Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

前回の記事で引用したインタビューで、ジェレミーが自分はホームズと正反対で、"an extrovert, a romantic, and not that serious" だと言っています。この"a romantic"を最終的には「夢想家」と訳しましたが、"a romantic"で連想した文章があります。

以下に引用するのがそれで、これはCharles Edward Pogueのブログに書かれていた文章です。彼はWikipediaでは映画とテレビの脚本家となっています。
http://en.wikipedia.org/wiki/Charles_Edward_Pogue

ブログで自身のことを俳優・劇作家・脚本家と書いているとおり、俳優としての経歴もあり、「四つの署名」を下敷きにした劇"The Crucifer of Blood"でジェレミーと同じ舞台にたっています。ジェレミーはご存知のようにこの時ワトスンを演じていて、Charlton Heston(チャールトン・ヘストン)がホームズでした。一方Charles Edward Pogueの役名はMordecai Smithで、「四つの署名」ではオーロラ号の所有者の名前ですね。この劇ではどういう人物だったのかくわしくはわかりませんが、下にあげるページにジェレミーの彼への言葉が書かれている公演の宣伝用写真を載せていて(ただし字が薄くて最後の「from J.B」しか私には読めないのですが)、その写真の説明に「床に倒れているのが私」と書いています。ですから彼は多分被害者の役だったのでしょう。

ブログのこの日の記事は、オスカーやトニー賞やエミー賞を受けた時の自分のスピーチを想像することからはじまり、このように続きます。

スピーチで誰に感謝の気持ちを述べるだろう?何の経験もなく誰にもみとめられていなかった頃の自分に手を差し伸べ、押し上げてくれた人たちに感謝を伝える。ある程度成功したひとを後押しするのには普通たいした危険はない。でも取るに足らないちっぽけな存在の若者に機会を与え、才能があるかどうかもわからない人物を励まし助けるというならどうだろう?

そして彼は、想像上のスピーチで感謝する人として、高校の先生方をまずあげます。あと何人かの名前の後に、"The Crucifer of Blood"の脚本家でこの時の公演の舞台監督もつとめたPaul Giovanniにも感謝しています。彼は自分に役を与えてくれて気にかけてくれた、と。そしてその次がジェレミーです。

http://poguespages.blogspot.jp/2009/04/those-who-deserve-thanks-or-mentors-who.html
Pogue's Pages:
"Those Who Deserve The Thanks (or The Mentors Who Took The Real Chance On You)"
By Charles Edward Pogue, April 30, 2009

ジェレミー・ブレットはチャールトン・ヘストンと共にこの芝居の主要な出演者で、彼も私のことを気にかけてくれた。俳優や脚本家として今まで仕事をしてきた中で、私が出会った数少ない本物の紳士のなかの一人だった。出演者のパーティで突然微笑みかけて、自分にはわかっているんだというふうに私にむかって指をふって、「君は騎士と、妖精の住む城と、竜と、夢の世界を呼び出すその素晴らしい想像力を持っていて、でも誰にもそれを理解されていないと思っているだろう。でもひとにはちゃんとわかるものだよ!」そのあふれるばかりのやさしさは、私にとって大きな意味を持っていて、決してその時のことを忘れなかった。彼は公演の間もその後も、何度も私を励ましてくれた。

Jeremy Brett, who starred in the play with Charlton Heston, was another one who "cared". One of the few true gentlemen I've met in the business. I remember once, at a cast party, he suddenly smiled and wagged a knowing his finger at me, "You have this wonderful imagination that conjures knights and faery castles and dragons and marvelous dreams and you think no one sees it, but...they do!" That great kindness meant a lot to me and was never forgotten. It was just one of many encouraging generosities he showed me during the run of the show and after.



こうやって若者を励ますところがジェレミーらしい、と読んでいてうれしくなりました。本物の紳士はあたたかい思いやりを持っていて、まわりの人の気持ちや状況を敏感に察して、はたらきかけてくれるのですね。はまぐりさんが以前の記事のコメント欄で「『人の心を瞬時に察知し、手を差し伸べる能力』を持っている人のようですね」と書いてくださいましたが、その表現はジェレミーのこういう本質をよくあらわしていると感じます。

そして、この励まし方が印象的でした。君は想像力に富み、物語世界に生きることができる人だね。でもそれは自分の中だけのことで、現実世界とは関係のない単なる自己満足だとがっかりすることもあるだろう。でもそうではなくて、君のまわりの人にも君の演技を観る人にもちゃんと届くものだ。何より僕にはわかる。自由に想像の翼を広げてごらん。そんなふうに私にはきこえました。

皆様は想像力ゆたかな子供でしたか?私はそうでした。本を読んでは想像していました。いえ、子供はみな想像力にあふれた小さな芸術家かもしれません。ジェレミーも、子供はみな俳優だと言っていましたね(「子供の頃のこと;1987年のインタビューより」)。

ジェレミーは特に、演じる役になりきる"becomer"であるためにも、想像の翼を大切にしていたのでしょう。

前回の記事のタイトルを「ドイルが朝、読んできかせたホームズ;1989年のインタビューより」としましたが、朝というのはジェレミーの想像で、実際には朝は、この父にとってゆっくり読みきかせる時間や気持ちの余裕がなかったかもしれませんね。

また前回私は「明日の朝きかせてね、と頼まれて前の夜に書き上げた部分を、朝の食卓で読んでいるのでしょうか」とも書きましたが、これもジェレミーの言葉を受けての私の想像の産物にすぎません。

それでもやっぱり、こうやって具体的に想像することで生まれてくる心象風景の豊かさというものが好きです。それはたとえ実際とは細部では違っていても、何かの真実を伝えてくれるものだと思います。そしてジェレミーが「青い紅玉」をあげてくれたおかげで、冬の朝の空気まで感じることができます。こういうところが"a romantic"である楽しさですね。



ところで、りえさんが現在の最新記事「『マイ・フェア・レディ』ロンドン・プレミア映像 」で、私の以前の記事を紹介して下さいました。りえさんの「『マイ・フェア・レディ』50周年記念ブルーレイ 」の記事について、私がメールを差し上げた件に関連してです。りえさん、ありがとうございました!

りえさんのブログをご存知の方も多いでしょうが、私がジェレミーのホームズを再発見した時に出会って、その数ヶ月後にドキドキしながら初めて書き込んだ場所です。第一回目のコメント欄では、私は「ジェレミーさん」と書いていました。ああ懐かしい!

RM
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コメント

ジェレミーを知らかったとき

ドイルのホームズの憧れて「ニヒル(今は死語)」な男性が理想だった私。ジェレミーホームズを初めて見たとき、若かったせいもあるけれど、すごく完成された強い男性だと思いました。でも、ドイルの全集を読み直したり、ジェレミーのことを知るようになって(RМさんりえさん)ジェレミーのいろいろなことを知りました。「ノーウッド・・」で前髪をばらりとしてはだしの脚でいすにかけている苦しそうな姿。本当にホームズの心をあらわしていました。自制心やプライドを失いそうになって「助けてほしい」弱い面をワトソンにだけ見せます。ジェレミーも役作りで苦しんだとき、バーグやハードウックにこんな面をみせたのでしょうね。外観や言葉だけでなく内面を演じてみせた「ジェレミー」に感謝しています。

「内面を演じたジェレミー」、本当にそうですね!

>ジェレミーホームズを初めて見たとき、若かったせいもあるけれど、すごく完成された強い男性だと思いました。

なるほど!わかる気がします。私にとっても、NHKでの最初の放映をみていた時のジェレミー・ホームズの印象は、さくらさんと同じだったと思います。凡人には理解できないところを持った、すごい人。

>でも、ドイルの全集を読み直したり、ジェレミーのことを知るようになって(RМさんりえさん)ジェレミーのいろいろなことを知りました。

それでは原作を読み直すことでも、ホームズの印象がさくらさんの中で時とともにかわっていったのですね。そして、私とりえさんのところでジェレミーのことを知ったと書いてくださって、ありがとうございます!りえさんのところは私のふるさとのような場所ですし、ここはまさに「ジェレミーのことが知りたくて」はじめた場所ですもの。

>外観や言葉だけでなく内面を演じてみせた「ジェレミー」に感謝しています。

本当におっしゃるとおりです。内面を演じたと言う言葉は、俳優にとって最高の賛辞だと思います。私もこころから感謝と敬愛の気持ちを捧げます。

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 RM

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