Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

前々回の記事に書いた本が届きましたので、この本について少しご紹介してみます。あらためて本のタイトル等と、出版社のページおよびアマゾンのページのアドレスを書きます。

Granada's Greatest Detective: A Guide to the Classic Sherlock Holmes Television Series
By Keith Frankel
Fantom Films Limited, 2016
http://www.fantomfilms.co.uk/books/keithfrankel_granadasgreatestdetective.htm
https://www.amazon.co.jp/dp/1781962677

私が見落としていなければ、著者の略歴などが書かれた欄はこの本にはありません。その中でヒントになると思われるのは、献辞のページに書かれた言葉です。

To all those at Holmesian Net
(especially those of Just Jeremy)
and to Mum and Dad


Holmesian Netの皆に
(特にJust Jeremyのスレッドのメンバーに)
そしてママとパパにこの本を捧げます。


Holmesian Netはシャーロッキアンが集まるウェブ上のフォーラムでした。Wayback Machineで調べると、最初にアーカイブされたのは2006年4月ですから、これより少し前に始まったのでしょう。
http://web.archive.org/web/20060408183631/http://www.holmesian.net:80/forums/

特定のホームズ関連団体の人ではなく、一般の人が書き込める、ホームズ関連のフォーラムの草分けでした。こういう場所がみつからなかったのでここを作った、と創始者が書いていたように記憶しています。上から3つ目にThe Granada Districtという、もっぱらグラナダシリーズについて語るセクションへの入り口がみえます。

こちらは、このサイトがハッキングされてなくなってしまう前、最後にアーカイブされたトップページで、2012年7月です。私が知っているのはこの外観の時です。
http://web.archive.org/web/20120717080222/http://www.holmesian.net:80/forums/

このThe Granada Districtのセクションの中に、誰でも自由にスレッドを始めることができました。そのようにしてできたスレッドのトピック名が並ぶ最初のページです。2012年9月にはこれが13ページもあったのです。
http://web.archive.org/web/20120905024146/http://www.holmesian.net:80/forums/index.php?showforum=10

これは登録しなくても閲覧できるページですが、登録者になるとここに"Just Jeremy"というスレッドへの入り口があらわれました。私はこのサイトがなくなる少し前までの短い期間、調べればわかるのですが1年半くらいだったでしょうか、この"Just Jeremy"のメンバーでした。お粗末な英語で書き込んだ私を皆があたたかく迎えてくれました。

"Just Jeremy"は、ジェレミーに関することを、ひたすら書き込むというスレッドでした。The Granada Districtには、ジェレミーに関するスレッドは他にもたくさん作られています。その中で"Just Jeremy"の特徴は、ジェレミーに関することならなんでもありという場所であったこと、その時々に常連の一人がはじめたある話題について、皆がしばらく継続的に意見を書いたり議論する場所でもあったというところだと思います。今の期間はグラナダシリーズのこのエピソードについて皆で話しましょうという時もありました。長い投稿も多くあり、文章を書くのが上手で好きなのだろうと思わせる人がたくさんいました。

今回この献辞を読んで、著者はこのスレッドの常連だったことがあるのだろうと推測しました。私がいた頃と重なっているでしょうか。



さて、本の中身にはいりましょう。私はこの本を買ってよかったです。そしてページをめくってみて、こういう方はこの本を楽しめるだろうと思いました。

1. David Stuart Davies著 Bending the Willow,
Michael Cox著 A Study in Celluloid,
Peter Haining著 The Television Sherlock Holmes
のいずれか、あるいはいずれも持っていなくて、この3冊に書かれている、このシリーズの舞台裏、演者・監督・プロデューサーなどの言葉に興味がある。

2. 上記の本を持っているけれども、これら3冊の本の記述をまとめた形で、41の作品それぞれの撮影の舞台裏をあらためて読みたい。
また、出演者・監督・プロデューサーなどの言葉を、41の作品にわけて再構成したものを読みたい。(ただし特定のひとつの作品に関する発言ではなくても、どれかの作品のセクションに振り分けられています。)

3. 雑誌や新聞の記事、ラジオインタビュー、テレビインタビュー、ウェブにアップロードされた発言の引用を読みたい。(ただしそれほど多くはないです。)

4. 著者がグラナダ・シリーズの41のエピソードの場面や演技をどう描写するか、どう評価するかを読みたい。


私が読んで面白く感じた理由は2番と4番です。3番はざっとみた限りでは私が読んだ(聴いた、観た)ことのないインタビューはほとんどありませんでした。ですから私にとってはこれは新しい知識や情報を得る本ではなく、読んで楽しむ本でした。

前々回、「つぎはぎしてまとめたような本はあまり読みたくない」と書きましたが、この本の2番の部分は、ある意味ではつぎはぎです。でもこのつぎはぎが上手で丁寧なのです。(もちろん、引用箇所を除いてはコピー・ペーストではなく、自分の言葉で書き直してまとめています。)

撮影の舞台裏に関しては、それぞれの作品について、ああ、そうだった、とあらためて思い出したり、時系列にそって再確認ができました。出演者などの言葉については、必ずしもその作品に関してではなくても、著者がそれぞれの人の言葉にゆるやかなつながりを感じて並べたのだろうと想像出来るものもあって、これも面白いです。私が芋づる式連想で記事を連ねるのと似ていますね。

ひとつ批判を加えるとすれば、インタビューの言葉の引用はすべて出典を記しているのに対して、撮影の舞台裏に関しては、それぞれの記述がどの資料にもとづくかが書かれていません。その記述の出典を書かないことの弊害は、情報の元をたどることができなくなって、絶対的な真実のように一人歩きすること、そして最初の資料の書き手が尊重されなくなることだと思います。たとえばプロデューサーが資料(この場合は本)を残してくれたことはとてもありがたいことです。そしてそれはプロデューサーの目からみたものであり、もしかしたら他の人は違うようにみたかもしれないことも含まれていて、絶対的真実とは限らないのです。(この場合の絶対的真実は、「プロデューサーはA Study in Celluloidという本にこう書いた」ということです。)

最初にあげた3冊の本以外を参考にした部分も、少ないですがありそうなのですが、どの記事、あるいは誰からの情報なのか知りたいと思いました。インタビューの言葉の引用についてはすべて出典がわかるのですが。

このような点はありますが、この本は複数の資料を元に丁寧にまとめて、それぞれのエピソードへの著者の批評も加えた、読んで楽しめる本です。

1番に書いた3冊の本や、3番に書いた他のインタビューをご存知ない方は、はじめて知ることがたくさんあって、その面からもとても興味深くお読みになれるでしょう。



さて、以下の全部にあてはまる方はこの本を楽しめないかもしれません。

1. 写真がみたい。(1枚もありません。本の表紙にホームズと二人のワトスンが載っていますが、これも写真ではなく絵です。本の中には絵もありません。)
2. すでにどこかで読んだものは、あらためて読まなくてもいい。
3. ある特定の人(=著者)が、このシリーズの作品をどう描写しどう評価するかは読まなくていい。
4. これは著者が今回新たに関係者にインタビューして作った本だろうと思って、それを期待している。

でももしも私がこの本を手にする前にこのリストを見たら、私はこの4つに全部あてはまると思うかもしれないです。この本を手にした後では、私はこれを買ってよかったと思っています。

ただ(私にとって)残念なのは、この筆者は割合と難しい単語を使いたがるという気がします。英語の語彙が乏しいもののひがみでしょうか。この本が参考にしている、最初にあげた3冊を読んだ時よりも、見たことがない単語がはるかに多いように思います。まあ、新しい語に触れる良い機会と考えて読んでいきましょう。

まだ一部しか読んでいませんので、今回の紹介には修正や追加もあるかもしれません。その場合は後日書きます。

RM
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