Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

前回に続いて、Edward Hardwicke(エドワード・ハードウィック)のインタビューから引用します。その後でジェレミーの言葉にも少し触れます。出典はどちらも、この1992年の雑誌記事です。

Baker Street Regular: Jeremy Brett and Edward Hardwicke
Interviews by Jim Knüsch
Scarlet Street, No.5, 1992

前回「いつもながらエドワードの冷静さを感じます」と書きました。このインタビューの言葉にはエドワードの理知的なところを感じさせる部分が多くありますので、もう一つ選びました。前回と同じくSSがインタビューア、EHがエドワードです。

SS: このシリーズでこころあたたまることの一つは、ワトスンがレストレードとつよい信頼関係にあるところです。特に「空き家の怪事件」と「六つのナポレオン」でそれがみてとれますね。二人のこの関係はColin Jeavons(コリン・ジェボンズ)と一緒に考え出したのですか、それとも台本にそうあったのですか。
EH: そうとらえてくださって、とてもありがたいです。そんなこと思いもしませんでした。もしも視聴者にそう見えるなら、もともと台本にあった人間関係を私たちがみつけて、それが演技にあらわれたということです。多分そういうことだと思います。「空き家の怪事件」では二人が一緒の場面がかなりありました。結局のところ、一緒に出るシーンがあるかどうかで決まります。そうするとシーンの中で二人の人間関係が出来上がっていくのです。

SS: One of the nice things about the series is the rapport that Watson has with Inspector Lestrade, particularly in THE EMPTY HOUSE and THE SIX NAPOLEONS. Did you work this out with Colin Jeavons or was it part of the script?
EH: Well it's very nice that you should have picked that up. It never occurred to me. I think that, if it's there, it was in the script, and we must have just found that and that's what happened. I think that probably is the case; certainly, in THE EMPTY HOUSE, I remember we had quite a few scenes. In the end it's a question of whether you have scenes together; a relationship will develop of some sort.


レストレードとワトスンの間にお互いへの信頼と好意をみてとれるのであれば、まずそれは、そういうシーン、そういうセリフがあるからで、それを元に俳優は画面上でその人間関係をみせるように努め、さらに深めていくのだ、という答えです。脚本をまず大切にする、脚本にあるセリフを尊重した上で、俳優としてそれを形にするという姿勢が感じられます。

とても冷静で理知的な答えで、俳優の仕事をインタビューアに説明しようという気持ちと、脚本家への尊敬がありますね。


こちらは同じ時のインタビュー、「犯人は二人」の話をする中でコリンのことなどをきかれた時のジェレミーの答えです。もちろん質問が違いますから答えが違うのは当然ですが、ジェレミーはあの情熱的な口調もまじえて答えたのではないかと思えて、エドワードとの対比が面白いです。どうにも訳すのが難しいところ、無理して直訳してカッコ内にもとの英語を入れています。

SS: 他の共演者については、何かありますか?ロザリー・ウィリアムズや、作品によってはコリン・ジェボンズが一緒ですね。
JB: 私のレストレード (my Lestrade)、つまり大切なコリン(my darling Colin)は「犯人は二人」に出てくれますし、最愛のロザリー(my darling Rosalie)も一緒です。つまり、言いたいのは私たちはこの長年の間に家族になったということです。ロザリーやコリンが撮影に参加してくれると、いつも大喜びです。

SS: Any remarks about your other co-stars? Rosalie Williams and, on occasion, Colin Jeavons?
JB: Well, my Lestrade, my darling Colin who's with me in this, and my darling Rosalie who's with me in THE MASTER BLACKMAILER—I mean we've become a family over the years. Every time Rosalie or Colin are in it I rejoice.


このジェレミーの情熱的な答えとエドワードの理知的な答えと、ずいぶん違っていて、でもどちらもあたたかいですね!

RM
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コメント

台本にあるものと、ないもの

「視聴者にそう見えるなんて思いもしなかった」というのは、いろんな場面で当てはまるのだろうなと思いました、この記事を読んで。というのは、わたしは結構「深読み」をするたちなので。特にグラナダシリーズをみていると、台詞以外のちょっとした目線の移動や仕草、一瞬の表情などが重要なことを表しているように感じることが多々あります。

「空き家の怪事件」では、レストレードが陽気に冗談を言ってみせるのに対して、ワトスンはとても淡々と反応しているように見えます。(羽でも生えてましたかな?の時、ホームズさんが喜びそうな事件だ、の時)
冒頭のモノローグからすると、三年経ってもワトスンはホームズの死のショックがまだ癒えてはいないのではないかと想像できます(ジェレミーの言葉ではないですが、完全に癒えることなどないのかもしれませんね。もういないのだということに「慣れる」だけで)。
それで、レストレードが(別に必要ではないのに)ホームズの名を出した時、一瞬はっとしたように顔を上げて「本当に」と静かに答えるけれど、すぐにまた手元に視線を下ろしてメモを続け、レストレードの「彼がいればね」には手元を見たまま黙って頷いてみせるだけですね。このほとんど無反応とも言えるほどのあっさり感が、逆に内心の痛みを表しているように見えて仕方がないのです。この後もレストレードは(ちょっとしつこいぐらいに)ホームズの名探偵ぶりを褒め、無言のワトスンに「私でも敵わない時があった」なんて言って、ここでようやくワトスンもレストレードの方を向いて笑います。レストレードは自分を元気づけようとしてこんなことを言うのだろうな、とわかっているけれど、冗談にまぎれてホームズの話をすることはまだできない…という感じを受けます。
コリンの方も、わたしは勝手に「ああ、ホームズ亡き後にワトスンとは逆に友情が深まったんだろうなぁ」とか「友人を心配してるんだな」と思って見てます。
このインタビュアもこういうものを想定して「強い信頼関係」と言っているのかな、と。

でも、これら全てが、視聴者のわたし達が勝手にそう受け取っているだけで、演じているエドワードやコリンはそんなつもり全然ないかもしれないんですよね! そう思うと演技って本当におもしろいものですね…。
でも、ドラマや映画をみていつでもこういう深読みをするかというとそうではないので、限られた台詞と、台詞以外の諸々からこんなにいろいろ感じさせるグラナダシリーズはやっぱりとても素晴らしいのだと思います。

ジェレミーのインタビューは、これまた読んで幸せになれる記事ですねぇ。
my ってこんな風にも使うものなのか!と思いました。ダーリン、は誰に対してもよく言ってたみたいですね。「大喜び」が本当に大喜びな感じ、大型犬が尻尾をぶんぶん振ってはしゃいでいるような…(笑)
もう本当にジェレミー愛しいです。

目に浮かぶようです!

ことりさん、こんばんは。もう一度「空き家の怪事件」を観てからお返事しようと思ったので、遅くなってしまいました。ことりさんの描写は、読むだけで目に浮かぶようで、観なくてもいいくらいだったのですが。

>台詞以外のちょっとした目線の移動や仕草、一瞬の表情などが重要なことを表しているように感じることが多々あります。

舞台作品やオーディオブックとはまた違った映像作品の醍醐味というのは、そういうところにあるのでしょうね。そういえばジェレミーが映画やテレビと、舞台の違いをきかれて、そういうことを言っていたインタビューがありました。目の動きのことを言っていたのだったかしら。あとは、カメラワークやカット割りのことも言っていました。みつけたらまたブログで書いてみます。

>「空き家の怪事件」では、レストレードが陽気に冗談を言ってみせるのに対して、ワトスンはとても淡々と反応しているように見えます。

今見直しました。ワトスンの一つ一つの反応に対することりさんの描写、的確ですね。ワトスンのあの淡々とした様子というのは、デイビッドのワトスンと印象が違いすぎて今までの視聴者にはちょっと妙に思えるかも、とエドワードも監督も心配してもよさそうですが、これで行こうと思ったのでしょう。そして実際に違和感ないですね。淡々とした様子のかげにある、ワトスンの中の消えない悲しみが感じられます。

>コリンの方も、わたしは勝手に「ああ、ホームズ亡き後にワトスンとは逆に友情が深まったんだろうなぁ」とか「友人を心配してるんだな」と思って見てます。

はい、私も同じです。

>でも、これら全てが、視聴者のわたし達が勝手にそう受け取っているだけで、演じているエドワードやコリンはそんなつもり全然ないかもしれないんですよね! そう思うと演技って本当におもしろいものですね…。

私もこのインタビュー、おもしろかったです。最初に台本があり、シーンがあって、その中にセリフがある。その中で俳優はその役を「生きる」のですね。私たちが時々、ひとが自分をそのようにみているのかと驚くように、そのシーンを「生きて」いる当人にとっては、視聴者の反応が新鮮なのかもしれません。俳優は自分の演技そのものは客観的にみることが必要でしょうが、その役は客観的にはみることができないものなのかもしれません。。

>限られた台詞と、台詞以外の諸々からこんなにいろいろ感じさせるグラナダシリーズはやっぱりとても素晴らしいのだと思います。

私もそう思います。何が素晴らしいのでしょう。やはり俳優が素晴らしいですね。そしてホームズ物語が、いろいろな見方をさそい、許し、包み込む物語だということでしょうか。

>「大喜び」が本当に大喜びな感じ、大型犬が尻尾をぶんぶん振ってはしゃいでいるような…(笑)

わあ、なんて素敵な比喩でしょう!こちらも、ジェレミーの笑顔が目に浮かびます。

グラナダすばらしい、が止まらない

> 舞台作品やオーディオブックとはまた違った映像作品の醍醐味というのは、そういうところにあるのでしょうね。そういえばジェレミーが映画やテレビと、舞台の違いをきかれて、そういうことを言っていたインタビューがありました。目の動きのことを言っていたのだったかしら。あとは、カメラワークやカット割りのことも言っていました。

それはとても興味深いですね。ジェレミーが何と言っていたのか、ぜひ読んでみたいです。
ジェレミーの目の動き! いつも魅了されます。相手の一言によって目つきがスッと変わったり、凝視していないと見逃しそうな一瞬だけチラッと目線移動したり、本当に芸が細かくて。目だけでなく足さばきや指先の仕草まで、常に全身で絶妙な演技をするジェレミーですが、繊細な目の動きは、確かにアップで映る映像作品で特に威力を発揮するでしょうね。

カメラワークといえば、「ぶなの木屋敷の怪」でハンター嬢が221Bに来た時の天井から見下ろすアングル(ホームズが手紙を投げる!)とか、多くのエピソードで頻繁に出てくるホームズの横顔の向こうにワトスン、とか、ワトスンの向こうにホームズ、という風に二人を重ねた遠近感のある構図が好きです。

> ワトスンのあの淡々とした様子というのは、デイビッドのワトスンと印象が違いすぎて今までの視聴者にはちょっと妙に思えるかも、とエドワードも監督も心配してもよさそうですが、これで行こうと思ったのでしょう。そして実際に違和感ないですね。

このことについてのマイケル・コックスの感動的な言葉を、今回更新された新しい記事で読みました。まさにその通りですよね。
エドワードがデイビッドのワトスンからうまく「同一人物感」を引き継いだ、というような話では、エドワードのメイクさんが間違って「デイビッド」と呼んでしまったエピソードがありましたが、最近、初めてグラナダシリーズを観た方がワトスン役の俳優が変わっていることに気づかないまま観ていたことに後から気づいて「違和感なくてわからなかった」と言っているのをTwitterでちらほら見つけて、嬉しくなっていました。

> 最初に台本があり、シーンがあって、その中にセリフがある。その中で俳優はその役を「生きる」のですね。私たちが時々、ひとが自分をそのようにみているのかと驚くように、そのシーンを「生きて」いる当人にとっては、視聴者の反応が新鮮なのかもしれません。俳優は自分の演技そのものは客観的にみることが必要でしょうが、その役は客観的にはみることができないものなのかもしれません。。

ああ、素敵な考え方ですね! 俳優はその役を「生きて」いるから、そこでは人間の内心に生じるいろいろな感情や思惑が当然のこととして表面にあらわれてくる、それはそう演じて「見せよう」としなくても、その役を生きていれば自然と浮かび上がってくるもの。逆に、ある感情を視聴者に「見せよう」として演技しているけど、ちっともその役を生きてるように見えなければ、ダイコンになってしまうのですね…(^^;

> 何が素晴らしいのでしょう。やはり俳優が素晴らしいですね。そしてホームズ物語が、いろいろな見方をさそい、許し、包み込む物語だということでしょうか。

はい、まず俳優が素晴らしいです!(笑)
ホームズ物語の奥の深さについては、ドイル先生の年代やキャラ設定等がいい加減なお陰で読者が勝手に想像補完する余地がある、ありまくる、という点が特異だなとつくづく思うようになりました。ホームズの性格ひとつ取ってみても、複雑で、いろんな面があって、解釈によってどのようにでも作り上げられるのが凄いです。映像ドラマ化するにあたっても、勿論その補完はされるのだけど、グラナダの場合、その補完した部分の説明がわざと不十分にしてある、視聴者の想像にまかせるような余白のある描き方なのが、数ある他のホームズ映像化作品の中でも本当に素晴らしいと思うのです。「ホームズが○○で、○○の時は実際は○○だったという解釈だとこんな風になるぜ、どうだ面白いだろ?」と制作側が強くプッシュしている作品もそれはそれで面白いものがあるのですが、グラナダの淡々とした描き方の豊かさは、何度みても飽きるということがありません。わたしはこれにハマってしまいました。
ワトスンの三年間の「喪失の悲しみ」の描き方も、これですよね。グラナダは。台本にもっと感情的な台詞を入れることもできるのにそうはしてないのが素晴らしいです。そしてその台本を演じる役者のすばらしさ…(ここで前回のコメント冒頭に戻る。以下エンドレス笑)

いろいろと思い出します

ことりさん、こんにちは。

>それはとても興味深いですね。ジェレミーが何と言っていたのか、ぜひ読んでみたいです。

私がぼんやりと思い出していたインタビューがみつかりましたので、先ほど書きました。ジェレミーの言葉はそんなに長くないのですが、読んで楽しんでいただけたらうれしいです。

>相手の一言によって目つきがスッと変わったり、凝視していないと見逃しそうな一瞬だけチラッと目線移動したり、本当に芸が細かくて。目だけでなく足さばきや指先の仕草まで、常に全身で絶妙な演技をするジェレミーですが、繊細な目の動きは、確かにアップで映る映像作品で特に威力を発揮するでしょうね。

ジェレミーもカメラの近さのことを言っています。そうそう、目つきが一瞬で変わるところなんて、みとれますね。よく目だけで全てを語れるなあと思います。でもインタビューやオーディオブックをきくと、感情が声にあらわれる見事さに聞き惚れます。要するに、みとれて聞き惚れるんですよね!

>カメラワークといえば、「ぶなの木屋敷の怪」でハンター嬢が221Bに来た時の天井から見下ろすアングル(ホームズが手紙を投げる!)とか、多くのエピソードで頻繁に出てくるホームズの横顔の向こうにワトスン、とか、ワトスンの向こうにホームズ、という風に二人を重ねた遠近感のある構図が好きです。

ジェレミーはインタビューでカメラワークのことも言っているので、次回かその次にでも、うまく訳せるとよいのですが。たくさんのスタッフの名前をあげながら話しているんですよ。監督とカメラマンは構図をすごく考えて撮っていますよね。そしてそういう細かいところにも視聴者が見とれるのは、やはり俳優が素晴らしいからでしょうね。

>エドワードがデイビッドのワトスンからうまく「同一人物感」を引き継いだ、というような話では、エドワードのメイクさんが間違って「デイビッド」と呼んでしまったエピソードがありましたが、

そうでしたね。エドワードがそれを喜んだというのが、いかにもエドワードらしくて素敵です。そして最近グラナダシリーズをご覧になったかたも、自然に感じたというのはとてもうれしいですね!

>俳優はその役を「生きて」いるから、そこでは人間の内心に生じるいろいろな感情や思惑が当然のこととして表面にあらわれてくる、それはそう演じて「見せよう」としなくても、その役を生きていれば自然と浮かび上がってくるもの。

はい、エドワードもそういう俳優だったような気がします。becomerのジェレミーほどでないにしても。エドワードはジェレミーよりももう少し穏やかな感じではあるものの、そういうところがあったでしょうね。(ああ、直接これには関係ないですが、こういう「演技論」につながるようなエピソードをエドワードがまた別のインタビューで話していました。こうしてコメント欄でお話すると、いろいろと思い出して楽しいです!)

>ホームズの性格ひとつ取ってみても、複雑で、いろんな面があって、解釈によってどのようにでも作り上げられるのが凄いです。

そうなんですね。ジェレミーもホームズの複雑さを言っていましたね。

>グラナダの淡々とした描き方の豊かさは、何度みても飽きるということがありません。わたしはこれにハマってしまいました。

なるほど、余白があるというところまで、原作に忠実なんですね。

>そしてその台本を演じる役者のすばらしさ…(ここで前回のコメント冒頭に戻る。以下エンドレス笑)

うふふ。

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 RM

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和訳には間違いがあるかもしれません。最近は必ず英語原文を併記・またはアドレスを書いて読めるようにしていますので、どうぞそちらも参考になさってください。

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