Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

前回の「"Playing the Dane" (1994)」で引用した文章の中で、このドキュメンタリーの出演者の一人としてSir Ian McKellen(イアン・マッケラン)の名前があがっていました。その時、ああ、サー・イアンもホームズを演じるというニュースがあったけれども今どうなっているかしら、と検索したのですが、最新の状況を伝える記事はまだないようだったので、触れずにいました。でもそれから間もなく、たくさんの記事がネット上にあらわれました。サー・イアン主演の映画"Mr Holmes"のプレミア上映がBerlin film festivalで行われたそうで、その記事です。その中の一つから引用します。

'I relate to the way Sherlock talks about death': Ian McKellen on his new film role
The Observer, 8 February 2015
http://www.theguardian.com/culture/2015/feb/08/sherlock-film-mr-holmes-ian-mckellen

シャーロックはすでに120人もの俳優が演じているけれども、ハムレットを演じるのとほとんど同じです。役を役者個人のものにはできない。もしそう思って演じるなら間違っている。

(中略)

私の世代のひとの多くはジェレミー・ブレットがホームズだと感じているでしょう。ホームズをテレビで演じていました。とても長い間、そして驚くほどすばらしく。あの演技に挑むなんていうことも考えていません。

"Sherlock has already been played by 120 actors and it's rather the same thing as playing Hamlet. The role doesn't belong to you and, if you think it does, you have the wrong idea. [...]

People of my generation tend to look to Jeremy Brett, who played him on television. He did it for such a long time and so astonishingly well. I would not even want to challenge that performance. [...]"



最初の部分で面白いと思うのは、ホームズを演じることについての気持ちは、ジェレミーとも一致しているということです。ジェレミーはいつも、ホームズを演じる俳優の長い連なりの中の一人ということを意識していましたね。ホームズとハムレットの二つの役を演じたこの二人の俳優は、同じようなことを感じているのでしょう。

そして、先日の記事でジェレミー演じるハムレット評を紹介した中の、「これまでに高名な俳優たちが自分の考えるハムレットを私達に示してきたが、ブレットは私達自身のハムレットを目の前にみせてくれる」という表現とも呼応しているように思います。ホームズとハムレット、どちらを演じる時も、役を自分という個人に引き寄せすぎると何かが失われてしまうのでしょう。ジェレミーもサー・イアンも、それがわかっているのでしょう。ジェレミーは特にbecomerですものね。

引用箇所の2番目の部分、ホームズは役者個人の持ち物ではないことを認めた上で、でも実際にはある世代の人はジェレミーこそがホームズだと感じているということを、サー・イアンの口からきけたのはうれしいことでした。たくさんの俳優が今までもこれからも演じるホームズ、だからこそ面白い、でもこころに永遠に残るホームズは観ているそれぞれの人にあって、それがジェレミーのホームズだという人がたくさんいるということですね。もちろん私もそうです!

RM

追記:この記事を書いた後で読んだインタビューで、サー・イアンはさらにこういうふうに言っていました。コメント欄でナツミさんともお話しましたが、うれしくて追記してまで引用します!

『ホビット 決戦のゆくえ』ロングインタビュー
第1回:イアン・マッケラン(ガンダルフ役)
http://www.cinematoday.jp/page/A0004356

「わたしが素晴らしいと思ったシャーロック・ホームズは、ジェレミー・ブレットがイギリスのテレビシリーズで演じたものだ。苦悩する男だ。彼は問題を抱えた人ばかりの世界にいて、何とか助けようとする。」


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コメント

すごく楽しみなんです

サー・イアンの老ホームズ、すごくすごく楽しみにしています。
私にとっては、サー・イアンは「ホビット」や「ロード・オブ・ザ・リング」のガンダルフ、という印象が強いです。「ホームズといえばジェレミー」というような印象があるなら、その逆の「この俳優といえばこの役」という印象もありますよね。
歴史の中で長く愛されてきた、強靭な存在感を持つキャラクターを演じるには常に「役」と「役者」の戦いがつきまとうのでしょう。想像するだにタフなことだと思います。
その戦いの中を生きてきた、という意味でも、同じ役を演じた役者さん同士の「つながり」という意識は強いのではないでしょうか。カンバーバッチの中にジェレミーの存在を見るのも、そうではない、彼だけのホームズを見るのも、私はすごく好きなんです(完全に個人の思い込みではありますが……)
サー・イアンの中にも、きっとたくさんのホームズたちを観ることができるはず。(もちろん、ジェレミーも!)それを、」目を皿のようにして見届けたいと思います。

ナツミさん、こんにちは!

そして、その折はあたたかいお心遣いをありがとうございました!

>私にとっては、サー・イアンは「ホビット」や「ロード・オブ・ザ・リング」のガンダルフ、という印象が強いです。

そうでしたね。私は残念ながら映画はみていないので、サー・イアンというと一番に思い浮かぶのは、素顔の、魅力的でお茶目な笑顔の写真だったりするのですが、あの老賢人の姿もその次に印象的です。

今回の記事を書いた後でみつけたインタビューがあって、ナツミさんは読んでいらっしゃるのではないかと思いますが、ガンダルフを演じたことをこんなふうに言っていたのが興味深かったです。
「わたしはそれまでに何人もの役者によって演じられてきた、象徴的なキャラクターを演じたこともあった。(中略)ところがそれらとは異なり、ガンダルフ役は、ある意味、わたしだけのものだ。他の誰にも演じてもらいたくないという思いがあるね。」(『ホビット 決戦のゆくえ』ロングインタビュー 第1回:イアン・マッケランhttp://www.cinematoday.jp/page/A0004356

>カンバーバッチの中にジェレミーの存在を見るのも、そうではない、彼だけのホームズを見るのも、私はすごく好きなんです

はい、よくわかります!そしてカンバーバッチもそういう見方を喜ぶと思います。

>サー・イアンの中にも、きっとたくさんのホームズたちを観ることができるはず。(もちろん、ジェレミーも!)それを、」目を皿のようにして見届けたいと思います。

ああ、素敵ですね、サー・イアンのホームズのなかにきっと、ホームズを演じたたくさんの俳優と分かち合うものがあって、ジェレミーもその一人ですね!

上にあげたインタビューで、こんなふうにもいっていました。うれしくて、記事の方にも追記として引用しましたが、こちらにも。
「わたしが素晴らしいと思ったシャーロック・ホームズは、ジェレミー・ブレットがイギリスのテレビシリーズで演じたものだ。苦悩する男だ。彼は問題を抱えた人ばかりの世界にいて、何とか助けようとする。」(『ホビット 決戦のゆくえ』ロングインタビュー 第1回:イアン・マッケランhttp://www.cinematoday.jp/page/A0004356

リンク、ありがとうございました!

先のコメント、勢いこみすぎて、変なタイプ間違いをしてしまってすみません!三原順さんの記事にも書き込みたくて迷ったのですが、とりあえずこちらに。

サー・イアンのインタビューへのリンクを貼ってくださってありがとうございました。見逃していたものなので、うれしいです!いろいろな作品や俳優さんへの言及がありましたね。皆が役を分かち合っている、という感覚は、俳優さんならでは、ですね。

>「わたしが素晴らしいと思ったシャーロック・ホームズは、ジェレミー・ブレットがイギリスのテレビシリーズで演じたものだ。苦悩する男だ。彼は問題を抱えた人ばかりの世界にいて、何とか助けようとする。」

シンプルで力強い言葉です。そう、ひたむきに誰かを救おうとする人なんですよね、ジェレミーのホームズは。
ジェレミーのホームズに対する賛辞は星の数ほどあると思うのですが、老いたホームズを演じるサー・イアンが「そこ」を切り取ったことに、なんだか胸が熱くなりました。
価値観が多様になり、ドラマや映画もどんどん複雑になっていますが、私たちがホームズに「ヒーロー」を感じる理由は、それほど変わっていないのかもしれません。

いえいえこちらこそ、不調法で...

コメントの修正方法がわからないんですよ。そのまま「承認」ボタンを押すこと以外はしたことなくて。

>いろいろな作品や俳優さんへの言及がありましたね。皆が役を分かち合っている、という感覚は、俳優さんならでは、ですね。

名優の若い俳優たちへの愛情と、仲間としての連帯感と、両方感じられてとてもよかったですね。

>ジェレミーのホームズに対する賛辞は星の数ほどあると思うのですが、老いたホームズを演じるサー・イアンが「そこ」を切り取ったことに、なんだか胸が熱くなりました。

本当ですね。さっそうとしたホームズもまた、ジェレミーの(特に初期作品の)ホームズの素晴らしさでしたが、サー・イアンが切り取ったのは、かなしさも苦しさも知るホームズだったのですね。今回の老ホームズの中には、そういうかたちでジェレミーのホームズも生きているのでしょうね。ジェレミーも多分、うれしく思うでしょう。

サーイアンマッケランで思い出したこと

「運命の瞬間/そしてエイズは蔓延した」でビルクラウスを演じましたね。意志の強い人だと思いました。ロードオブとかホビットとかにも出ておられて、どんな老ホームズを演じられるか楽しみです。
ジェレミーホームズの演技の苦しみや悩みもかみしめて演じてくれるのでしょうね。

教えてくださってありがとうございます

さくらさん、こんにちは。この映画のことはぜんぜん知りませんでした。サー・イアンのホームページでさっそく、この作品について検索してみました。
http://www.mckellen.com/cinema/band/notes.htm

映画をみていないので、英語の解釈が少し間違っているかもしれませんが、抄訳です。
「この映画はAIDSへの無知と偏見を減らすことにもつながるかもしれない、という監督の意見に私も賛成だった。しかしゲイの人たちとAIDSのことが描かれることになる、この映画に喜んで出演する有名俳優がみつからないのだと言った。この病気AIDSにかかった男をリチャード・ギアが演じることに同意したのは、監督にとって大きな意味があった。しかし私が監督に会った時点では、ゲイであるビル・クラウスを演じようとするアメリカ人俳優はいなかった。私はクラウスとは外見がまったく違うし、国籍も年齢も違うが、この映画に参加した。」

それでは、ここではアメリカ人を演じたのですね。そうまでしても演じる価値がある映画だと思ったのでしょうね。ひととしての権利を尊重し、偏見を排除することについて、固い意志を持つ俳優であることがうかがえます。

この映画について教えてくださって、ありがとうございました。

運命の瞬間/そしてエイズは蔓延した

「運命の瞬間/そしてエイズは蔓延した」という映画はBSで放送があり、マシューモディアンが若い研究者として出ていました。
原因がわからず亡くなってしまうことから研究者は必至になって研究し患者を追跡し原因を解明しようとします。
またゲイの間で広まっていったことからゲイ特有の病気と誤解されて世間の人々から疎まれてしまいます。
「ゲイの病気は神の冒涜だとし、エイズのことを研究するとお金がもらえなくなるからと反対する周囲を押し切って研究し輸血した血液で老人がなくなったことからゲイではなく一般の人達のためにも研究する必要が認められた。
偏見と闘い生きる権利を勝ち取るために演じた俳優たちもエイズ撲滅のために立ち上がった勇気ある人達だと思いました。
この本を図書館で借りて読んだのですがアメリカの政治や組織などにも触れていてすごい本でした。リチャードギアはエイズ患者でゲイの舞台監督役でてていました。
「ゲイだと知られるのが恐ろしい。けれどもエイズの兆候が表れた」という役どころでした。そして、エイズを克服するために協力するのです。サーイアンも役の中で同じような
苦悩を訴えます。見応えのある映画でした。
エンドクレジットの際、エイズで亡くなった
俳優さんとかスポーツ選手が画面に出ました。
一般公開してもお金にはならないために
賛同した俳優さんたちの協力があったのでしょう。サーイアンも思い入れぎあって
この役を演じたと思いました。

さくらさん、こんばんは。

お返事がとても遅くなってしまって、申し訳ございません。でも折にふれて、さくらさんが書いていらしたこの映画の内容のことを思いかえしてゲイやエイズに関する偏見のことを思い、さらには自分の中にもある世の中や人のいろいろなことへの偏見について考えていました。そしてもちろんジェレミーのことも。

偏見というのは、偏見がなくなってはじめて、自分がそれを持っていたことに気がつく場合があるということを私は経験しました。ジェレミーが男性のパートナーも持ったということは、ジェレミーが自分で語る機会と時間がないままに亡くなってしまっていますから「事実」とまでは言い切れないのですが、最初の奥様であるAnna Masseyが書いた本の記述、その中に悪意も偏見も私は見いだせなかったこと、ジェレミーのある時期のパートナーだったという人の知人の言葉などから、本当だと思っています。そして本当だろうと思ってそのことを受け入れたときにはじめて、私の中にそれまで同性愛や両性愛という性的指向について偏見があったことに気がつきました。

今ではジェレミーが男性も女性も両方愛したとしても、そのことをよろこびもしないし悲しみもしないし、隠す気持ちも逆にことさらに言う気持ちもありません。自分の偏見に気がついたことについて、そしてひとがどういう性的指向を持っているかが全然特別なことではなく思えるようになったことについて、ジェレミーにとても感謝しています。

そしてジェレミーが精神疾患が特別なことではないのを示して病気の人を力づけてくれたように、もう少し長く生きて、性的指向に対する偏見に関してもはっきりと声をあげるだけの時間があったらよかったのにと思います。

リチャード・ギアもサー・イアンも他の出演俳優たちも、はっきりとした意志のもとに出演したのでしょう。そうやってできた作品は、さくらさんが原作の本を図書館で借りてお読みになるほど興味深い、こころ動かされる映画だったのですね。

偏見ということ

ジェレミーがGary Bondとパートナーだったこと悪意ある扇情的な書き方をしている人もいるし病気のことでとてもひどいことを書いているひともいるけれど、「最後までジェレミーのもとを離れなかった」という言葉がジェレミーのすばらしさを言い表しています。
精神疾患についてはジェレミーははっきりと
率直に語っています。
人はいろいろな病気をします。
他の病気のことについては口に出して話すけれど精神疾患についてはすごく苦しんでいても口に出せないものです。そういうことを知っているからジェレミーは語ったのだと思います。

同性愛についてはわからないけれど
本当に自分を理解し辛いときに支えになってくれる人がいたらきっと素晴らしいと思います。ジェレミーとGary Bondは素晴らしい友情で結ばれていたのですから大切な無人だっのでしょう。
Gary Bondはエイズで亡くなりますが、もしジェレミーが生きていてこの映画を作ることを聞いたらきっと「運命の瞬間/そしてエイズは蔓延した」という映画を作ることに賛同してくれたのではないでしょうか。
Gary Bondのことを大切にしていたジェレミーだからきっとそうしてくれたと信じます。

まったく同感です。

さくらさん、こんばんは。
"I couldn't agree more" (まったく同感)という表現を読んだことがありますが、さくらさんの書いてくださったことを読んで思い出しました。

>「最後までジェレミーのもとを離れなかった」という言葉がジェレミーのすばらしさを言い表しています。

ここを読んでくださるかたで、ご存知ないかたのために、二つの記事を紹介させてくださいね。

・誰も彼の元を去らなかった
(http://upwardjb.blog112.fc2.com/blog-entry-208.html)
・この世を去る時まで続いたGary Bondとの友情
(http://upwardjb.blog112.fc2.com/blog-entry-89.html)

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 RM

Author: RM
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私の記事へのリンクはどうぞご自由になさって下さい。
和訳には間違いがあるかもしれません。最近は必ず英語原文を併記・またはアドレスを書いて読めるようにしていますので、どうぞそちらも参考になさってください。

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