Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

今日はEdward Hardwicke(エドワード・ハードウィック)へのインタビューから引用します。

前回、「どうしてもエドワード単独へのインタビューの内容が、記憶からすりぬけてしまいます」などと書いてしまいましたが、エドワードへのインタビュー映像 "Elementary My Dear Watson: An Interview with Edward Hardwicke"での内容はよく覚えています。北米版のDVDの特典だったとてもよいインタビューで、以前こちらで触れたことがあります。
2011年5月22日

このDVDセットの前の版にもついていたかもしれませんが、私が持っているのはこちらです。
https://www.amazon.com/dp/B000RPCJB6

このDVDセットについていたインタビューは、YouTubeに二つに分けてアップロードされています。インタビュー全体ですから引用の範囲を越えていますが、そう長くはない映像だということもあって、こちらにアドレスを書きます。今日私が引用するところは4分38秒からです。
https://youtu.be/UCYzvzp9Z_Q?t=4m38s

もとのDVDで字幕はついていませんでした。でもFor Fans of Jeremy Brettというファン・フォーラムにトランスクリプトがありますので、これを使わせていただきます。
http://jeremybrett.livejournal.com/42035.html

この部分を選んだのは、映像作品での監督と俳優の関係や、役作りの一端がわかる気がしたからです。日本語訳は読みやすいように、段落を二つに分けました。

「修道院屋敷」は私がワトスンを演じるようになって最初に撮影した作品でした。Peter Hammond(ピーター・ハモンド)が監督で、この後もグラナダ・シリーズで多くの作品を監督しています。彼はこの時、私にとってものすごく意味がある解釈や指示をくれて、私のワトスンのとらえ方に大きな影響を与えてくれました。多分誰かが、ピーター・ハモンドは助けになってくれるはずだと思って選んだのだと思います。

「修道院屋敷」に、ホームズが部屋の中で歩きながら状況を分析し推理しているシーンがあって、ハモンドが私に「ここで吸ってほしいな。」私が「何がいいだろう。」「紙巻きタバコを吸ってください。」それでタバコを手にして吸ったら、彼が「いや、そうではなくて、タバコを顔に近いところで持ったままにして、その手をあまり遠くには動かさないで。」 たいして意味がなさそうにきこえるだろうけど、その時に演じている状況にあてはめたらすぐにわかりました。「ああそうか、この間(かん)の時間と、没頭しているところをあらわしているんだ。」これが自分のこころの中で、ワトスンがどういう人間かを判断して理解するきっかけになりました。なぜかはわからないし、今ここで説明はできないのですけど。

"The Abbey Grange" was the first one I was involved in. And a director called Peter Hammond, who subsequently did a lot of them, umm, did it and he gave a couple of notes which were hugely important to me and they made a lot of difference to the way I looked at the part. And I think it had been a deliberate choice, I think somebody thought, "He can help.” There was a sequence in "The Abbey Grange" where Holmes is pacing around trying to work this thing out and Hammond said to me, uh, "I want you to smoke." And I-I said, "Yes, what, smoke what?" He said, "Cigarettes, I want you to smoke cigarettes." So I (took a) cigarette and he said, "No, no, no," he said, "Keep the cigarette very close to your face, don't move it away too far." And, it doesn't really mean anything in its explanation but in the context of what we were doing it immediately made me think, "Yes, that suggests time and concentration." And it somehow triggered something in the back of my head that made me think “Watson", I don't know why and I couldn't explain it to you today.

Transcript: http://jeremybrett.livejournal.com/42035.html

これをはじめて聴いた時、わからないなりに、なんて面白いんだろうと思いました。タバコを吸う仕草一つに、その時の状況と、その状況の中であらわれるワトスンの性質が見てとれるのですね。自分が持っているイメージを具体的な形で監督が口にして指示を出して、それを俳優が受け止めて、役ができていく。監督もすごいけど俳優もすごい。あうんの呼吸という感じがします。

"Yes, that suggests time and concentration." とエドワードが思ったところ、どう解釈するかむずかしいのですが、私なりに考えてみました。ここは一度立ち去った屋敷にもどってからの場面ですね。原作では食堂に2時間こもって、となっています。グラナダ版が2時間を想定しているかはわかりませんが、この場所に長くこもってホームズの調査を見守り、彼の推理をたどっているワトスンは、こういう時にタバコをおおきな仕草でスパスパと吸う性質(たち)ではなく、そしてまたワトスンが静かにタバコをくゆらすのを私たちがみて、この部屋で長く推理に没頭している二人を感じるということではないでしょうか。

ジェレミーとエドワードが映像作品と舞台をくらべて、いろいろと話していましたが、このような目立たない、かすかな仕草・演技が映像作品では意味を持つのですね。観ているひとが仕草の意味を明確にみてとってはいなくても、意識下で全体として感じたり、演じている俳優本人が役を理解して役を生きる助けになったりするのでしょう。「なぜかはわからないし、今ここで説明はできない」("I don't know why and I couldn't explain it to you today.")というほど微妙なことなのですね。

そしてこのインタビュー全体をとおして、エドワードの自然な謙虚さとおだやかさがあらわれていて、何度聴いても静かな懐かしさを感じます。

RM
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コメント

とっても暑いですね

「修道院屋敷」はある理由があって,これまた大好きなグラナダ版ホームズのひとつです。

ですから,今回の記事もとても楽しんで読みました!

わたしはタバコを吸いませんし,周囲に吸う人もいませんのでよくわかりませんが,吸い方でその人となりや状況を表すこともできるんですね,なるほどなるほど,です。

>原作では食堂に2時間こもって、となっています。グラナダ版が2時間を想定しているかはわかりませんが、この場所に長くこもってホームズの調査を見守り、彼の推理をたどっているワトスンは、こういう時にタバコをおおきな仕草でスパスパと吸う性質(たち)ではなく、

ワトソンの前に置かれた灰皿には吸い殻が2本見えるようです。
ホームズとは違って,ワトソンはゆっくりタバコを吸う人,のようでうね。
そしてRMさんの考えられるように,ホームズと一緒に,推理に没頭しているのでしょうね。

ところで以前,「AN IDEAL HUSBAND」の記事に書き込みをした時に,RMさんは

>黄色い花というのはこの作品の中で,二人の互いへの気持を象徴しているのかもしれませんね。

とお返事をしてくださいましたが,わたしは「修道院屋敷」でも同じようなことを感じます。
「修道院屋敷」で多用される「赤」・・・グラスに残った赤ワインからきているのかもしれませんが・・・この赤い色は「真実」の象徴やほのめかしのように見えますね。

ブラッケンストール夫人の話を聞く部屋では,赤い装飾品や生花が鮮やかで,「夫人の話だけではなく,その様子によく気をつけて」と注意してくれているようです。

再調査のために乗り込んだ汽車は,まるで赤い信号の中を通るように撮影されていて,ふたりは真実を探しにいくのだ,と強調しているみたいです。

船会社では,真犯人を確信したホームズが指を置くチェスの駒は赤ですし。

最後に現れたメアリーは,喪服姿に真っ赤なスカーフをしていますね。
ホームズが真相を究明したことを表しているようにもみえますし,クローカー船長への真実の愛情を表しているようにも見えます。

まだまだたくさんありますが,そんな楽しみ方のできる「修道院屋敷」はお気に入りのひとつなんです。

RMさんは次々と興味ある記事を書いてくださるので,なかなかホームズとジェレミーへの関心が薄れるということになりませんね。

ありがたいことです(^_^)

暑いですね!そして脱帽です!

さきさん、こんばんは。さきさんが書いてくださったことを今朝拝見して、思わずまた唸ってしまいましたよ!こんなふうにさきさんは映像作品をご覧になるのですね。いえ、映像作品だけではなく絵も風景も、私とはまた違ったふうに見えているのでしょう。面白いなあ。

>「修道院屋敷」で多用される「赤」・・・グラスに残った赤ワインからきているのかもしれませんが・・・この赤い色は「真実」の象徴やほのめかしのように見えますね。

私が流れる映像をぼんやり観ているところを、さきさんはその物語の奥に一貫して流れるイメージも共に感じていらっしゃるのですね。「象徴やほのめかし」というのは西洋画で、そして私はよく知らないのですが、多分日本の絵画においても、一枚の絵に豊かな意味を付け加える重要な技法なのでしょう。文字で書かれた物語では、時折意識下でそれを感じることがありましたが、映像作品ではそのような感覚はお留守になっていました。それも含めて味わえたら、また楽しいでしょうね!

>ワトソンの前に置かれた灰皿には吸い殻が2本見えるようです。

おお、そうでしたか!もしも2時間の想定だったら、おっしゃるとおりワトスンはゆっくりですね。

>RMさんは次々と興味ある記事を書いてくださるので,なかなかホームズとジェレミーへの関心が薄れるということになりませんね。

わーん、うれしいなあ、ありがとうございます。「修道院屋敷」がお好きな「ある理由」もいつか何かの機会に、よければ教えてくださいね。


チェスの駒が赤というのもそう言えば、というくらいにしか覚えていなかったのですが、そう言えばのついでに、以前誰かがあの盤面の駒は「なんとかだ」と言っていて、この「なんとか」が思い出せません。あの駒の並び、あるいは残っている駒の種類や数が、チェスのルールを知っているひとがみると何かを暗示しているということだったかしら。うーん、思い出せません。子供の頃、チェスのルールを調べて遊びで駒を並べたこともあったのですが、すっかり忘れました。老後の楽しみにとっておきましょう。

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 RM

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