Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

前回はThe Musgrave Ritual(マスグレーブ家の儀式書)の宝探しの場面で、原作から方向と歩数を変更したことについて書きました。

ジェレミーがこれについて触れていたのは1987年のインタビューです。
The SHR Interview: Jeremy Brett
The Sherlock Holmes Review, Vol.1, Nos.3/4, 1987

今回もこのインタビューからで、歩き方の部分です。前回のところを含めて、その前からその後まで引用します。原文では一つの段落のところを、和訳では読みやすいように段落をわけています。

その前に引用に先立つ部分をご紹介すると、ジェレミーがホームズの卓越した頭脳の働きは完全な静けさを通して表現するか、驚くほど素早い動きを通して表現するか、そのどちらかですと言います。インタビューアが「マスグレーブ家の儀式書」での歩幅で距離をはかるあのシーンを思い出します、あれはその一例かもしれませんねと言うのに対しての、ジェレミーの言葉です。

あのシーンでの歩き方は斬新ですけど、でも実は僕がドイルから教わったと言えるようなものです。もし実際に庭で歩幅で距離をはかるとしたら当然、走るか大きな歩幅で歩くかのどちらかでしょう。劇的にみせるには大またで、でも相当な速さで歩くしかありません。すばやく動けば庭中を歩き回れます。

あれで一番面白いのは、宝探しの徒歩旅行でドイルが示したとおりの図形を実際にたどって歩くと、始まりと同じ場所に戻ってくるということです。でも私たちは歩く道筋を変更しました。

あの歩き方は滑稽にも見えるという点で大胆です。でも肝心なことは、ドイルが描いた舞台の中におさまるだろうか、それとも私が演じたホームズはそこから出てしまって下手な漫画になってしまっているかということです。いつもそこに気をつけていなければなりません。でも危険をおかしても思い切ったことをやらないと、あらたな表現を得ることはできないのです。

Brett: That was quite daring, but that actual fact was taught to me by Doyle. If you actually try and do a full yard you either have to run it, or you have to stride it out. The only way to do it dramatically, of course, was to stride it, but at speed. If you are moving fast, you do get about an actual yard. The funniest thing about that is that if you actually follow that diagram that Doyle has drawn for that walkabout, you actually come back to the same place from which you started. But we changed that. The walk was daring because it was comic, but it's a question of will it stay in the canvas or have I stepped outside and caricatured? That's the thing one has to watch all the time. But one must dare or it doesn't take off.


インタビューアは、あのシーンで儀式書に従って庭を突進しては方向転換するホームズは、高速回転している頭脳の象徴のようにもみえると言いたかったのでしょう。それに対してジェレミーは(それもあるけど)原作に従ってやってみたらあれしかなかったのだと言います。

普通の歩幅で普通に歩いて原作どおりに「北、東、南、西」と計36歩では、宝探しとしては無意味なものに見えただろう、そうすると(歩数と方角を変えた上でさらに)走るか大きな歩幅で歩くかのどちらかだろう、でも劇的にするなら走るのではなく大また、しかも高速で、というわけです。

そうすることで滑稽さがあらたに加わった、でもいくらユーモアがあっても、原作をないがしろにしたものであってはいけないと考えるのが、原作を大切にするジェレミーならではです。その上でぎりぎりのところで冒険をするというところ、いつもながら、ああジェレミーらしいなあと思いながら読みました。大胆かつ優雅な大またで歩いたあの演技の裏には、こういう気持ちがあったのですね。

よりしろさんの以前のコメントに「ジェレミーホームズが大変品のあるコメディアンに見えることがあります!」とあったのを拝見して、このインタビューを思い出しました。ホームズの頭脳と性質と品を失わない形で私たちをクスッとさせるのは、ジェレミーならではです。

RM
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コメント

繊細にして大胆ですね

今回も様々な条件をクリアしつつ,ジェレミーらしいホームズを演技する苦労がわかるインタビューでとても興味深かったです(^_^)
ジェレミーは繊細で,でも大胆ですね。

RMさんが,エドワードはジェレミーと演技することをテニスに例えている,と言われていますが,この記事を読んでいてもそれを感じます。

監督もいるし俳優同士でも演技プランを話し合うんでしょうけど,それでも本番で誰かが何か違ったことをすると,それに応えるように別の演技が生まれたりするんでしょうね。
RMさんが「修道院屋敷」でのホームズの演技に迷うジェレミーがどうしたのか,を記事にしていらしたのを思い出しました。

ワトソンはもちろん,ゲスト俳優とのやりとりもそんなことを考えながら観るとより楽しめるみたいです。
ジェレミーはこの俳優を相手に,どんな演技を見せてくれるのかな?そんな感じで(^o^)

ついでに,書き込ませてもらってしまいますが,「ノーウッドの建築士」のレストレード警部とのやりとりは楽しいですね。
特にホームズが,30分でいいから容疑者の話を聞く時間をくれるようにレストレードに丁寧に頼むと「あなたも少しは警察の役に立ってくれたこともあるから」と言われて,瞬時に(本当に一瞬で)むっとした顔になるところがおかしくて。

ベテラン二人が火花を散らすうしろで,マクファーレン青年もがんばっていますし。

例によってキリが無くなりますので,ここまでにして,気温差が激しいですし,風邪,インフルエンザなどに気をつけてくださいね.

品格十分です!

下手な漫画にはなってないですよね!十分すぎるほど品格あります!さすがジェレミーの演技です。宝さがしの大真面目さが滑稽に見える、その絶妙なユーモア度!
上手いなあジェレミーは!
第二の血痕では、マッチの燃えさしで新聞が燃えるシーンに関心してます。その直前、ホームズはちょっと黒いセリフを吐きますよね。この事件に成功したら一世一代の名誉だとか、原作にもあるホームズにしては珍しく世俗的野心的せりふ。
そのせりふを吐くときのジェレミーの微妙で絶妙な表情に惚れます!ううう・・うまいなあ・・本当に!
そして次の瞬間、その黒さとバランスを取るべく用意されたズッコケシーンが火事未遂。
・・というのが私の解釈ですが、とにかくジェレミーホームズのうっかり本音の表情につい繰り返し再生しているとまたあっという間に時間が過ぎてしまうのです。

重症ですね

よりしろさん,本当に重症ですね(^^)/

もう,後はひたすらジェレミーを見続けるだけ,なんですね。
あ,わざわざ私が言わなくても,もう実行中ですね(^o^)

さきさん、こんばんは。

>ジェレミーは繊細で,でも大胆ですね。

ああ!いい表現ですね。繊細さだけではホームズは演じられないだろうし、大胆だけでも、ともすると原作を飛び越えていってしまう。

>監督もいるし俳優同士でも演技プランを話し合うんでしょうけど,それでも本番で誰かが何か違ったことをすると,それに応えるように別の演技が生まれたりするんでしょうね。
RMさんが「修道院屋敷」でのホームズの演技に迷うジェレミーがどうしたのか,を記事にしていらしたのを思い出しました。

まさにそうですね!役を生きるということはそういうことなのでしょう。「生きた人間として演じたい、紙から切り抜いたようにはしたくないのです」とハドスン夫人を演じたRosalie Williams(ロザリー・ウィリアムズ)が言っていたのを、さきさんの言葉で今度は私が思い出しました。
http://upwardjb.blog112.fc2.com/blog-entry-393.html

> 瞬時に(本当に一瞬で)むっとした顔になるところがおかしくて。

はい!これは見直さなくても、目に焼き付いています。

>例によってキリが無くなりますので,ここまでにして,気温差が激しいですし,風邪,インフルエンザなどに気をつけてくださいね.

ありがとうございます。どうぞさきさんも。

よりしろさん、こんばんは。

>下手な漫画にはなってないですよね!十分すぎるほど品格あります!

もう、顔を勢いよくたてにふって、うなずいています!

>そのせりふを吐くときのジェレミーの微妙で絶妙な表情に惚れます!ううう・・うまいなあ・・本当に!

お、これは見直さなきゃ。あ、本当だ、ここってホームズ(ジェレミー)はどんな気持ちで言ったんでしょうね。本気の世俗的野心でしょうか、それともブラックユーモアみたいに世俗的なひとに対する皮肉もこめて「ちょっと黒いセリフ」を言ったのでしょうか。私は後者ととりたいのですが、考えすぎでしょうか。

>そして次の瞬間、その黒さとバランスを取るべく用意されたズッコケシーンが火事未遂。

なるほど、バランスを取るべく、というところ、面白いですね。ブラックユーモアだったとしても、それが成り立ちますね。

追伸です

よりしろさん、
あれからつらつらと考えて、いや、あの表情の中にはホームズの「本気」があったぞ、と思い直しました。名誉なんてものを100%は大切に思っていなくても、でも成功への野心があるんですよね。ジェレミーが、ホームズは褒められるのが好きで、おおげさにふるまい、自慢屋のところがある、と言っていたとおり。

確かにあれも、ホームズの本心からの言葉ですね。

ジェレミーの言葉は、りえさんが「ジェレミー生誕祭 5」で紹介なさっていた、1987年出版の"Granada Companion, Number One: A Sherlock Holmes Album — A Centenary Celebration of Sherlock Holmes" からです。原文はこちらです、ご参考までに。
http://upwardjb.blog112.fc2.com/blog-entry-625.html

ありがとうございます!

私的たわごとを熱心に検証してくださってありがとうございます!大好きな表情なのでついつい力が入ってしまって・・すいません!
名誉のために生きていなくても誰だって褒められたら嬉しいし大きな仕事の時にふっとそんな気持ちが出ても少しもおかしくないと思うのですが、原作にあるホームズのそんなせりふをグラナダは笑い飛ばすべくあんなシーンを入れたんだと思ってます。
もしせりふだけで終わったらホームズもそんなこと考えるんだと少し深刻ぽくなる感じ。
グラナダチームの余裕と大人の演出でしょうか!?笑

なるほど、納得です!

よりしろさん、
いえいえ、コメントで話題にしてくださると、私にとって新しい発見があって楽しんでます。

なるほどなるほど、と納得してぶんぶんと頭をたてにふっています。あのセリフ、あの表情はジェレミー・ホームズの性格・性質と全然矛盾しないのですね。

いろんな表情であのセリフを言うことが可能で、観ているひとは意外に感じたり、ホームズに少しの幻滅を感じることもありうるところを、ジェレミーのあの表情、そしてあの火事騒ぎだから、私たちは安心して(あるいは魅了されて)見ていることができるのですね。

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 RM

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