Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

前回の記事の引用部分でジェレミーが好きだと言っていたfry upとは何か、さきさんに教えていただきました。コメント欄をご覧になってくださいね。さきさん、ありがとうございました!
http://upwardjb.blog112.fc2.com/blog-entry-736.html#comment-title

さて、一部の人々が舞台The Deputyに過激な反応をしたために、劇場に爆弾がしかけられていないかを刑事が調べるほどだったことを前々回ご紹介しました。今回ご紹介するジェレミーのインタビュー記事では、ジェレミー自身も危うい目にあったことを話しています。でも今日はそこまで行かずに、その前、この劇の大変さとテーマの重要性をジェレミーが話しているところです。初日は2月26日ですから、それから20日ほどたったところです。

(暗い話題になってしまいますので、こういう話題はこころが拒否するというかたは、どうぞ読むのをやめてください。私もこころが弱っているときは、子供が泣くはなしは、実際のことでもお話でも耐えられなかったことがあります。その時の自分の気持ちをみとめてそれに従うのが一番よいと思います。)

Role in Controversial Play Terrifying to Jeremy Brett
by William Gloner
St. Joseph News-Press, May 17, 1964
http://news.google.com/newspapers?id=brBTAAAAIBAJ&pg=4576,3028325

2月末にこの舞台が始まってから、ブレットは14ポンド(6.4 kg)も体重を落としてしまった。胃を悪くしたし、眠れなくなった。
「役にのめりこむなとよく言われます。そうしてみようとは思うんですけど。」
特に、ナチスドイツの残虐な行為を舞台上で生々しく描写していることに、ブレットはひどく苦しんだ。「アウシュビッツの死者たちの姿が私にはみえるようにも思えます。」彼はさらに続けた。
「私は理想を信じるほうで、人間がこれほどまでに残虐になれることを信じたくはないと思ってしまうのです。この劇で人の暗黒面を思い知らされることで、ぼろぼろになりましたし、どうしても慣れることはできません。」

Since the play opened at the end of February, Brett has lost 14 pounds, his digestion has gone awry, his sleep become fitful.
"A good many people have told me to objective," he says, "Well, try and do it."
Brett's torment centers upon the drama's graphic description of Germanic atrocities—"perhaps the ghost of Auschwitz has appeared to me a little." He goes on:
"I'm a rather idealistic person who would rather not believe human nature could sink so low. I was most vulnerable to what the play recalls—and I can't get used to it.


ジェレミーのこういうところ、よくわかる気がします。役にのめりこんで、そのために精神的にも肉体的にもダメージを受けてしまうところ。そしてもともと感受性が強くて共感する能力も高いために、人間の悪に触れて傷つくとともに、苦しむ人に触れてその苦しみを受け取ってしまう。

犯罪の世界に触れていること、犯罪者や被害者の近くにいることはホームズの精神にも影響があると言っていたのを、このインタビューを読んで思い出しました。短い言及でしたが、そう言っている部分がみつかったらまた引用しましょう。becomerであるジェレミー自身にももちろん、その暗さが及んでいたことでしょう。

次のところは少しむずかしいのですが、私の訳と解釈がまちがっていないことを願います。原文もどうぞご参照ください。

「でも同時に、どんなに辛くてどんなに困難であろうと、演劇がこの社会で意味を持ち続けるのであれば、劇場でこのようなテーマもあつかわねばなりません。」
(中略)「ローマ法王とのシーンを演じながら、劇場の屋根が今にも音をたてて崩れるのではないかと私は感じます。ピオ法王が生きていて、自分が当時なにをして、なぜそうしたかを語ってくれたらと思います。」
「これについて --- まるで昨日起きたように感じます --- 一人の人(訳註:ローマ法王)だけに責めを負わせるのは間違っています。18歳くらいの若者が観客の中にいると、こころが騒ぎます。若い人たちが、この劇の見方や主張が唯一すべて正しいものであるととらないでくれるようにと思います。」
「この劇がなぜ重要かと言うと、あの残虐行為を思い出すきっかけとなるからです。思い出すことで、あのようなことが二度と起きないようにできるかもしれませんから。」

"At the same time, even though it may hurt like hell, and be hard to do, if the theatre is to survive such topics must be aired."
[...] "In the scene each night with the pope, I sometimes feel as if the roof of the theater was crashing in. I wish Pius was alive to speak for himself.
"You can't blame one person for those things that happened, just yesterday almost. I only get frightened when I see 18-year-olds in the audience. I just hope they don't think that the play's viewpoint is the only one that should be heard.
"The play's importance is as a constant reminder of atrocity that happened—that may prevent such things ever happening again.''


この劇では、ジェレミー演じる若き神父の必死の頼みにローマ法王が応じません。ユダヤ人を救えなかった神父は彼らと共に死ぬことを選び、アウシュビッツでいのちを落とします。権力を持ちながら非人道的な残虐さをとめられなかった人々の代表、一種の象徴としてローマ法王を登場させたのでしょう。でもローマ法王一人に、この劇で書かれたような大きな責任があるかは歴史的事実としては議論があるようです。

従ってこの戯曲は法王という実在した人を責めることを目的としたものではなく、このような悲劇を忘れないための、そして悲劇をふせぐためにひとは何ができるか --- 政治的、または宗教的権力者として、権力者を選び監視する責任を持つ一個人として --- を考えるためのものだ、というのがジェレミーの意見なのでしょう。

ジェレミーはとても重要なことを、実際に演じた人の実感がともなった言葉で語ってくれているように思います。

RM
関連記事

コメント

サー・ジョン・ギールガット

The Deputyはまだ題材が新しくて,いろんな評価を呼んだのでしょうか?
その中で,演劇と俳優の役割についてジェレミーらしく真摯に考えているのが印象的でした。
そして身体を削った演技を,Sir John Gielgudが認めているのはうれしいですね。
私信の中での評価なのでジェレミーの耳には届かないでしょうから,ちょっと残念な気もしますが。

名優として有名なサー・ジョン・ギールガットですが,私は「ある貴婦人の肖像」」「炎のランナー」「オリエント急行殺人事件」でしか見たことはないんです。

話がそれますけど「オリエント急行殺人事件」にはグラナダシリーズ「悪魔の足」のレオン・スタンデール博士を演じたデニス・クイリーも出演していますね。シリーズのゲストでは大好きな俳優さんの一人なんですよね。
「オリエント急行殺人事件」ではサー・ジョン・ギールガットとデニス・クイリーが,ちょっぴり絡む場面がありますが,なんともおかしくて好きなんです。

Fry up!
おいしそうなんですけど,なかなかなボリュームですね。
できることなら,お昼かお夕飯にいただきたいなあ。
これを1回の朝食で食べるのは難しそうです。

ジェレミーはどんな時に食べたんでしょうね?
早起きして身体を動かした後とか?なにかの都合でブランチになった時とか?

それともイギリスの人はいつでも,フルイングリッシュブレックファストを食べられるお腹をしているんでしょうか!!!

さきさん、お詳しいですね!

The Deputyはなかなか難しいお芝居だったようですね。劇評を読んでも、評価はわかれているようです。

>その中で,演劇と俳優の役割についてジェレミーらしく真摯に考えているのが印象的でした。

はい、私もそれがこころに残りました。物事を自分できちんと考えて自分の言葉で語るところ、若い頃からだったんだなあと思いました。

>名優として有名なサー・ジョン・ギールガットですが,私は「ある貴婦人の肖像」」「炎のランナー」「オリエント急行殺人事件」でしか見たことはないんです。

わあ、そんなにたくさん!私はどれも観ていないです。

>「オリエント急行殺人事件」にはグラナダシリーズ「悪魔の足」のレオン・スタンデール博士を演じたデニス・クイリーも出演していますね。シリーズのゲストでは大好きな俳優さんの一人なんですよね。

うわあ、これも知りませんでした!はい、私もレオン・スタンデール博士も好きでした。ジェレミーのホームズとの名シーンが思い浮かびます。「オリエント急行殺人事件」、いつか観ていたいです。

>それともイギリスの人はいつでも,フルイングリッシュブレックファストを食べられるお腹をしているんでしょうか!!!

そうかもしれませんね!fry up、教えてくださってありがとうございます。いつか私もイギリスで食べてみたいです。でもさきさん同様、お昼か夜に。

こんばんは。
あまり文が書ける調子じゃないんですが、一言だけお邪魔します。

「私は理想を信じるほうで、」というところ。そうだな、ジェレミーってそうだな、わたしもそうだよ、と思いました。
楽天的というのとは違うんですよね。悲しみや辛さに鈍感なのではなくて、むしろ人一倍感じたり気がついたりしてしまう、でも最終的には大丈夫だって思える、人間はそういう強さをもつことができる。
ただそれだけ言いたくて来ました。

まるさん、こんばんは。

まるさんのお書きになったことを読んで、考えていました。特にここが印象的でした。

>でも最終的には大丈夫だって思える、人間はそういう強さをもつことができる。

そして私の思いは、私がこの世界にもうしばらく生きていくにあたって、どういうふうでありたいか、ということにつながっていきました。夏頃から考えていたことでした。

今までの人生で予想どおりだったこと、私の力でコントロールできたことが一つでもあっただろうか。雨ひとつぶでさえ。
何一つコントロールできない人生のなかで、何にもとらわれずに生きる。


まるさんのお気持ちとまた少し違うかもしれませんが、どこかでつながっているといいなと思いながら書きました。
どうぞよいお年をお迎えくださいませ。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://upwardjb.blog112.fc2.com/tb.php/733-cadbbf6c

 RM

Author: RM
コメントは承認後に公開されます。古い記事へのコメントも大歓迎です。2010年8月7日に始めました。
私の記事へのリンクはどうぞご自由になさって下さい。
和訳には間違いがあるかもしれません。最近は必ず英語原文を併記・またはアドレスを書いて読めるようにしていますので、どうぞそちらも参考になさってください。

全ての記事を表示する

04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08 

QR