Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

Joan Wilson(ジョーン・ウィルソン)とジェレミーの夫婦に関して、前々回の記事を書きながら思い出していたもう一つはこちらです。

Tragedy leads to a new Holmes
by Linda Hawkins
TV Times, 19 December 1987-1 January 1988

このTV Timesのバックナンバーは割合とよく見るもので、そう高くなく手に入ります。また"For Fans of Jeremy Brett" 2007年の投稿に、このTV Timesの記事の切り抜きがあります。下2枚です。
http://jeremybrett.livejournal.com/66197.html

「ジョーンがいたから自分を信じられたのです。ジョーンがいないのなら、演じる意味はなくなりました。でも彼女の死に耐えるために私にできることは、働くことだけでした。無理をして働きすぎました。

(中略)

ホームズはとても孤独な男です。それに影響されてしまって外に出る気がしなくなり、ホテルの部屋に一人こもっていました。ひどい状態になって、ほとんどボロボロでした。」

しかし入院後数週間して、回復の兆しがみえはじめた。退院してからそれほどたたずに次の撮影にのぞんだ。自ら望んだわけではない、ひどく辛い経験をしてきたわけだが、心の傷をもたらしたその経験には、結果としては良い面もあったことが少しずつわかってきた。

「ものの見方がかわりました。ベジタリアンになってからだの具合がよくなりました。思っていたよりも、自分はずっと強いのだと知りました。あの辛い時期を乗り越えたのだから、私はきっととても強いはずです。それを知って、自分を信じることができるようになりました。今はずっと楽な気持ちで生きています。

もちろん今でも妻のことを思って、今も生きていてくれたらと思います。パートナーを失うことの一番悲しい面は、何でも話して気持ちを分かち合う人がいなくなることです。でも少なくとも今私は、悲しむだけではなく前を向いていられます。ホームズの他の映像化作品から重圧を感じることも、今ではなくなりました。膨大なセリフを覚えられるか心配して寝られずにいることもなくなりました。」

'Joan was my confidence,' says Brett, 'and without her there was no reason to go on. But the only way I managed to cope with it was to work. I worked too hard and it all got too much.'

[...]

'Holmes is such an isolated man,' he says, 'and that isolation affected me. It got so that I didn't want to go out. I stayed alone in my hotel room all the time. I became very ill and the experience nearly destroyed me.'

Yet after a few weeks in hospital Brett began to recover and not long after returning home was working on another Sherlock Holmes. He had been to hell and back and it was not an experience he would have willingly undergone, yet gradually he realised that the trauma, in a strange way, had had its positive aspects.

'My outlook changed,' says Brett. 'I became a vegetarian and felt better for it. I leaned that I'm much stronger than I thought. I must be strong to have survived, and that knowledge gave me confidence. Now I'm much more relaxed.

'I still miss my wife, of course. The worst thing about not being part of a couple any more is that you've got no one to share things with, but at least now I can go forward. I no longer feel the weight of those other Sherlock Holmeses. I'm no longer up half the night worrying about learning my lines.'


あのすばらしい作品を知っていて、ジェレミー演じるホームズへの評価と、グラナダシリーズがこれからもずっと賞賛され続け、生き続けていくであろうことを知っている今の私たちからは想像がつきにくいのですが、ホームズを演じるにあたってのジェレミーの重圧と不安はとても大きかったのでしょう。あれだけの大きなプロジェクトで、多くのひとが関わり、多くのお金が費やされているシリーズでした。またホームズは多くの有名な俳優が演じてきた役でした。ホームズという孤独で複雑な男は、明るいジェレミーに暗さももたらしました。そんな中でジョーンの存在、共感と助言は大きな支えだったはずです。その支えを失った中で、仕事に没頭することで自分を持ちこたえようとして、自分の中の何かがばらばらになってしまった。そこからゆっくりと回復する中で、自分を信じられるようになっていったということでしょう。

なおベジタリアンになったと言っていますが、ここ以外では読んだことがありません。1989年のScrawlのインタビュー "The Wonderful Mystery of Sherlock Holmes" で、The Secret of Sherlock Holmesの舞台の前にステーキと言っていましたから、ずっとベジタリアンだったとは思いません。この記事の後でかわったかもしれませんし、この時点ですでにそうではなかったかもしれません。

でもそれ以外の、ものの見方が変わったとか、自分に自信が持てるようになったとか、リラックスできるようになったということはこれまでも読んだことがありますし、亡くなるときまでそうだったのでしょう。そしてそれはジョーンを亡くした辛い経験がもたらしてくれたものだと思えるようになって、それでもやはり、いつも多くのことを話して気持ちを分かち合ってきたジョーンのことを死ぬまで思い続けて恋しく思っていたことでしょう。

久しぶりに会ったひととの話の中で、あるいは自分の日々のくらしの中で、別れのこと、死のことを思ったこの半月ほどですので、ここを引用するためにあらためてこのインタビューを読み直す機会があってよかったと思いました。

RM
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コメント

お久しぶりです

今回も心打つ記事をありがとうございます。

ジェレミーは日常的には悩みや不安をあまり家族や友人にも話さなかったような気がします。親しい人を心配させたくないというジェレミーの気遣いもあっただろうし、自立した個人は独立独歩で自分の道を切り開くという文化的背景もあっただろうし、家庭の教育や育ちもあったでしょう。
そんな中で奥さんだけには何でも相談できたとしたら、ジョーンの存在は本当に大きかっただろうと思います。ジョーンがいなくなったあと、病院と縁が切れずに長引いたのも、一人で何とかしようともがいていたせいもあるのではと想像してます。一人で立ち上がるなんて、本当に強いですね。

ジェレミーは働くことにまじめでしたが、それはジェレミーのアーティストとしてのプロ根性で、日本人の従順な働きグセ(無批判で社畜的な)とは違うと思います。ジェレミーの精神はもっと自由です。外から道をつけられることはとても抵抗を感じたでしょうし、自由な発展を保障されて育ってきたと思います。

自由な上に、他人に対してオープンで公平な”友愛の人”だったと思います。友愛と自由!人類の目指すべき進化形です(私見)。その一人のモデルがジェレミーです!(私的ジェレミー解釈)。

日々の悩みを打ち明けて人に頼る感じになるのはあまり良しとしなかったかもしれないけれど、自分の体験として人生の困難を語ることには全くオープンでした。それも友愛と自由があればこそだと思います。

首をぶんぶん縦にふっています

よりしろさん、こんばんは。

>今回も心打つ記事をありがとうございます。

そう言ってくださって、ありがとうございます。はじめからそのつもりで書いたわけではないのですが、ジェレミーの言葉は特にいまの私にも響くものがありました。3月は別れの時期ですし、久しぶりに会った友人から、昨年亡くなったお母様のこと、その前に亡くなったお父様のことをきいた、その後ということもありました。

>ジェレミーは日常的には悩みや不安をあまり家族や友人にも話さなかったような気がします。

私もまったく同感です。ジェレミーは自分の悩みを話すよりも、ひとの話をきくひとだったと思います。ちょうど最近の二つの記事でも、ジェレミーは私たちの話をよくきいてくれた、とただ一度会っただけのファンが異口同音に言っているように。

そしてよりしろさんが書いてくださったように、その中でジョーンは特別だったのでしょうね。

>ジェレミーの精神はもっと自由です。外から道をつけられることはとても抵抗を感じたでしょうし、自由な発展を保障されて育ってきたと思います。

こちらも同感です!ジェレミーが自分を "I'm a rebel" (反主流、権力支配などに反抗する人)と言っていたことが印象に残っています。そして特にお母様が、子供を枠にはめるようなことはなさらなかったようですね。

>自分の体験として人生の困難を語ることには全くオープンでした。

自分の体験を語ることで、とくに同じ病気のひとの助けになることをジェレミーは喜んだのですね。

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 RM

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