Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

前々回にご紹介したYouTubeにあるThe Infernal Machine の音声ファイルの、part 2はこちらです。
Jean Cocteau - The Infernal Machine - Part Two
https://www.youtube.com/watch?v=p6jFl916oo0

今日は1967年のカナダの新聞のレコード評をご紹介します。この欄に、The Infernal Machine のオーディオブックについて書かれています。

Record Column Christmas Suggestion
by Jacob Siskind
The Montreal Gazette, Dec 16, 1967
https://news.google.com/newspapers?&id=v8QtAAAAIBAJ&pg=4653,3791157

このすべての作品のなかで最も興奮させられて、しかもおそらく最も衝撃的なものは、Caedmonレコードが制作した二つのアルバムだろう。Jean Cocteau(ジャン・コクトー)のThe Infernal Machine(地獄の機械)とEugene Ionesco(ウジェーヌ・イヨネスコ)のThe Chairs(椅子)である。前者はMargaret Leighton(マーガレット・レイトン)がJocasta(ジョカスタ)を、ジェレミー・ブレットがOedipus(オイディプス)を演じている。(中略)

コクトーがギリシャ神話のオイディプス物語を元に書いたこの作品は、最も成功し、そして最もひとびとの感情をかきたてる戯曲の一つであり、今回のキャストは理想的なものだ。(中略)

ジェレミー・ブレットの声は最初のシーンではほんの少し、役の年齢より大人すぎるようにきこえる。特にDerek Seatonが演じた若い兵士がオイディプスと同じ年齢であるのを考えると。しかしオイディプスという人物に、聴く人はどんどん魅了される。(中略)

プロデューサーのキャスティングの巧みさはよいが、でもほんの少し巧みさが行き過ぎているという感想を最初は持つかもしれない。しかし俳優たちが見事なアンサンブルで、完璧に調和した演技をみせてくれるのをきけば、彼らを選んだ慧眼をたたえるようになるだろう。

これは今まで私がきいた、戯曲を舞台形式でオーディブックにした作品のなかで、最高のものの一つだ。


The most exciting, and perhaps the most terrifying, of all of the recordings are two albums from Caedmon records, — Jean Cocteau's The Infernal Machine (TRS 321) and Eugene Ionesco's The Chairs (TRS 323). The first is a production starring Margaret Leighton as Jocasta, Jeremy Brett as Oedipus, [...]

Cocteau's retelling of the Oedipus legend is one of his most effective, and affecting pieces of theatre and the present cast are ideally chosen for the roles. [...] Jeremy Brett's voice is just a shade too mature at first, as Oedipus, particularly when compared with Derek Seaton who plays a young soldier who is supposed to be the same age, but the characterization grows on you. [...]

In fact at first you get the feeling that the producers have been just a shade too clever in their casting, but when you find the ensemble working and blending perfectly you realize and appreciate the wisdom of their choices.

This is one of the finest recordings of a theatrical production I have ever come across.


最初のシーンでのジェレミーの声が19歳にしては大人びているということですが、比較されているDerek Seatonは調べたらジェレミーの10歳下の俳優ですから、録音時は22歳くらいでしょう。また、オイディプスのそれまでの19年の人生はすでに、その後の運命の前触れとなるできごとで満ちていました。Derek Seaton演じる、夜警にたつ若い兵士よりもはやく大人になったとしても無理はありません。私は前回も書いたとおり、ジェレミーは19歳の役を生き生きと演じていると思います。そしてもちろんこの記事にあるように、ジェレミーのオイディプスは私達のこころの中に入り込み、魅了します。

この評者が書いているようにこれは素晴らしい作品で、ジェレミーはもちろん、それ以外の俳優の演技にも引き込まれます。オイディプスの妻(実は母)ジョカスタを演じたマーガレット・レイトンは、ジェレミーがLord Goringを演じたBBCドラマ Ideal Husband (1969) でMrs Cheveleyを演じた女優、と言えばおわかりになるでしょうか。他にも舞台Variation on a Theme (1958) でジェレミーと共演しています。たとえばここにもその時の写真があります。watermarkがありますが、写真をクリックすると少しおおきくなります。ジェレミー、若いですね!
http://www.alamy.com/stock-photo-jeremy-brett-with-fellow-actor-margaret-leighton-56505127.html
http://www.alamy.com/stock-photo-margaret-leighton-on-stage-with-fellow-actor-56444575.html

ジェレミーとAnna Massey(アナ・マッシー)の結婚式の様子をうつしたフィルムにもマーガレット・レイトンの姿があり、ナレーションで名前がでていました。
ジェレミーとアナの結婚式の時のニュース映像、再度

ジョカスタが死を選び、オイディプスが自らの手で目をつぶす終盤、オイディプスの見えないはずの「目の前」にあらわれたジョカスタの声の、母としてのやさしさが耳に残っています。

これが絶版なのは本当に惜しいことです。


ところで、コメント欄にまるさんがコクトーの作品の「オルフェ」のことなどを書いてくださったので、コクトーについて少し調べていて、彼が「アンティゴネ」も書いていることをはじめて知ってちょっと驚きました。「アンティゴネ」、「オルフェ」、「地獄の機械」の三つがギリシア伝説を元にしたコクトーの戯曲作品ということでした。

なぜ少し驚いたかというと、ジェレミーは「アンティゴネ」のオーディオブックにも出ているのです。ただしコクトーの「アンティゴネ」ではなく、その元になった、ギリシャのソフォクレスが書いた「アンティゴネ」ですが。

タイトルにある「アンティゴネ」はオイディプスの娘の名前です。今日ご紹介したpart 2の一番最後(つまりこの劇の一番最後)で、アンティゴネは盲目となった父オイディプスと共に放浪の旅に出ます。ソフォクレスの「アンティゴネ」のオーディオブックでは、ジェレミーはそのアンティゴネの婚約者です。この戯曲ではジェレミーが登場する場面は限られているのですが、これも見事なのです。いつかご紹介してみたいと思っています。そしてコクトーがソフォクレスの「アンティゴネ」をどういうふうに翻案したかも、いつか読んでみたいです。


それにしても自分ではよくわかりませんが、オーディオブックがこれだけ好きというのは、誰でもというわけではなく私の一種の個性なのでしょうか。(もちろん私だけではないでしょうが。)昔から私が落語が好きだったこととも、どこかでつながっているのかもしれません。ひとの声が好き、言葉が好き、本が好きなこととも。ひとによって好きなものが少しずつ違うのも、おもしろいものです。

RM
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コメント

初めまして

初めまして。最近こちらのサイトを知り、少しずつ読み進めている者です。RMさんの文章にはジェレミーへの尊敬や愛、真摯な想いが滲んでいて、読んでいる私も温かい気持ちになると共に、背筋が伸びるような気持ちにもなります。こちらからジェレミーの事を知るにつれ、彼という人間の素晴らしさに触れる事が出来、彼を好きになって本当にに良かった、と思う日々です。こんな素敵なサイトを作り、又続けて下さって、ありがとうございます。これからも楽しみに通わせていただきますね。寒い日が続きますがお体を大切になさって下さい。

神楽さん、初めまして。

とても美しい言葉で、神楽さんのお気持ち、そしてこのブログのことを書いてくださって、ありがとうございました。私もまさに神楽さんが書いてくださったのと同じように、温かい気持ちになり、背筋が伸びるような気持ちになりました。

ひととのご縁ということをこの数日考えていました。それは別のご縁に関してだったのですが、ここのことを考えると、ここに来てくださるかたは、ジェレミー・ブレットの名前で私のブログをみつけてくださるのでしょう。同じひとを好きになったご縁です。そのご縁の中でさらに、長く来てくださるかたや、どうしているだろうと時々のぞきに来てくださるかたとは、考え方、感じ方にどこか響き合うものがあるのだと思います。そういう二重のご縁をいただいていることを幸せに感じます。

神楽さんもどうぞお体を大切になさって下さいね。神楽さんとのご縁のことを感じながら、このブログを続けていこうと思います。

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 RM

Author: RM
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