Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

前回Edward Hardwicke(エドワード・ハードウィック)のインタビューでの言葉をひいて、

ジェレミーのホームズは忘れ去られることはなく、人々はずっと覚えているだろうとエドワードが語ったこのインタビューから15年ほどたった今、このことを疑う余地はまったくありません。

と書きました。これを読んで、ジェレミーのホームズへの評価は変わることなく高かったのだから、それほどおおげさに言わなくても、とお思いになったかたもいらっしゃるかもしれません。映像化の決定版の一つという地位はこれまでも、これからもずっと変わらないのは当然だ、と。でも少なくともイギリスではそういうわけでもなかったようだ、と驚きを持って読んだ文章があります。

David Stuart Davies著 Bending the Willowの出版は、初版がジェレミーが亡くなった次の年の1996年、第2版が2002年、第3版が2010年です。第2版の後書きによれば、ホームズ役者としてのジェレミーの評価は2002年当時、かつてより落ちていたそうなのです。David Stuart Daviesはご存知のように、ジェレミーに何度も会ったことがあるシャーロッキアンで、ホームズを愛し、ジェレミーのホームズを高く評価している人です。

その彼が第2版の後書きに以下のように書いていて、これは第3版にも掲載されています。これに先立つ部分では、グラナダの最後のシリーズはジェレミーの健康状態の悪化、映像化に適した原作は使いはたしてしまったことなどから、質が落ちたと書かれています。日本ではグラナダ・ホームズは全体として「シャーロック・ホームズの冒険」という題でまとめられていますが、イギリスでは6つのシリーズにわかれていて、同じシリーズの作品は毎週続けて同じ時間に放映されました。

最終シリーズのThe Memoirs of Sherlock Holmesでの印象のために、グラナダのホームズ作品全体の評価にも、偉大なホームズとしてのブレットの名声にも傷がついてしまった。グラナダ・ホームズのどのシリーズも、これまでイギリスの地上波のテレビで再放送されていない。そのため新しくホームズに魅せられたファンはブレットのホームズがどれほど卓越していたかを見るためには、ビデオかDVDをさがさねばならない。彼が世を去って8年たったいま、すばらしいホームズ役者の一人としてのジェレミー・ブレットの地位は次第に低下しているように思う。Rathbone(ラスボーン)はその地位を保っているようで、これは映画のもつ力にテレビが負けていることを示しているのかもしれない。テレビは黎明期から時間がたって洗練されてはきたが、いまだにその場限りのメディアだとみられているのだろう。だがひょっとするとグラナダ・シリーズへの評価がかつての高さを失っているのは特別なことではなく、ものごとはそういうもので、そうであるなら、ホームズが「恐怖の谷」で「ものごとは変化しているようにみえて、再び元の場所にもどってきます。歴史は繰り返して再び同じことがおきます」と言ったとおりになるに違いない。我々はジェレミー・ブレットの初期のホームズが再び評価され、シャーロッキアンの新世代がその豊かな宝に気づくことを共に願おうではないか。何年か絶版になっていたこの本が再び世に出ることが、わずかなりともこの復興の一助となることを私は祈っている。

2002年4月

The images of The Memoirs did much to denigrate the series of Granada shows as a whole and Brett's own standing as a great Sherlock Holmes. None of the series has been repeated on terrestrial television in Britain, and so the newer Holmes fans have to seek for videos and DVDs to glimpse his greatness. In this eighth year since his death, I suspect that Jeremy Brett's position as one of the finest portrayers of Sherlock Holmes is slipping. Rathbone's seems to remain constant, and perhaps that is an indication of the power of film over television, which despite its age and sophistication is still seen as a transitory medium. Perhaps this falling away is a natural phenomenon and it must be that, as Holmes observes in The Valley of Fear, 'Everything comes in circles . . . The old wheel turns and the same spoke comes up.' Let us hope that there is a reassessment of the early days of Jeremy Brett's Holmes and that the new generation of Sherlockian fans is made aware of the riches available to it. I hope that the re-emergence of this book after being out of print for some years will help in some small measure with this renaissance.

April 2002


最初にこれを読んで驚いたのは、"None of the series has been repeated on terrestrial television in Britain."(どのシリーズも、これまでイギリスの地上波のテレビで再放送されていない)というところです。6つのシリーズのどれも、ということでしょう。これはシリーズの中のそれぞれのお話が単発でも放映されなかったということでしょうか、それとも毎週のレギュラー番組としての再放送はなかったということでしょうか。そのあとで、ジェレミーのホームズがどれほど偉大であったかを見るためには「ビデオかDVDをさがさねばならない」とあるところからは、素直に読めば単発の放映もなかったようにとれます。ただ、地上波で再放送がなくても、ケーブルテレビなどではあったのかもしれませんが。

今でこそDVDは比較的安価ですし、専用の機器がなくてもコンピュータの画面上で手軽に再生できます。ストリーミング配信のサイトもたくさんあるようですし、過去のテレビ作品を観たいと思ったら、ハードルは当時と比べものにならないほど低くなりました。でも2002年当時はおそらく地上波での再放送があるかないかで、大きな違いがあったことでしょう。そしてその再放送が、2002年まで(少なくともシリーズとしての形では)一度もなかったということを知りました。

著者であるDavid Stuart Daviesは、グラナダ・シリーズ、その中でのジェレミーに対する評価が落ちつつあると書いています。その理由として、最終シリーズでの変化、再放送されないこと、グラナダ版が映画ではなくテレビ作品であることをあげています。評判が下がって再放送されず、再放送されないから新しいファンを獲得できなくて、さらに評価がおちるとも言えるでしょう。これが2002年当時です。

でも自然もものごともすべてが移り変わる、そして移り変わる中で本質的なもの、重要なことは再び巡ってくる。そうであればジェレミーのホームズ再評価の時が来るだろうと書いています。

これが書かれたのが2002年、そして前回ご紹介したエドワードのインタビュー番組のエンドクレジットには2003年とあることから、エドワードが話したのは2002年か2003年でしょう。当時のこのような状況を知ると、エドワードがあの静かな声で、"And it will be remembered, I'm sure, because I think he was an extraordinary Holmes."(でもジェレミーのホームズはこの先も忘れ去られず残ると確信しています。彼は素晴らしいホームズだったのですから)と言っていることに、また違った感情をいだきます。

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