Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

前回ご紹介したインタビューは1987年3月16日におこなわれたと記事の前書きに書かれていて、インタビューの中でジェレミーが、"The Sign of Four"の撮影が終わったところだと言っています。他にもなかなか興味深いことを話してくれていて、以前にも一度別の箇所を引用したことがあります。
ソファの背をひらり;1987年のインタビューより

前回の引用箇所に続くところをもう少しご紹介しましょう。 "The Second Stain"(第二の血痕)で、ホームズが秘密の隠し場所をさがしまわる、あのシーンのことです。

文字で書かれていることを実際にはどうするかで悩むことはたくさんあって、生身のからだで、その場面をちゃんと表現しないといけないんです。たとえば「第二の血痕」でホームズは床にある秘密の落とし戸を探そうとします。そうやって探しまわるときには、床板に爪をたててさぐりながら、からだをそれにつれてひっぱりながら動くのがいいと、やってみてわかりました。

There are so many times when you come up against things that are there in print, and then you're suddenly there in the flesh and have to make them work. As, for example, in "The Second Stain" when he's actually trying to find the trap door in the floor, I discovered the way to get around was by clawing with my hands into the flooring and pulling myself along.

The Sherlock Holmes Review, Vol. 1, Nos. 3/4, 1987

最後でジェレミーが言っているのは、私の理解が間違っていなければこういうことだと思います。ドイルの原文ではここの描写は以下のようになっています。訳は延原謙によるもので、ここでの"The Second Stain"という題の訳は「第二の汚点」です。

まず敷物をはねのけると、たちまち四んばいになって、床に張りつめてある四角な寄木のますを、かたっぱしから調べてゆく。すると一つだけつめをかけて引くと横にずれるのがあって、蝶番であんぐりと蓋があき、その下に暗い孔が現われた。

He tore the drugget from the floor, and in an instant was down on his hands and knees clawing at each of the squares of wood beneath it. One turned sideways as he dug his nails into the edge of it. It hinged back like the lid of a box.


インタビューを読むまでは、ジェレミーのホームズは見事にこの文章のままをやっていると思っていました。Sidney Paget(シドニー・パジェット)による挿絵にもこの場面があって、下はWikipediaにある挿絵の画像です。
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/5b/Seco-06.jpg

でもよくみると挿絵では膝をついたかたち、文章でも"down on his hands and knees"なのに対して、ジェレミーは爪の先に意識を集中して、「四角な寄木のます」を次々にさぐっていく動きにつれて腕でからだを引っ張りながら、這い回っていましたね。多分そのことを言っているのだと思いました。

膝をついた四つん這いでやってみて、その姿勢では落とし戸をさぐるために爪をたてることが難しかったかもしれません。何よりそこにはあの緊迫感は出なかったと想像します。今あらためてあの場面をみたのですが、ただ探すことに没頭して這い回っているジェレミーのホームズを前からとらえた、名場面の一つですね。変な格好なんて全然思わせず、ただドキドキ、そしてわくわくします。

見事に原作どおりだと私たちが驚く場面一つ一つの向こう側には、演じるジェレミーの経験と直感にもとづく工夫がされているのだろうと感じられて、この部分も興味深く読みました。

RM
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コメント

ホームズの演技に関する興味深い記事が続いていますね。

こんな工夫を重ねながら,あのホームズが作られていくんですね。
演技について何も知りませんので,読んでいて本当におもしろいです。
そしてまた,グラナダシリーズを見たくなってエンドレスで見返す,ということになるんですね。
キリがありませんね。

この床に飛びつくシーンもすばらしいし,そのあとのレストレード警部の後ろで,早く出かけたくてステッキを跳ね上げるようにしているところも好きです。
ジェレミーのステッキは雄弁ですね。かっこいいだけじゃなくて。
このあと,ラストの大ジャンプまでホームズから目が離せませんね。
なんて,本当にきりがなくなるのでこれくらいにしておきます。

ところで7月15日にNHK-BSで「シャーロック・ホームズの冒険」を放送するんですね。
RMさんは見たことがおありですか?
私は,この映画はグラナダシリーズ以外で見た唯一のホームズなんです。
今の映画に比べるとのんびりしていますが,わたしはとても楽しめました。監督のビリー・ワイルダーが好きだからかもしれませんけど。
でも,できればグラナダシリーズの前に見たかったですね。
なにしろ,ジェレミー・ブレットのホームズがあまりにも印象的なもので,ロバート・スティーブンスはちょっと不利じゃないかと思うんですけど。

なんて思うのはただ単にジェレミーのファンだから,なのかもしれませんね。



さすが細かい!そしてお知らせありがとうございました

さきさん、こんばんは。

インタビューの内容を楽しんでいただいているようで、とてもうれしいです。私も読みながら、ジェレミーから具体的な話をきけるのが面白かったので。

>そしてまた,グラナダシリーズを見たくなってエンドレスで見返す,ということになるんですね。
キリがありませんね。

うふふ、そうですね。

>この床に飛びつくシーンもすばらしいし,そのあとのレストレード警部の後ろで,早く出かけたくてステッキを跳ね上げるようにしているところも好きです。

これ、なんとなく覚えているような、でもはっきりしなくて、もう一度観てみました。本当ですね!さきさんは相変わらず、こまかいところをちゃんとご覧になって楽しんでいらっしゃる。私は結構見落としてしまっているんです。割とぼんやりと雰囲気を楽しむ方なんですよ。ホームズに怒られますね。「心で見ないからだ。眼で見るだけなら、ずいぶん見ているんだがねえ。」(ボヘミアの醜聞 延原謙訳)

「シャーロック・ホームズの冒険」、私は観たことないです。ロバート・スティーブンスはジェレミーの親友でしたから、さきさんがこの映画を楽しまれたとうかがって、私もうれしいです。私はテレビをみない環境なのですが、ここにおいでの方でご存知なかった方に、よいお知らせをしていただきました。

RMさんにお話ししていて気がつきましたが,どうやらわたしはホームズとワトソンが冒険に飛び出していくシーンが大好きなんですね。

それでレストレード警部の話の切れ目を待ちかねているホームズ,のような場面を一生懸命見たくなるらしいです。

ところで勝手ながらRMさんの
>割りとぼんやりと雰囲気を楽しむ方なんですよ。
のところを
>うっとりとジェレミーを眺めて楽しむ方なんですよ。
に置き換えて読んでしまったのは,やはりまずかったでしょうか?

ついつい,自分に引き寄せて考えてしましました。えへへ,失礼しました。

そしてこの続きに書いてしまいますが,新しい記事で紹介してくださった写真,素敵ですねえ。
写真を思い浮かべるだけで,顔が勝手に笑ってしまいそうで。
人前ではよく気をつけなくては。

素敵!

さきさん、こんばんは。

>どうやらわたしはホームズとワトソンが冒険に飛び出していくシーンが大好きなんですね。

わあ、素敵!二人のわくわくした顔が思い浮かびます。あのあと、元気よく並んで歩いてくる二人を前方少し遠くから撮っているのも大好きです。

>>うっとりとジェレミーを眺めて楽しむ方なんですよ。
>に置き換えて読んでしまったのは,やはりまずかったでしょうか?

いえいえ、まさにそのとおりです!

あの1975年の写真のジェレミーも素敵でしょう!

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 RM

Author: RM
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