Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

この7月の記事でご紹介したインタビュー映像では、ホームズは女性の手が届くところにはいない (beyond their reach) とジェレミーは言っていて、こういう意味のことを言っているのは何度か読んだことがあります。ところが、女性の手がほんの少しだけ届きそうなところに、自分はホームズを連れてきてしまったかもしれない、と言っているインタビューがありました。1990年のアメリカの新聞に載ったもので、The Secret of Sherlock Holmesの公演時にイギリスでジェレミーにインタビューしています。(追記:Bradfordの劇場で、とあるので、インタビューの時期は1889年10月です。Jeremy Brett Informationのデータ参照。)

ちょうど前回、自分はもともとそういう役者なので、ホームズをロマンチック・ヒーローのように演じてしまった面がある、という発言を紹介しました。これはそのことを別の言葉でいいかえたもののように思います。自分がホームズを演じたために、女性が憧れるホームズという一面をつくりだしてしまったかもしれない、手がとどくかもしれない、と女性が思うような対象にしてしまったかもしれない...。

ただ、そこだけを取り上げると、少し誤解されるかもしれません。ジェレミー、自分が女性にもてるって言いたいのかしら、と。いえ、ジェレミーがどんな性質(たち)か皆様はご存知でしょうから大丈夫でしょうけど。

でも今回はそれに先立つ部分から引用して、多分次回、女性にとってのホームズということにふれます。ジェレミーが最初、ホームズをどう感じたかというところからです。そしてワトスンのことに話が続きます。

A Sherlock Holmes To Investigate At Home
by Kate Tyndall
The Philadelphia Inquirer, March 29, 1990
http://articles.philly.com/1990-03-29/entertainment/25901981

ホームズを演じるのは以前より楽になってきたが、最初はそうではなかった。ブレットはこの探偵は、自分が思う好ましい人物像とは正反対だと感じた。

「ホームズは私の好みには合わないんです」と自分の率直な気持ちを口にして、ゆずらなかった。「ホームズは最悪の男だと思っていました。愛想というものがない、失礼な男だと思ったんです。なんでも知っているという顔をする人は好きではないんですが、彼はまさにいつもすべての正解を知る男で、それに苛立ちました。そしてホームズのあの、ひとに対する態度です。彼の作法は最悪でした。彼とはうまくやっていけませんでした。」

7年たっても、ブレットはこの役はとても難しい、あの男はつきあいにくいと感じている。それでもホームズに没頭している。「いつもどこか、私の気持ちに火をつけるものがあるのです。もしホームズがどういう人物かすべてわかってしまったら、退屈するでしょう。でもホームズに関しては、岩山の斜面にとりついて頂上目指して一歩一歩進んでいくようなものです。でも決して頂上にはたどりつけない。頂上にはたどりつけない。」

ブレットはワトスンには共感し、好意を持っている。「ワトスンはなんて思いやりのある男だろうといつも思っていました。 それから舞台でワトスンを演じて、彼を演じるほうがずっと私に向いていると思いました。ワトスンは愛情にあふれていて、だれかと一緒にいるのが好きで、まわりのひとを元気づけてくれて、友人を大切にする素晴らしい男です。ワトスンがいなかったら、ホームズは死んでしまうと思います。」

His Holmes comes easier now, but that wasn't so in the beginning, when Brett found the detective antithetical to his own idea of what makes a man.

"He's not my cup of tea," he said with perverse candor. "I thought Holmes was terrible - so abrupt and rude. I don't like know-it-alls and he was the one who always got it right, and that irritated me. And you know, it was also his manners; he had the worst manners. I didn't actually get on with him too well."

Even after seven years, Brett finds the role troubling, the man no more likable. Yet Holmes continues to engross him: "There's always something that sparks me. If I could pin him down, I'd get bored. But with Holmes you're climbing the rock face toward the top, but you never get there. You never get there."

Brett reserves his sympathy and affection for Watson. "I always used to think how sweet Watson was, and then I played him on stage and discovered he was a much better part for me," Brett said. "He's so full of love, and outgoing and reassuring, a loyal friend, so marvelous. If it wasn't for Watson, I think Holmes would be dead."


ホームズのこと、そんなに悪く言わないでと思う方もいらっしゃるでしょう。ジェレミーは最初はホームズが好きじゃなかった、ということをよく言っていますね。でも最初に限らず、時によってホームズのことがかなり嫌になっていたようです。"becomer"としてホームズと長くつきあうのは大変だったでしょう。このインタビューの時は「ホームズは最悪の男だと思っていました」と過去形で言っていますから、ほっとしました。

そしてひととしてのホームズとはつきあいにくくても、演じる対象としては抗いがたい魅力があったのですね。その魅力は、たどりつけないとどこかで知りながら、それでも岩山の斜面を登っていくようなものだ、というのです。ジェレミーにとってホームズを演じるというのがどういうことか、感覚的にわかったような気がしました。いつも思いますが、ジェレミーの比喩は、このように感覚に訴えるものが多いのが魅力的です。

このあとワトスンのことを話しています。ニコニコしながら楽しそうに話したでしょうね。ワトスンがいなかったら、ホームズは死んでしまうだろう、と言っているのも何度かききました。たとえばこちらで引用したインタビューです。
ホームズとワトスンの友情:1985年のThe Armchair Detective のインタビューより(2)

ホームズは死んでしまうと思うんですよ、(ジェレミーは目をきらきらさせて)つまり二人が実在の人だとしてですが、もしもワトスンがいなかったら死んでしまうと思うのです。もしワトスンが突然ホームズの元を去って、たとえばマダガスカルに住むことになったら、ホームズは6週間もたたずに死んでしまうでしょう。そんなふうに私たちは演じることにしたのです。

I think that Holmes would be dead—(with a twinkle in his eye) I mean, just pretending that they were real people—if Watson weren't there. If Watson suddenly decided to go and live, let's say, in Madagascar, Holmes would be dead inside of six weeks. And that's what we chose to play.


Interview with Jeremy Brett
by Rosemary Herbert
The Armchair Detective, vol.18, no.4, 1985

ジェレミーはワトスンが好きなので、ワトスンのことを話すときは楽しそう、幸せそうです。それにくらべて、ホームズを演じるのは岩山を登るようだったのですね。苦しくて、でも演じ甲斐のある役でもあったのですね。

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