Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

夏というとThe Naval Treaty(海軍条約事件)のあの白い麻のスーツが思い出されます。それにちょっと触れているジェレミーの言葉を引用しましょう。

載っているのは1987年出版の、グラナダ・シリーズに関する薄い本です。
"Granada Companion, Number One: A Sherlock Holmes Album—A Centenary Celebration of Sherlock Holmes"
Edited by Michael Cox and Andrew Robinson
Published by Karizzma, 1987

その中の"Playing Sherlock Holmes: A Profile of Jeremy Brett"という題の1ページからです。

「ホームズはとても複雑な男です。音楽が好きでバイオリンの名手、冗談が好きで自信満々、少しうぬぼれているところもあるかもしれない。ほめられるのが好きで、自分以外の名探偵に関しては口が悪いのです。

ちょっと芝居がかったこともします。自慢しますし、ひとに注目されるのが好きだったりします。特に事件の謎がやっと解けた時にはね。

難しい事件ではこころの中まで張りつめた状態にあります。事件が解決したときには、ちょっと芝居がかったとも言えるかたちで、その張りつめたものが爆発するのです。

そういったところをいくらかでも、自分が演じるホームズの中にあらわそうとしています。

だから『海軍条約事件』がグラナダで今まで演じた中で一番好きな作品なのです。この作品ではじめて、ホームズだけでなく自分自身もちょっとだけ出せていると感じられました。ベージュのスーツを着て、わらで編んだ帽子パナマ帽をかぶって、笑って、最後の場面では事件を解決したホームズに、ちょっとうきうきした、優雅なことをさせました。見ているひとで、やりすぎだと思ったひともいたかもしれませんが、でも私にとってはそれまでの殻を破った大切な一瞬でした。」

’He is complex. He loves music — he plays the violin very well — he enjoys a joke, he is vain, maybe a little conceited. He likes to be praised. He can be bitchy when he assesses other great detectives.

'He can be a bit of a drama queen; he shows off sometimes, he's something of an exhibitionist, especially when he has pulled off a coup.

’On a difficult case he may build up considerable tension within himself, which explodes in a genial bit of theatricality when the problem is solved.

’I've tried to get some of that into my Holmes.

’That's why of all the stories I've done for Granada my favourite is The Naval Treaty: it was the first in which I felt I could be a bit of me as well as Holmes. I wore a beige suite and a straw hat. I was allowed to laugh, and at the end, when Holmes knew he'd cracked the problem, I made him do a little skip and dance. Some viewers may not have approved, but for me it was a breakthrough.'


最初の部分は以前も引用したことがあります。
「勝手に連動企画」で、"ドラマ・クイーンはどっち?"
この部分ではジェレミーはホームズのいろいろな面を言葉にしています。これがそのまま演技にあらわれていることに、いつも感嘆します。

この部分を受けて後半で、「だから『海軍条約事件』が一番好きだ」と言っています。この「だから」という言葉でのつながりは感覚としてはわかるのですが、論理としては、なぜ「だから」なのでしょう。この作品で「自分自身もちょっとだけ出せていると感じられ」ることと、その前の部分はどうつながるのでしょう。

自分とホームズは正反対だといつも言っているジェレミー、今回の引用部分に先立つところでもそう言っています。でも、実はそのホームズは自分とまったくかけ離れた存在というわけでもなく、自分と共通な部分もあるということを、口にはしていないですが言外に含んでいるのでしょう。音楽が好き、冗談が好き、ちょっと芝居がかっている。だから自分をすべて隠して演じたのではなく、自分をはじめて少しだけ出せた「海軍条約事件」が好きだ。そういうことだと想像します。

ここでベージュのスーツが出てきます。あれは麻のスーツでしょう。この撮影のときは特に暑かったと、たとえばMichael Cox著 A Study in Celluloidに書かれています (We filmed the story in high summer)。具体的には1983年8月8日(月)から8月26日(金)の撮影だったとKeith Frankel著 Granada's Greatest Detectiveに書かれています。8月8日と言えば数日後ですね!

そしてstraw hatをかぶっています。「麦わら帽子」と訳すと私はつばの広い帽子を思い浮かべるので、「わらで編んだ帽子」としました。(追記参照、後で「パナマ帽」に変えました)

最後のシーンでは"I made him do a little skip and dance"と言っています。最初にこれを読んだとき、あれ、飛び跳ねたのはホームズではなくてフェルプスだったのに、と思いました。でもこれは多分、文字どおり「飛び跳ねて、踊りあるいた」と言っているわけではなく、ホームズが自分の気持ちを軽快に優雅にあらわしたと言っているのだろうと思います。

それでは具体的にはどこでしょう。見た人はやりすぎだと思ったかもしれないけど、と言っているところから、当然原作にはないところ、そしてジェレミーがつくったシーンでしょう。それならばあの、ハドスン夫人に花を渡す、優雅でかわいらしい場面ですね!
ホームズがハドスン夫人に花をささげる場面;Rosalie Williamsのインタビュー(1996)より
ハドスン夫人とワトスンとホームズ;Rosalie Williamsの1992年のインタビューから(4)

後者でのRosalie Williamsの言葉を再度引用します。

ハドスン夫人とホームズの関係を描くのに、私たちがやり過ぎてはいないことを願っています。時には監督が「いや、それはちょっと」と言うかもしれません。ある場面で、ジェレミーが私に花を捧げたいと提案したことがありました。マリーゴールドの小さな花を渡して、ホームズの気持ちをあらわしたのです。とても素敵なシーンでした。コナン・ドイルが書いたものではなくて、私たちが演じている時に生まれたものでした。でも私にとってはそのおかげで、役にいのちが吹き込まれたのです。

I hope we haven't overstepped the mark in the relationship. Sometimes the director will say, "Oh, no." In one, Jeremy wanted to give me a flower. He gave me a little marigold, just as a little gesture. It was very sweet. It wasn't Conan Doyle; it was just something that happened when we were playing. But it rounds off the character for me.


多分ここのことですね!ハドスン夫人を演じたRosalie Williamsも、そしてこれを提案したジェレミーにとっても、自分の役を生き生きとしたものにするために、このシーンはとても重要だったことを知りました。



明日でここをはじめて7年、昨年のこの記事の最後でも書きましたが、吹き抜けの広場に置かれたテーブルでコーヒーを飲んでいた時に、これをはじめようと思い立ったのでした。
ホームズへの手がかりと、ホームズが持つ静けさ:1991年の新聞記事より

歩いて30分ほどのところにあるあのコーヒーショップに、この日が近づくとよく行くのですが、今年は忙しさと、最高気温36度、37度にためらって、まだ行っていません。台風が去って、日常も少し落ち着いたお盆の頃には行きたいと思います。近づいている台風が心配なかたもいらっしゃるでしょう。被害がでませんように。

RM

追記:そういえばパナマ帽という言葉がありましたね。straw hatのうちでtoquilla strawで編んだものをPanama hatと呼ぶそうです。
https://en.wikipedia.org/wiki/Straw_hat

ジェレミーはstraw hatと言っていて、これの材質が何かはわからないのですが、「麦わら帽子」でも「わらで編んだ帽子」でも違うものを想像しがちなので、引用した部分の和訳ではパナマ帽としておきます。
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