Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

前回ジェレミーの若い頃の舌癒着 (tongue-tie) に触れました。今回もそれに関係するお話から始めます。

今日書きたいのは
母のことなど:1984年のインタビューより
という昨年書いた記事で引用した部分の続きです。その後半部分を再度書いた上で、今日のところに続きます。

書誌情報についてはeBayに出た切り抜きの画像には題しか載っていませんでしたが、昨年の記事にも書いたとおり、おそらくこれであっているでしょう。
The More than Elementary Mr. Jeremy Brett
Woman and Home interview by Marianne Gray, June 1984

「役者の道にすすむように励ましてくれたのは母です。母は美しくて魅力にあふれていて、半分がアイルランド人、全部がクエーカーでした。私達の家はイングランド中央部にある大きな屋敷で、コベントリーから少しはずれた田舎にありました。母はこの家をいわば『フラワー・パワー』(訳注:慣習にとらわれずに愛と反戦をひろめる、60-70年代のヒッピーたちの運動)のやりかたで切り盛りしていたんです。いつも困っている人を連れてきて住まわせていました。Westonという名の一家全員が戦争の間ずっと厩舎にいたことを覚えています。母は家にいつも音楽と活気をもたらしました。」

彼女は、4人兄弟の末っ子のジェレミーをロンドンの演劇学校 セントラル・スクール・オブ・スピーチ・アンド・ドラマに行かせてくれた。RとSの発音がうまくできないのが最初は不安だった。発音はイートン校にいたときずっと不名誉に思っていたことで、特に自分の名前を言うときに恥ずかしさを感じた(「ジェウェミー (Jewemy) って言った?」)しかし演劇学校で十分な教育をうけて、いよいよ俳優への道を歩き出した。

"It was my mother who encouraged me to act. She was a dazzling woman, half Irish and fully Quaker, and ran our home, a large country house deep in the Black Country outside Coventry, in a sort of "Flower Power" way, always filling it with people that she'd picked up. I remember her bringing home a whole family called Weston during the war and all of them stayed in our stables. She brought music and life."

She sent her youngest of four boys off to London's Central School of Speech and Drama. Briefly daunted by a vocal problem in having difficulty in pronouncing his R's and S's, a stigma which dogged him at Eton, especially with his name ("Jewemy"?), he was trained up and set off on his acting life.


舌癒着で"r"と"s"の発音がうまくできなかったということは以前から知っていましたが、うかつにも、Jeremyという名前に"r"が含まれていることにこの記事を読むまで気づきませんでした!自分の名前は"Jeremy"だと言うと、"Jewemy"?と聞き返されたら、そしてそれがからかいの種としてだったら、いやな気持ちだったでしょう。それでも俳優になりたいという意思は子供の頃から変わらなかったのですね。

さらに芸名となったBrettにも"r"がありますね。Brettは最初に父につくってもらったスーツの仕立て屋の名前だということは、何度かインタビューで話しています。私のブログでは、たとえばこちらで触れています。
ひじのすり切れたセーター、はじめてのスーツ、父の乗馬ズボン(2)

このBrettという名前を選んだときに、もしかしたらジェレミーのこころの中には、ここにも自分をずっと悩ませてきた"r"があってちょうどよい、という若者らしい挑戦心があったかもしれない、と今回あらためて想像しました。


仕立て屋の名前がBrettということからの連想で、2010年のTom and Jerry Meet Sherlock Holmes(トムとジェリー シャーロック・ホームズ)のお話をします。このアニメーション映画にBrett Jeremy(ブレット・ジェレミー)という仕立て屋が出てくることをご存知のかたもいらっしゃるでしょう。この名前はもちろんジェレミーとジェレミーのホームズを愛するひとへのひそかな目配せなのですが、それが仕立て屋の名前であるということも、さらにうれしく感じました。Brettの名が仕立て屋に由来することを知っているひとが製作に関わっているのでしょう。

この作品でホームズの声を演じているのは、イギリスの俳優Michael York(マイケル・ヨーク)です。十数年前に彼の読むオーディオブックThe Lion, the Witch and the Wardrobe(ライオンと魔女 ナルニア物語)を買って以来、私はこのオーディオブックや彼のほかの朗読が大好きですし、インタビューでそのお人柄も感じています。マイケル・ヨークは1942年生まれですからジェレミーより9歳下です。舞台でもオーディオブックでもジェレミーと共演していますし、彼とジェレミーが(ほかの友人たちも一緒だったかもしれませんが)ある舞台を観にいったときの小さなエピソードを、フォーラムのメンバーから教えてもらったことがありました。「伝聞の伝聞」とでもいうべき内容ですからここには書きませんが、マイケル・ヨークのホームズを聴いて、今はないフォーラムとともにそのことを懐かしく思い出します。

そのマイケル・ヨークが"Brett Jeremy"という仕立て屋の名前をホームズとして口にしたときに、ジェレミーの姿と声がこころの中に浮かんだだろうと想像して、あたたかい気持ちになりました。

RM

追記:マイケル・ヨークの自伝をGoogle BooksのSnippet view(断片表示)で断片的に読むことができましたので、ジェレミーと共演した舞台の題Any Just Cause (1966)と、兄弟の役だったことが載っているところを、資料として引用しておきます。

After recording a television drama, I returned to the theater in a new play called Any Just Cause in which Jeremy Brett was my brother and Phyllis Calvert my mother. Reviews were excellent apart from a crucial one from the Sunday Times, ever in disagreement.


Accidentally on Purpose
by Michael York
Pocket Books, 1993/02/01
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コメント

おはようございます

ここ二三日,ようやく気温が下がりましたね!
暑さが薄れたら,なんだか身体がバラバラになったような気持です。
ふらふらとこちらへお邪魔してみると・・・今回はまた盛りだくさんのご馳走ですね。

前回の記事を読んだ時に,ジェレミーはうまく発音できないことで困ったこともあっただろうし,手術や発音の練習も大変だっただろうな,と思いつつもご本人の話しぶりからか,RMさんが上手に日本語にしてくださったからか,つい,「ジェレミーが一生懸命自分の希望を言っているのを聞いてみたい!かわいい!」なんて思ってしまったのでした。

でも,RMさんの指摘されているように自分の名前にもRがあったのですねえ。
わたしも今まで気がつきませんでした。

この部分を読みながら大切なことで気がついていないこと,たくさんありそうだなあ,と思ってしまいました。

それでもと言うか,だから余計になんでしょうか,17歳のジェレミー・ハギンス少年が「俳優になりたいんです!」と言うのを聞いてみたかったです。
ジェレミーの夢が具体的な形になる初めの一歩ですもんね。
そう思うとなんだかわくわくしてしまうのです。

>このBrettという名前を選んだときに、もしかしたらジェレミーのこころの中には、ここにも自分をずっと悩ませてきた"r"があってちょうどよい、という若者らしい挑戦心があったかもしれない、と今回あらためて想像しました。

このRMさんの推察も,いかにもジェレミーらしい感じで楽しく読みました。

そして,マイケル・ヨーク!
聞いたことのある名前だなと思ったら,映画「オリエント急行殺人事件」にハンサムなハンガリーの伯爵役で出ているのを観たことがあったのでした。
ジェレミーと一緒に仕事をしたことのある俳優さんだったんですね。

それに,「トムとジェリー」の仕立て屋の名前,これも良い話ですね。

デザートまでたっぷりのフルコースの記事を,ごちそうさまでした。
大変おいしくいただきました。(^^)/



涼しくなりましたね。

さきさん、こんばんは。過ごしやすくなりましたが、台風がまた心配ですね。

ジェレミーの発音のことがフォーラムで話題になった時も、名前のことは誰も言っていなかったこともあって、私もこのインタビュー記事を読むまで気がつかなかったのです。さきさんもでしたか。

>17歳のジェレミー・ハギンス少年が「俳優になりたいんです!」と言うのを聞いてみたかったです。

私もです。そしてお兄様のコートを着たジェレミー・ハギンス少年をみてみたかったです。

>ジェレミーの夢が具体的な形になる初めの一歩ですもんね。
そう思うとなんだかわくわくしてしまうのです。

ああ、本当ですね!夢へ向けての第一歩なんですね。

>このRMさんの推察も,いかにもジェレミーらしい感じで楽しく読みました。

ジェレミーらしいって言っていただけるとうれしいです。

マイケル・ヨークが出演している映画、ご覧になっていたんですね。マイケル・ヨークは私は声を先に知ったのですが、ハンサムですね。インタビューではおだやかなユーモア、紳士的な人柄を感じました。今Wikipediaで調べたら、映画「オリエント急行殺人事件」には、ジェレミーと舞台やテレビで共演しているほかの俳優も、何人も出ていますね。機会があったらみてみたいです。

>デザートまでたっぷりのフルコースの記事を,ごちそうさまでした。
大変おいしくいただきました。(^^)/

わーい、ありがとうございます!

今日は命日ですね

こんにちはー、ちょっとお久しぶりです♪

RとSの発音・・。相当苦労していたんだろうなぁと思います。
ただ、手術を受けてからは、本当に美しい発音になりましたよね!最も美しいクィーンズイングリッシュの一人になりましたし。
あと、ジェレミーはこの手術のせいもあり、毎日30分発声練習をしていたとありましたよね。
この年になるまでピンと分からなかったのですが、それは顔の運動にもなり、法令線の予防になるんですよねー。
この年になって、どうしてジェレミーはこんなに若さを維持できるんだろうと、本当に不思議でしたが、こういう色々な要素が合わさってあの若々しさ、美しさを維持していたんじゃ無いかと思います。

当初はジェレミーを苦しめた、舌の障害。
でも手術後はきっと良いこともあり、彼を助けたんじゃないかと思います(*^_^*)

りえさんの記事、拝見しました

りえさん、こんばんは。

12日のりえさんの記事も拝見しました。「美しき自転車乗り」でしたね。このブログでもちょうど、ご命日に寄せての記事が「美しき自転車乗り」にもちょっと関連していました。

発音のこと、私にはよくわからないのですが、若い頃の作品を観たひとによると、初期にはまだRとSの構音障害の痕跡があったみたいです。

>あと、ジェレミーはこの手術のせいもあり、毎日30分発声練習をしていたとありましたよね。

ホームズの頃でさえ、ですね。いかにも努力家のジェレミーらしいです。ドラマ・スクールの時から、かわらずものすごく努力したのでしょうね。

>この年になるまでピンと分からなかったのですが、それは顔の運動にもなり、法令線の予防になるんですよねー。

うふふ、そうでしたか。

>当初はジェレミーを苦しめた、舌の障害。
でも手術後はきっと良いこともあり、彼を助けたんじゃないかと思います(*^_^*)

ああ、まったく同感です。声による表現の幅の広さ、声に感情をそのまま含ませるところ、言葉を大切に届けるところは、ジェレミーがもともと障害を持っていたことと関係しているかもしれませんね。普通は私たちにとって話すことはあまりに日常的で、言葉を口にすることに特別な喜びは感じないものですけど、ジェレミーは手術をした後は、言葉を思いのままに声にのせることの喜びを感じていたかもしれません。

Jeremy

おはようございます。

RMさんはご存じの事かもしれませんが,私自身がある本を読んでいて,そうなんだ!と思ったことを書かせてくださいね。

「人名の世界地図」という本に,Jeremyとは旧約聖書の預言者エレミア「神に選ばれし者」からの名,とあるのを見つけました。
Rがあって発音に苦労はするけれども,ご本人にとって大切な名前,または大好きな名前だったのかな?そんなことを思ったりしています。

大切な名前

さきさん、こんにちは。
旧約聖書にある名前から、というのは知っていましたが、意味までは考えていませんした。教えてくださってありがとうございます。

>Rがあって発音に苦労はするけれども,ご本人にとって大切な名前,または大好きな名前だったのかな?そんなことを思ったりしています。

本当ですね!それで思い出したのですが、ジェレミーの本名はPeter Jeremy William Hugginsですよね。以前のフォーラムであるひとが、ジェレミーは"Peter"と呼ばれたことがあったのかしら、小さい頃にもなかったんじゃないかしら、想像できない、と言っていました。本当のところはわかりませんが、私もそんな気がします。

赤ちゃんの頃から"Jeremy"が呼び名になって、そのあと発音で苦労してもかえなかったとしたら、さきさんがおっしゃっるように、愛着のある大切な名前だったからかもしれないですね。

名前が複数

RMさんが時々フォーラムで話し合われたことを書いてくださるのを,いつも興味深く読んでいます。

知識として名前が複数の場合がある,とわかっていても,複数の名前を持っている感覚をなかなか肌で感じることはできないものですから,いろんな方の意見がとてもおもしろいのです。

気分次第で名前をいろいろ組み合わせて楽しめるのかな,なんて思いますが,実際にはよく考えてから実行しないと混乱のもとになりそうですね。

ちなみにわたしはJeremy Hugginsの組み合わせ,というか本名が好きです。なぜかはわかりませんけど,響きが好きなのかもしれませんね。

おお!

さきさん、こんにちは。

>RMさんが時々フォーラムで話し合われたことを書いてくださるのを,いつも興味深く読んでいます。

そう言っていただけるととても嬉しいです。懐かしい場所、懐かしい日々です。

私もそのときびっくりしたのです。そういえばPeterが一番初めなんだ、と。名字以外では、どの名前を普段使うかはわりと自由なようですね。イニシャルだけでも途中に入れるか、まったく入れないかも。

>ちなみにわたしはJeremy Hugginsの組み合わせ,というか本名が好きです。なぜかはわかりませんけど,響きが好きなのかもしれませんね。

さきさんのこのお話をうかがって、「おお!」とびっくり。たしかジェレミーも似たようなことを言っていた記憶が...。そしたらここに引用していました。
http://upwardjb.blog112.fc2.com/blog-entry-358.html
「ハギンズの名を使えたら、バランスのよい名前だったと思うのですが。」

JeremyとHugginsとのバランスとは直接は言っていないのですが、私はこれを読んだときそう解釈したんです。ジェレミーはそういう意味で言ったんですよね、おそらく。さきさん、すごいなあ。

!!!

名前の組み合わせ,おもしろいですね。
間にイニシャルが入る人や入らない人,いろいろだなあ,と漠然と思っていましたが自分で決めて良いんですね。
なんだか楽しそう。

>「ハギンズの名を使えたら、バランスのよい名前だったと思うのですが。」
確かにJeremyとHugginsの組み合わせとは言っていませんが,そうとれる言い方ですよね。
わーい,もしかするとジェレミーと同じ好みかな?(笑)

きっとおさまりのいい名前の組み合わせってあるんでしょうね。

!!!!!

>わーい,もしかするとジェレミーと同じ好みかな?(笑)

そうかも、です。うらやましいなあ。

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