Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

3つ前の記事「香水から生まれたセリフ:1985年と1989年のインタビューより」で、Irene Adler(イレーナ・アドラー)の香水と彼女の女性としての魅力が、ホームズの鋭敏な感覚にどうとらえられたかをジェレミーが話している箇所を二つ引用しました。

今日は別のインタビューをご紹介しましょう。ラジオ番組Desert Island Discsからです。これについては以前も書きましたが、BBCラジオで現在も放送されている番組Desert Island Discsではなく、アメリカでの1991年のインタビューです。先日もふれた、「ジェレミーが語るホームズの少年時代;1991年のインタビューより」で引用した部分の最後と重複して、さらにその後までです。

このインタビュー番組のトランスクリプトと録音は、フランスのSociété Jeremy Brett de France (JBSF)というグループが"A thrilling time"というタイトルで以前出版しました。そのトランスクリプトから引用します。インタビューアのRobert Aubry Davisは "RD" となっています。

この中でインタビューアが that woman と言ったのを、ジェレミーが the woman といい直しています。元のトランスクリプトでは、三箇所出てくる the woman のすべてで woman を大文字ではじめていましたが、その意図が私にはわからないので(追記:原典では大文字になっていないようだということもあって)小文字にあらため、さらに quotation mark は that との対比のためと理解して、二語にわたってつけていたのを下では the だけにつけています。

JB: さらには兄がいたけど、兄も同じように誰ともまじわらず、ひとりぼっちでドーナッツのようなお菓子を食べる太った少年だった...。

RD: あの小さなクラブにひきこもっている...。

JB: そう、ディオゲネス・クラブでは誰もしゃべらない。ホームズがそういう少年だったからだと思うんです。大学で --- どこの大学かは議論がありますが --- そこで美しい少女が中庭を歩いているのをみてこころが踊ったけれども、少女は彼にまったく気がつかなかった、そのあと女性への特別な感情はもう決して持たないとホームズがきめたのは、そういう子供時代を送ったからだと思います。

RD: "that" woman を除いて。

JB: "the" woman のことですね。

RD: "the" womanでしたね。

JB: ニュー・ジャージー出身のオペラ・スター、イレーナ・アドラーです。私が思うにホームズがイレーナを忘れなかったのは、ホームズが誇る頭脳の面で彼女が彼を負かしたからだと思います。さらに彼女は美しい声を持っていました。ホームズは音楽を愛していますから。


JB: He had a brother who was also isolated and lonely who ate donuts, or the equivalent... fat boy...

RD: Lived in this little club and stayed away...

JB: Yes, the Diogene's where nobody speaks. I guess that's why, after having this tragedy at university - whichever one - he saw a beautiful girl across a quadrangle and his heart leapt, but she never looked at him - so he closed door on that...

RD: Except I guess for "that" woman.

JB: (corrects him) "The" woman.

RD: "The" woman.

JB: The woman, Irene Adler from New Jersey who was an opera star, and I think he only remembered her because she beat him at his own game, and she had a lovely voice and he loves music.

From "A thrilling time" published by JBSF

ホームズは、大学時代にほのかな恋心をいだいことがあると、ジェレミーは何回か言っています。そうかもしれないと思うかたも、いやそんなはずはない、それは自分のホームズではないと思うかたもいらっしゃるでしょうね。ジェレミーのホームズが私のホームズですから(うふふ)、私はそれでOKです!

ホームズは恋愛とはそのあとは無縁だった、そういう感情には背を向けたというジェレミーの言葉に対してインタビューアが、イレーナに対する気持ちは例外だったのだろう、と話を向けます。ジェレミーははっきりとは否定しませんが、それは恋愛感情ではなかったと言っているのだと思います。彼女の頭脳・知性に対する気持ちだと。自分を打ち負かしたひとりのひとへの感情だととらえているのでしょう。先日引用した、ホームズは彼女の美しい胸とすばらしい香りに圧倒された、というのは、必ずしも恋愛と考えなくてよいのだと思います。

そしてそのあとが好きです。ホームズは音楽を愛していたから、美しい声をもつイレーナはホームズにとって、もうひとつ別の意味で特別だったというのです。ジェレミーにとってやはり、ホームズは頭脳だけの存在ではなかったのですね。そして音楽を愛したジェレミーらしい答えだと思います。

この部分の音声を抜き出してみました。"[S]he had a lovely voice and he loves music"というところのジェレミーの声と調子が好きです。思い入れたっぷりではなく軽く歌うように言っています。ジェレミーの "Irene Adler" の発音も含めて、どうぞおききください。英語をカタカナで表記することが不可能であるのは承知の上で、私はこのブログではIreneをカナではイレーナと記したいと思います。下の記事にも発音について書きました。
グラナダ版でのIrene Adler(1): Ireneの名前の発音

それでは約18秒です。








From "A thrilling time" published by JBSF

RM
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コメント

18秒の至福

ジェレミーは古い友人や身内など,本当に気を遣わない仲の人にもこんな風に話すんでしょうか?

ちょっとステキ過ぎるんですけど・・・

ジェレミーの話し方

さきさんの「ステキすぎ」発言につられて、久しぶりに Jeremy Brett Information から頂いた Desert Island Discs の音源を聞いてました。

> そのあと女性への特別な感情はもう決して持たないとホームズがきめたのは

tragedy を強めに言ってるのが、「ホームズってばそんなにショックだったの…」て感じで。女の子にときめいたけど気づいてももらえなかったことに傷ついただなんて、感情は理性に反するからどうのこうのとか言ってるけど実は誰よりも感情的になりやすく傷つきやすいからバリア張ってる、て感じですホームズさん。。。

he saw a beautiful girl でいったん切って across a quadrangle と言うのは、「ホームズはきれいな女子学生に目を留めた… 彼女は中庭をゆっくりと横切っていく…」という、情景を想像する“順番”みたいなものが感じられて、聞いているわたしもジェレミーが描くそのシチュエーションを一緒に見ているような気持ちになります。
and と his heart leapt, のあいだの間も、実際にその情景を目にして、ホームズの胸がきゅんとなる(笑)、その時間を共有してるみたいな気分です。
ホームズの立ってる場所の煉瓦の壁に這うツタの葉の緑、清楚で頭のよさそうな若い女性が中庭の明るい光の中を優雅に歩いている姿、見とれるホームズ、気づかず通り過ぎる女性、ジェレミー@若ホームズの切ない表情まで見えますが、なんでしょうこれは。監督もカメラマンも不要でこんなドラマが観られるなんて我ながらお得な脳みそをもっていると思います。

> 私が思うにホームズがイレーナを忘れなかったのは

ここの I think の後の切り方も好きです~。RMさんの仰るように「はっきりとは否定しませんが」、僕は(あなたの言ったこととは違って)こう思う、って言ってるんですよね。ジェレミーのこういう、相手に通じるように話す話し方(って変ですね!?誰だってそうしてるはずなんですけど!)好きです。ジェレミーと話がしてみたいなぁって思いますよね。英語がわからないというのは置いといて、世の中には「この人とは話が通じそう」と感じる人とそうでない人がいますが、ジェレミーは間違いなく前者です。一言一言、だいじに喋るし、こちらの言葉も一言一言だいじに聞いてくれそうだなぁって。

> ジェレミーのホームズが私のホームズですから(うふふ)、私はそれでOKです!

わーなんかこれって愛の告白っぽいです!
RMさんはホームズの原作にそれほど親しんではなかった状態でジェレミーのホームズを観て「ホームズそのもの」と思われたんでしたね。(Yukariさんとのコメントのやり取りを拝見しました)
それだけジェレミーのホームズが「ハマってた」ということでしょうね。

わたしは現代版SHERLOCKを入口にジェレミーホームズと原作でじわじわ「ホームズ」という人物のイメージができてきたクチなので、RMさんのような、または世界中のシャーロキアンが言うような、「これぞホームズ」的な衝撃はなかったですが、ホームズってこんな感じの人というイメージができてから他のいろんな映像作品やパスティーシュを節操なく観て(読んで)、一人の人についての描写なのにものすごい幅があること、でも確かにどれもホームズだ!と思えるその不思議さが面白いなぁと思っています。今頃になって言いますがシャーロック・ホームズって面白いですね!

そして、じわじわ組としては、ホームズものを観まくるようになってそろそろ一年になりますが、こんなにいろいろ観てもやっぱりいちばん好きなのはグラナダのジェレミーホームズ(^^)、と思えることがすごいな、と思います。

さきさん、私の想像では

こんな風に話すだろうと思っています。もちろんもう少しくだけた発音になるかもしれないけど、基本はこんなじゃないでしょうか。

>ちょっとステキ過ぎるんですけど・・・

まったく同感です!

まるさん、あのインタビュー

全部素敵ですよね。

>女の子にときめいたけど気づいてももらえなかったことに傷ついただなんて、感情は理性に反するからどうのこうのとか言ってるけど実は誰よりも感情的になりやすく傷つきやすいからバリア張ってる、て感じですホームズさん。。。

ここらあたりが人によっては「私のホームズはそんな傷つきやすくない」と思うかもしれないと感じたのです。でもジェレミーのホームズは、少なくとも若いころは、こんなだったのですね。

>he saw a beautiful girl でいったん切って across a quadrangle と言うのは、「ホームズはきれいな女子学生に目を留めた… 彼女は中庭をゆっくりと横切っていく…」という、情景を想像する“順番”みたいなものが感じられて、聞いているわたしもジェレミーが描くそのシチュエーションを一緒に見ているような気持ちになります。

ああ、いい訳ですね。英語の順番のままで訳すのは、話しているひとのこころの動きにそっているところがいいですね。

>ジェレミー@若ホームズの切ない表情まで見えますが、なんでしょうこれは。監督もカメラマンも不要でこんなドラマが観られるなんて我ながらお得な脳みそをもっていると思います。

まるさんも「想像の翼」を持っていらっしゃるのですね。そしてもちろんジェレミーもそうだった。

>ジェレミーと話がしてみたいなぁって思いますよね。英語がわからないというのは置いといて、世の中には「この人とは話が通じそう」と感じる人とそうでない人がいますが、ジェレミーは間違いなく前者です。一言一言、だいじに喋るし、こちらの言葉も一言一言だいじに聞いてくれそうだなぁって。

はい、言葉と、その言葉にこめられた気持ちを大切にしてくれそうですね。

>わーなんかこれって愛の告白っぽいです!
RMさんはホームズの原作にそれほど親しんではなかった状態でジェレミーのホームズを観て「ホームズそのもの」と思われたんでしたね。

そうなんです。私はホームズに特別な興味はなかったけど、新しいドラマがはじまったから家族で居間でみていた、ただそれだけだったのです。そしたらびっくりしてしまいました。そして、はい、愛の告白といいますか、なんといいますか(うふふ)。

>そして、じわじわ組としては、ホームズものを観まくるようになってそろそろ一年になりますが、こんなにいろいろ観てもやっぱりいちばん好きなのはグラナダのジェレミーホームズ(^^)、と思えることがすごいな、と思います。

やはり特別ですね!

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 RM

Author: RM
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