Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

前々回、こんなふうに書きかけていました。

この7月の記事でご紹介したインタビュー映像では、ホームズは女性の手が届くところにはいない (beyond their reach) とジェレミーは言っていて、こういう意味のことを言っているのは何度か読んだことがあります。ところが、女性の手がほんの少しだけ届きそうなところに、自分はホームズを連れてきてしまったかもしれない、と言っているインタビューがありました。

自分がホームズを演じたために、女性が憧れるホームズという一面をつくりだしてしまったかもしれない、手が届くかもしれない、と女性が思うような対象にしてしまったかもしれない...。


ジェレミーがそう言っている部分のご紹介を、今日は書きます。"romance"が私の中ではキーワードなので、以下の二つの記事に続いて、大袈裟ですがロマンス三部作と名付けます!最初の記事では"romantic hero", 二番目でも"romantic"という言葉がジェレミーの口から出ましたから。
"Romantic hero":1988年のインタビューより
ホームズのこころの奥:2004年の新聞記事より

今日の新聞記事の日付は1990年3月、ジェレミーの言葉はThe Secret of Sherlock Holmesの公演時のインタビューからで、Bradfordの劇場ですから1889年10月です。

A Sherlock Holmes To Investigate At Home
by Kate Tyndall
The Philadelphia Inquirer, March 29, 1990
http://articles.philly.com/1990-03-29/entertainment/25901981

自分の演じるホームズが人気がある理由、特に女性に人気がある理由は、自分が演じるホームズから、自由で奔放な感情がかすかに感じられるからだとブレットは思っている。「私の何かが、ことによるとウエストコート(ベスト)の一番上のボタンかどこかから、ひそかにほんの少し漂い出ていて、もしかするとそのためにホームズがあんなに人気があるのかもしれません。もともとホームズは人付き合いはいつも避けていますし、男だけが所属する紳士クラブのメンバーです。女性が好む男でも女性とうまくつきあえる男でもないと思います。女性の手が届くところにはいないのです。もしかしたら私はホームズをほんの少し手が届くところに連れてきてしまって、原作にあるホームズから変えてしまったかもしれません」と言った。

Brett believes the popularity of his Holmes, especially with women, comes from a subtle whiff of romance that emanates from his character. "Some element, maybe through my waistcoat top button or somewhere, creeps a little bit out of me, and maybe that's the reason why he's so popular.... He's always been a recluse, a clubman. I don't think he's been a woman's man. He's unreachable. I may have corrupted him by putting him slightly within reach," he said.


"a subtle whiff of romance that emanates from his character"というところ、"romance"という言葉が出てきました。今までのロマンス三部作の二つ目までで書いたように、これを「恋愛、恋愛感情」ととってしまってはいけないと思って、カタカナの「ロマンス」とはしませんでした。"romance"の語義がいくつかある中で、ここではこんな意味ではないかと思いました。

・ロマン, 浪漫, 冒険心, わくわくする心(ウィズダム英和辞典)
・奔放な感情のままに行動する性格[性質],想像力豊かな性質,ロマンチックな気質;空想癖(ランダムハウス英和大辞典)

そこで"a subtle whiff of romance"を、自由で奔放な感情がかすかに感じられる、と訳しました。

"maybe through my waistcoat top button or somewhere"(ことによるとウエストコートの一番上のボタンかどこかから)って、面白いですね。慣用表現という可能性も考えましたがみつかりませんでした。この前も書きましたが、ジェレミーのこういう、具体的なイメージが喚起される表現が好きです。

そしてボタンをとおって、ひそかに漂い出ているのが、ジェレミー自身が持つ感情の豊かさ、ゆらぎ、情熱なのでしょう。ジェレミーは、自分が演じるホームズの中に自分自身が少し出てしまったために、ホームズの姿を少し変えてしまったかもしれない、というのです。

そのすぐ後のジェレミーの言葉です。

「でも役者は失敗を恐れず、隠れている生身の人間の部分をみせようとしなければならないのです。もしホームズが大理石の冷たさに籠ろうとしていたら、大理石の彫刻に手を添えて動かさねばならない。もしも人間らしいこころがみえそうになったら賭けに出て、ユーモアを少し、感じやすさや傷つきやすさを少し、失敗を少し、ホームズの中に招き入れなければならないのです。ホームズをそう演じることで観ているひとの気持ちを損ねていないようにと祈りながら。」

"But you have to risk showing the flesh underneath. If he's going to be absolutely marble, then get a marble statue and move it around. If he's going to be flesh, then you've got to take that gamble and bring in a little humor, bring in a little vulnerability, bring in a few faults and pray that doesn't offend people."


いつも感じますが、ジェレミーは原作を大切にしている人の気持ちを気にかけています。その上で、自分がホームズの中に見ているものを表現したいという、俳優としての情熱を感じます。そしてそれは、ホームズの感情の動きであり、ユーモアであり、傷つきやすさなのですね。私たちはまさにそれを感じて、惹きつけられます。

RM
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コメント

!ロマンス三部作!

あら,すてきな命名ですね!

今もまだシャーロキアンにはほど遠いわたしなので,詳しいことはわからないんですが,確かにコナン・ドイルが最初に設定したホームズはかなり変人?あまり女性の近づかないタイプだった気がします。
人気が出てからだんだん変化したようですけど。

ジェレミーが自分の演じたホームズを分析しているのを読むと,本当に冷静に自分を見つめることができるんだなあとつくづく思います。
そしてウエストコートの第一ボタン以外のあちこちからも,人を惹きつける自由奔放なナニカが漂ってきますね〜

それこそジェレミー・ホームズの一番の魅力ですね。



4部作にしてしまおうかな

大げさな命名を褒めてくださって、ありがとうございます!

>ジェレミーが自分の演じたホームズを分析しているのを読むと,本当に冷静に自分を見つめることができるんだなあとつくづく思います。

同感です。俳優もいろいろとタイプがあるようで、演じる役の背景などは考えずに感覚で演じるひともいるようですが、ジェレミーはすごく考えたり研究したり分析したりしますね。直感タイプのジェレミーにそういう面もあるのは興味深いです。

>そしてウエストコートの第一ボタン以外のあちこちからも,人を惹きつける自由奔放なナニカが漂ってきますね〜

はい、こちらは理屈抜きのナニカですね。

>それこそジェレミー・ホームズの一番の魅力ですね。

本当に!

こんにちは!

最近ジェレミアンへの道を歩み始めたよりしろといいます。学者さんのような緻密なブログで感動しながら度々お邪魔しています。過去のものも読ませて頂きながらジェレミーについて教えて頂いています。
原作のホームズというキャラと、対極とも言えるジェレミーの個性が融合してパワフルな現代のイコンとなりネットの世界から私に働き掛けてきたと信じています(^0^)
ロマンス四部作もお願い致します。本当にすごい資料収集力ですね。なんか、ありがとうございます、という気持ちです。

よりしろさん、こんにちは!

りえさんのところでのコメントも、興味深く読ませていただいていました。こちらにも来てくださって、そしておほめの言葉も、ありがとうございます!

RebeccaやThe Very Edgeもみていらっしゃるのですね。ホームズだけではなく他の作品も、そしてジェレミーというひとについても知りたいというところ、りえさんや私と一緒です。

そして以前、ジェレミー演じるホームズから感じられる色気について書いていらっしゃいましたね。それがもしかしたらジェレミーがいうところの、一番上のボタンから漂い出るものかもしれないと思いました。

>原作のホームズというキャラと、対極とも言えるジェレミーの個性が融合してパワフルな現代のイコンとなりネットの世界から私に働き掛けてきたと信じています(^0^)

わあ、パワフルな現代のイコンって、素敵な表現ですね!

>ロマンス四部作もお願い致します。

リクエストありがとうございます。「ロマンス」という言葉でもう一つ思い出したことがあるので、近いうちに四つ目を書いてみようと思います。

お返事ありがとうございます

RM さんのブログを読んで、色気はやはりジェレミーが持ち込んだものだと納得してました!どうやら自覚していたらしいところをみると、もしかして確信犯か、とも笑。だいたい、一番上のボタンから・・なんてにくい表現しますよね。そんな言い方したりするから余計色気が増すんですよね。
でも、ジェレミーの色気は大いなる何かだと思っています。これからもそんなジェレミーのいろいろなこと教えて下さい。よろしくです。

ジェレミーは否定するかもしれないけど

>色気はやはりジェレミーが持ち込んだものだと納得してました!どうやら自覚していたらしいところをみると、もしかして確信犯か、とも笑。

うふふ、「色気」を持ち込んだと言われたらジェレミーは否定するかもしれませんが、私たちからみたらそうですね。そして自分の中の「何か」を持ち込んだことはジェレミーもわかっていたのですね。

>だいたい、一番上のボタンから・・なんてにくい表現しますよね。そんな言い方したりするから余計色気が増すんですよね。

ジェレミーの表現、魅力的ですよね。イメージを誘います。

>これからもそんなジェレミーのいろいろなこと教えて下さい。よろしくです。

こちらこそどうぞよろしく、またいらしてくださいませ。

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 RM

Author: RM
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