのご厚意に甘えて、『21世紀探偵』さんにも
また お邪魔したいと思っています。

はい、またあちらでもお話できるのを楽しみにしております!

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