Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

先日から何回か触れてきた"romance"という言葉で思い出した記事が、もう一つありました。

Late Jeremy Brett takes final bow as Sherlock Holmes
by Lynn Elder
The Daily Gazette, Dec 3, 1995
https://news.google.com/newspapers?id=XHlGAAAAIBAJ&pg=3660%2C774774

Edward Hardwicke(エドワード・ハードウィック)へのインタビューを含む記事で、その中でエドワードが"romantic"という語を口にしているのです。The Associated Pressの配信記事ですから、アメリカのいくつもの新聞で違う日に違うタイトルで掲載されたのだと思いますが、今日のリンク先の新聞では1995年11月3日付けで、ジェレミーが亡くなって約2ヶ月、ちょうどジェレミーのお誕生日です。(追記:わー、間違えました。12月3日付けの記事でした!)

記事の途中に"Hardwicke said, speaking by phone from London"と書いてありますので、電話でエドワードに話をきいたのですね。今日はエドワードの言葉が最初に出てくる部分を引用します。"romantic"については(多分)次回ご紹介します。

エドワード・ハードウィックは41のエピソードの大部分で、ブレットのエレガントなホームズの相手役ワトスンを演じた。共に演じた仲間であり友人であったブレットは、批評家からの絶賛以上の栄誉を受けて当然だったのに、と彼は言う。

「あの演技は、もっと評価され賞賛されるだけの価値があったのに、彼はそれに価する栄誉を一度も受けなかったと思います」とハードウィックはいう。「ホームズを演じて、これまで名演と言われてきたホームズを、記憶から幾分か消え去らせたのは、俳優として見事な成果だと思います。」

しかしアメリカのエミー賞も、それに相当するイギリスの賞もブレットは受けなかった。「とても悲しいことです」とハードウィックは言う。ワトスンがそうであったように、友をずっと大切に思っているのだ。


Edward Hardwicke, who played Dr. Watson opposite Brett's elegant Holmes for much of the 41-episode series, says his colleague and friend deserved more than critical plaudits.

"I don't feel he ever got the recognition he deserved for that performance," Hardwicke says. "I think it's a remarkable achievement to play Holmes and, to some extent, erase the memory of some great performances in that part."

But no Emmy, or its British equivalent, came to Brett. "Tragic," says Hardwicke, as loyal as Watson.


ジェレミーのホームズが視聴者から熱烈に支持されたことも、シャーロッキアンから原作の見事な映像化として認められ感謝されたことも、批評家から高く評価されたことも、ジェレミーに大きな達成感と、努力が報われた喜びをもたらしたことでしょう。でも、あの作品とあの演技で何の賞も受けなかったことには、落胆したとしても不思議はありません。映像作品や舞台作品に関わる人たちの団体からの評価と栄誉を得なかったことにがっかりしたとしても、無理はありません。The Academy of Television Arts & Sciences(米国テレビ芸術科学アカデミー)、British Academy of Film and Television Arts(英国映画テレビ芸術アカデミー)といった団体が授与する賞を受けなかったのですから。エドワードはジェレミーの気持ちを思いやって、本当に残念なことだと悲しんでいるのですね。


ジェレミーにBAFTA賞をという活動が2010年に始まったのも、多くのひとがジェレミーが賞を受けなかったことを残念に思ったからでした。そして私がこのブログをはじめたきっかけの一つは、この活動のことをネットでお知らせしたい、署名をしていただきたいという気持ちでした。
ジェレミーにBAFTA賞を!(1)

しかし、すでに世を去ったひとには賞を授与しないという従来の方針をくつがえさないとBAFTAの理事会が決定して、活動は終わりました。

ジェレミーが生前、落胆を口にしているのを聞いたり読んだりしたことはありませんが、エドワードをはじめとして多くの人が、悲しいこと、驚くべきこと、信じられないことだと言っています。たとえば「ジェレミーにBAFTA賞を」の活動に寄せたStephen Fryの文章はこちらで読むことができて、"astonishing"(信じがたいほどの驚き)と言っています。
http://www.bafta4jb.com/2010/06/statement-of-support-from-stephen-fry-2/


それではなぜ、ジェレミーのホームズの演技は、何の賞も受けなかったのでしょう。ホームズが放映されていた当時、興味深い記事が書かれました。いつかもう少し詳しくご紹介しようと思いますが、ほんの少し引用しましょう。まず筆者は「ジェレミー・ブレットのホームズは多くの国でとても人気がある(特に日本での人気はものすごい)が、人気があることと、公にきちんと評価されることは同じではない」と書いています。

Underrated
by Kevin Jackson
The Independent, 20 October 1993
http://www.independent.co.uk/arts-entertainment/underrated-a-jigger-of-remorse-a-dash-of-lunacy-overdue-credit-where-credits-due-kevin-jackson-kicks-1511965.html

ブレット氏の演技の素晴らしさが見過ごされて賞の対象となっていないのは、彼は素晴らしい、と誰も言わないからではなく、誰もがそう言うからだ。

Mr Brett's true brilliance is overlooked not because no one says that he is splendid but because everybody does.


「賞の対象となっていないのは」としたのは少し意訳かもしれなくて、ここでは直接そう言ってはいませんが、この前の部分に"popularity is not quite the same thing as recognition"(人気があることと、きちんと評価されることは、まったく同じことではない)とありますから、筆者が権威ある団体による評価を念頭に置いていたのは明らかだと思います。

そして筆者はこの引用部分の直前で、エドガー・アラン・ポーの短編「盗まれた手紙」を引き合いに出しています。誰の目にも明らかなことはかえって盲点となって、あらためて意識されることが少ないのだ、と。

ジェレミーも当時この記事を読んだことでしょう。何の賞も授与されないことへの失望があったとしても、少しでもそれがやわらいで、ドイルも影響を受けたとされるポーの有名な短編のタイトルを見て笑みを浮かべてくれたことを願いますし、そう信じています。

この新聞記事では筆者はこの後、ジェレミーのホームズの素晴らしさをたくさん書いて讃えてくれていますが、それも含めてまたいつかきちんとご紹介しましょう。

RM
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コメント

ジェレミーホームズにはいつもどこかユーモア

BBCのホームズシリーズがたくさん賞を取っているのをみると正直複雑です。楽しんで観ているので余計そう思います。なんでグラナダシリーズにはくれなかったんだろうと。でも多くの人がそう思うからこのような記事も書かれるのですね。今だったらジェレミーもシリーズを足がかりにハリウッド進出しているかな。

よりしろさん、こんばんは。

本当にそうですね。今Wikipediaで調べたら、BBCのSherlockは今までにBAFTA賞、Emmy賞を含めて24の賞を受けたと書いてありました。当然だと思いますが、でも同様の栄誉を受ける機会がグラナダ・シリーズの出演者、スタッフになかったのは驚きです。そしてもちろんジェレミーのことを思うと、とても残念です。

>でも多くの人がそう思うからこのような記事も書かれるのですね。

はい、そう思います。いい記事ですよね。そしてジェレミーのホームズを誰もが最高のホームズだと思ったからこそ、あまりにそれが当然だったからこそ、「賞」という形をとらなかった、という記事をジェレミーが読んでくれたことを願いますし、もしすぐには読まなくても、絶対誰かがジェレミーに見せてあげたと思います!

ところで、よりしろさんのコメントのタイトルの「ユーモア」をみて、うんうん、と頷きました。The Independentの記事にも"Brett's is a richly comic performance"とあって、これと呼応しているようで、嬉しくなりました。

コメディアンホームズ

そうなんですよね、グラナダシリーズではいつもジェレミーらしいユーモアが底を流れていてそれも大好きなんです!ジェレミーだからこそビミョーな表情や言葉がものすごく可笑しかったりしますよね。ジェレミーホームズが大変品のあるコメディアンに見えることがあります!

それで思い出したことがあります

>ジェレミーだからこそビミョーな表情や言葉がものすごく可笑しかったりしますよね。ジェレミーホームズが大変品のあるコメディアンに見えることがあります!

はい!完全なコメディになってはいけないし、そこの兼ね合いが絶妙ですね。ホームズ自身は大真面目でも、私たちはクスリとする、というシーンがいくつもありますよね。「品のあるコメディアン」という表現にも頷きました。

私が思い出したのは「マスグレーブ家の儀式書」で、儀式書に従って庭園を大胆かつ優雅な大股で歩くホームズです。マスグレーブとワトスンの二人を従えて、磁石で方角を確認し、潅木があればそこをいったん迂回し、堀があればそこを渡り、ただただ大真面目なんですけど、クスッと笑ってしまいます。この場面のことをジェレミーが話していたインタビューがあったと思うので、出てきたらブログに書きたくなりました。

お話しているといろいろと思い出して、楽しいです。

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 RM

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